【歌舞伎 初心者】はじめての観劇 チケットの買い方やおすすめ演目、マナーやルールを徹底解説

【歌舞伎 初心者】はじめての観劇 チケットの買い方やおすすめ演目、マナーやルールを徹底解説

2025年、歌舞伎役者の生涯を描いた映画『国宝』が日本中の観客の胸を熱く揺さぶっています。

そんな中、歌舞伎に興味を持ったものの、「難しそう」「敷居が高いのでは」と感じている方もおられるのではないでしょうか。

しかしながら、実際の歌舞伎は、華やかな衣装や迫力ある演技など、初心者でも楽しめる魅力にあふれています。

本記事では、歌舞伎の基本知識からおすすめの演目、楽しみ方、チケットや劇場の選び方までわかりやすくご紹介します。
初めての方が安心して一歩を踏み出すお役に立てれば幸いです。

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歌舞伎とは?

歌舞伎は「傾(かぶ)く」が語源の、日本を代表する伝統的な舞台芸術の一つです。

芝居・踊り・音楽が一体となった総合芸術であり、江戸時代より前の時代の歴史を扱う「時代物」や市井の題材を扱う「世話物」などジャンルも多彩。
大衆的な娯楽として、400年以上にわたり多くの人々に親しまれてきました。

起源とされているのは、江戸時代初期(17世紀初め)に出雲の阿国(いずものおくに)という女性が京都で始めた「かぶき踊り」。
風変わりな装いで行ったこの踊りは大きな評判を呼びます。

当初は女性や美少年が演じる形で注目を集めましたが、風紀を乱すという理由から幕府に取り締まられ、後に成人男性が男女双方を演じる形となりました。

歌舞伎は芝居小屋を中心に庶民の暮らしに浸透。
元禄時代には演劇としての発展を遂げ、今日まで連綿と続いています。

MEMO

歌舞伎は 2008年に「ユネスコ無形文化遺産」にも登録され、世界に誇る日本文化の一つとなっています。

歌舞伎は初心者でも楽しめる

歌舞伎というと、格式高い伝統芸能というイメージや独特な台詞回しから、初心者の方には少し難しく感じるかもしれません。

しかし、もともと歌舞伎は庶民の娯楽として発展してきたもの。
古典芸能と位置づけられるようになったのは近代に入ってからで、言葉の意味がすべて理解できなくても十分に楽しめます。

観劇の際に意識したいのは、何より役者の演技。
たとえ同じ演目でも、演じる役者によって印象が大きく異なります。

難しく考えず、役者の表現や舞台の雰囲気に身をゆだねてみるのがおすすめです。

また、台詞や内容の難しさに不安を感じる方には、イヤホンガイドという心強い味方がいます。
舞台の進行に沿って、歌舞伎好きの解説者が登場人物やあらすじ、演技の見どころなどをわかりやすく解説してくれるので、初めてでも安心です。

MEMO

イヤホンガイドは劇場にて有料で貸し出しを行っています。詳細は各劇場の公式サイトをご確認ください。

初心者におすすめの歌舞伎演目

歌舞伎には非常にたくさんの演目が存在しており、どれを見ればいいかは悩みどころです。

本項目では、数ある演目の中から、初心者におすすめの歌舞伎演目を3つご紹介します。

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

『義経千本桜』は歌舞伎の三大名作のひとつで、源義経をめぐる壮大な物語が展開されます。
壇ノ浦の戦いで命を落としたはずの平知盛が生きていたという設定を軸に、複数の主人公が登場します。

幻想的な世界観と華やかな演出が魅力で、特に二段目「渡海屋・大物浦」での知盛の場面は必見。

義経に復讐しようとするも果たせず、傷だらけの体に碇綱を結んだ知盛は残された力で碇を海に投げ入れ、自らの運命と対峙します。
碇とともに背中から海へと落ちていく「背ギバ」と呼ばれる立廻りは圧巻です。

MEMO

三大名作とは、本作と『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』の3演目のこと。いずれも人形浄瑠璃から歌舞伎へ移された「義太夫狂言」の代表作です。

勧進帳(かんじんちょう)

『勧進帳』は歌舞伎十八番の代表作。
源義経が兄・頼朝に追われ、弁慶らとともに都から逃れる物語です。

加賀国・安宅の関所で、義経一行が変装して通過しようとする場面は緊張感たっぷり。

弁慶が偽の勧進帳を読み上げ、関所を守る富樫左衛門と対峙する場面では、迫力ある台詞の応酬が繰り広げられます。
弁慶の機転とその忠義に引き込まれること必至の演目です。

MEMO

歌舞伎十八番は市川團十郎家のお家芸で、18演目のほぼ全てが荒事(=超人的な主人公による荒々しく豪快な表現)の作品です。

曽根崎心中(そねざきしんじゅう)

『曽根崎心中』は近松門左衛門の人形浄瑠璃をもとにした世話物の代表作。
遊女・お初と手代・徳兵衛の悲恋と心中を描きます。

戦後に復活上演されて人気を集め、映画『国宝』にも登場して話題を呼びました。

内容は悲劇的なものの、人間の心の機微を感じることができ、歌舞伎が難しそうと思っている初心者の方にとっても入りやすい作品と言えるでしょう。

お初が足先で徳兵衛の首をなで、徳兵衛がその足を喉に当てて応える有名な場面では、2人の悲痛な心情が鮮烈に表現され、観る者の胸を打ちます。

歌舞伎の楽しみ方

ここからは歌舞伎の楽しみ方をいくつかの項目に分けてご紹介します。一緒に歌舞伎を楽しむための準備をしましょう。

観劇のルール・マナー

観劇の際にはいくつかルールやマナーがあります。

難しいものではなく、以下のような基本的なマナーに気を付けていただければ問題ありません。

  • 上演中は携帯電話の電源をオフに
  • 私語や雑音に注意
  • 撮影や録音の禁止

加えて、周りの観客の方への配慮から、上演途中での出入りはできるだけ避けるのが無難です。

服装については特にきまりはなく、普段着でも着物でもご自身にとってお好きなものを選択すると良いでしょう。

上演時間は約4時間前後と長時間のことが多いですが、休憩時間の幕間(まくあい)が何度かあるためご安心ください。
ただ、長時間の滞在を考慮して、できるだけ座りやすく体温調節もしやすい服装で来られることをおすすめします。羽織るものがあればなお良しです。

観劇中の注目ポイント

歌舞伎を観るときは、最初から物語の細部を理解しようとしなくても大丈夫です。
役者の演技に注目しつつ、目と耳で舞台の世界を存分に楽しむところから始めましょう。

まず注目してほしいのは、役者の声です。
音楽のような台詞回しは惚れ惚れするほどの心地よさで、観客の心を揺さぶります。

衣装や化粧は、登場人物の身分や性格を象徴する重要な要素。
中でも、役者自身の手で顔に大胆な線が描かれた「隈取(くまどり)」は、超人的な力を持つ役や悪役などに用いられ、舞台上でもひときわ目を引きます。

役者が動きを止め、観客の視線を集める「見得(みえ)」の場面は圧巻です。
拍手や定番の掛け声「大向こう」が入る瞬間も見逃せません。

また、歌舞伎では舞台上での趣向を凝らした迫力ある演出が目白押しです。
例えば観客の眼前で即座に舞台転換が行われる「廻り舞台」、建物が一瞬で崩れる「屋台崩し」など、度肝を抜かれる舞台演出にワクワクさせられます。

覚えておくと役立つ用語

観劇をより楽しむために、覚えておくと役立つ用語をいくつかピックアップしました。
事前にチェックしておくことで、舞台上の演出や観客席の反応が理解しやすくなります。

隈取
:血管や筋肉を誇張して表現した化粧法で、これを見れば登場人物の性格や役柄が一目で分かるのが特徴。
様々な種類がありますが、基本的に赤は正義や勇気など、青は大悪人など、茶は妖怪や異形の者を意味します。

見得
:登場人物の気持ちの高まりなどを表現すべく、役者が動きを止めてポーズをとること。
観客の注目を一身に集める効果があり、様々な種類が存在します。

花道
:舞台の下手にある通路で、役者の登場や退場時に使用。客席の中を通るため、役者と観客との距離が近く、より臨場感あふれる演出が可能になります。役者がその場で立ち止まり演技をすることも。

また、花道には穴があり、ここから登場するのは異形のものという特徴があります。

大向こう
:役者が登場した時やここぞという見せ場で観客が出す掛け声のこと。
役者の名前を呼ぶことで場が盛り上がり、観客は芝居に参加している一体感が得られます。

ケレン
:観客の意表を突く演出のこと。『義経千本桜』でご紹介した背ギバはケレンにあたります。

事前のあらすじ予習がおすすめ

歌舞伎の醍醐味は役者の演技であるものの、難しい台詞をはじめ、物語についていけない不安を抱える方もおられるのではないでしょうか。

この不安を解消するために役立ってくれるのが、観劇する演目のあらすじや設定の予習です。

これらを事前に知っていれば、馴染みのない台詞でも自然と理解しやすくなり、役者の演技をより楽しむことができます。

ネットや書籍などで情報を確認できますが、それが難しい場合もあるかもしれません。

そんな方には、劇場のチラシに記載されたあらすじや筋書(パンフレット、関西では番付と呼ぶ)だけでなく、先にも触れたイヤホンガイドもあるので安心して歌舞伎を楽しんでいただけます。

 

 

チケットの値段と買い方

続いて歌舞伎のチケットの値段や買い方について、本項目でご紹介します。

席の種類や値段の目安

観劇する際の席の種類には、歌舞伎座を例に挙げれば、特等席、1等席、2等A・B・C席、3階A・B席、1階桟敷席があります。

価格帯は幅広く、公演にもよりますが、高いもので約20,000円、安いもので約5,000円。
席によっては、お手頃な値段で歌舞伎を長時間楽しむことが可能です。

また、一幕だけ観られる「一幕見席」というものがあります。施設利用に一部制限があるものの、2,000円程度で歌舞伎を肌で感じられるのは嬉しいところです。

どの席を選べばいいかですが、初心者の方には値段が安く、歌舞伎がどういうものかが分かる3階席での観劇をおすすめします。

チケットの買い方

チケットは、インターネット(※チケット松竹での購入の場合、発売初日は10時からで、それ以外は24時間予約可能)や電話、各劇場の窓口にて購入することが可能です。

公演によっては、チケットぴあなどのチケット販売サイトでも取り扱いがあります。

松竹が運営する歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人(かぶきびと)」では公演情報をはじめ最新情報が随時更新されているので、ぜひチェックしてみてください。

人気公演は早めに売り切れることも多いので、できるだけ早く行きたい日のチケットを確保しておくと良いでしょう。

初心者におすすめの劇場と雰囲気

歌舞伎が観劇できる劇場は全国にあり、これらの劇場以外にも不定期の公演が実施されています。ここでは初心者におすすめの劇場とその雰囲気についてご紹介します。

歌舞伎座(東京)

歌舞伎を見るならばやはり歌舞伎座。1年を通して歌舞伎が楽しめる、日本を代表する劇場です。
伝統と格式の香り漂う建物で、海外観光客からも人気を集めています。

劇場内にはお食事処やお土産を買えるお店があり、3階には観劇する方のみ利用可能で個性的なお店が立ち並ぶ「座・のれん街」もあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。

また、地下2階には誰でも入れる木挽町広場があります。ここではお弁当やお菓子、雑貨などを扱う店が目白押しです。

南座(京都)

日本最古の劇場の一つが古都・京都にあり、その勇壮な佇まいが強い印象を残す南座です。

外観の大提灯や櫓、内部の華やかな天井や緞帳「赤地草花連紋(あかじそうかれんもん)」など、劇場はいくつもの魅力にあふれています。

1996年に国の登録有形文化財に登録されており、ひとたび劇場に入れば、江戸時代初期から続く歌舞伎の歴史を感じられることでしょう。

大阪松竹座(大阪)

1923年から大阪の地で歴史を紡いできた大阪松竹座は、歌舞伎からクラシックコンサートまで幅広い舞台芸術の花を咲かせてきた劇場です。

「道頓堀の凱旋門」とも称される正面入口のアーチは創建時の形を今に伝え、日常を離れた別世界へと観客を誘います。

MEMO

2026年5月に閉館予定となっており、同年4、5月に2ヵ月連続で『大阪松竹座さよなら公演』と題した大歌舞伎公演の実施が決定しています。

気軽に歌舞伎を体験してみよう

歌舞伎は、最初から完璧に理解する必要はありません。

まずは雰囲気や迫力を味わってみましょう。
有名な役者の出演作や襲名披露公演から入るのもおすすめです。

衣装や音楽、舞台の熱気など、五感で楽しめる魅力が満載の歌舞伎。
手頃な席や映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」などの選択肢もあるので、ぜひ気軽に体験してみてください。

あなたの「初めての歌舞伎」が特別な思い出になりますように。

 

 

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