前回のリオデジャネイロ五輪では、女子シングルスで奥原希望選手が銅メダル、ダブルスでは松友美佐紀、高松礼華ペアが金メダルを獲得するなど注目を浴びたバドミントン。
前々回のロンドン五輪でも女子ダブルスで藤井瑞希、垣岩令佳ペアが銀メダルを獲得しており、女子が優勢ではありますが、日本でも人気・実力ともに高いスポーツです。
東京五輪は男子シングルスの桃田賢斗選手が金メダルの筆頭候補であることに加えて、リオデジャネイロ五輪で女子シングルス銅メダルの奥原希望選手、さらに女子ダブルスは群雄割拠!
前回金メダルの松友・高松ペアが出られないほど、日本女子ダブルスはハイレベルな代表争いを繰り広げています。
今回は、バドミントンのルールや見どころ、注目選手をご紹介します。
目次
バドミントンのルールは?
ネットを挟んで立ち、ラケットを使って「シャトル」とよばれる、半球状のコルクの上に羽根がついたものを打ち合う競技です。
コート上をすさまじい速さでシャトルが行き交う中での駆け引きが魅力で、上からラケットを振り下ろす「スマッシュ」のほか、相手コートにふわりと落とすような「ドロップ」など、ショットの種類も豊富。
競技場内の空調の風さえもプレーに影響するほど、非常に繊細なスポーツでもあります。
試合はすべて21点先取を1セットとして2セット先取の3セットマッチです。
セット間の得点が20対20になった場合は、そこから2点差がつくまで続けてそのセットの勝者を決めます。
東京五輪代表選考の方法は?
それぞれの種目の世界ランキングによって出場選考がなされ、シングルスは男女41人、ダブルスは男女16組が出場できます。
原則として代表は1か国1人(1組)ですが、シングルスは世界ランキングで16以内に2人、ダブルスは8位以内に2組いる場合は、出場枠が1人(1組)増えます。(最大2枠まで)
よって、世界ランキングで上位に入っている選手が多い日本は、2枠を確保できる可能性のある種目も多いため、他の国よりも多くの選手が出場できる可能性があります。
新型コロナウイルスが代表選考を左右する事態に…
中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大に伴い、各競技の五輪代表選考会が中止になる事態が続いています。
バドミントンはまだ正式な決定はなされていませんが、4月21日から行われるアジア選手権の舞台が中国の武漢のため、今後の情勢次第では代表選考レースに大きな影響をもたらすことになります。
さらに、このアジア選手権は東京五輪代表選考の最後の大会となるため、ここでポイントを得ることができるかどうかが大きなカギとなります。
もちろん人命第一ではありますが、東京五輪出場へ向けてこれまで頑張ってきた選手たちのためにも、無事開催となることを祈るばかりです。
日本男子注目選手
男子の日本代表は、世界ランキング1位の桃田賢斗選手が中心です。
世界ランキングで見ると日本の2番手は10位の常山幹太選手。
このまま代表決定まで世界ランキングをキープできれば、日本の男子シングルスは2人が出場となります。
ダブルスでは高校時代からペアを組む嘉村健士選手・園田啓悟選手の「カムソノペア」が世界ランキング3位とメダルも期待できる好位置にいます。
さらに遠藤大由・渡邊勇大ペアが世界ランキング6位をキープしているため、こちらもこのままランキングを維持すれば、シングルス同様2組の出場となります。
桃田 賢斗(ももた けんと)
- シングルス
- NTT東日本所属
- 25歳
- 左利き
世界ランキング1位の絶対エースは、東京五輪の金メダルが確実視されている存在。
2015年BWFスーパーシリーズで男子シングルスで日本人初優勝を飾りました。
さらにワールドツアーファイナルズで2回優勝、2019年には全英オープン優勝など輝かしい成績を残し、いよいよ東京五輪に臨みます。
世界ランキングも1位を快走しており、すでに東京五輪出場が確実となっている桃田選手ですが、2020年最初の大会となったマレーシア・オープン優勝後、帰国のため空港へ向けて移動中に交通事故に巻き込まれまれてしまい、命に別状はなく、眉間など3か所に裂傷と、全身打撲の診断を受けました。
本番前にアクシデントに見舞われてしまった桃田選手ですが、2020年3月の実践復帰を目指しているとのことで、東京五輪には間に合いそうです。
是非、万全の状態まで回復してプレーできることを祈りたいと思います。
嘉村 健士(かむら たけし)、園田 啓悟(そのだ けいご)ペア
- ダブルス
- トナミ運輸所属
熊本・八代東高校時代にペアを結成した2人は、共に169cmで右利きの嘉村選手と園田選手は低く速い展開を武器に現在世界ランキング3位。
東京五輪でもメダルを期待されています。
実は2人は高校卒業後、嘉村選手は大学に進学、園田選手は社会人と別々のチームになりました。
その間国体でペアを組む程度だった2人ですが、高校卒業から2年目の国体で当時の日本一ペアを撃破したことで、再結成を決意したそうです。
その2人の再結成の道をつなげたのが、2人が勝った当時の日本一ペアが所属しているトナミ運輸の荒木監督だったというのですから粋な話です!
2人をペアでいさせたいと努力した多くの関係者のためにも、東京五輪での活躍に期待したいところです。
男子のメダル候補は?
シングルスにおいては、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得している世界ランキング2位の諶龍(チェン・ロン)選手、同じく銅メダルを獲得したデンマークのビクター・アクセルセン選手も世界ランキング5位につけ、2020年1月のマレーシア・オープンでは桃田選手と決勝で戦っています。
世界ランキング1位の桃田選手とは言え、一発勝負のトーナメントを勝ち上がるのは容易なことではありません。
ダブルスでは、世界ランキングの1位と2位は共にインドネシアのペア。
現在世界ランキング2位のヘンドラ・セティアワン、モハマド・アッサンペアは、2013年と2015年に世界選手権で金メダルを獲得したペアです。
セティアワン選手は2008年の北京五輪でマルキス・キド選手とのペアで金メダルを獲得しているため、要警戒の選手です。
女子日本注目選手
シングルスは、リオデジャネイロ五輪シングルスで銅メダルを獲得した、現在世界ランキング4位の奥原希望選手。
リオデジャネイロ五輪の準々決勝で奥原選手に敗れた山口茜選手は、世界ランキング3位とその奥原選手の上をいく展開で東京五輪選考レースは佳境を迎えています。
トーナメントの組み合わせ次第ですが、2人同時のメダル獲得にも期待したいところです。
さらに、ダブルスは福島由紀・廣田彩花ペアが世界ランキング2位、松本麻佑・永原和可那ペアが3位。
そして、リオデジャネイロ五輪金メダリストの松友美佐紀・高橋礼華ペアが4位につけている大混戦です!
今後の大会の成績によってはまだまだ逆転があるため、やはりアジア選手権の開催の可否が大きなポイントになりそうです。
奥原 希望(おくはら のぞみ)
- シングルス
- 太陽ホールディングス所属
- 24歳
- 右利き
リオデジャネイロ五輪女子シングルスで銅メダルを獲得した奥原選手。
これは男女を通じて、日本バドミントン界初のシングルスでのメダル獲得の快挙でした。
その後は、2017年に世界選手権女子シングルスで日本人初優勝、2018年に日本ユニシスを退社し、2019年から太陽ホールディングス所属のプロ選手として活動しています。
プロ転向の理由は「東京五輪のためにすべてを賭けて準備する」ため。
スタミナを武器に粘り強くプレーする奥原選手が、東京を舞台に世界の頂点に立つ姿を期待せずにはいられません。
松友 美佐紀(まつとも みさき)、高橋 礼華(たかはし あやか)ペア
- ダブルス
- 日本ユニシス所属
日本バドミントン界初の金メダルを獲得した、リオデジャネイロ五輪代表のペアです。
宮城県の聖ウルスラ学院英智高校でペアを組んだ2人も、現在高橋選手は29歳、松友選手は27歳となり東京五輪は集大成となるはずでしたが、現在選考レースでは日本3番手と危機的状況です。
リオデジャネイロ五輪決勝では、セットカウント1-1で迎えたファイナルセットで16-19と3点のリードを許し、あと2ポイント取られたら敗退という所からゲームをひっくり返し、金メダルを獲得しています。
この2人なら、この状況も何とかしてしまうのではないかと期待しています!
本来であれば上位2組を注目として挙げるべきところですが、筆者の独断と偏見でこの2人を推したいと思います。
女子のメダル候補は?
シングルスでは、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した、現在世界ランキング10位のスペイン代表キャロリーナ・マリン選手、銀メダルを獲得したシンドゥ・プサルラ選手も6位という順位です。
現在世界ランキング1位は中国の陳雨菲(チェン・ユーフェイ)選手です。
現在21歳の陳選手は、2014年と2016年に世界ジュニア女子シングルスで優勝しています。
171㎝の恵まれた体格と安定したショットが武器の選手で、日本の奥原選手と山口選手の最大のライバルとなることでしょう。
また、ダブルスにおいては日本の3組より世界ランキングで上を行っているのが、中国のチン・チンチェン、ジア・イファンペアだけです。
日本女子ダブルスは、代表選考レースを勝ち抜くことがそのままメダル獲得への大きな一歩になるといっても過言ではありません。
世界ランキングの上位は中国、韓国、日本が占めており、メダルを争うのはこの3か国の代表ペアになりそうです。
日本は混合ダブルスのみ1枠の出場か
男女1人ずつでペアを組む混合ダブルス。
日本からは世界ランキング3位以内の、渡辺勇大・東野有紗ペアの1組が出場となりそうです。
2人は富岡第一中学、富岡高校の先輩後輩で、2018年の全英オープンでは日本人ペア初の優勝を勝ち取っています。
東京五輪でもメダル獲得なるか注目です。
競技日程は?
男子 7月25~28日 シングルス・ダブルス予選ラウンド
7月29日 シングルス予選ラウンド
7月30日 シングルス1回戦・ダブルス準々決勝
7月31日 ダブルス準決勝
8月1日 シングルス準々決勝・ダブルス決勝・3位決定戦
8月2日 シングルス準決勝
8月3日 シングルス決勝・3位決定戦
会場 武蔵野の森総合スポーツプラザ
女子 7月25~28日 シングルス・ダブルス予選ラウンド
7月29日 シングルス予選ラウンド
7月30日 シングルス1回戦・ダブルス準々決勝
7月31日 シングルス準々決勝
8月1日 シングルス準決勝・ダブルス準決勝
8月2日 シングルス決勝・3位決定戦
8月3日 ダブルス決勝・3位決定戦
会場 武蔵野の森総合スポーツプラザ
混合ダブルス 7月25~27日 予選ラウンド
7月29日 準々決勝
7月30日 準決勝
7月31日 決勝
会場 武蔵野の森総合スポーツプラザ
まとめ
ここまで東京五輪バドミントンの見どころ、ルールや注目選手などを紹介してきました。
世界的に上位を占めている中国に勝るとも劣らないのが、開催国である日本です。
男子シングルスでは桃田賢斗選手が世界ランキング1位をキープし続けていますし、女子シングルスでは、3位に山口茜選手、4位に奥原希望選手とメダル圏内に2人の選手が名を連ねています。
ダブルスでは、男子の嘉村・園田ペアがランキング上位で安定した活躍を見せていますし、女子は世界ランキング2位から4位までの3組が日本のペアです。
混合ダブルスでも渡辺・東野ペアが世界ランキング3位とこちらも表彰台に届きそうな位置にいます。
ここからの代表選考レースで注目となるのは、やはり女子ダブルスでしょう。
今シーズン結果を残し、現状世界ランキング2位の福島由紀・廣田彩花ペアに加え、3位の松本麻佑・永原和可那ペアは世界選手権2連覇の実績があります。
そして4位の松友美佐紀・高橋礼華ペアはリオデジャネイロ五輪に続く、女子ダブルス2連覇がかかる東京五輪です。
代表選考レースは2020年4月まで続きます。
その間の国際大会での成績によるポイントで世界ランキングが決定し、上位2組だけが東京五輪の舞台に立つことが出来ます。
女子ダブルスに関して言えば「開催国なんだし、何とかならないのか」とも思ってしまいますが、そこは勝負の世界。
残された期間でベストを尽くし、戦いきってほしいなと思います。
全5種目、全てでメダルを獲得することも夢ではないバドミントン日本代表。
2019年のラグビー日本代表のように、東京五輪で強烈なインパクトを残し、メジャースポーツの仲間入りを果たすような活躍を期待したいものです。
近年まれにみるほど役者はそろっています!
我々にできることは、ベストを尽くす選手の背中に風を送るだけですね!応援しましょう。