世界最強のヘヴィメタルバンドとしてメタル界のトップに君臨するIron Maiden(アイアン・メイデン)。メンバー自ら操縦する飛行機で世界中を飛び回るモンスターバンド、Iron Maidenの魅力をご紹介します。
2020年5月に約4年ぶりとなる来日公演を開催することを発表し、日本のファンを喜ばせたイギリス出身のヘヴィメタルバンドIron Maiden(アイアン・メイデン)。
首尾一貫してヘヴィメタルを貫き、世界中のファンから絶大な信頼を寄せられている彼らは、現在までに16枚のスタジオアルバムを発表し、総売上は1億枚を超えています。
名実ともに世界屈指のヘヴィメタルバンドだと言っても過言ではありません。
1975年に結成されて以降、約45年を経た現在もヘヴィメタル界のトップを走り続けている彼らの経歴や代表曲をご紹介していきます。
目次
Iron Maiden / アイアン・メイデン
Iron Maiden・メンバー
バンドの歴史の中で数多くのメンバーチェンジを経験しているIron Maidenですが、1999年以降は下記のラインナップで安定しています。
- エイドリアン・スミス / ギター
- ヤニック・ガーズ / ギター
- ブルース・ディッキンソン / ヴォーカル
- スティーヴ・ハリス / ベース
- デイヴ・マーレイ / ギター
- ニコ・マクブレイン / ドラム
結成当初からバンドに在籍しているのは、リーダーでベーシストのスティーヴ・ハリスだけとなっています。
また、ギタリストが3人在籍していますが、トリプル・ギター編成となったのは1999年以降のことで、デビューから1999年まではツイン・ギター編成でした。
ヴォーカリストのブルース・ディッキンソンの超人的な力強いハイトーン、ギターチームによる流麗なギターワーク、メインソングライターであるスティーヴ・ハリスの曲をぐいぐい牽引するようなバキバキとしたベースがIron Maidenのサウンドの特徴です。
スティーヴ・ハリスは主にベースを使って作曲をしており、「Iron Maidenの曲は、ベースラインを聴けばどの曲なのかわかる」という発言も残しています。
また、メンバーではありませんが、エディという怪物がIron Maidenのマスコットキャラクターとして知られています。
ゾンビのようなおどろおどろしい見た目のエディは、アルバムやシングルのジャケットに登場するのはもちろん、ステージに乱入して来るのもお約束になっています。
ツアー毎に登場する際の演出は変わりますが、メンバーと死闘を繰り広げた末にギターやベースで撃退されるエディの姿はコミカルで可愛さすら感じさせられます。
Iron Maiden・バンドの歴史
衝撃のデビュー~ポール・ディアノ脱退
1975年のクリスマス、ベーシストのスティーヴ・ハリスによってIron Maidenは結成されました。
Iron Maidenというバンド名は、中世ヨーロッパで使用されていたと言われる拷問器具「鉄の処女」が由来となっています。
結成当初はバンドメンバーが流動的でしたが、1978年にヴォーカリストのポール・ディアノが加入し、翌1979年にはデビューアルバム時のラインナップが揃うことになりました。
1978年末に自主作成した4曲入りのデモ音源が評判を呼び、EMIとレコード契約を結んだIron Maidenは、デビューアルバムの制作に取り掛かります。
1980年に発表したデビューアルバム『Iron Maiden』は、全英初登場4位を記録。
Iron Maiden自身がその火付け役となった新しいヘヴィメタルのムーブメント、New Wave Of British Heavy Metal(通称:NWOBHM)を牽引するシーンの旗手として注目を浴びることになります。
スピード感のあるヘヴィメタル然としたサウンドと複雑な曲展開、そしてパンキッシュなポール・ディアノの歌唱が荒々しさを加えたアルバム『Iron Maiden』は、リリースから40年近く経つ現在も非常に高く評価されています。
アルバムのリリース後にギタリストの交代があり、現在のラインナップにも名を連ねるエイドリアン・スミスが加入しています。
翌1981年には早くもセカンドアルバム『Killers』をリリース。
同作はデビュー作よりも順位を落としましたが、全英12位という結果を残しています。
この頃からポール・ディアノの薬物使用かがバンド活動に影を落とし始め、バンドは水面下で後任ヴォーカリストの選定を開始します。
『Killers』に伴うツアー終了後、ポール・ディアノはバンドから解雇されます。
ブルース・ディッキンソン加入~最初の黄金期
1981年9月、Iron MaidenはSamsonというバンドのヴォーカリスト、ブルース・ディッキンソンを新メンバーとして迎え入れることを発表しました。
1982年、ヴォーカリスト交代後初となるサードアルバム『The Number of the Beast』をリリース。
超人的な歌唱力を誇るブルース・ディッキンソンの加入によりバンドのサウンドはさらにスケールアップし、『The Number of the Beast』は全英1位を獲得する大ヒットとなります。
同作は現在までに全世界で1400万枚を超えるセールスを記録し、歴史的名盤として現在も世界中の音楽ファンに愛され続けています。
1982年末、ドラマーのクライヴ・バーが解雇され、後任としてニコ・マクブレインが加入。
以後約40年間、ニコ・マクブレインはIron Maidenの看板ドラマーとしてバンドの屋台骨を支え続けています。
一方、クライヴ・バーは難病の多発性硬化症を発症し、長年に渡る闘病の末、2013年に亡くなってしまいました。
解雇という形でクライヴ・バーと決別したIron Maidenですが、治療費を集めるためのチャリティコンサートを開催するなど、彼の晩年を献身的にサポートしたことは有名です。
『The Number of the Beast』の大成功で波にのるIron Maidenは、ここから最初の絶頂期を迎えることになります。
1983年リリースの『Piece of Mind』、翌1984年リリースの『Powerslave』は大ヒット作となり、本国イギリスだけではなくアメリカでの人気を確立することにも成功しました。
ワールドツアーも過去最大規模で敢行され、World Slaveryと題されたツアーでは13ヶ月で全28ヶ国を回り、延べ350万人以上を動員するという大成功を収めています。
1986年にリリースされたアルバム『Somewhere in Time』ではシンセベースなどを導入するという新しいアプローチを試み、一部のファンからは「こんなのはIron Maidenではない!」と否定的な意見が聞かれましたが、アメリカでもプラチナムを獲得するなど大きな商業的成功を収めています。
1988年リリースの『Seventh Son of a Seventh Son』ではその路線をさらに推し進め、初めてキーボードを導入した作品となりました。
『Somewhere in Time』と『Seventh Son of a Seventh Son』はIron Maidenの歴史における“問題作”として語られることが多かった作品ですが、現在では非常に優れたアルバムとして評価されています。
1982年の『The Number of the Beast』以降、アメリカ国内で4作連続のプラチナムを獲得してきたIron Maidenでしたが、『Seventh Son of a Seventh Son』はゴールド止まりとなってしまいました。
レコードの売り上げがすべてではありませんが、レコードセールスの面だけを考慮すると、『The Number of the Beast』から『Somewhere in Time』までがIron Maidenの商業的ピークだったと言うことができるでしょう。
黄金ラインナップ崩壊
1989年、長期間に渡ったツアーの疲れを癒すため、Iron Maidenは短い活動休止期間を設けます。
その余暇を利用し、ギタリストのエイドリアン・スミスは自身のソロバンドを結成し、アルバムを1枚リリース。
また、ヴォーカリストのブルース・ディッキンソンもソロ活動に着手し、1990年に初のソロアルバム『Tattooed Millionaire』をリリースしました。
休暇を終え、次作の制作のために再集結したIron Maidenですが、作品の方向性を巡ってリーダーのスティーヴ・ハリスとギタリストのエイドリアン・スミスが対立。
エイドリアン・スミスはそのままバンドを脱退してしまいます。
新メンバーとして採用されたヤニック・ガーズは、ブルース・ディッキンソンのソロアルバムに参加していたギタリストでした。
7年ぶりのメンバーチェンジを乗り切った彼らは、1990年に8枚目のアルバム『No Prayer for the Dying』をリリース。
シンセサイザーなどを導入した前2作から一転し、余分なものをそぎ落としたシンプルなサウンドとなった同作は全英2位を記録しました。
また、同作からはIron Maiden唯一の全英No.1シングルである“Bring Your Daughter… to the Slaughter”が生まれています。
1992年にリリースされた『Fear of the Dark』は全英1位のヒットを記録。
タイトルトラックである“Fear of the Dark”はファンからの人気が非常に高い楽曲で、イントロから大合唱になるなど、Iron Maidenのライヴにおけるハイライトのひとつとなっています。
メンバーチェンジ後、2枚のアルバムをリリースし、順調に活動を続けていると思われたIron Maidenですが、そんな彼らを突如として激震が襲います。
1993年、看板ヴォーカリストであるブルース・ディッキンソンが脱退を発表したのです。
脱退理由は「ソロとしてのキャリアを追求したい」というものでした。
ファンのためにお別れツアーを開催することになりましたが、バンド内の雰囲気は最悪だったようです。
スティーヴ・ハリスとブルース・ディッキンソンはメディアを通じてお互いを非難するなど、決して円満とは言えない脱退となってしまい、もう二度とIron Maidenで歌うブルースの姿は観ることができないと思われました。
ブレイズ・ベイリー加入~低迷期へ
バンド史上最大の危機を迎えた彼らは、新ヴォーカリストのオーディションを開始します。
その結果、白羽の矢が立てられたのはWolfsbaneというバンドで活動していたブレイズ・ベイリーでした。
1995年、新ヴォーカリストを迎えた初のアルバム『The X Factor』をリリース。
しかし、ブルース・ディッキンソン時代の実績を大きく下回る全英初登場8位という結果に終わってしまいます。
私生活で離婚を経験したばかりのスティーヴ・ハリスによる暗い雰囲気の楽曲が多かったことも一因ですが、前任者と比べて聴き劣りのするブレイズ・ベイリーの歌唱にも大きな批判が集まりました。
1998年、ブレイズを迎えて2作目となる『Virtual XI』で挽回を図りますが、全英初登場16位と惨敗し、過去最低記録を更新してしまいます。
また、Iron Maidenの歴史において、全世界での売り上げが100万枚に届かない初のアルバムという不名誉な結果となり、ブレイズ・ベイリーへの批判はさらに高まることになります。
1999年1月、バンドミーティングの場においてブレイズ・ベイリーの脱退が決定。
低迷期を脱するべく、新ヴォーカリストを探すことになりました。
ブルース・ディッキンソン復帰~新たな絶頂期へ
またしてもヴォーカリスト交代の岐路に立たされた彼らは、マネージャーであるロッド・スモールウッドの提案により、前任ヴォーカリストのブルース・ディッキンソンを呼び戻します。
脱退の経緯が険悪だっただけにスティーヴ・ハリスはブルースが申し出を受けるかどうか懐疑的だったようですが、意外にもブルースは復帰を快諾。
それに伴い、1990年に脱退したギタリストのエイドリアン・スミスもバンドに復帰することが決定し、Iron Maidenはトリプル・ギター編成となりました。
黄金期のラインナップで復活したIron Maidenは世界中のヘヴィメタルファンから熱狂的に迎えられ、2000年の復活アルバム『Brave New World』に伴うツアーも大成功。
2001年1月にブラジルで開催された音楽フェスティバルRock In Rioではヘッドライナーを務め、25万人もの大観衆に完全復活を印象付けました。
過去の恩讐を乗り越えて再集結した彼らは順調に活動を続け、新たなる絶頂期に突入しています。
2006年リリースのアルバム『A Matter of Life and Death』では初の全米トップ10入りを果たすなど、過去の実績と比較しても見劣りしないチャートアクションを記録しました。
2010年に発表した『The Final Frontier』は世界28ヶ国で1位を記録し、バンドの歴史においてもっともチャート面での成功を収めた作品となっています。
同作収録の“El Dorado”はグラミー賞のBest Metal Performance賞を受賞。
3回目のノミネートで初のグラミー賞受賞となりました。
2015年、ヴォーカリストのブルース・ディッキンソンが舌がんであることを公表。
同年9月にアルバム『The Book of Souls』を発売しますが、ブルースがパフォーマンスできる状態になるまでに時間が必要であることから、ツアー開始は翌年からとなりました。
収録時間92分、2枚組の大作となった『The Book of Souls』は濃厚な内容が絶賛され、全英1位を獲得。
ブルースも舌がんを克服し、ライヴ活動を再開しています。
同作に伴う来日公演では、両国国技館2日間を完売させる人気ぶりを見せてくれました。
2018年5月からは『Legacy of the Beast World Tour』と題されたツアーをスタート。
世界中でソールドアウトを連発している同ツアーは、2020年5月に日本に上陸予定です。
Iron Maiden・代表曲
ヘヴィメタルの歴史に残る名曲を数多く残してきたIron Maiden。
オススメ曲を選出するのは非常に難しいのですが、現在も続いている『Legacy of the Beast World Tour』で演奏されている楽曲の中からいくつかご紹介していきたいと思います。
Aces High
1984年発表の『Powerslave』収録曲。
ライヴではイギリスのチャーチル首相が1940年に行なった演説に続いて演奏されます。
2本のギターが絡み合うドラマティックなイントロにノックアウトされないヘヴィメタルファンはいないでしょう。
曲が走り出すと同時にスタートする流麗なツインリードパートでは、もう一心不乱にヘッドバンギングする以外の行動はありえません。
ブルース・ディッキンソンの超人的にパワフルな高音も冴え渡っており、「走れ。飛ぶために生きろ。生きるために飛べ」と勇ましく歌い上げられるサビは場内大合唱になるはずです。
Hallowed Be Thy Name
1982年発表の『The Number of the Beast』の最後を飾る7分間の大作です。
死刑を待つ囚人の視点から歌われたドラマティックな楽曲で、史上最高のヘヴィメタル曲として名前が挙がることも多く、ファンの間でも絶大な人気を誇っています。
物悲しくも美しいギターメロディ、後半でスピーディーに展開する構成、まさに非の打ち所のない名曲だと言えるでしょう。
ブルース・ディッキンソンのパフォーマンスは“絶唱”としか表現できない凄まじいもので、「肺活量どうなってるの!?」と心配になるほどのロングトーンは必聴です。
Fear of the Dark
1992年発表の『Fear of the Dark』の表題曲です。
ライヴ定番曲のひとつで、イントロのギターメロディを観客が歌い上げるのがお約束となっており、国によってはバンドの演奏が聴こえなくなってしまうほどです。
コール&レスポンスを要求される曲でもあるので、ブルース・ディッキンソンの「Fear of the dark, YOU!!!」に対しては「Fear of the dark!!!」と返しましょう。
ライヴでの予習のためにライヴバージョンもチェックしておくことをオススメします。
The Wicker Man
2000年発表の『Brave New World』収録曲。
黄金期のラインナップでの復活アルバムからの先行シングルで、「これぞIron Maiden!!」とガッツポーズしたくなるようなパワフルな曲調がファンを喜ばせました。
キャッチーなギターリフに流麗なギターメロディ、バキバキとした力強いベース、緩急自在のしなやかでパワフルなドラム、そして一聴しただけで彼のものだとわかるブルース・ディッキンソンのヴォーカル。
Iron Maidenの新たな時代の幕開けとなった“The Wicker Man”は、一時期ライヴのセットリストからは外れていましたが、『Legacy of the Beast World Tour』では再び演奏されるようになっています。
名盤の誉れ高い80年代の作品群はもちろんですが、2000年以降のアルバムも良作揃いなので、そちらも是非聴いてみてください。
Iron Maiden・来日公演
『Legacy of the Beast World Tour』で世界中を熱狂させているIron Maidenは、2020年5月に約4年ぶりとなる来日公演の開催を発表しています。
Ed Force Oneと呼ばれる専用ジャンボジェットで世界を回っている彼らですが、その機長はなんとヴォーカリストのブルース・ディッキンソン。
飛行機を所有する大物バンドは数あれど、メンバー自ら操縦してツアーを続けているのはIron Maidenくらいのものでしょう。
そんな彼らの来日公演は、現在のところ下記のスケジュールが発表されています。
早い段階でのソールドアウトが予想されるので、気になる方は今のうちにチェックしておきましょう。
【神奈川】
5月19日(火) ぴあアリーナ
OPEN: 18:00 / START: 19:00
5月20日(水) ぴあアリーナ
OPEN: 18:00 / START: 19:00
【大阪】
5月22日(金) エディオンアリーナ (大阪府立体育会館)
OPEN: 18:00 / START: 19:00
世界的なコロナウイルスの感染拡大により、残念ながら日本公演は中止が発表されました。