Van Halen(ヴァン・ヘイレン)というバンドをご存知でしょうか?
1978年にデビューするや否や、ロック・シーンに巨大な爪痕を残したアメリカの伝説的ハード・ロック・バンドです。
そのクールかつキャッチーなロックは本国アメリカのみならず世界中で愛された、彼らの楽曲を一度はどこかで耳にしたことのある人がほとんどではないでしょうか。
今回はこの伝説的ロック・バンド、Van Halenの魅力や偉大さ、そして素晴らしい音楽の数々を余すことなく紹介していきます。
目次
Van Halenの軌跡
Van Halenはエディ・ヴァン・ヘイレンとアレックス・ヴァン・ヘイレンの兄弟が中心となって結成されたロック・バンドです。
1978年にThe Kinksの名曲のカバー、”You Really Got Me“でデビューし、同年に1stアルバム”Van Halen“(邦題『炎の導火線』)を発表。すぐに大ヒットを記録し、人気バンドの仲間入りを果たしました。
当時のアメリカのロック・シーンではAerosmithやKissといったハード・ロック・バンドが人気を博していましたが、Van Halenはそうしたハード・ロックを影響元にしながらも、よりテクニカルな演奏によって注目を浴びます。
デビューの勢いそのままにアメリカン・ロック・シーンの頂点に上り詰めたVan Halenは、その後何度かのメンバー・チェンジを繰り返しながら活動を続けました。
以降もハード・ロックのレジェンドとして根強い人気を誇ったVan Halenですが、2000年代以降その活動は停滞することとなります。
そして2020年、長らくガンと闘病していたエディ・ヴァン・ヘイレンが65歳で亡くなってしまいます。
バンドの中心人物を失ったVan Halenですが、その輝かしいレガシーは数々の名曲と共に色褪せず音楽の歴史に残り続けています。
Van Halenのメンバー
ここからはVan Halenのメンバーを紹介していきます。
先ほども触れたようにVan Halenは何度かメンバー・チェンジをしているので、ここではデビューから大成功を収めるまで、いわば初期のラインナップを見ていきましょう。
エディ・ヴァン・ヘイレン(Gt.)
New EVH interview on the making of the band's album "1984" in the Feb 2014 issue of Guitar World. On newsstands now! pic.twitter.com/Oylyl69ihA
— Eddie Van Halen (@eddievanhalen) January 8, 2014
Van Halenの主役と言っていいでしょう、バンドの創設者でもあり看板ギタリストのエディ・ヴァン・ヘイレンです。
アメリカの音楽雑誌、ローリング・ストーン誌が選出した「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」では第8位にランク・インした、正真正銘世界最高峰のスーパー・ギタリスト。
そんな彼を象徴するのが、「ライトハンド奏法」と呼ばれる演奏法。
ギターは通常ピックや指で弦を弾くことで演奏しますが、エディは指板上の弦を指で押さえつけるようにして演奏するテクニックを取り入れます。
「ライトハンド奏法」自体はエディの登場以前から存在し、古くには戦前に「ライトハンド奏法」を演奏する映像もありますが、ロック・ギターの世界でここまで大々的に導入したのは彼が先駆者と言えます。
この「ライトハンド奏法」はこれまででは考えられない高速プレイを可能にし、多くのギタリストに影響を残しました。
惜しくも2020年にガンでこの世を去ってしまいましたが、紛れもなくロックの歴史に名を残す偉人の1人です。
アレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr.)
アレックス・ヴァン・ヘイレンはエディの実兄にあたる、Van Halen結成時からのオリジナル・メンバーです。
スーパー・ギタリストであるエディ・ヴァン・ヘイレンの影に隠れがちな存在ではありますが、彼もまた素晴らしいミュージシャンであり素晴らしいドラマー。
そのことを裏付けるように、「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のドラマー」では第32位に選出されています。
彼のプレイの中で特に素晴らしいのが、”Ain’t Talkin’ ‘Bout Love“という楽曲のイントロ。
この複雑なドラム・プレイはそれだけでクールですが、ギターの登場に向けてテンションを上げる素晴らしい役割を果たしています。
デイヴィッド・リー・ロス(Vo.)
You gotta stay hydrated folks..#DavidLeeRoth #DLR #DiamondDave #VanHalen #VH
📸: @PatrickHarbron pic.twitter.com/YwOIl6GACO— David Lee Roth (@DavidLeeRoth) March 1, 2020
Van Halenは活動の中で何度かヴォーカリストが変わっていますが、デビューからバンドの全盛期にかけて在籍していたのが、このデイヴィッド・リー・ロス。
ハード・ロックのヴォーカリストにありがちな金切り声のハイ・トーン・シャウトが持ち味というよりは、より骨太で明るい声質が特徴のシンガーです。
また、作詞家としてもバンドに貢献し、在籍時のほとんどの楽曲の歌詞は彼が書いています。
気分屋でありながら冷静なビジネス・マンとしても知られる彼の有名なエピソードが、世界ツアーの契約書の中に、「ツアー中、必ずM&M’s(有名なチョコレート菓子)を出すこと。ただし茶色のものは絶対にあってはならない」という文言を入れていたというもの。
よくあるロック・スターの破天荒なエピソードにも思えますが、実はここにはデイヴィッドのクレバーな目論見があります。
Van Halenのステージは巨大で、照明や機材には常に細心の注意を払わなければなりません。
そこで、M&M’sをチェックし、そこに茶色のものがあれば、そのプロモーターは契約書を隅から隅まで見ていないか契約を軽んじていると判断し、即座にステージの点検をするというのです。
このユニークなエピソードからも分かる通り、彼は聡明かつチャーミングなキャラクターの持ち主で、バンドのフロント・マントしてVan Halenの躍進に大いに貢献しました。
マイケル・アンソニー(Ba.)
堅実なベース・プレイでバンドを支えたのがベーシストのマイケル・アンソニーです。
他の3人は非常に個性的なミュージシャンですが、彼は決して音楽的に目立つことはなく、縁の下の力持ちとしてVan Halenのハード・ロック・サウンドに奉仕しました。
彼の貢献はベーシストとしてだけでなく、「キャノンマウス」(大砲のような口)のあだ名がつくほど特徴的なハイ・トーン・コーラスも重要です。
デイヴィッドのパワフルな歌声とマイケルのハイ・トーンのハーモニーは、Van Halenの明るく楽しげなサウンドを大いに彩っています。
余談ですが、彼はウィスキーのジャック・ダニエルの大変な愛飲家でも知られ、ステージでベース・ソロを演奏する際にはジャック・ダニエルのボトルを模したベースを演奏することでも有名です。
Van Halen入門のための名盤3選
いよいよここからはVan Halenの音楽に迫っていきましょう。
彼らの偉大なキャリアの中から厳選した3枚の名盤を、収録された名曲と共にご紹介します。
“Van Halen”(邦題『炎の導火線』)(1978)
Van Halen入門であればまずはこの作品から、記念すべきデビュー・アルバム、”Van Halen“です。
デビュー・アルバムにして既にVan Halenサウンドが確立され、隙のないハイ・テンションなハード・ロックが詰まった1枚。
まずは2曲目の”Eruption“。
2分にも満たない短い曲ですが、ヴォーカルは参加せず、なんと全編ギター・ソロ。
エディ・ヴァン・ヘイレンの紹介の時にも登場した「ライトハンド奏法」が炸裂しています。
この信じられない高速ギター・ソロには、多くのロック・ファンがノック・アウトされました。
続いて紹介したいのが4曲目の”Ain’t Talkin’ ‘Bout Love“。
アレックスの紹介の時にも語った、イントロのドラムがとにかくテクニカルで最高です。
緊張感のあるドラム・イントロに遅れて登場するエディのギターで、ボルテージはいきなり最高潮に。
この曲のギター・リフはVan Halenの数ある名リフの中でも最高峰とされていて、「最も素晴らしいギター・リフ」ランキングの常連でもあります。
“1984” (1984)
2枚目に紹介するのが、発売年をそのままタイトルにした、シンプル・イズ・ベストな”1984”。
天使がタバコを吸う印象的なアルバム・ジャケットも有名です。
本作の特徴はやはり、キーボードを多用したこれまでのVan Halenには見られなかったサウンド。
ちなみにキーボードの演奏はエディ・ヴァン・ヘイレンで、ギターにキーボードに大活躍しています。
このアルバムからは、まずはバンドの代表曲”Jump“をどうぞ。
5週にわたって全米1位を獲得した、バンド最大のヒット曲。
特徴的なイントロやサビのメロディは非常に有名で、聴いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
続いてもVan Halenを代表するヒット・シングル、”Panama” です。
先ほどの”Jump”と打って変わって、この”Panama”はこれまでのVan Halenらしいギターが主役のハード・ロック・チューン。
とにかく楽しげで能天気なこの楽曲は、Van Halenの魅力の一つである徹底的なまでの明るさを端的に表現した最高の一例と言えます。
“5150” (1986)
最後に紹介するのが、1986年リリースの”5150“。
数字4桁のタイトルが続きますが、このタイトルの由来はアルバムを録音したスタジオ名。
本作最大のトピックは、脱退したデイヴィッド・リー・ロスに代わるシンガーとして抜擢されたサミー・ヘイガーの存在。
リード・シンガーの脱退はほとんどのバンドにとって致命的な事件ですが、Van Halenはその困難を見事乗り越え、このアルバムもこれまでの作品と同じようにVan Halenの傑作の1つとして人気を集めています。
このアルバムに収録された彼らの代表曲といえば、この”Dreams“。
シンセサイザーのイントロはまるでバラードのようですが、Van Halenの出身地カリフォルニアを思わせる爽やかで力強い1曲。
サミー・ヘイガーの如何にもハード・ロック・ヴォーカリスト的なハイ・トーンの歌唱は、本作からの加入とは思えないほど堂々としています。
デイヴィッド・リー・ロスとは違ったタイプの歌声ですが、サミー・ヘイガーの個性もVan Halenとマッチすることがこの曲から伝わってきます。
もう1曲このアルバムから、”Why Can’t This Be Love“を。
突き抜けるような疾走感や明るさが特徴的だったこれまでの楽曲と異なり、ミディアム・テンポでヘヴィなグルーヴがバンドの新境地を思わせるナンバー。
“Dreams”もそうですが、先ほど紹介した”1984″で開拓したキーボードの導入がVan Halenのサウンドの重要なピースになっていることがこの曲からもうかがえます。
エディのギターが前面に出てこない構成というのも珍しいですが、Van Halenがエディ・ヴァン・ヘイレンのワンマン・バンドではないことを証明するようです。
最後に
今回はVan Halenの輝かしい軌跡、そして色褪せない才能と名曲/名盤の数々をご紹介してきました。
あまりに巨大な成功を収め、そして底抜けにキャッチーなハード・ロックを展開していたことで、時に彼らの音楽を軽んじる人もいます。
しかしVan Halenの音楽は後のロックの発展に多大な貢献を果たしましたし、エディ・ヴァン・ヘイレンの訃報の際にはファンのみならず、世代やジャンルを超えた多くの著名アーティストが彼の死を悼みました。
この記事で彼らの不滅のハード・ロックの魅力が少しでも伝わっていれば、そして1人でも多くの方にVan Halenに興味を持っていただけばとても嬉しいです。