アンダーグラウンドでありながら、ポップであることを念頭に多彩な音楽を繰り広げるアーバンギャルド。テクノを基調とした楽曲とメンヘラや、サブカルチャーを連想させる言葉を使った歌詞が、インターネットを中心に話題を呼びました。
今回は、既にアーバンギャルドを知っている人はもちろん、初めて彼らの楽曲に触れるという人のために、経歴や音楽について徹底解説します。2023年にはデビュー15周年を迎えましたが、まだまだ彼らの進化は止まりません!!
目次
アーバンギャルドって、どんなバンド?
アーバンギャルドは、ボーカルを務める松永天馬によって誕生しました。結成後はメンバーが定着しなかった時期もありましたが、2007年に浜崎容子が加入したことにより、本格的な活動を開始しています。
アーバンギャルドは「アーバン(都会的な)」と「アバンギャルド(前衛、先駆け)」が合わさって作られた造語。
メンバー構成は現在、松永天馬と浜崎容子によるツインボーカルと、キーボード担当おおくぼけいの3人で構成されています。また、彼らはアーバンギャルドの楽曲制作やMV、アートワークなども自ら行うセルフプロデュース集団として知られています。
アーバンギャルドのはじまり
アーバンギャルドは、松永天馬の呼びかけにより結成されましたが、通常、バンドの結成となると「大学時代に仲間と共に結成した」とか「ライブハウスで意気投合したメンバーによって結成された」という理由が挙げられることが多いと感じます。しかし、彼らの始まりは他とは少し違ったストーリーを持っていました。
松永天馬は学生時代から演劇や詩の朗読、自主映画の制作をしており、それらと並行して音楽に携わっていたのです。そこで彼が制作してきた多彩なアートをアーバンギャルドに詰め込みました。
彼の表現欲求に応えたのが、浜崎容子です。彼女が加入する以前は、アーバンギャルドは劇団をしており、その合間に音楽をするという形式だったそう。しかし、シャンソン歌手として活動していた浜崎容子の加入により、バンドとしての形ができあがってきたのです。
2015年には、キーボードのおおくぼけいが加入。彼は様々なアーティストのサポートを経験しており、今まで以上にアーバンギャルドの世界観は大きな広がりを見せました。
トラウマテクノポップ
アーバンギャルドの音楽は唯一無二の歌詞と、テクノやロック、ジャズなどジャンルレスな音楽が魅力で、自らの音楽ジャンルを「トラウマテクノポップ」と表現しています。また、メンヘラな歌詞やサブカルチャーな要素がふんだんに盛り込まれていることもアーバンギャルドの特徴。
しかし、彼らはポップであることにこだわりを持っており、血が付いた衣装を着て歌っていても、歌詞の内容がダークなものであっても、初めてアーバンギャルドの音楽を聞いた人たちでも聞きやすい音楽を求めました。
さらに、自身の音楽や表現方法が一定の層にしか受け入れられなかったとしても、それを世間や他人のせいにするのではなく、売れるかどうかを考えるより自分たちがいいと思った音楽を作品として発表していくことを優先しています。その強い意志があるからこそ、アーバンギャルドの音楽は多くの人に愛され、今なお進化し続けているのではないでしょうか。
精力的な活動
2007年に浜崎容子が加入して本格的な活動を開始したアーバンギャルドは、翌年4月に1stアルバム「少女は二度死ぬ」を発売。このCDはインターネットとライブ会場での販売でありながら2,000枚を完売するなど、大きな反響を呼びました。
「少女は二度死ぬ」は、2009年3月にインディーズデビューCDとして全国で販売されています。
2011年7月にシングル「スカート革命」でメジャーデビューを果たすと、その年の末に「COUNTDOWNJAPAN 11/12」へ出演し、アーバンギャルドにしか披露できないステージで観客を魅了しました。
2012年になると、今まで以上にワンマンライブを開催したり、全国ツアーを敢行、アーバンギャルドの音楽を様々な場所に届けています。さらに、2014年には彼らが主催したイベント「鬱フェス」を初開催。「心に闇を抱える、心の闇を表現する」というコンセプトに当てはまるアーティストたちが名を連ね、独特な雰囲気のステージが披露されました。
更なる進化
2018年にデビュー10周年を迎えたアーバンギャルドは、同年4月4日に10周年記念アルバム「少女フィクション」を発売。発売から4日後の8日には、バンド史上最大規模となる中野サンプラザでワンマンライブ「アーバンギャルドのディストピア2018 KEKKON SHIKI」を開催しました。
アーバンギャルドは、結成後からメンバーの入れ替わりを繰り返してきましたが、2019年3月にギタリストが脱退したことにより3人体制に。そして、2020年と2021年には新体制で「TOKYOPOP」「アバンデミック」「TOKYOPOP2」という3枚のアルバムを発売するなど、決してその歩みを止めませんでした。
さらに2022年には、翌年にデビュー15周年を迎えることを記念して「COUNTDOWN 15YEARS」と称したイベントを企画。その初回となったライブでは、リスナーからリクエストされた楽曲をランキング形式で披露しています。
また、2023年1月にはベストアルバム「URBANGARDE CLASICK 〜アーバンギャルド15周年オールタイムベスト〜」を発売し、3月には中野サンプラザで「15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023」を開催しました。
著名人とのコラボレーション
アーバンギャルドは、著名人ともコラボレーションを行っており、どんなジャンルのアーティストであってもいい意味で自身のカラーを崩しません。それがマイナスになるどころか逆に相乗効果となって、彼らの新たな魅力が発見されるのです。
今回は、アーバンギャルドとコラボレーションを果たしたアーティストを紹介しましょう。
筋肉少女帯
松永天馬が以前から筋肉少女帯のファンだったということもあり、現在では互いの楽曲に参加したり、対バンをしている間柄に。筋肉少女帯のボーカル大槻ケンヂがアーバンギャルドとコラボした「オーケンギャルド」のステージを披露したこともあります。また、2014年リリースのアルバム『鬱くしい国』で楽曲「戦争を知りたい子供たち feat.大槻ケンヂ」を制作しました。
上坂すみれ
上坂すみれ楽曲「すみれコード」をアーバンギャルドが提供したほか、アニメ「幼女社長」キャラクターソング「令和絶対命令 / セクレタリーの秘かな愉しみ」なども制作。上坂すみれは作品に登場する軽井沢ユキの声を務めています。
最新アルバム「メトロスペクティブ」発売
2024年2月28日、アーバンギャルドにとって約2年半振りとなるニューアルバム「メトロスペクティブ」をリリース。このアルバムは15年という月日を過ごしてきたアーバンギャルドが、改めて「自分たちの音楽はアンダーグラウンドである」と示した作品となっています。
今回は「メトロスペクティブ」に収録されている楽曲から3曲をピックアップして紹介。デビュー15周年という節目を超えたアーバンギャルドですが、進化しながらもいい意味で変わらない彼らの信念が込められた作品になっています。
メトロイメライ
ゆっくりとした曲調から特急列車のように変化していくスピードが、まるで歌詞に登場する幽霊列車を表現しているようです。歌詞全体はダークな印象を持ちますが、浜崎容子の歌声でポップな感覚にもなる、まさにアーバンギャルドの特徴を活かした楽曲ではないでしょうか。
廃線のため使われなくなった実際の電車の中で撮影されたMVも必見です!
Sick Sick シックスティーン
15周年記念公演を終えたあとで「16年目」と「16歳」がリンクして完成した楽曲。歌詞には「本気(ガチ)」や「タイマン」「無印良品」といったヤンキーや若者が日常的に使用する言葉が散りばめられており、言葉を生業とする松永天馬のセンスが感じられます。
りぼん曼陀羅
曲調が目まぐるしく変わり、曼荼羅のような複雑さを感じる楽曲。しかし、聞けば聞くほど楽曲の世界にのめり込んでしまうような中毒性を持っています。また、和テイストな音楽とボカロのような歌い方も特徴で、多くの層に響く楽曲に仕上がっているのではないでしょうか。
メンバー紹介
浜崎 容子
- 生年月日:6月30日
- 担当:ボーカル
シャンソン歌手としての活動歴もあり、アーバンギャルドには2007年に加入しました。歌だけではなく作曲・編曲を担当しており、ソロとしても活動中。
また、コラムの執筆やモデル、ナレーションを行ったり「自分を赦す(ゆるす)服」をコンセプトとしたファッションブランド「FORGIVE ME」をプロデュースするなど、多彩な活躍を見せています。
松永 天馬
- 生年月日:8月12日
- 担当:ボーカル
アーバンギャルドでは作詞・作曲だけではなくアートワーク、MV、詩の朗読などを担当し、まさに「アーバンギャルドの頭脳」という言葉が似合うメンバー。
さらに、アーバンギャルドと並行してソロとしても活動しており、その他にも俳優や作家、映画監督など幅広い活動で様々な層に認知されています。
自作の詩などを朗読し、どちらの表現が観客に響いたかを競う「詩のボクシング」に出場経験があり、多数の優勝経験を持っているほど。
おおくぼけい
- 生年月日:10月12日
- 担当:キーボード
学生時代から曲作りを開始しており、現在ではアーバンギャルドだけではなくアーティストのサポートや映画、演劇の音楽を作曲・編曲することも。多くの音楽に触れてきたからこそできるフリー・インプロビゼーション(即興演奏)が魅力です。