帰ろう – 藤井風 | 死生観を問いかける名曲を徹底解説! 歌詞とMVに秘められた想いとは…?

帰ろう – 藤井風 | 死生観を問いかける名曲を徹底解説! 歌詞とMVに秘められた想いとは…?

新進気鋭のシンガーソングライター・藤井風(ふじい かぜ)。幼少期から多種多様な音楽と触れ合ってきた経験を活かし、非常に洗練されたサウンドを奏でることを得意としています。

そんな藤井風が2020年5月20日にリリースした1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』。その収録曲の「帰ろう」が大きな話題となりました。

「帰ろう」は何を表現した楽曲なのか。今回は歌詞に込められた意味やMVの演出から切り取って解説していきます。藤井風をまだ知らない、もっと知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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「帰ろう」とは

藤井風「帰ろう」は、2020年5月20日にリリースされた1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収録されている曲の一つです。

デビュー曲「何なんw」と未発表曲を含めた計11曲の最後のトラックを飾る同楽曲。モダンな雰囲気で包まれ、メッセージ性の強さに大きな反響を呼びました。

楽曲のMVが2020年9月4日23:00にYouTubeでプレミアム公開。MVの制作には椎名林檎、東京事変、Perfumeの映像などを手がけてきた児玉裕一が携わりました。

一本道を車輪の付いたソファを押しながら歩く老若男女と藤井風。その前衛的な演出の数々は楽曲の良さを切り取っただけでなく、映像だけでしか伝わらないメッセージが強く込められているものでした。

現在公開されているMVは1200万回を超え、ファン以外にもこの楽曲に胸打たれた人は多いようです。藤井風はこの反響に全ての曲を平等に愛していると前置きしながら、今回の楽曲に関して「この楽曲を出すまでは死ねない」と熱弁。「大きな力を持った曲だと認めざるを得ない」と評価しています。

「帰ろう」の歌詞に込められた意味を解説

誰もが辟易とした日々を送る中でリリースされたアルバム『HELP EVER HURT NEVER』は、登場僅かで音楽チャートにおいて1位を獲得。デビューから間もない藤井風の音楽性はまたたく間に多くの人に突き刺さりました。

そしてそのアルバムにある「帰ろう」は特に注目され、人々に考える時間を与える要因となりました。では、この楽曲にはどのような力があるのか。曲に込められた想いや意味を筆者独自の視点で解説していきたと思います。

死と生の曖昧さ

あなたは夕日に溶けて 私は夜明けに消えて
もう二度と 交わらないのなら
それが運命だね

https://www.youtube.com/watch?v=goU1Ei8I8uk

そんな出だしで始まる「帰ろう」。この歌詞だけで見ると日常風景の一部を切り取った内容。「あなた」「私」にスポットを当てた失恋ソングのように思えます。

しかし、歌詞を読み進めていくとところどころに非現実的な描写があります。これは「生」なのか、それとも「死」を意味するのか。その曖昧さはあの世とこの世を隔てる「三途の川」を想像させます。

自由を渇望するかのような


「忘れて・流して・吹き飛ばそう・何も持たずに」など、この楽曲からは自由を渇望するような単語が多く並んでいます。自由とは、何かを手放すことと言えるでしょう。しかし、何かを手放すことはそれとなく躊躇するものです。しかし、歌詞からはそれを感じません。

あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう

https://www.youtube.com/watch?v=goU1Ei8I8uk

その代わり「もうどうでもいいの」と、投げやりな言葉。先程の項目で三途の川のようであると記載しましたが、今まさにその川の途中なのかもしれません。死へと向かう今、悩むことは無駄であり、必要がないと解釈することもできます。

そうすると「生」と「死」ではなく、「生」から「死」をこの楽曲は歌っているのかもしれません。

本来の場所に帰ること


この楽曲のタイトルでもあり、歌詞にも多数並べられている単語「帰ろう」。この楽曲が死生観を歌っているのであれば、この単語も単なる家路につくという解釈には収まらないと思います。

「生寄死帰(せいきしき)」という言葉があります。これには「死」は人が本来いるべき場所に「帰る」ことであるとされており、「生は寄なり死は帰なり」と読むこともできます。

ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう

https://www.youtube.com/watch?v=goU1Ei8I8uk

これは最後のパートの歌詞です。残された者に何かを残し、そして空っぽのままで「死」へと向かおうという意味合いにもなります。

捨てられることは与えられること


この楽曲の大きなテーマに「手放す」があります。手放すとは「モノ」であったり「命」としても捉えることができるでしょう。それは捨てると同じことですが、しかし曲調を聴く限り、それほど悲しい曲であるとは思いません。

「手放す」がテーマにあるこの楽曲ですが、そもそも手放したり捨てたりするには、まず必要なことがあります。それは与えられることではないでしょうか。

捨てるためには与えられることが必要であり、与えられていなければ捨てることすらできません。それは命も同じであり、生を与えられたからこそ生を捨て、残された人たちに何かを残すことができる。

それが子孫へと受け継がれ、その子孫からさらにその子孫へと与えられる。その解釈で言えば、この楽曲の本質には「繋がり」「糸」などが隠されているのかもしれません。

死生観とは人類にとって永遠のテーマの一つであると思います。今回ご紹介したのも、筆者独自の解釈によるものです。ここには記載されていないことが、この「帰ろう」にはまだ沢山詰まっています。皆さんもぜひ歌詞に注目して聴いてみてください。

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