マンチェスターで結成された、イギリスを代表するテクノロックバンド「New Order」
様々な曲で世界的に人気を得て、ツアー中の行動の破天荒さは「正真正銘のパーティーピープル」と言われるほどなんです。
今回はそんな大人気テクノロックバンド「New Order」についてご紹介していきます!
目次
New Orderってどんなバンド?
The BeatlesやThe Rolling Stonesを筆頭に、数多くの伝説的ロックバンドを輩出したイギリス。
その中でも、特に重要なバンドを数多く生んだ都市のひとつがマンチェスターです。
イギリス北西部に位置するマンチェスターからは、The Smiths、The Stone Roses、OasisなどUKロックシーンに多大な影響を与えたバンドが次々と誕生しました。
今回ご紹介するNew Orderもそのうちのひとつです。
New Orderの前身バンドが結成されたのが1976年のこと。
ギタリストのバーナード・サムナーとベーシストのピーター・フックは、マンチェスターで観たSex Pistolsのライヴに感銘を受け、即座にバンドを結成することを決意します。
以前からの知人だったイアン・カーティスをヴォーカリストとして迎えたバンドは、Warsaw(ワルシャワ)と名乗って活動を開始します。
結成当初は別のドラマーと活動していたWarsawでしたが、1978年に新ドラマーとしてスティーヴン・モリスを迎え、バンド名をJoy Divisionに変更します。
ナチスドイツの強制収容所内にあったとされる慰安部門がバンド名の由来となっています。
パンクからスタートしたJoy Divisionは、次第に自身のサウンドを確立していき、陰鬱で緊張感のある独自のサウンドに到達しました。
彼らはポストパンクというジャンルを生み出した重要なバンドのひとつだと言えるでしょう。
また、ヴォーカリストのイアン・カーティスの書く文学的な歌詞も高く評価されています。
1979年にリリースされたデビューアルバム『Unknown Pleasures』は大ヒットにこそなりませんでしたが、各方面から非常に高い評価を受け、Joy Divisionは将来有望な若手バンドとして注目を浴びることになります。
人気バンドThe Buzzcocksの全英ツアーの前座にも抜擢され、メンバー達は音楽だけで食べていくことが可能となり、その前途は明るいと思われました。
しかし、Joy Divisionを突然の悲劇が襲います。
1980年5月18日、初の全米ツアーに出発する前日に、イアン・カーティスが自ら命を絶ってしまったのです。
彼の死後にリリースされたシングル“Love Will Tear Us Apart”は全英13位、セカンドアルバム『Closer』は全英6位とヒットを記録しますが、バンドは大きな岐路に立たされることになります。
イアンの死後、残されたメンバーはバンド継続を決意します。
しかし、イアンの生前に交わしていた「メンバーがひとりでも欠けたらJoy Divisionの名前は使わない」という約束を守り、別の名義で活動を継続することになります。
活動再開後初めてのライヴをバンド名無しで敢行した彼らでしたが、イギリスの新聞The Guardian紙に掲載されていた記事にヒントを得てNew Orderと名乗ることにします。
後任ヴォーカリストは迎えずに活動を継続することにした彼らは、リハーサルで各メンバーが歌ってみた結果、ギタリストのバーナード・サムナーがヴォーカリストとしての役割を担うことにします。
また、ギタリスト兼キーボーディストとしてジリアン・ギルバートを加入させます。
彼女の加入により、New Orderのラインナップが完成しました。
ロックサウンド、シンセポップ、ダンスミュージックなどの要素を見事に融合させ、ロックシーンとクラブシーンの双方から熱い視線を集めたNew Orderはヒット作を連発。
デビュー作こそ全英最高30位止まりでしたが、セカンドアルバム『Power, Corruption & Lies』以降は傑作を次々と世に送りだし、アメリカでの成功まで手中に収めることなります。
1993年リリースのアルバム『Republic』を最後にNew Orderは活動を休止し、各メンバーはサイドプロジェクトに軸足を置いて活動を始めます。
5年後の1998年、マネージャーの提案によりメンバーが再集結し、ライヴ活動を再開することになりました。
2007年に再び活動を休止しますが、2011年に復活を果たし、現在も精力的に活動を続けています。
現在までに10枚のスタジオアルバムを発表しているNew Orderのメンバーについてもご紹介していきましょう。
New Orderのメンバーは?
ヴォーカリストの死という悲劇を乗り越えて結成されたNew Order。
そのメンバーについてご紹介していきます。まずはデビュー当時のメンバーから見ていきましょう。
バーナード・サムナー / ボーカル、ギター、キーボード
通称バーニー。
作詞のほとんどを担当している。
ロックバンドにおけるシーケンサーの使用を一般的にした人物のひとりとしても評価されている。
ライヴでの歌唱が不安定だと言わることも多いが、ヘタウマという概念を超えた魔力を持つ歌声でファンを魅了して続けている。
ピーター・フック / ベース、パーカッション
通称フッキー。ストラップを伸ばして低く構えたベースから奏でられる、高音域のメロディアスなフレーズが印象的。
2007年に「バーナードとは一緒に活動していない。これはバンドの終わりを意味するものだ」と解散を宣言しますが、残されたメンバーはこれを否定。
ピーターが脱退したものとして活動を継続しています。
ピーターとNew Orderの確執は根深く、2015年には法廷闘争にまで発展しますが、2017年に和解が成立したと伝えられています。
スティーヴン・モリス / ドラム、キーボード
「機械的」とも評される、正確無比なドラミングで知られる卓越したミュージシャン。
まだ一般的ではなかったドラムマシーンにも興味を持ち、生のドラムとドラムマシーンのビートを組み合わせるという手法をバンドに持ち込んだ人物です。
メンバーのジリアン・ギルバートとは夫婦で、ふたりの娘さんの父親でもあります。
ジリアン・ギルバート / キーボード、ギター
Joy DivisionからNew Orderへの移行期に「バンドのラインナップを完成させる人物」として、バンドのマネージャーからの推薦によって加入。
当時はスティーヴン・モリスのガールフレンドでした。
難病に罹ってしまった娘さんの看護をするため、2001年以降はバンド活動から離脱。
夫であるスティーヴンもその役割を申し出ましたが、ジリアンは「私の後任を探すのは、あなたのそれを探すよりもずっと簡単でしょ?」と答え、彼をツアーに送り出したそうです。
2011年に晴れてバンドに復帰しています。
ここまでが結成当初のメンバーです。
前述の通り、ベースのピーター・フックは2007年にバンドを脱退しています。
また、キーボードとギターを担当する紅一点ジリアン・ギルバートも家庭の事情のため、約10年に渡ってバンドを離れた時期がありました。
ふたりの穴を見事に埋めてくれたミュージシャン達をご紹介しましょう。
フィル・カニンガム / ギター、キーボード
2001年からバンドに参加。
子育てのためにバンドを離脱していたジリアン・ギルバートの代理としての参加でしたが、現在は正式メンバーとして活動しています。
Marionという有名バンドの創設メンバーのひとりでもあります。
トム・チャップマン / ベース、シンセサイザー
2007年にバンドを脱退した、ピーター・フックの後任として2011年より加入。
New Orderの活動休止期間にバーナード・サムナーがやっていたBad Lieutenantというバンドでベースを弾いていた人物です。
ちなみにBad Lieutenantにはさきほどご紹介したフィル・カニンガムも参加していました。
New Orderの名曲3選
結成から約40年、多くの名曲を世に送り出してきたNew Order。
そんな彼らの絶対に聴くべき名曲をご紹介したいと思います。
Blue Monday
New Orderの大名曲として真っ先に名前が挙がるのがこの曲でしょう。
ファーストアルバムではJoy Divisionの影響下に囚われていたNew Orderでしたが、1983年5月にリリースした“Blue Monday”で見事にその呪縛から脱却してみせました。
シンセサイザーやドラムマシーンなどのテクノロジーを導入し、ダンスロック的な方向へ舵を切ったのです。
その試みは見事に成功し、“Blue Monday”はクラブシーンを中心に大ヒット。
全英12位を記録するスマッシュヒットとなります。
その後、同曲は一度チャートから姿を消しますが、セカンドアルバム『Power, Corruption & Lies.』リリース後にチャートを急上昇します。
同アルバムに“Blue Monday”が収録されていないことを知った人々が、シングルを買い求めたことがその理由でした。
再びチャートインした“Blue Monday”は、最終的には全英9位まで上昇。
1枚のシングルが同年に2度ヒットするという現象を引き起こしました。
ちなみに“Blue Monday”というフレーズは曲中に登場しないことでも知られています。
曲を書いていた当時、ドラマーのスティーヴン・モリスが読んでいた『チャンピオンたちの朝食』(原題:Breakfast Of Champions or Goodbye Blue Monday)という小説からヒントを得たものだそうです。同作はブルース・ウィリス主演で『ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ』というタイトルで映画化もされています。
The Perfect Kiss
“The Perfect Kiss”は1985年リリースのサードアルバム『Low-Life』からのシングル曲です。
チャート上の最高位は全英46位と冴えないものでしたが、ファンの間では非常に人気の高い楽曲となっています。
“Blue Monday”が気に入った方なら絶対に好きになってもらえるでしょう。
スウィートなヴォーカルやダンサブルな曲調、そして“The Perfect Kiss”というタイトルからは想像できませんが、歌詞は結構シリアスで暗いトーンを帯びています。
自殺してしまったイアン・カーティスを連想させるような箇所もあり、歌詞を読みながら聴くと印象がガラッと変わるかもしれません。
この“The Perfect Kiss”はいくつかバージョン違いがあり、フルバージョンは9分近くの大作となっています。
約5分程度に編集されたバージョンが一番手に入りやすいのですが、それが気に入ったら是非フルバージョンも探してください。
Crystal
80年代の楽曲ばかり紹介すると、「なんだ。良いのは昔だけか…」と誤解されそうなので、2000年代に入ってからのものもご紹介しておきましょう。
“Crystal”は2001年のカムバックアルバム『Get Ready』のリードシングルとしてリリースされ、全英8位を記録するヒットとなりました。
その甲斐もあり、1993年以来のアルバムリリースとなった『Get Ready』は全英6位まで上昇し、イギリスとフランスではゴールドディスクを獲得しています。
“Crystal”の最大の特徴は、美しいイントロの余韻を打ち消すかのように鳴り響くビッグなギターサウンドでしょう。
New Orderを「踊れるシンセポップグループ」などと思っている人が聴いたらその場で腰を抜かしそうなロックサウンドを堪能できる1曲です。
ワイルドなロックが好みの方は『Get Ready』から聴いてみるのもいいかもしれません。
2020年3月には来日公演
これまで幾度も来日を果たしているNew Order。
2020年3月には8度目となる来日公演が予定されています。
New Orderの名曲はもちろん、Joy Division時代の楽曲の演奏も予定されており、彼らの歴史を初期から振り返る決定版的な公演になるかもしれません。
現在予定されている公演は下記の通りです。
- 2020/3/3(火) 新木場 STUDIO COAST
- 2020/3/4(水) 新木場 STUDIO COAST
- 2020/3/6(金) Zepp Osaka Bayside
東京公演には、New Orderの大ファンであることを公言する、石野卓球のゲスト出演が発表されています。
また、東京公演2日目および大阪公演には、中国のインディーバンドSTOLENの出演も併せて予定されており、こちらも目が離せません。