「表面的でない心の奥にある喜怒哀楽を形にした音楽を創っていく。」をコンセプトに、言葉とバンドサウンドにこだわった音楽を作り続けるロックバンド・アンダーグラフ。
2024年にはメジャーデビュー20周年を迎え、ベストアルバム制作に関連したクラウドファンディングの実施やアニバーサリーライブの開催など、さまざまな活動が目白押しだ。
特にベストアルバムでは、世代を超えて多くの人に愛されている楽曲『ツバサ』をはじめ、往年の人気曲も再録音を行うという。
20年の活動の中で彼らは何を思い、どこへ向かうのか。
デビュー曲『ツバサ』に対する思いやベストアルバム制作に関するエピソード、ライブへの期待、バンドのこれからについて、今回はボーカル・ギターを担当する真戸原直人にインタビューを行った。
目次
アンダーグラフ、メジャーデビュー20周年記念インタビュー
――改めて振り返ると、この20年はどんな道のりでしたか?
あっという間と言えばあっという間ですし、いろんなことがあったなと。20年って結構、一時代が完全に終わったなっていう感じだったので、よく続けてきたなっていう印象ですね。
――10周年、15周年を迎えたときとはまた違った気持ちということでしょうか?
10周年の時は子どもが10歳になったような感覚と言うか、まだまだ思春期だなみたいな感じもあったんですけど、20年ってもう大人なんで、成人になったなという気持ちもありつつ、また生まれ変わったような気持ちもあります。
――活動の中で特に印象に残っている出来事などはありますか?
1番はメンバーが1人脱退したので、それが2012年のことだから8年目ぐらいなんですけど、そこからもう12年。20年目になると、もう3人になってからのほうが長いんだなって感じますね。
――3人での活動、本当に大変なことも多かったのではないかと思います。
単純に、僕が彼の分のギターソロを覚え直さなくちゃいけなかったので、演奏面で大変なことはありましたね。彼が作ってきたフレーズを僕が覚え直してライブで弾いたりとか、あとはコーラス部分とかも担ってたので、コーラスはベースの中原がやったりとか。4人で100パーセントでやっていたところを、3人で120パーセントずつやるって決めてスタートしたので…。1つタイヤがなくなって、4輪車から3輪車になって、でもバランスをなんとか3人で取りながら進めてきたって感じで、バランスを取るところが1番難しかったかもしれないです。
――現在、ベストアルバム制作のためにクラウドファンディングを実施されていますが、今回なぜクラウドファンディングを企画されたのでしょうか?
クラウドファンディング自体はもう4回ぐらいやっているんですけど、最初はみんなと一緒に音楽作りたいなっていう気持ちで始めました。さっきの話じゃないですけど、3人で120パーセントずつ力を出し合っても400パーセントにはならないので、残りの分はみんなに支えてもらおうという気持ちがあったんです。
それに、学生の頃から僕は「このアーティストの中に自分が入り込んだら、どうなるんだろう」ってよく想像をしていて、ライブも「いきなり呼ばれたら歌えるかな」とか、そんなこと想像しながら観ていたので、そういうのを自分たちでやれるようになったら楽しいし、ファンの方と一緒に作るのって面白いんじゃないかって思って始めたのがきっかけです。
――ファンの方にとってもすごく嬉しい企画だと思います。
そうですね。最初に実施したのが3、4年前の話なんですけど、実際にやったらみんなめちゃくちゃ喜んでくれました。「一緒に音楽を作れるなんて思ってなかった」って感じだったので、今回のベストアルバムでは、『ツバサ』っていうみんなにアンダーグラフを知ってもらった曲を、応援してくれた人や支えてくれた人たちと録り直そうと思って企画しました。
――『ツバサ』はなぜ今、再録音しようと決められたのですか?
デビュー当時と今では(メンバー脱退を経て)ギターが変わってしまっているので、ギターを録り直したい気持ちや今のアンダーグラフを残したいなという気持ちが1番でした。
あと、実はだいぶ前から『ツバサ』だけじゃなく色々な曲の再録音をしてみたいなとは思っていたんですけど、そのタイミングで『ツバサ』を最近アニメに使っていただいて(※『無職転生Ⅱ~異世界行ったら本気だす~』第15話ED曲として声優・若山詩音がカバー)、またみんながすごく聴いてくれているなって感じたので、それなら今改めて録り直してみようかなって思ったのが理由です。
レコーディングの技術なんかも20年前とは全然違うので、それも使ってやってみたいなとか、今やったらどういうふうに演奏するのかなとか、色々気になっています。ただ、アレンジに関しては僕らもめちゃくちゃ気に入っているので、アレンジはそのままで録り直しをしようと思っていますね。
――『ツバサ』はメジャーデビュー曲でありながらアンダーグラフを代表する楽曲でもあります。リリースから20年が経った今、改めて曲への思いをお聞かせください。
もう20年連れ添ってる曲なので、めちゃくちゃ嫌いな時もありました(笑)
新しい曲を作っても評価されないですし、フェスで「一発屋だ」って言われたこともありましたし、なにより自分で作詞作曲をしているので、『ツバサ』以上の曲が作れていないことにもどかしさを感じていたこともありました。もともとはめちゃくちゃ好きな曲として入ってるんですけど、途中で倦怠期を迎えて、1度離れようと思ってライブでもやらない時期があったんです。でも、ここ最近は感謝しかないですね。本当にこの曲があって良かったと思います。
――心境が変化したきっかけはなんだったのでしょう?
『ツバサ』をライブでやらないでいたら、西城秀樹さんに怒られたことがあったんです。「俺も『YOUNG MAN』歌うのが嫌なときもあるけど、歌い続けてるんだよ」って。『YOUNG MAN』なんて誰もが知っている曲じゃないですか。僕がライブを観に行ったときも毎回やってくれていたので、やるの嫌じゃないんかなとか思ってたんですけど、「そりゃ嫌な時もあったけど、抜けきったんだ」って言われて、それもそうだなって。もっと大事にしてあげなきゃいけないなって思うようになりました。今は曇りなく愛してあげられる曲になって、ライブでも演奏していますね。
――西城秀樹さんとそんなやりとりが…それはいつ頃だったのでしょうか?
2008年に発表した『ジャパニーズロックファイター』という曲のミュージックビデオに出演いただいたことがあって、そこから仲良くさせてもらっていたんです。何度か一緒に食事したりとか、ライブに招待いただいたりとか、そういう交流の中でですね。
ステージに立ってる姿を見ると、どうやって立ち続けることができるんだろうとか、すごく勉強になるんです。一般的には芸能人のイメージが強いかもしれませんけど、本当はドラマーでバンドマンですし、そういう生き様も含めて教えてもらいました。
――続いて、アルバムの収録内容について聞かせてください。2020年にも結成20周年を記念したベスト盤をリリースされていますが、違いを意識された点はありますか?
前回のベストアルバムはデビューから2020年までのものを収録しているんですけど、そこから4年の間でミニアルバムをたくさんリリースしたので、今回はそこを中心にしながら、再録音したい曲を収録して、新曲も入れてと盛りだくさんな形にしました。
僕自身もショックを受けた経験があるので、「ベストアルバム2枚持ってるけど、ほぼ同じ内容じゃん」って感じにならないようにしたいと思って、なるべく曲が被らないようにメンバーと相談して決めています。
――その基準ですと、今回収録される『遠き日』や『風を呼べ』は例外な感じもしますね。
この2曲は本当にみんなに長く愛してもらっている楽曲で、『遠き日』は韓国映画の「私の頭の中の消しゴム」とタイアップしたので韓国の方々にも聴いてもらっている曲ですし、『風を呼べ』はアニメ「弱虫ペダル」のED曲として初めてアニメに書き下ろしをした楽曲だったので、このタイミングで録り直してみようと思って入れました。
実は『風を呼べ』はアニメにちなんで、演奏に自転車のベルを使おうと思っていて。ラップも、前回は声優の森久保祥太郎さんにお願いしたんですけど、今回は自分で録るつもりです。ライブでは自分で歌ってるので、やってみたいなって色々考えてますね。
――どんなアレンジになるのか楽しみです!
収録されるそのほかの楽曲で、特に印象に残っている曲はありますか?
印象的になるはずの曲がありまして…『蘇生法』って曲のミュージックビデオを新しく撮るんですよ。場所が僕らの地元・枚方にある「ひらかたパーク」っていう遊園地で、今月の18日に撮影があるんで、記事が出る頃には思い出に残る映像が撮れていると思います(笑)(※取材は7月12日に実施)
――なるほど、これからのお楽しみですね(笑)
そうですね。あとは…全部に思い出があると言えばそうなんですけど、(収録リストを見て)パッと浮かんだのが『グリーフを越えて』ですね。この曲を制作したのがちょうどコロナの真っ最中で、ライブもできないし、楽曲制作しかできない状況だったんです。その時に、医療従事者の方々に僕らのベストアルバムのオルゴール版を寄付させていただく機会があって。医療従事者の方々って人の死を乗り越えてでも仕事をしなくちゃいけないじゃないですか。それでグリーフ(悲嘆、特に愛する人と死別する悲しみを指す)という単語を使おうと思って、コロナ禍の悲しみに包まれた混沌とした日々の中で作った曲なので、今でもそのときのことが印象に残っていますね。
――アルバムには新曲も入るということですが、どんな楽曲になっているんでしょうか?
一言で言うと、めちゃくちゃテンポ速い曲です。ミックスエンジニアに希望を出すときにメタル系の曲を出したんです。ちょっと重いサウンドで、今までのアンダーグラフにないような面白い曲にしようと思って。そっちの路線に行こうとしているわけじゃないんですけど、今までで1番悪いアンダーグラフが聴けます(笑)
――言われてみれば、メタルはアンダーグラフのイメージにはないかもしれないです。
メンバーはお酒もそんなに飲まないですし、夜遊びもしなくて、いたって真面目というか、普通なんですけど、見た目が全然悪くない感じのバンドの曲がめちゃくちゃ重たいって面白いじゃないですか。ファンの方にとっても斬新なものになるといいなと思って作りました。
基本うちはベースが指弾きなんですけど、今回は速いのでピックを使ってます。そういう演奏法の部分も工夫しながら、遊び心で作った曲です。
――ストリートライブ等、メジャーデビューをされる前からライブ活動に力を入れてこられたと思いますが、アンダーグラフにとって「ライブ」とはどのような存在ですか?
本当は「命です」とか言いたいんですけど、僕らにとっては「お出かけ」ですね。ずっと家にはいれないし、出かけていって友達と会いたくなることってあるじゃないですか。それがないと心を病みますし、外にずっといても病むので、楽曲制作をして、自分たちの時間をしっかり貯めて、皆に会いに行くっていう感じですね。ライブがあるってワクワクします。
――ファンの方も「ライブ」という非日常にお出かけするイメージがあると思うので、そこの気持ちが合致しているんですね。
同じだと思います。デビューしたての頃はツアーを回りすぎて「今自分がどこにいるのか分かんない」みたいなこともあって、仕事感が強かったんですけど、最近はそうでもなくて。フェスだとワクワクする遊園地に行くような感覚ですし、ワンマンは家族がたくさん集まる場所に帰っていく、会いに行くっていうような、そういうお出かけに近いですね。
――長年ライブタイトルにもなっている「僕らは変わらずに、変わり続ける旅をする。」にちなんで、これまでの20年で全く変わらなかったものはありますか?
どこに行くにも移動は1台の車、っていうのは昔から変わってないですね。メンバーと色々な話ができるので、僕は移動中の空間も結構好きで、なるべく一緒に移動するようにしています。
あと個人的には、デビューの頃とまったく同じ体重にしようと思って、今めっちゃ走ってます。「20年間変わらなかったものはなんですか?」って絶対いろんなところで聞かれると思うんで(笑) 9月22日のライブで「デビュー日とまったく変わってないです」って言いたいんですよね。
――20年経っても体型が維持できていたらシンプルにカッコイイです(笑)
音楽的な部分でもなにかあったりしますか?
変わってないもので言うと、インディーズ時代に買ったギター1本を使い続けてることですね。海外に行くときはちょっと置いていくこともありますけど、アコースティックギターは基本1本です。
――ミュージシャンの方ってたくさん楽器を持っているものだと思っていました。
どっちにしろ天国には持っていけないんで、1本あったらいいかなって…。あんまり収集癖がないんですよね。あと、今のギター以上に良いものに出会わないっていうのもあります。20周年のお祝いに1本買おうと思ったんですけど、新しいの買うとそいつ(ギター)壊れそうなんで、買ってないですね。
あとは基本的に作詞作曲はずっと僕がやらせてもらっていて、歌詞に関するものはほぼほぼ日本語でやりきっていますね。そこが変わらないところです。英語のほうが歌に乗せやすいんですけど、音楽にするなら日本人がちゃんと分かるようにしようって決めて20年間作ってきたので。
――「日本語」で書くことに意味があるんですね。
そうですね。洋画のホラーより日本のホラーが怖いのと同じで、日本語のほうが日本人の喜怒哀楽や感情に刺さると思っているので、言葉選びを意識してやってきました。
20歳まではお酒を我慢、じゃないですけど、そういう感じでやってきたので、これからはどうしようかなと考え中です。
――反対に、今後変えてみたいことや取り組んでみたいことはありますか?
移動車を豪華にしたい(笑) あとは、これまでバンドサウンドにこだわってやってきたところがあるので、ピアノとか管楽器とか使ったことのない楽器を取り入れてみたり、新しいジャンルとコラボレーションしてみたり、そういうのはどんどんやってみたいなって思いますね。どういうふうに変わるのか分かんないですけど、メンバー全員と話し合って「やりたい」ってなればやりたいです。
――20周年の節目となるライブは、どのようなものにしていきたいですか?
去年「Billboard Live」でやらせてもらって、今年は「COTTON CLUB」でやらせてもらうんですけど、僕らは最初から「ロックバンドです!」って感じではないので、どういうライブができるのかっていうのは常に考えています。あと忘れられないことが1つあって…。
――なんでしょう?
アンダーグラフとしてデビューする前、ジャズをやっている子と組んでたことがあったんです。それで、そのあと僕らのライブを見に来たときに「うるさくて聴かれへん」って言われてしまって。僕らの中では魂が燃えたところで、「ジャズの何がいいねん」とか思ったりもしたんですけど、東京でもストリートライブをやっているとジャズバンドってめちゃくちゃ人集まるんですよ。でも、僕らみたいなポップバンドってうるさいだけって思われてて、全然人が集まらなかったりする。それが、20年経って合流するというか。ジャズの歴史としてすごく由緒ある場所で僕らがやらせてもらえるので、しっかり箱の雰囲気を受け入れて、その箱の中でアンダーグラフっていうバンドを、この先5年、10年奏でられるアレンジとか雰囲気っていうのを出してみたいなって思っていますね。
――21年目に向けて目標はありますか?
続けていくことですね。20年まで来たので、25年、30年続けるためにどういう選択をしていくか、どういうことやっていくかっていうことをメンバーと話しながら、変わらずに変わり続けて、あと5年、10年やりたいなっていうのが1番の目標ですね。
――まさにライブタイトルのとおりですね。
そうですね。ミュージシャンってずっと変わらずにいることが難しいと思うので、まだ知らない音楽性もあると思いますし、調べて取り入れてみたりとかしていくのが楽しいんじゃないかなと思っています。
――最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。
20年間、本当に今までありがとうってことと、これからもよろしくっていうのが伝えたいことなんですけど…やっぱりライブを観てもらいたいです。9月22日にCOTTON CLUBでやるのと、10月25日に大阪の枚方でやるので。その日、1日空けて来るって大変だと思うんですけど、20年に1回のライブなので、とにかくライブを観てほしいっていうのが1番ですね。
■UNDER GRAPH Debut 20th Anniversary Live
~僕らは変わらずに、変わり続ける旅をする。2024~
日時:2024年9月22日(日)
1st. 開場 15:00 / 開演 16:00
2nd.開場 17:30 / 開演 18:30
会場:COTTON CLUB
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F
チケット詳細:https://under-graph.com/contents/707702
■UNDER GRAPH Debut 20th Anniversary Live at HIRAKATA
~大丈夫、僕らは今でも元気で暮らしているよ。~
日時:2024年10月25日(金)
開場 18:00 / 開演 19:00
会場:枚方市総合文化芸術センター小ホール
大阪府枚方市新町2-1-60
チケット詳細:https://under-graph.com/contents/737555
【メンバー】
真戸原直人 (vo)
中原一真 (b)
谷口奈穂子 (ds)
【サポートメンバー】
アオキサトシ (g)
吉田とおる (key)
※開場時間中にオープニングアクトのパフォーマンスを予定
【Profile】
■アンダーグラフ
2000年に地元である大阪(枚方・寝屋川)にて結成。
2004 年のデビュー曲『ツバサ』が世代を超えて支持され、「弱虫ペダル」のED曲になった『風を呼べ』、「NHK みんなのうた」に『こころ』が決定するなど、音楽活動を行う。
一度も活動を止める事なく、2024年にはメジャーデビュー20周年を迎える。
【アンダーグラフ Xアカウント】
https://x.com/undergraph_info
【アンダーグラフ YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCyhjGn46dsnjNjM8RN-5PAA
【アンダーグラフ 公式サイト】
https://under-graph.com/