卓越した歌唱力と演奏技術で耳ざとい音楽ファンからの熱い視線を集める6人組シティソウルバンド・Penthouse(ペントハウス)。
先月公開された最新曲“…恋に落ちたら”は早くも再生数5万回を突破し、SNSには多くのアーティストによるカバー動画が投稿されています。
音楽系YouTuberを普段からチェックしている方は、チャンネル登録者数73万人超の人気ピアニスト・Cateen かてぃん(記事内では「かてぃん」表記)が在籍しているバンドとして早い段階からその活動ぶりに目を光らせていたかもしれません。
なんとカルチャは今回、2021年大注目バンド・Penthouseにインタビューを敢行。
「東京大学発」の肩書にふさわしく、どんな質問にも理路整然と答えてくれました。
では、5月某日におこなわれたインタビューの模様をご紹介しましょう!
目次
Penthouseインタビュー・音楽的ルーツから新曲「…恋に落ちたら」の誕生秘話まで
—— 本日はカルチャのためにお時間を取っていただきありがとうございます。まずは簡単にみなさんの自己紹介をお願いしてよろしいでしょうか?
浪岡真太郎:ヴォーカル、ギター、作詞作曲をやっています、浪岡真太郎です。コーラとAEROSMITHのスティーヴン・タイラーが好きです。
大島真帆:ヴォーカルとMCを担当しています、大島真帆です!DREAMS COME TRUEの吉田美和さんを崇拝しています!あと歌うことと同じくらい、喋ることと踊ることとDIESELが大好きです!
かてぃん:ピアノのかてぃんです。たまーに作曲します。
矢野慎太郎:ギターの矢野慎太郎です。一番地味なので「じゃない方バンドマン」というテーマでコラムを書いたことがあります。
大原拓真:ベースの大原拓真です。バンドの中では音楽の趣味がだいぶ邦楽寄りです。あと最近ダイエットをしています。
平井辰典:ドラムの平井です。シャレオツな音楽に傾倒してます。サンドウィッチマンさんと宇多田ヒカルさんとベイスターズが好きです。
—— Penthouseは東京大学の音楽サークルで結成されたと伺っています。結成の経緯や動機はどのようなものだったのでしょうか?
浪岡:もともとQUORUMというコテコテのハードロックバンド(現在、活動休止中)をやっていたのですが、もうちょっと大衆に根ざした音楽もやりたいという思いがあったのが動機の一つです。加えて、「仲が良くて頭のいいメンバーと一緒にバンドをやりたい」という気持ちもあり、まず大原さんに声をかけて話し合いながら今のメンバーに決めて行きました。
—— Penthouseのサウンドには、ブラックミュージックからの影響が感じられます。また、浪岡さんの歌い回しや矢野さんのギターフレーズからは、白人ブルースやロックの香りが漂ってきますね。R&Bやソウルミュージック以外に影響を受けた音楽はありますか?
浪岡:先述の通りQUORUMというハードロック・ブルースロックバンドでヴォーカルをしていたので、歌のスタイルとしてはだいぶそこの影響が大きいです。声を歪ませたりするのはAEROSMITHのスティーヴン・タイラーやMr.BIGのエリック・マーティンに感化されて始めました。曲作りに関していえば、ハードロックの鉄板であるベースとギターのユニゾンリフなんかはPenthouseの楽曲に頻繁に登場しますね。
矢野:僕もブルースやロックは好きなんですけど、ギターにその要素が入っているのは浪岡が曲作りの段階で既にそういうフレーズを入れているのが大きいです。僕はブラックミュージック以外だとJ-POP、J-ROCK、シティポップ、アニソン、プログレ、メタルといったジャンルに影響を受けていて、浪岡が作ったギターの土台にそういった他ジャンルの要素を足してます。
——ギターフレーズの面で言うと、原曲の段階ですでにブルースやロックの要素が含まれていて、それを矢野さんがさらにアレンジしていくというわけですね。
矢野:あとかてぃんのピアノアレンジが曲の軸になることも多いので、かてぃんが影響を受けているジャンルも聞いてみたいですね。
かてぃん:クラシックがベースにあるので、ロマン派音楽のようなピアノの音のレンジとダイナミクスの広さを活かす表現は自然に入ってきます。コード感はジャズやネオソウルの影響が強いですね。
—— Penthouseは“シティソウル”バンドを標榜されています。ここ数年、一般リスナーの間でも“シティポップ”という言葉が一般的になってきていますが、“シティソウル”にはまだ耳馴染みが無い読者も多いかもしれません。「シティソウルを知りたければこれを聴け!」というアーティストやアルバムを教えてください。
矢野:まず”シティソウル”を標榜し始めた経緯を説明させてください。活動初期に自分達の音楽性を端的に表す言葉をプロフィールに入れたいと思い、「シティポップのキャッチーさとソウルのパワフルさを兼ね備える」という意味で”シティソウル”と書き始めたんです。つまり造語のつもりだったので、既存の「シティソウル」というジャンルに属している意識は元々無かったと。
—— なるほど。自分たちの音楽性を表現するキャッチフレーズとして誕生した言葉だったんですね。
平井:ただ、造語で銘打って活動していたおかげで、bmr(ブラックミュージック専門誌)の編集長だった小渕晃さんが監修されたコンピレーションアルバム『City Soul』に、Penthouseの1stシングル“Fireplace”を収録していただくことができました。わたしたちの曲以外にも、昨今のシティソウル海外アーティストが数多くラインナップされています。
—— 2020年12月にリリースされた『City Soul:Sparkle – Today’s Soul, AOR & Blue Eyed Soul』のことですね。そのコンピレーション盤に収録されていないアーティストではどうでしょう?
平井:シティポップとソウルのテイストを良いバランスで感じられるアーティストとして、藤井風、モノンクル、Lawrenceあたりは個人的にオススメです。
—— PenthouseはSNSやYouTubeを通じて多くのファンを獲得していますね。インターネットを非常に上手く活用しているという印象を受けますが、新型コロナウイルスの登場はバンドの活動に何か影響を与えましたか?
浪岡:本来であれば、2021年はオリンピックに乗じて路上ライブを重ね、経験値と人気を稼ぐ作戦を立てていました。それが全くできなくなったこともあり、今はYouTubeやSNSが主戦場になっていますね。ただ、そのお陰でアカペラ界隈のみなさんと知り合って、触発されて自分でもアカペラアレンジを作るようになったり、自分の音楽の幅が広がったりと、これはこれですごく良かったなと思っています。
—— ライヴ活動についてもお聞かせください。これだけ素晴らしいバンドなので、状況さえ許せばライヴをもっと観たいというファンも多いと思います。コロナウイルスが落ち着いたらライヴ活動を積極的にやろうと考えてらっしゃいますか?例えば、Blue Noteやビルボード東京なんてPenthouse向きの会場ではありませんか?
大島:もちろんライブはぜひやりたいという気持ちでいっぱいです。(2020年2月23日の)初ライヴでは渋谷LIVING ROOM CAFEの少し落ち着いた雰囲気の中、多くのお客様と時間を共有できたことを本当に幸せに感じました。次のライブは逆にスタンディングで皆で踊りながら楽しめるような空間にするのも良いかなとも思っています。
—— スタンディング! 身体を揺らしながらPenthouseの音楽を聴けたら…。想像するだけで楽しくなってきました。
大島:もちろんBlue Noteやビルボード東京は、わたしたちが憧れのアーティストを何度も観に足を運んだ特別なステージですので、いつかあの場所で自分たちの単独ライブをやってみたいという気持ちはあります! 必ず叶えたいですね!
—— 新曲“…恋に落ちたら”は、日々の単調な暮らしの中で胸のときめきを見失ってしまった人、未来に対する期待感が薄まってしまった人達に聴いてもらいたいナンバーになっています。浪岡さんは「…恋に落ちたら」について、「コロナ禍のしんどさの中でも、前向きに日々を生きられる糧になるようなナンバーです」と書かれていましたが、コロナ禍の閉塞感を打破したいという想いから生まれた楽曲なのでしょうか?
浪岡:コロナ禍において、友達数人と昼休みや仕事の後に通話する生活スタイルが自分に芽生えたのですが、そこで恋愛の話になり、「恋に落ちたら順風満帆なのに」というキラーワードが出たんです。これは使えるなと思って、コロナの閉塞感と大人な距離感の恋愛をテーマに遊びで1曲書いたのが、他ならぬ“…恋に落ちたら”なんです。
—— 友人との何気ない会話がヒントになって誕生した楽曲だったんですね。これまでのPenthouseの楽曲とは少しタイプが異なりますよね?
浪岡:歌詞がだいぶラブリーだし、曲調もPenthouseにしてはポップすぎる気もしたので、一応(パソコンの)ドライブに上げておいて放置していたのですが、ある日それを大原さんが見つけて、「やろうよ!」と激推ししてくれたのがきっかけで、時を経てこのように仕上がりました。
—— Bon Joviの大ヒット曲“Always”もボツ曲の箱に入れられていたそうですが、大原さんが見つけていなかったら“…恋に落ちたら”は陽の目を見なかったか、ずっと後になってからのリリースになっていたかもしれませんね…。
大原:聴いた瞬間にこれはキラーチューンになると確信して、すぐにメンバーに「この曲絶対やろう!」と連絡しました。 確かにこの楽曲はメロディーやアレンジにも他の楽曲以上にポップスの要素が多く入っているのですが、歌詞のテーマも今だからこそ万人に共感してもらえるテーマですし、これくらいキャッチーなのもかえって親和性があるのかなと感じています。
—— 作詞に関してお聞きします。QUORUM時代、浪岡さんは英語で作詞をされていました。日本語で作詞をするようになって、作詞術を改めて学び直す必要がありましたか?また、作詞家として優れていると思うミュージシャン、好きな作家や文学作品があれば教えてください。
浪岡:なんにも学んでいないですが、結構書けるもんだなあと思って書いてます。そもそも曲を聴いても歌詞は全く頭に入ってこないタイプの人間なので、好きな作詞家についても今初めて考えてるくらいです。サザン(オールスターズ)の歌詞は好きかもしれないです。
大原:わたしもよく作詞を担当しているのですが、浪岡はこだわりがないわりにスラッと良い歌詞を書いてくるので、正直かなり妬ましいところはありますね(笑) バンドの歌詞の方向性として具体的な名詞やエピソードを使った情景描写は大事にしているので、松本隆さんやaikoさんの歌詞は個人的には参考にしています。
—— 浪岡さんが4月18日に投稿したツイート、「Penthouse始動以来最大の決断をした」が気になっているファンは多いと思います。その“最大の決断”について、ファンにお知らせできるのはいつ頃でしょうか? ヒントだけでもいただけたら嬉しいです。
浪岡:内緒ですわ。
—— 即答ですね(笑) では、話していただけそうな話題に戻りましょう。5月8日から最新曲“…恋に落ちたら”がサブスク解禁になりましたね?
矢野:8thシングル“…恋に落ちたら”、各サブスク・ストア等にて絶賛配信中です! もちろん過去の7曲も是非チェックして下さい!全曲カラーが違って飽きさせない自信はあります!(笑)
—— 最後に、カルチャ読者へメッセージをお願いします!
大島:今回このような機会をいただき、わたしたちの考えや想いが少しでも読者やファンの皆様に伝わればとっても嬉しいなと思っています! これからも沢山の方々に届くような作品を発信していければと思っておりますので、引き続き応援よろしくお願いいたします!
—— 本日はたくさんお話を聞かせていただきありがとうございました! 今後のさらなるご活躍に期待しています!
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