“高音出したい系男子”のキャッチフレーズ通り、成人男性の声帯では到達不可能な音域での圧倒的な歌唱がトレードマークの超人気歌い手・ウォルピスカーター。
その歌唱動画の総再生数は4億回を超え、代表曲である「泥中に咲く」は9,000万回を超えて再生回数を伸ばしている。
コロナ禍においても毎年コンスタントに作品をリリースし、昨年発表のカバーアルバム『ひとのうた』も大好評だったウォルピスカーターが、2020年の『40果実の木』以来となる5枚目のオリジナルアルバムを完成させた。
気になるアルバムタイトルは、『余罪』。
たった2文字でここまで不穏な雰囲気を醸し出せるものだろうか。
この作品について話を聞くべく、3月某日、都内某所にてウォルピスカーター本人を直撃した。
目次
ウォルピスカーター、新作『余罪』を語る Part.1
-オリジナルアルバムとしては5枚目となる新作『余罪』が完成しました。ウォルピスカーターさんご自身から見てどのような作品に仕上がったと感じていますか。
タイトルが『余罪』なんですけど、4年間フルアルバムが作れなかったのが、コロナ禍でなかなかイベントができなかったり、アルバムを作ってもそのプロモーションがしづらいっていうことで色々と難航した部分があって…。コロナ禍が明けてようやくイベントも打ち出せるという状況になって、やっとの思いで作れたアルバムなので、みなさんへの「お待たせして申し訳ない」みたいな贖罪を込めつつ、“今できること”みたいな1枚になりました。
-喉の調子を悪くされたことで作品の発売が延期になったとお伺いしました。これはいつ頃の出来事だったんでしょうか。
昨年末にコミックマーケットがありまして、そこに別活動のグループ(成人男性三人組)で出展してたんですね。そこでちょっと声の調子を崩してしまって、年明けとかはほとんど声が出ないような状態で…。
-かなり酷い症状だったんですね…。
まあ、風邪かと思って楽観視してまして。2週間もあれば治るだろうと思っていたんですが、全然直らず…。病院に行ったら「逆流性食道炎ですね」と(笑)。 鼻にカメラを突っ込まれるんですよ、耳鼻咽喉科で。先生が喉の付近をカメラで見ながら「あー。これはちょっと…。うわー」なんて言われまして。
-そのコメントはかなり不安になりますよね。
「もしかしたらポリープかな…。声帯結節かな…」と思ってドキドキしてたら、「これは胃酸で喉が焼けてます」って言われて(笑)
-それはさすがに予想外の病名ですね。
「食後すぐに横になりますか?」とか色々訊かれて、「そうですねぇ、多いですね」って言ったら、「横になったときに胃酸が喉まで戻ってきて、声帯の周りがすごく浮腫んでます」って。それで声が出なかったみたいです。声帯はとても綺麗だったんですけどそんな状況でした。
-食べてすぐ寝るのはNGということですね(笑) では、ここからアルバムの内容についてお尋ねさせていただきます。
収録された全11曲のうち、2023年5月リリースの「ラディーチェ」とカバー曲を除く7曲が本作のための書き下ろし楽曲となっています。アルバムの制作に着手したのはいつ頃だったのでしょうか。
えーと…いつ頃だろう。10月? 11月? 12月?思い返せば構想半年以上でしたね。アルバムを作ろうかという話自体は去年の5月か6月くらいには出ていて、本格的に制作に入ったのは年末年始くらいからですね。
-作品のコンセプトは最初から決まっていたんでしょうか。
一番最初にタイトルが決まったんです。『余罪』っていうタイトルだけ決めて、そこからなんとなく連想されるようなちょっと仄暗い感じとか、後ろめたいとか、“ダークすぎないダークさ”みたいなのはコンセプトにあったのかな。クリエイターの方には「こういう風に作ってください」ということは一切言わずに、「『余罪』ってアルバムに書いてほしいです」ってお願いして。そこはみなさん汲み取っていただきました。
-前作に引き続き、南條沙歩さんがアートワークを担当しています。ウォルピスカーターさんが部屋の中で椅子に腰かけている様子が描かれていますが、南條さんには作品のタイトルだけ伝え、自由に制作してもらったのでしょうか。
南條さんとは結構ガッツリ打ち合わせをしました。アルバムのタイトルと曲も半分くらい上がってきているなかでの打ち合わせだったので、「曲はこういう感じのが上がってきていて、1枚通してこういう雰囲気になると思うんですよね」というところから始めて。明るすぎず、ちょっとアンニュイな感じというか。僕のなかで『余罪』のイメージとしてワンルームがあったので…。
-ワンルームですか…?
ジャパニーズホラーってワンルームが多いじゃないですか(笑)。 ワンルームのなかで怖いことが起こるみたいな。そういうのがあったので、「ワンルームで~」という話をしつつ、南條さんにバックグラウンドを想像しながら作っていただきました。