「ジャズ」が流れる空間というのは、無条件にお洒落です。
「ジャズが好きだ」と言えば、その人自身もどこかお洒落で大人びているように感じます。
そんな空間も人もなんでもハイセンスに変えてみせる「ジャズ」について、今回は解説してまいります。
目次
ジャズの起源
ジャズの発祥は、1900年代初頭のアメリカ・ニューオーリンズ・歓楽街ストーリーヴィルと言われています。
アフリカから奴隷としてアメリカに渡ってきた黒人たちがヨーロッパからの移民と出会い、西洋の音楽とアフリカの音楽を融合して作られたのがジャズの始まりです。
小さな町で生まれたジャズはその後、シカゴやNYなど都市部に広がり、急速に発展を遂げます。
そして、様々なジャズミュージシャンによって音楽としての幅を広められ、世界中にその地位を確立していきました。
ジャズとは
ジャズは「音楽のジャンルというより演奏方法である」と捉えるのが正解です。
よくカフェや雑貨屋、美容室などでジャズが流れているのを聴いたことがあると思いますが、よく聴いてみるとポップスやクラシック、アニメや映画などで使われた曲など、知っている曲だったりすることはないでしょうか。
もともとジャズではない曲なのに何故かジャズに聴こえてしまうのは、ジャズ的な演奏方法にアレンジしているからなのです。
では、ジャズ的な演奏方法とは何なのでしょうか。
ジャズの音楽的特徴
ジャズの基本的な演奏は、最初は主となるメロディーを演奏し、次から和音はベースに置きながら、楽器それぞれが変奏(アドリブ)していきます。
そして、最後にもう一度始めのメロディを全員で演奏して終わります。
簡単に言うと、1番を普通にみんなで演奏し、例えば2番はサックスのアドリブ、3番はピアノのアドリブ、4番はドラムがアドリブをし、最後はまたみんなで演奏すると言った形です。
あくまで基本であり、これに限らないことも多いですが、このアドリブがいかにカッコ良くて人々を惹きつけられるかが腕の見せどころなのです。
そしてもう一つ、ジャズの大きな特徴がリズムです。
ジャズ演奏が他の音楽と明らかな違いを生み出すのは、オフビートだからです。
オフビートは、本来のリズムの強弱が逆のことを言います。
基本の4拍子だと本来「1、2、3、4」の「1、3」のところが強拍になりますが、オフビートは「2、4」のところが強拍になるのです。
ドラムの音に耳を澄ませてみれば、より分かりやすいと思いますが、このオフビートはジャズの大きな特徴です。
ジャズの真髄
ライブハウスやレストランなど、近い距離感でジャズの生演奏を聴くことができますが、実は演奏するまで曲目が決まっていないということもあります。
もしくは、曲は決まっていて何コーラスくらいしようかという打ち合わせはしているが、誰がどんな演奏をするかは全くリハーサルしていないということも。
これは、ジャズがそもそもアドリブの音楽であるからです。
ジャズはその時の雰囲気、演奏者の気分によって曲が決まり、演奏中にメンバーが音で会話をして作り上げていきます。
そして演奏者と客が一体となって、心で音を楽しむのがジャズの真髄なのです。
黒人たちが奴隷としてアメリカに移り、そこでヨーロッパからの移民と出会い、様々な問題を抱えて生きていた人々が心のよりどころとして作り上げたジャズは、自由に演奏をし、その空間を特別なものにすることこそが、ジャズ本来の在り方なのです。
ジャズの種類
ディキシーランド・ジャズ
ジャズが生まれた最初の頃のかたちで「ツービートジャズ」とも呼ばれます。
黒人のジャズをニューオーリンズ・ジャズ、白人のジャズをディキシーランド・ジャズと分けて呼ぶこともありますが、ジャズの原型のようなものです。
ピアノやドラムをはじめ、トランペットなどの管楽器といった多くの楽器によって演奏されました。
スウィングジャズ
1930年代から1940年代中頃までに発展したジャズで、ビッグバンド(大人数)での演奏が特徴です。
大人数であるがゆえアドリブはほとんどありませんが、軽快なリズムでノリの良い(=スウィング)、ダンスミュージックとしての側面を持つのが音楽的な特徴です。
ビバップ(モダンジャズ)
現在、広くジャズとして知られているのがこのビバップです。
1940年代から広がりを見せた種類ですが、この頃ジャズの主流だったスウィングジャズの形式ばった規模の大きいジャズではなく、もっと気軽に楽しみたいという思いから、バーなどで数人のミュージシャンによって即興演奏されたのが始まりと言われています。
先にも書いたように、基本となるコード進行の中でアドリブ演奏していく形で、王道的なジャズの種類です。
ラテンジャズ
その名の通り、ラテン的な要素を含んでいます。
ラテンパーカッションでリズムを担い、ドラムはいない場合が多いです。
ジャズで最も使用される4ビートではなく、8分音符や16分音符を使用した複雑なリズムを刻むのが特徴です。
ラテンジャズは、キューバで発展したアフロ・キューバン・ジャズのことを指しますが、さらに南下してブラジルで発展したブラジリアン・ジャズは、ボサノヴァの部類に入れられることが多く、音楽はつながっているということを教えてくれます。
モードジャズ
1960年代から姿を現した種類で、ビバップが進化したようなジャズです。
コード進行の代わりにモード(西洋の教会音楽で使用される音階で、一般的な音楽では使われることのほとんどないスケール)を取り入れたことで、ビバップよりも音の幅が格段に広がりました。
幻想的な雰囲気に包まれるジャズで、モードジャズを好むファンは今でも多くいます。
フリージャズ
その名と通り、自由度の高いジャズのことをいいます。
コード進行など、音楽の決められたルールは一切無視して、自由に演奏するのがフリージャズです。
ミュージシャンの感性がそのまま音に表されるので、よりアーティスティックで革新的なジャズを聴くことができます。
パーカッシブ奏法(ピアノを拳で叩いているかのように弾く奏法)など、楽器の概念さえも覆してしまう演奏者も現れ、初めて聴く時は衝撃を隠せないかも知れません。
ジャズファンク
ジャズにファンクやR&Bなどの要素を取り入れたもので、ジャズの最終形と呼ばれています。
それぞれ発展を遂げてきた他ジャンルを融合させることによって、近代的でダンサブルなイメージを生み出し、さらにジャズファンクを進化させて、無法状態にしたものをコンテンポラリージャズといいます。
コンテンポラリージャズは、2000年代以降に提唱され始めたきわめて新しいジャズで、今後新しい波を作るかも知れません。
ジャズの巨匠たち
バディ・ボールデン
ジャズの創始者と言われる黒人ミュージシャンです。
コルネット奏者であったボールデンが、即興演奏をしたことがジャズの始まりと言われていますが、なんと彼の音源は存在しません。
とてつもない肺活量の持ち主で驚異的な音量でコルネットを吹いていたことなどのエピソードや、写真などは残されていますが、その音源が残っていないのはとても残念です。
ルイ・アームストロング
”キング・オブ・ジャズ”と称される黒人ジャズミュージシャンです。
ルイ・アームストロングは世界にジャズを広めた人物の一人で、ジャズに携わっている人で、彼の名を知らない人はいないでしょう。
「サッチモ」というニックネームでも親しまれています。
トランペット奏者でありヴォーカルもこなすルイ・アームストロングは、そのダミ声のような歌唱が有名で、あまり詳しくない人でも彼の声を聴けば、「聴いたことのあるジャズだ!」と思うかも知れません。
「ドゥビドゥビ」や「パヤパヤ」などその言葉自体には意味を持たないが、歌唱の一部として成り立つスキャットという歌唱法をあみだしたのは、実はルイ・アームストロングその人だと言われています。
歌詞カードを見失ってしまったアームストロングが、とりあえず音を口さんだことで偶然に生まれた歌唱で、今では当たり前のように浸透しています。
ルイ・アームストロングが映画出演から海外公演まで精力的に行ったため、世界中にジャズが広まったと言われていて、まさしくジャズ界の誰もが認めるレジェンドなのです。
ビル・エヴァンス
クラシック音楽を学んだのちにジャズへと進んだビル・エヴァンスは「ピアノの詩人」と呼ばれるジャズ界の巨匠です。
洗練された感性とテクニックは、モダンジャズの黄金時代に眩しいくらいの輝きを放ちました。
特に1961年に発表されたアルバム「ワルツ・フォー・デビィ」は、ジャズの歴史上において名盤中の名盤と言われるほどです。
ビル・エヴァンスのピアノを聴いて、ジャズが好きになったというファンも少なくありません。
チャーリー・パーカー
スウィングジャズが主流だった頃、たった一人でビバップを生み出したと言われるジャズ界の巨人です。
パーカーの出現によって劇的にジャズの世界が変わったと言われるほど、ジャズの発展に寄与した天才です。
後世に多大な影響を与えたアルトサックス奏者で、34歳という若さでこの世を去りましたが、彼はパーカーのサックスは革新的で創造性に溢れ、これまで誰一人として彼を超えるサックス奏者は現れていません。
パーカーがいなければ、今のジャズは存在しないかも知れないほど偉大なミュージシャンなのです。
マイルス・デイヴィス
1940年代から活躍した、伝説のジャズトランペッター「マイルス・デイヴィス」もジャズを知る上で重要な人物です。
チャーリー・パーカーのバンドでサイドマンを務めたことにより、その名が広く知られるようになりました。
努力家でストイックな生き方が代名詞のようなデイヴィスは、ジャズ界に革新をもたらしました。
複雑化するジャズから、できるだけ音を削ぎ落としたシンプルなジャズを目指した彼の音源は、数十年経った今でも話題を呼ぶ名盤ばかりです。
他にも、フランク・シナトラやベニー・グッドマン、グレン・ミラーなど、偉大なジャズミュージシャンは紹介しきれないほどたくさんいらっしゃいます。
また、当時の音源はレコードでしたので、本物のジャズを聴くなら是非レコードでの試聴をお勧めいたします。
ジャズを生演奏で
ライブハウスなどにジャズの生演奏を聴きに行くのは大人のイメージがあり、なかなか足を踏み入れにくいと思われている方もいるかも知れません。
ですが、フランス料理屋のようなドレスコードは基本的にはありませんし、思ったより自然に入り込むことのできる空間です。
ジャズは生演奏こそ、その魅力を大いに感じることができるので、失敗しないようにいくつか気をつける点を挙げておきます。
カジュアルすぎない服装
基本的に服装は自由で、ラフ過ぎなければ大丈夫です。
時には気合を入れすぎたドレスで浮いてしまうなんてこともあるので、少しお洒落した位がちょうど良いでしょう。
演奏に拍手を送る
曲が終わった時は自然に拍手が巻き起こりますが、ジャズでは楽器ごとにアドリブがあるので、演奏中でもそのアドリブが終わったら拍手を送ります。
周りの人が拍手をしているタイミングで、同じように拍手しておけば大丈夫です。
だんだんとジャズがわかってきて、アドリブ演奏の素晴らしさを感じることができるようになれば上級者の仲間入りです。
チケットが必要か事前にチェック
ジャズは基本的にチケットはありませんが、イベントなどの場合はチケットが必要な場合もあるので、事前にチェックした方がいいです。
食事をしながらのジャズ演奏は食事代に含まれていますし、投げ銭の形をとっているところでは周りと同じようにスマートに置くのがベストです。
海外から来た人気ミュージシャンなどが出演する場合は、事前に予約しなければ入れないこともあるので気を付けましょう。
日本のジャズスポット
ブルーノート東京(東京・港区)
上品なフランス料理とともにジャズを楽しむことができる、日本屈指のジャズクラブです。
米・NYにあるブルーノートの姉妹店で、世界的にも知られています。
海外有名アーティストが度々やってくるので、特別な日やご褒美に訪れるといいかも知れません。
サムタイム(東京・武蔵野)
比較的リーズナブルで、気軽に訪れることのできるジャズスポットです。
ステージがカウンターで囲まれていて、他とは少し違った空間が演出されています。
料金も昼は1000円から夜は1800円からで、初めての方にはありがたい値段設定です。
JZブラット(東京・渋谷)
若者が多く集まる街・渋谷にあるライブハウスです。
セルリアンタワー東急ホテルにあり、大人も若い世代も受け入れてくれる雰囲気です。
演奏者も若手からベテランまで幅広いラインナップなので、いろんなジャズが楽しめます。
最後に…
ジャズについて解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
ジャズは、少し知っているだけでなんだか大人びて見えてしまうオシャレな音楽です。
ぜひ一度、生演奏を体験してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。