四畳半神話大系 – 原作・森見登美彦、アニメ監督・湯浅政明の話題作! ネタバレ徹底解説

四畳半神話大系 – 原作・森見登美彦、アニメ監督・湯浅政明の話題作! ネタバレ徹底解説

森見登美彦原作の青春SF小説『四畳半神話大系』

貧乏下宿で暮らす京大生・「私」を主人公にした本作は、パラレルワールドがリンクする実験的な構成はもとより、妖怪めいてエキセントリックな言動で「私」を翻弄する腐れ縁の悪友・小津や、我が道を行くクールなヒロイン・明石さんの魅力で視聴者の心を掴みました。

今回は新作『四畳半タイムマシンブルース』の制作も決定し、ますます盛り上がりを見せている『四畳半神話大系』の魅力をネタバレ解説します。

『四畳半神話大系』原作小説紹介

『四畳半神話大系』は2005年に太田出版より刊行され、その後角川書店、及び角川文庫から文庫が発売された森見登美彦のSF青春小説です。

発売当初より京大生のリアルなキャンパスライフやリビドー全開の文体が話題になり、森見登美彦のファン層を広げました。

タイトルの由来は私が住んでいる下宿「下鴨幽水荘」の四畳半から。なお下鴨幽水荘のモデルとなったのは、京都大学の吉田寮です。鄙びたたたずまいがなんとも風情を感じさせますね。

『四畳半神話大系』原作者・森見登美彦(もりみとみひこ)の紹介

森見登美彦は1979年生まれ、現在42歳の日本の作家です。出身は奈良県生駒市で現在も奈良に在住しています。ペンネームは本名の姓・森見に、奈良に関連深い登美長髄彦を掛け合わせたものです。

奈良女子大学文学部附属中学校・高等学校の卒業後、京都大学農学部生物機能科学科応用生命科学コースに進み、農学研究科修士課程を修了します。

2003年、『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞に輝き小説家デビュー。2006年に『夜は短し歩けよ乙女』が山本周五郎賞を受賞し、 第137回直木賞の候補にも挙がります。

2010年には『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞をとりました。

出版社の垣根をこえた応援団「まなみ組」が結成され、広報や販売促進を担うなど、熱狂的なファンが数多くいることで知られています。

最新作は文春文庫から出た『熱帯』です。

他にアニメ化済みの作品として『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』などが挙げられます。

本人曰く緻密な構成力が要求されるミステリーは苦手、シリアスなものは怪談しか書けないそうです。

得意ジャンルはファンタジー・SFで、どの作品も多かれ少なかれ両要素が盛り込まれています。

また、本人が青春時代を過ごした京都(特に京大付近)が舞台となる作品が多く、実在の建物や場所が描写されることでファンの聖地巡礼を促し、地域活性化に貢献しています。

『四畳半神話大系』アニメ紹介

アニメ『四畳半神話大系』は2010年4月から7月にかけ、約3か月間全11話、フジテレビノイタミナ内で放送されました。

奇想を凝縮した展開やビビッドな演出、巧みな伏線回収が評価され、2010年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞をとりました。

東京国際アニメフェア2011・第10回東京アニメアワードでもテレビ部門優秀作品賞を獲得しています。

キャラクターデザインは森見登美彦の他作品のカバーイラストを手がけるイラストレーター、中村佑介が担当しました。

オープニングテーマは「迷子犬と雨のビート」(作詞・作曲/後藤正文 編曲・歌/ASIAN KUNG-FU GENERATION)、エンディングテーマは「ラブマゲドン」(作詞/ハヤシコウスケ 作曲/シナリオアート 編曲/CHRYSANTHEMUM BRIDGE 歌/シナリオアート)。


『四畳半神話大系』アニメ監督・湯浅政明(ゆあさまさあき)の紹介

アニメ『四畳半神話大系』を監督した湯浅政明は現在の日本アニメ界を牽引するクリエイターで、アーティスティックな色彩感覚や滑らかな動きが支持されています。

日本のファンはもちろんのこと、海外にも熱狂的なファンが多いのに注目してください。これは欧米で人気のアニメ『アドベンチャー・タイム』の制作に携わったことと無関係ではありません。

なお湯浅監督は、『四畳半神話大系』で原作が存在するアニメに初挑戦した模様です。

代表作は『ピンポン THE ANIMATION』『DEVILMAN crybaby』『映像研に手を出すな!』『夜明け告げるルーのうた』など。

森見登美彦原作の『夜は短し歩けよ乙女』劇場版アニメーションの監督も務めました。

2013年にアニメ制作スタジオ「サイエンスSARU」を設立、2020年に同社の代表取締役を退任しています。

最新作は『鉄コン筋クリート』などを描いた漫画家・松本大洋がキャラクターデザイン、ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』の野田亜紀子が脚本を担当した『犬王』

原作は古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』です。

『四畳半神話大系』のあらすじ

主人公の「私」は京都大学の三回生。

オンボロ下宿「下鴨幽水荘」に暮らし、腐れ縁の悪友・小津に付き纏われ、胡散臭い師匠・樋口氏と交流するなど、入学前に夢見ていた薔薇色のキャンパスライフとは程遠い日々を悶々と過ごしています。もちろん彼女はおらず恋愛とも無縁です。

意中の女性・明石さんは高嶺の花で、二人の関係はちっとも進展していません。

一体何故こんな事になってしまったのか思い悩んだ「私」は、全ての原因をサークル選びのミスに求めました。

もしもあの時違うサークルを選んでいたら、あるいはどこにも所属しなかったら、どんな未来が拓けていたのでしょうか?

「私」の妄想はパラレルワールドに分岐し、それぞれ別のサークルに所属した、またはどこにも入らなかった場合のIFストーリーが展開されていきます。

『四畳半神話大系』のキャラクター・声優紹介

私(声優:浅沼晋太郎)

代表作

  • 『あんさんぶるスターズ!』月永レオ
  • 『ヒプノシスマイク』碧棺左馬刻
  • 『東京喰種』西尾錦

本作の主人公で京都大学農学部三回生。オンボロ下宿「下鴨幽水荘」に住んでいます。浪人を経て入学をはたした京大にて、薔薇色のキャンパスライフを送る夢を膨らませていたものの玉砕。

その原因を入学時のサークル選びのミスに求め、「あの時こうしていたら……」の後悔からパラレルワールドに突入します。

プライドと理想は高いものの行動力が追い付かず、非生産的な日々を送っています。小津は腐れ縁の友人。彼の影響もあり、厭世的な皮肉屋になりました。

ジョニー(声優:檜山修之)

代表作

  • 『SHIROBAKO』木下誠一
  • 『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』平野コータ
  • 『げんしけん』斑目晴信

「私」の分身。リビドーが詰まった下半身の擬人化です。アニメではデフォルメされたカウボーイのビジュアルで描かれ、「私」を振り回します。

明石さん(声優:坂本真綾)

代表作

  • 『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』レオナルド・ダ・ヴィンチ
  • 『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』草薙素子
  • 『化物語』忍野忍(キスショット)

「私」が片思いする黒髪の乙女。下の名前は不明。京大工学部建築科に所属しており、周囲に振り回されず我が道を行くクールな女性です。

可憐な外見にそぐわない辛辣な物言いが特徴。

なれなれしい異性には場の空気を読まず塩対応するなど、孤高のヒロインの立ち位置を獲得しているものの、「もちぐま」なるマスコットキャラを好む、意外な一面も持ち合わせています。

唯一の弱点は蛾で、一目見ようものなら「ぎょえええ」と珍妙な悲鳴を上げます。

「私」の後輩にあたり、彼女が1回生の夏に下鴨神社の古本市で出会っています。アニメでは各エピソードごとに別サークルに所属していましたが、どの話でも「私」と邂逅する運命の模様。

最終話では「私」とカップル成立する未来がほのめかされています。

小津(声優:吉野裕行)

代表作

  • 『弱虫ペダル』荒北靖友
  • 『イナズマイレブン』鬼道有人
  • 『キルラキル』犬牟田宝火

京都大学三回生。工学部電気電子工学科に所属しているにもかかわらず工学に全く興味がなく、学業不振な劣等生。

極度の偏食家故に常に顔色が悪く、妖怪にたとえられるほど神出鬼没でフットワークが軽いです。

人の不幸が三度の飯より美味いと豪語する天邪鬼なひねくれ者で、どのサークル内でも暗躍し、人間関係をひっかき回すトラブルメイカー。親に多額の仕送りをもらい、高級マンションで一人暮らしをしています。

そのくせ下鴨幽水荘にしょっちゅう転がりこんでは無駄話をしていくので、「私」に毛嫌いされています。

樋口師匠を敬愛しており、彼に指導されたことは熱心に実践します。「私」とは腐れ縁の悪友であり、喧嘩するほど仲が良いを体現する間柄。

小津曰く「私」とは運命の黒い糸で結ばれているらしく、その言葉を裏付けるようにどのパラレルワールドでも悪友の位置におさまり、最終的には「私」をアシストし、明石さんとのキューピット役を務めます。

周囲には「私」といいコンビとして認識されています。実は小日向さんと交際していました。

樋口清太郎(声優:藤原啓治)

代表作

  • 『クレヨンしんちゃん』野原ひろし
  • 『鋼の錬金術師』マース・ヒューズ
  • 『アイアンマン』トニー・スターク

小津が心の師匠と仰ぐ男性。京都大学の八回生で、掴み所がない飄々とした自由人。しゃくれた顎、もとい泰然自若とした風貌に落語家のような着流しが特徴で、俗世を超越した雰囲気を漂わせています。

小津の他にも複数の弟子がおり、彼らからの貢ぎ物で生活していることが示唆されています。

「私」と同じ下鴨幽水荘の202号室に住んでいますが、片付け下手らしく散らかり放題で足の踏み場もありません。

「私」と一緒に屋台のラーメンを食べたり、縁結びの神を自称して明石さんとの仲を取り持ったりしています。

羽貫涼子(声優:甲斐田裕子)

代表作

  • 『メカクシティアクターズ』キド
  • 『約束のネバーランド』イザベラ
  • 『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』真賀田四季

御蔭橋そばの窪塚歯科医院に勤務する京大卒の歯科衛生士。好物はカステラと酒。昔から樋口と親交を持ち、たびたび彼の世話を焼いています。
「私」や小津とも仲が良いです。

城ケ崎マサキ(声優:諏訪部順一)

代表作

  • 『呪術廻戦』両面宿儺
  • 『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』レオーネ・アバッキオ
  • 『ユーリ!!! on ICE』ヴィクトル・ニキフォロフ

京大在学時からの樋口の親友兼ライバル。原作では博士課程の院生、アニメ版では大学8回生。

映画サークル「みそぎ」のカリスマ部長であり自他ともに認めるモテモテなイケメン。しかしプライベートでは香織と名付けたラブドールを偏愛する、やや特殊な性癖を持っています。

アニメ第3話では「私」を特訓するなど、面倒見のよい一面もありました。

『四畳半神話大系』スピンオフ、『四畳半タイムマシンブルース』の紹介

『四畳半タイムマシンブルース』は『四畳半神話大系』と『サマータイムマシン・ブルース』が融合した、新作アニメーションです。

『サマータイムマシン・ブルース』はアニメ『四畳半神話大系』の脚本を手がけた、上田誠原案の舞台劇。

ある大学のSF研究会に所属するユニークな面々が、突如現れたタイムマシンを巡り、大騒動を巻き起こすドタバタコメディです。


劇団ヨーロッパ企画が演じる本作は、2005年には本広克行監督によって映画化もされました。

『四畳半タイムマシンブルース』においては、『四畳半神話大系』でお馴染みのキャラクターたちが、25年後の未来から現れた謎の青年・田村くんと彼が乗ってきたタイムマシンがもたらす奇跡に遭遇します。

アニメ終了から11年、『四畳半神話大系』の愉快な仲間たちと再会できるのがとても楽しみですね。ストーリーの詳細は明らかにされてないので、続報を待ちたいです。

『四畳半神話大系』の魅力とは

ここからはアニメ終了から11年経っても根強い人気を保ち続ける、『四畳半神話大系』の魅力を掘り下げていきたいと思います。

声優泣かせの膨大なセリフ量、饒舌なナレーション

まず第一に挙げたいのは声優泣かせ、脚本家泣かせの圧倒的セリフ量です。

原作小説からして中毒性の高い饒舌な文体がウリですが、アニメもまたこの美点を存分に引き継ぎ、主に主人公の「私」を演じた浅沼晋太郎に、息継ぐ間もないナレーションを喋らせています。

小説ならば地の文として落とし込まれる心の声も全部喋らせているので、声優の労力たるや大変。それがこのアニメにしかない特徴となり、何度でも見返したい、聞き返したいアクの強さを押し出しています。

本作における声優陣の演技は大変素晴らしく、くどいナレーションやセリフからもしっかり感情を伝えてくる、プロフェッショナルに徹する仕事ぶりには脱帽です。

第10話に至っては「私」以外のキャラクターが一切登場せず、浅沼晋太郎がただひたすら語り倒すだけで終了しました。これはテレビアニメ多しといえど史上類を見ない、実験的なエピソードでした。

聖地巡礼がはかどる、京大生に身近なスポットの数々

第二に挙げたいのは作中に登場する実在の建物や場所。『四畳半神話大系』は主人公が京大生、舞台が現代の京都とあり、様々な地元の名所や風物が登場します。

「私」が下宿している下鴨幽水荘のモデルが吉田寮なのは有名な話ですが、明石さんに一目惚れする下鴨神社の古本市も実際に開催されており、毎年多くの人出で賑わっています。

京都市内の描写に関してはインクラインや四条河原町界隈、京都大学などで、約1か月ほどロケハンが実施されました。京都府や下鴨神社、地元企業も公式に協賛しています。

京大生や地元の人間ならすぐにあそこだとわかる描写なので、より没入感が増しますね。それ以外の地域のファンも、京都観光に乗じて足を伸ばしてはいかがでしょうか。

小津や「私」になりきって、鴨川沿いに等間隔で並ぶカップルをひやかしにいくのも乙なものです。

伏線回収が見事、終盤の展開に拍手喝采

アニメ『四畳半神話大系』では、「私」がそれぞれ別のサークルに入った場合、あるいは入らなかった場合の未来がパラレルワールドとして描かれていきます。

そして待ち受ける第10話と11話の驚愕の展開。

それまでは独立したパラレルワールドと思われていた世界が収束し、大小様々な矛盾や疑問点が綺麗に解消されていく快感は素晴らしいです。

さらには本編のみならずオープニングアニメーションにも伏線が仕込まれており、気付いた時には「あっ」と叫んでしまいます。

原作とアニメで構成を変えているのも憎らしく、アニメでは「私」が所属するサークルが倍に増えたぶん奥行きが広がりました。

アニメだけでも楽しめますが、原作小説と合わせて補完するとさらに満足できますよ。

おわりに

以上、『四畳半神話大系』のストーリー・キャラクター・魅力をネタバレ徹底解説しました。

紆余曲折と艱難辛苦の末に明石さんと結ばれるかと思いきや、今度は「私」にどんな災難が降りかかるのでしょうか?

『四畳半タイムマシンブルース』で繰り広げられる大冒険に乞うご期待です。

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