cero – カクバリズム所属、珠玉のポップバンドを徹底解説

cero – カクバリズム所属、珠玉のポップバンドを徹底解説

YOUR SONG IS GOODキセル在日ファンクなど個性が強いアーティストが所属しているレーベルカクバリズムの東京発ポップバンドcero(セロ)は、今年に入りますます存在感を高めています。

8月にはニューシングル「Nemesis」を配信リリースし、2019年にZepp Tokyoで開催されたフィッシュマンズとの対バンイベント「闘魂 2019」の配信も好評でした。

10月24日に岡山県で開催される野外フェス「STARS ON ’21」の出演も決定しています。

デモテープを聴いたムーンライダーズの鈴木慶一さんがその音楽に惚れ込み、音源リリース初期からプロデュースをしていました。

ceroのメンバー3人は作曲・アレンジ・プロデュースを手掛け、ジャンルをミックスさせた多様な音楽性はますます洗練されてきています。

アーティストや評論家も絶賛するceroとは?


cero-web.jp

ceroは2004年に吉祥寺で結成されました。

バンド名の由来は、高城晶平さんが子供の頃読んでいた、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくる『やさしいセロのような声』というフレーズから。

Contemporary Exotica Rock Orchestra(コンテンポラリー・エキゾチカ・ロック・オーケストラ)の略をceroとしているのは完全に後付けで、語呂が良かったというのが理由です。

メンバーは、ギター・ヴォーカルの髙城晶平さん、キーボードの荒内佑さん、ギターの橋本翼さんの3人です。

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橋本翼さんは、現在も並行しているソロユニットのジオラマシーンの前身バンドBig West Good Threeで活動していたので、ceroに加入したのは2006年です。柳智之さんは2011年に脱退し、現在はイラストレーターとして村上龍「歌うクジラ」「文學界」などのカバーイラストを手掛けています。

cero結成のきっかけは、元々髙城晶平さんと橋本翼さんが高校1年生のときに組んでいた、フリッパーズ・ギター・フォロワーコーヒー・フィルターというバンドのライブを見た荒内佑さんが、『友達になりたい』とかけた電話でした。

MEMO

この頃荒内佑さんも、柳智之さんと珈琲家族というバンドを組んでいました。

武蔵野を活動の拠点としてライブハウスに限らず喫茶店などでもライブをしていたceroは、吉祥寺でほぼ毎月のように行っていたイベント「home &away」での実験的な音楽性で、次第に注目を集めるようになります。

デモテープを聴いた鈴木慶一さんは、『初めて彼らに会い、その音楽を聴いた時、眩いほどの若さに心から羨ましく思ったのだった。何曲か一緒にスタジオで録音してさらにその思いを強くした。』と絶賛。

『多様性を持ったメンバーが多角的な音楽を作り、固有性を獲得する、私はそういう音楽が大好きだ。ceroが大好きだ。』とまで語る鈴木慶一さんは、2008年にリリースされた細野晴臣さんのトリビュートアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK -Tribute to Haruomi Hosono 2-」に収録されている鈴木慶一「東京シャイネス・ボーイ」にceroを連れて参加。

MEMO

「東京シャイネス・ボーイ」は、SONIC YOUTHのサーストン・ムーアさん坂本龍一さんなども参加していたこのアルバムの中でも、『白眉は「東京シャイネス・ボーイ」だろう』と言われるほどの高評価を得ています。

2011年1月にリリースした1st アルバム「WORLD RECORD」も好評でしたが、リリース後まもなく柳智之さんがイラストレーターに専念するためにバンドを脱退。

2015年5月リリースの3rd アルバム「Obscure Ride」は、オリコンウィークリーチャートで8位にランクインし、「CDショップ大賞2016」入賞「ミュージックマガジン」「2010年代の邦楽アルバム・ベスト100」5位に選ばれるなど、邦ロックファンや音楽評論家達からも絶賛されました。

2018年5月リリースの4th アルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」では、オリコンデイリーチャートで1位を獲得、ウィークリーチャートでも4位にランクインしています。

また「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS」「BEST ALTERNATIVE ARTIST」を、2016年と2019年に2度受賞しています。

cero・メンバー

髙城晶平(Vo/Gt/Fl)

多くの作詞作曲を手掛け、ソロプロジェクトShohei Takagi Parallela Botanica名義でアルバム「Triptych」リリースやFUJI ROCKに出演もしています。

阿佐ヶ谷にあるカフェバーRojiを母親と営んでいます。

レコードやCDがたくさんある家庭で育ち、子供の頃からジェイムス・テイラー、ニール・ヤング、ボブ・ディランなどのアメリカ音楽とイギリス音楽を聴いており、本格的に音楽に目覚めたのはフォークデュオのゆずです。

妻でありレーベルメイトでもある片想いのオラリーさんとの間に2人の息子がいます。

荒内佑(Key/Sampler/Cho)

髙城晶平さんと共に作詞作曲に関わり、ミックス作業も行っています。

小学校の音楽教師だった祖母を持ち、お兄さんがピアノを習っていたこともあり、常に音楽に囲まれて育ちました。

小学生でTM NETWORKを知り、5、6年生で家庭用キーボードとリズムマシーンで遊び始めています。

文才にも恵まれ、webちくまで音楽の話を綴っていた「宇宙のランチ」をまとめたエッセイ集「小鳥たちの計画」を2020年4月に刊行。

今年8月には初のソロアルバム「Śisei」もリリースしています。

橋本翼(Gt/Cho)

作曲とミックスも担当しています。

元々は宅録をしていましたが、『どうしても軽音楽部に入って欲しい』と誘われて、あまり気が進まないままバンドを始めたそうです。

現在でもceroと並行して、ジオラマシーンというソロプロジェクトとしても活動。

また、タイや沖縄で食べながら音楽も聴けるイベント「ソムタムクラブ」を開催し、オンライン酒場浮き島の管理人も務めています。

ceroオススメ曲

コンセプトを決めて壮大な世界観を描くというよりも、誰しもの日常にもあるようなふとした瞬間にフォーカスし、少しだけ気分をアップリフトしてくれるような柔らかな楽曲がceroらしさです。

主に作詞をしている髙城晶平さんは、以前からのクセで「水」が歌詞に入ることが多いそうです。

大停電の夜に

2011年1月リリースの1st アルバム「WORLD RECORD」に収録されている「大停電の夜に」は、東日本大震災で多くの人が経験した大停電によって一躍注目されました。

小説を読んでいるかのような繊細な情景描写の歌詞と、ゆったりとしたサウンドの心地良さが融合している名曲です。

Summer Soul

2016年3月7日放送の「SMAP×SMAP」に出演した際には、ceroの人気曲ランキングでも1位に選出されている「Summer Soul」を演奏しました。

香取慎吾さんがceroのファンだった為に、共演が実現したとも言われています。

『夏ってやっぱりいいよね』と口をついて出てしまうような、cero版サマーチューンです。

Orphans

クラスメイトの男女の逃避行が描かれている歌詞は、

「家出したい私と、オートバイを持っている無口なクラスメイトの僕は、白夜の火曜に終日オートバイを乗り回し、翌日また何もなかったかのように学校へ向かいます。私と僕はお互いに、別の世界では姉弟だったのかもしれないと思った。」

という、良質な短編小説のような物語です。

街の報せ

2016年12月リリースの3rd シングル「街の報せ」には、ニューヨーク在住のジャズトランペット奏者黒田卓也さんも参加しています。

ニューヨークでレコーディングされたこの曲は、セッション後にみんなで飲んで酔いつぶれた夜に、黒田卓也さんが1人で吹いていたフレーズを基に曲に仕上げました。

魚の骨 鳥の羽根

荒内佑さんがトーキング・ヘッズのアルバム「Remain In Light」を参考に、アフリカ的でポリリズムっぽく作曲したのが「魚の骨 鳥の羽根」です。

歌詞を書いた髙城晶平さんはこのサウンドに、魚の骨や鳥の羽根といった都市のなかにあっても見方を変えると呪術っぽいものを乗せました。

最後に

良質な音楽を知っている人ほどceroの魅力にハマってしまいます!

さらに良い音楽を探している方にこそオススメしたい、大人のポップバンドです。

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