韓国から発信されたと言われている「ガールクラッシュ」という言葉を聞いたことがありますか?ガールクラッシュには「同性である女性が思わず惚れ込んでしまうような魅力を備えた女性」という意味があります。
今までの女性アイドルグループというと「男性に守ってもらうような可愛らしい女性」だったり「清純な女性らしさ」がコンセプトになっていたと感じます。
しかし、時代が変わっていくにつれ、女性の価値観にも変化が必要となりました。確かに清純さや可愛らしさも女性にしか出せない魅力だと思いますが、そのことにプラスするように「強さ」や「オンリーワンの存在」も求められるようになってきました。
目次
ガールクラッシュは今だけの流行り?
今では数多くのグループが「ガールクラッシュ」をコンセプトにした楽曲を発表していますが、元祖となったのは2009年にデビューした「2NE1」だと思います。
2NE1は派手なメイクとファッションに身を包み、誰にも真似できない2NE1だけの世界観を持っていました。BIG BANGの妹分としてデビューしたこともあり、デビュー当初は「BIG BANGのガールズ版」と呼ばれたりもしましたが、独自の音楽性とパフォーマンス性で2NE1のファンを増やしました。
そして、2NE1に続けと言わんばかりにf(x)や4minuteなど今見ても素敵で魅力あふれるガールクラッシュなグループが次々と現れました。ここで彼女たちの楽曲を振り返ってみましょう。
2NE1「내가제일 잘 나가(私が一番イケてる)」
f(x)「Electric Shock」
4minute「미쳐(Crazy)」
いかがでしたでしょうか。ガールクラッシュの世界観は、それまで主流だった「可愛らしさ」「清純さ」よりも「かっこよさ」「私らしさ」を追求している楽曲が多く、現代の女性が悩んでいる部分や、こうなれたらいいのにという願望を見事に歌詞で代弁してくれています。
また、上の3つのグループを見てもわかる通り「ガールクラッシュ」といっても様々なコンセプトが存在します。一括りにせずに、それぞれのグループの違いを楽しんでみるのも面白いかもしれません。
新世代ガールクラッシュの楽曲を紹介
今回は、音楽業界からも評価された楽曲や、これからの活動が期待できる新たなガールクラッシュの楽曲を中心に紹介したいと思います。
ITZY「NOT SHY」
ITZYは2019年にデビューした5人組ガールズグループです。デビュー曲「DALLA DALLA」は、MVの公開から24時間で約1,400万回の再生数を獲得し、デビュー曲の記録としては当時の史上最速記録を更新しました。
ITZYの楽曲は「私は私だから」「あなたの考えに合わせる気はない」など、強めな歌詞が印象的です。また、女性ファンが真似したくなるヘアメイクやファッションを次々と披露し、楽曲以外でも注目を集めています。
今までの楽曲では「世間の意見に負けない強い女性像」をイメージさせる曲を歌ってきましたが「NOT SHY」では「愛」にテーマを変えてITZYらしさを発揮してくれました。恋愛に関しても自分を曲げない強さが感じられます。
난 빨리빨리 원하는 걸 말해
私はすぐに欲しいものを言って
못 가지면 어때 괜히
手に入らなかったらどうするの
망설이다 시간만 가니
迷ってたら時間だけ過ぎていく
(「NOT SHY」歌詞より引用)
「迷ってたら時間だけ過ぎていく」という部分は恋愛だけではなく、仕事でも友達関係でも何にでも当てはまる部分であり、わかっていても実行に移すことはなかなかできない行動をITZYは、さらっと冒頭で歌い上げています。
내 맘은 내 거 그러니까
私の心は私のものだから
좋아한다고 자유니까
好きっていうのは自由だから
네 맘은 네 거 맞으니까
君の心は君のものだから
말해봐 다 어서 다
言ってみて 全部 はやく
(「NOT SHY」歌詞より引用)
他人の意見なんか関係ない、自分が思っていることを全部言っちゃいなさい!と背中を押してくれているかのような歌詞ですね。他にも「私の考えが正しいよ」「君はすぐに答えなくてもいいよ。どうせ私のものだから」と強気な歌詞が並びます。
ITZY節全開なカラフルで元気なMVにも注目です。車を運転するシーンがあるのですが、そのシーンを撮影するためにイェジとリュジンが車の免許を取得したそうです。「振り」だけでは終わらせないところがITZYらしさであり、見た目だけのかっこよさではないことがわかりますね。
しかし、MVのエンドロールではしっかりと可愛らしさを披露するところがファンの心をぐっと掴んでいると思います。最後の最後まで要チェックですよ!
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MAMAMOO「HIP」
MAMAMOOは2014年にデビューした歌唱力抜群のグループです。デビュー時からその歌唱力の高さに「新人らしくない新人」と表現されたというエピソードを持っています。
MAMAMOOは個々の歌唱力やパフォーマンス力の高さから、どんなコンセプトの楽曲でも自分たちの曲にしてしまう魅力を持っています。
特に「ガールクラッシュ」というコンセプトでデビューしたわけではないのですが、今ではどんなファッションでも似合うカリスマ性と飾らない女性像を歌うこともあり、ガールクラッシュの代表として挙げられています。
タイトルの「HIP」は、体の「尻」ではなく「かっこいい」「cool」という意味のスラング言葉で「自分自身を愛する心から始まる」という、人の意見よりも自分はどうなりたいのか、どうありたいのかを歌っている楽曲です。
この曲は、メンバーのファサが作詞に参加しており、ファサの考え方や生き方が歌詞に反映されていると感じました。
どこででも
輝ける
あなたはオリジナル
でもなぜまた空に唾吐く?(カートゥ!)
(「HIP」歌詞より引用)
MVでは唾を吐く振り付けもあり、この部分が音楽業界からも評価を得ています。ファサは日頃から自分の考え方やスタイルを隠さずに表現する人物でもあり、ファサだからこそ、この歌詞が歌えるのではないかと思います。
炎上は逆に感謝
負け犬にあげないOne Chance
強靭なメンタル装備
もう次なるアルバム準備
(「HIP」歌詞より引用)
ムンビョルのラップ部分では、現代の誹謗中傷問題を思わせるような歌詞が見られます。しかし、それに感謝し、おかげでメンタルが強くなったとポジティブに力強く反応しており、そこにMAMAMOOのかっこよさが感じられます。
「HIP」は、見た目や周りの意見なんて関係ない。自分自身を愛しなさい。そうすれば真のかっこよさに出会えると、伝えてくれています。MVでも自分が好きな衣装に身を纏ったメンバー全員が、それぞれの個性を持ってパフォーマンスをしています。
CHUNG HA(チョンハ)「Gotta Go」
CHUNG HA は2016年にオーディション番組「PRODUCE 101」に参加しI.O.Iとしてデビュー後、2017年にソロデビューを果たしました。オーディション番組出演時から常にA評価をもらうなど、実力を持ったアイドルです。
I.O.IでCHUNG HAはリードボーカルとリードダンサーを務め、ユニット活動でもメインボーカルを務めるなど、常にグループを牽引してきました。
グループ活動終了後は順調に音楽番組で1位を獲得し、ソロでも成功を修めました。グループでの活動が主流となっている韓国で、ソロとして成功しているアイドルはあまりいないこともあり、CHUNG HAの歌唱力とパフォーマンス力、そしてカリスマ性に注目が集まっています。
CHUNG HAの楽曲は世間的な強さというよりは、1人の女性としての魅力を表現した楽曲が多いと感じました。また、事務所を超えて様々なアーティストとコラボレーションしたりと積極的な活動を行っています。
「Gotta Go」は「行かなくちゃ」という意味を持っており、彼と離れる時間を惜しむ女性の気持ちを歌っています。韓国語のタイトルは「벌써 12시(もう12時)」になっており、サビの部分をより深く感じさせます。
아쉬워 벌써 12시
残念 もう12時
어떡해 벌써 12시네
どうしよう もう12時なのね
(「Gotta Go」歌詞より引用)
サビの歌詞と曲調が頭の中から離れなくなるような中毒性を持っており、振り付けも印象的なことからバラエティ番組などでCHUNG HAのサビの部分を真似して踊るアイドルも現れました。
アイドルの恋愛の曲というと好きな人の気持ちがわからなくて揺れ動く恋心だったり「私の気持ちにはっきり答えて!」という歌詞が多く見られるのですが、CHUNG HAの曲は「私もあなたが好き」「同じ思いなのを分かっているのに、これ以上は素直になれない」という飾らないストレートさと、大人の女性像が浮かび上がってきます。
MVでは、赤や黒を基調とした凛々しくもどこか切ない、そして情熱を感じさせる女性を描いたパフォーマンスが目を引きます。CHUNG HAは曲のコンセプトごとにメイクやファッションを変えて表現するので、曲ごとに様々なCHUNG HAを感じることができます。
Weki Meki 「COOL」
2017年にデビューしたWeki Mekiは「ティーン・クラッシュ」をコンセプトとしています。ティーン・クラッシュとは「ティーン(10代)」とガールクラッシュの「クラッシュ」を合成した造語で、デビュー当時は全員が10代だったことから「Weki Mekiだけのハツラツとした魅力でファンの心を惹きつける」という意味が込められています。
Weki Mekiの特徴は、全員のパフォーマンス力が高いということではないかと思います。8人グループと、ガールズグループでは人数が多いWeki Meki。人数が多いと「歌は上手だけどダンスは苦手」というメンバーが必ずしも1人はいるものなのですが、Weki Mekiは全員が同じ水準で歌って踊れるグループなんです!
さらに、2020年10月に発売した「COOL」では、全員がほとんど同じ衣装に身を包みパフォーマンスをするというK-POPではあまり見ない表現方法に挑戦しました。また、この衣装がパンツスタイルのスーツであったことから、女性からも「かっこいい!憧れる!」と支持を得ました。
MVでは女性らしさを残しながらもガールクラッシュな楽曲とパフォーマンスを見せています。「ガールクラッシュ」というと派手な衣装とメイクが印象的ですが、Weki Mekiは普段の姿とあまり変わらない衣装とメイクをしています。
普段は女性的なグループがガールクラッシュをしていることが好きだというファンも多く、Weki Mekiの「COOL」は、あまりガールクラッシュの楽曲を聞かないという新たなファン層も獲得したと感じます。
재미없는 규칙은 다 벗어나
つまらないルールは全部脱ぎ捨てて
우리가 바꿔버리면 되니까
私たちが変えてしまえばいいから
머리부터 발끝까지 전부 다
頭から爪先まで全部
내 멋대로 해 나는 나답게
私の思うままにする 私は私らしく
(「COOL」歌詞より引用)
ガールクラッシュのコンセプトがハマっている歌詞と楽曲だと思いませんか?歌詞の中には「新しいものがほしいなら」「新しく変わった姿」といった「生まれ変わり」をイメージさせる言葉があります。
これはいい意味で「ティーン」から大人の女性へと変化していく様子が感じられます。この変化にはファンからの評価も高く、Weki Mekiの新たなコンセプトとなっていくような気がしています。
Weki Mekiは、今までなかなか注目を得られない期間が長かったので、これを機に韓国国内だけではなく、世界へと羽ばたいていってほしいと思っています。
「COOL」のMV再生回数は発売から約3週間で、2年前に発売した「Crush」のMV再生回数に届く勢いを見せています。
EVERGLOW「DUN DUN」
EVERGLOWは2019年にデビューした6人組ガールズグループです。「EVER(いつも)」と「GLOW(輝く)」という言葉を合わせた造語で「太陽の光が照らす日と照らさない夜があるように、光と影の両方を自分たちだけの時間に作り出す」という意味が込められています。
デビュー曲「Bon Bon Chocolate」がアメリカ・ビルボードチャートのワールドデジタルソングセールスチャート5位にランクインするという快挙を成し遂げており、海外からの人気が高いグループです。
韓国国内ではまだ思ったような成績をあげることができていませんが、メンバーのシヒョンが音楽番組のMCに抜擢されるなど、今後の期待が高いグループです。
EVERGLOWの楽曲はR&BやHIP HOP色が強く、ワールドミュージックのようなジャンルに囚われない楽曲を持っていることが魅力だと思います。
今回紹介する「DUN DUN」は曲頭から強い女性全開です。アラビアンナイトを思わせるような曲調がEVERGLOWの魅力を引き出していて、いい意味で歌詞の強さとミスマッチなセクシーさを演出していると感じました。
북을 울려라
太鼓を鳴らせ
노랠 불러라
歌を歌え
등장부터 좀 거칠게 갈 테니까
登場から少し荒っぽく行くから
깜짝 놀라지 마
驚かないで
(「DUN DUN」歌詞より引用)
「狙った獲物は逃さない」とでも言いたげな歌詞が多く、恋愛のターゲットや新たにEVERGLOWを知って曲を聞いた人を捕まえて離さないといった力強さが感じられます。
MVでは激しいパフォーマンスが曲の凛々しさを引き立てています。歌詞の「太鼓を叩け」の部分では太鼓を叩く振りを入れたり、黒い衣装に身を纏ったメンバーが歌い踊る姿は、EVERGLOWのコンセプトである「影」の部分が表現されていると感じました。
世界的な人気が高いEVERGLOWは、海外のファンからも「今回のEVERGLOWのカムバック圧勝!」「強い女最高!!」と高い評価を獲得しています。
EVERGLOWの魅力は、曲調や雰囲気のバリエーションが多いのにも関わらず、全ての楽曲が「EVERGLOW色」に染まっていることだと思います。次はどんな楽曲でファンを楽しませてくれるのか期待が高まります。
まとめ
ガールクラッシュを象徴する楽曲を紹介してみましたが、気になる曲はありましたか?
一言で「ガールクラッシュ」といってもITZYやMAMAMOOのようなカラフルな衣装に身を包み、全身で自分を表現するグループもあれば、EVERGLOWやWeki Meki、CHUNG HAのように女性らしさも見せるけれど、ガールクラッシュな表情も見せるというグループもいます。
どちらがいいという訳ではなく、自分を変幻自在に変えられる強さを持ったアイドルがこれからの時代には必要になってくると感じました。
今回紹介した以外にもガールクラッシュを象徴とするK-POPアイドルが存在しています。この記事をきっかけとして様々なグループと出会ってみてください!
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