2016年、ノーベル文学賞の受賞者が発表された時、世界中が湧きあがりました。
選ばれたのが、小説家でも作家でもない人物「ボブ・ディラン」だったからです。
今回は、世界で最も有名なシンガーソングライターの一人として知られ、今もなお現役で活躍している”生ける伝説”がボブ・ディランです。
ボブ・ディランについては、世界中のあらゆる人々が彼について深く詳しく語っています。
ノーベル文学賞を受賞してからは、音楽に興味のない人や世代を超えた若者まで、色んな人がボブ・ディランについて興味を持ち知ることになりました。
ボブ・ディランのことを語り尽くすことはどんな人にもほぼ不可能だと思いますが、特に抑えておきたいポイントをご紹介していきたいと思います。
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目次
ボブ・ディラン・これまでの経歴
まずボブ・ディランがどんな経歴を歩んできたのかを振り返りたいと思います。
- 出生名:ロバート・アレン・ジマーマン
- 生年月日:1941年5月24日
- 出身:アメリカ・ミネソタ州
ボブ・ディランは幼い頃からピアノを弾き始め、自力で習得していきました。
ラジオから流れる様々な音楽を聴いては自分の中に取り込んでいき、ギターを手に入れたボブ・ディランは音楽活動を開始します。
ニューヨークに移り、コーヒーハウスやバーなどで弾き語りをしていたボブ・ディランは、1962年3月に1stアルバム「ボブ・ディラン」でデビュー。
そして、1963年5月に2ndアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」をリリースし、ボブ・ディランの名は爆発的に広まることになりました。
同アルバムに収録されている楽曲で、ボブ・ディランの代表曲として必ず紹介される「風に吹かれて」などのようなプロテスト・ソング(政治や社会などに対し強く抗議する歌)を歌うシンガーソングライターとして注目を浴びたのです。
挙げればキリがないほど、これまでにいくつもの歴史的名曲を残し続け、78歳を過ぎた今もなお世界中のステージに立ち続けています。
ボブ・ディラン・受賞歴
ボブ・ディランは、これまでにたくさんの偉大な賞を受賞しています。
グラミー賞、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ロックの殿堂入り、ソングライターの殿堂入りといった世界中のミュージシャンが目標とする賞はもちろんのこと…。
フランス芸術文化勲章、ピューリッツァー賞特別賞、大統領自由勲章(アメリカ)、そしてノーベル文学賞など、本来シンガーソングライターが受賞するとは思われなかった賞まで受賞しているのです。
これほどの受賞歴を持つミュージシャンは他にはいないのではないかと思われるほどです。
既に歴史に名を刻んでいることは明白ですが、同じ時代を生きることができている我々は本当に幸せだと思います。
ボブ・ディラン・ノーベル文学賞
先にも書いたように、ボブ・ディランはシンガーソングライターなのにも関わらず、ノーベル文学賞を2016年に受賞しました。
この一報は世界中の人々を驚かせましたが、さらに注目されたのは受賞の発表が2016年10月13日にされましたが、2週間以上もの間何のコメントもせず沈黙していたことでした。
この間にいろんな声も飛び交いました。
戦争などの愚かさを訴えてきたボブ・ディランが「ダイナマイトを作った人物の賞など受け取るはずがない」というファンの憶測。
世界的権威のあるノーベル賞に対して何のリアクションもないのは「失礼すぎる」という批判の声など。
しかし、10月29日になってようやくボブ・ディランは受賞を受け入れ「あまりの出来事に言葉が見つからなかった」とコメントしました。
ノーベル賞授賞式には出席しませんでしたが、寄稿したスピーチでは、
- 「自分に影響を与えてきた偉大な人々の仲間入りができたことに言葉も出ない」
- 「自分の曲は文学なのか問いかけたことは一度もなかったが、それを考える時間を与えてくれ、同時にそれに対して素晴らしい答えを与えてくれたことに感謝する」
という素直な喜びの声が記されていました。
このスピーチの全文は、ファンのみならず何かを創作するクリエイターやアーティストなど、全ての人々にぜひ読んでいただきたい素晴らしい内容でした。
ボブ・ディラン・魅力
ボブ・ディランの魅力は、簡単に言い表すことは非常に難しいですが、一つはやはり彼の言葉で紡がれる歌詞そのものでしょう。
戦争や差別といった社会問題を取り上げ、ボブ・ディランらしい言い回しで表現します。
その言い回しの秀逸さはもはや歴史の名言として捉えられていて、いろんな場面でボブ・ディランの言葉が引用されるのです。
例えば裁判官が被告に対して諭す時に、ボブ・ディランの言葉を拝借することがあるそうです。
ボブ・ディランは長々と語るように歌うのが特徴ではありますが、その中のたった1フレーズで本質を言い抜くのです。
その一言が全てを語り、人々の心に生き続けるのです。
もう一つ魅力を挙げるなら、シンガーとしての佇まいです。
世界に偉大なミュージシャンは数多いますが、その中でもひときわ異彩を放っていることは否めません。
時にボブ・ディランは歌が下手だと言われることがありますが、それはもしもきれいな声で楽譜通りに歌うことが上手というならば、ボブ・ディランはしゃがれた声で言葉を吐き捨てるように歌うので下手になってしまうのかもしれません。
しかし、だからこそ言葉に熱を持たせることができ、誰かの胸を打つことができるのです。
ボブ・ディランに影響を受けた人々は世界中にたくさんいて、ビートルズからバラク・オバマまで実に幅広い支持を得ていることが、ボブ・ディランというシンガーが見せる佇まいのカリスマ性を物語っているのです。
ボブ・ディラン・代表曲
「風に吹かれて」
1963年にリリースした2ndアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」に収録されていますが、この時代のアメリカでは黒人による公民権運動が激化しており、その運動歌として歌われていました。
ボブ・ディランのことを知らないという人でも、一度は耳にしたことがあるメロディなのではないでしょうか。
『どれだけの砲弾が飛び交えば 撃つことをやめられるのだろうか』
『人々が自由になるまでには 人は何度顔を背けるのだろうか』
『人はどれだけ耳を持てば 人々の悲しみを聞くことができるのだろうか』
『どれだけの人が命を落とせば どれだけ多くの命が落とされたことに気づくのだろうか』
と、人々はどれほどの過ちを犯せば、その愚かさに気づくことができるのかと全ての人に訴えかける曲です。
「ハッティ・キャロルの寂しい死」
レストランで働く黒人女性が裕福な白人青年に殺されるという、本当にあった事件を実名で歌にした曲です。
- 1番では事件が起きたことと青年が起訴された事
- 2番では白人青年がどんな恵まれた環境で生きている人物ですぐに保釈された事
- 3番では黒人女性の境遇と理不尽な運命
を歌っておりいずれも「顔の前のハンカチをとれ、今は泣く時ではない」というフレーズで締めくくります。
そして4番で、裁判で懲役6ヶ月というありえない判決を出したことを歌い、最後にようやく「顔をハンカチに深くうずめよ、今こそが泣く時だ」と言うのです。
この歌が何を意味するのか、そして何よりも悲しむべきことはこの理不尽極まりない人種差別が生む事実なのだということを巧みに伝えているのです。
さらに驚きなのは、この曲を作った時ボブ・ディランは若干22歳だったということです。
「ライク・ア・ローリング・ストーン」
この曲は何もかも不自由なく生きていた女性の転落を描いた曲です。
全てを手に入れていたある女性が、その傲慢さが災いして彼女のことをよく思わない人々に陥れられ、全てを失います。
誰からも相手にされなくなり、帰る場所さえ失った彼女に『どんな気持ちだい?』と問いかけるのです。
この曲は、当時ボブ・ディランが交際していると噂されたイーディ・セジウィックがモデルになっているのではないかと言われています。
この二人とアンディ・ウォーホルとの間で生まれた三角関係が取り沙汰され、その数年後イーディは薬物中毒でこの世を去りますが、モデルとしたかどうかその真相はわかりません。
ボブ・ディランの曲はどれもが名曲と呼ばれていて、到底全ては紹介しきれないほどですが、まずボブ・ディランを知るには、2ndアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」を聴くのがおすすめです。
なぜなら、1stアルバムではボブ・ディラン自身が作詞作曲をしたのはわずか2曲しかなく、ボブ・ディランの言葉でほぼ埋め尽くした最初のアルバムが「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」だからです。
ボブ・ディラン・世代の代弁者?
ボブ・ディランは、若者が抱く社会への不満や争いの醜さ、差別の愚かさを過激に歌ってきたため「世代の代弁者」と呼ばれることが多々あります。
しかし、ボブ・ディラン自身はそのように呼ばれることに嫌悪感を抱いていました。
誰もが訴えたいことを代表して叫んでるわけではなく、あくまで自分の胸の内に溢れる感情や言葉を伝えているだけなのでしょう。
それが大きな共感を呼んだために祭り上げられてしまったのです。
その何にも媚びない一貫した姿が、世代を超えて愛され続ける理由なのかもしれません。
ボブ・ディラン・終わらないライブ
ボブ・ディランは、今でも世界各地で年間100カ所以上ものライブを行っており「ネバー・エンディング・ツアー」とファンの間で呼ばれています。
ノーベル文学賞受賞の一報が入った時も、ボブ・ディランはツアー中でした。
アルバムリリースも精力的に行い、世界中で歌い続けるボブ・ディランはまさに『生ける伝説』なのです。
最後に…
2020年4月には9度目となる東京・大阪での来日公演を行うボブ・ディラン。
1ヶ月で驚きの14公演が行われますが、いずれのステージも距離の近いライブハウスです。
この日本限定のスタイルに世界からはジェラシーの声が噴出していますので、日本のファンは必見でしょう。
間近でボブ・ディランを見られる、またとないかも知れないチャンスなので、是非足を運んで見てはいかがでしょうか。
語っても語っても語り尽くせないボブ・ディラン、聴く人によって感じる魅力はそれぞれでしょう。
あまり知らなかったという方は、一度ご試聴ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。