可愛らしさが漂うエレクトロニックなサウンドと、アグレッシブなトラップを見事に融合させて、独特な音楽を生み出し続けている俊英のボカロP・なきそ。
中学1年生の頃に初音ミクを手に入れたことをきっかけに作曲の世界に飛び込んだ彼の魅力を、おすすめの楽曲を紹介しながら徹底解説します。
目次
なきそとは?
【お知らせ】
あの『お呪い』が小説になりました‼️
『ド屑2』としてKADOKAWAさんから8/23(ちなみに誕生日)発売‼️https://t.co/nzxGiIw8p7 pic.twitter.com/ZBhRFk8mj8— なきそ (@7kiso_nakiso) August 10, 2024
なきそは2001年8月23日生まれの若手でありながら、「ド屑」や「お呪い」など数々のヒット曲を世に送り出し、特に若い世代を中心にボカロPとして高い評価を得ています。幼少期から音楽が生活の身近にあり、エレクトーンからピアノ、そして中学1年生の頃に入手したVOCALOIDなどに触れながら、作曲家としての階段を少しずつ上っていきました。
試行錯誤を重ねた末、輝星という名義でニコニコ動画に投稿された処女作が、「語彙力が足りない」です。
タイトルが示すとおり、確かにその歌詞は「語彙力が足りない」としか表現し得ないものなのですが、ひたすら「自分の推しを推し続ける」ことに関して不思議なほど共感してしまう魅力があります。
ボカロPを志したきっかけは?
先述の通り、音楽が身近にある環境で育ったなきそは、小学生の頃からボカロPとして活躍することを夢見ていたといいます。
作曲を始めたばかりの頃は、非常に短いフレーズを作っているだけで、ネットに楽曲を投稿するという段階にまで至っていなかったというようなコメントも残していますが、その後、高校1年生の頃にそれまで所属していた吹奏楽部を退部し、作曲に打ち込む時間が増えたことが、なきそにとって大きな転機になります。
なきそにとっては、「皆で同じ目標を追いかけて夢を叶える」というやり方よりも、周囲に影響されず一人で目標を追いかける方が性に合っていたようで、気力が充実しているときは作曲に励み、あまりやる気が出ないときは一休みするというマイペースなやり方で、ボカロPとして経験値をじっくり積んでいきました。
処女作「語彙力が足りない」 を投稿し、念願のボカロPデビュー!
2018年1月に、なきそが「輝星」という名義でニコニコ動画に初投稿した楽曲が「語彙力が足りない」でした。歌詞を紡ぐ上でヒントになったのが、友人が叫んでいた言葉ということで、なきそ自身が語るとおりに「一口サイズ」の楽曲ですが、共感しやすい歌詞と相まって、何度もリピートしたくなります。
大ヒット曲「ド屑」が1,600万再生を突破!
ボカロPとしてデビューを飾ったなきそにとって大きなターニングポイントになった楽曲が、「狂気」や「欲望」などの生々しい感情をどす黒く表現した問題作「ド屑」です。
YouTubeの集計によれば、2024年9月時点で実に1600万回以上も再生され、圧倒的な中毒性の高さから次から次へとファンを獲得しています。
オリジナル版のほかにも、にじさんじに所属するVTuberの町田ちまによってカバーされるなど、初公開から時間が経過した現在でも勢いがとどまるところを知りません。
さらに、なきそにとって名刺代わりともいえるような、若い世代を中心に圧倒的な支持を得ている楽曲「ド屑」をモチーフにしたノベライズがKADOKAWAのMF文庫Jより、さらにコミック版が一迅社より刊行されています。
超ボカニコ2023 Supported by 東武トップツアーズに出演
2023年4月29日と30日の2日間にわたって、幕張メッセで開催された『ニコニコ超会議2023』。
このイベント内で企画されたボカロ曲オンリーの音楽ステージである『超ボカニコ2023 Supported by 東武トップツアーズ』に、1日目のゲストとしてなきそが出演しています。
任された役割は本業のボカロPではなくDJで、このイベントで人生2回目のDJを経験したなきそは、「めちゃめちゃ緊張していました」と語る一方で、「またやりたいな」と意欲を見せていました。
なきそにとって作曲の極意とは?
幼少期からボカロPを志していたというなきそにとって、ずばり作曲の極意とはどのようなものか。
特にこだわりの強い部分と、作りたい楽曲のイメージに合わせて柔軟に変更する部分の両方があるという彼の感性を、主に使用している機材、音作りへのこだわり、さらには、女性目線の歌詞が目立つことに着目しながら紐解いていきます。
使用機材について
小学生の頃からボカロPを志し、中学1年生の頃にVOCALOID(初音ミク)を入手したことをきっかけに、少しずつ作曲の世界へとのめり込み、作曲のスキルを磨くとともに少しずつ使用機材をグレードアップさせた結果、過去のインタビューで、ソフトシンセについては基本的にXFER RECORDS Serumを使用するケースが多いと回答しています。
また、中学生の頃に初めて購入した初音ミクに付属していたStudio One Artistの操作に慣れたという理由から、同じ系列のDAWのアップグレード版であるPRESONUS Studio Oneを使用しています。(2023年5月時点)
音作りへのこだわり
様々な楽曲に耳を傾けてみると、まずは全体的に音数が少ないような印象を受けます。加えてリフレインのやや多い曲調には独特の一体感があり、中毒性の高いメロディーへと昇華されています。
加えて、明るい曲調から一転して暗い曲調へと変化する不穏な構成や、サビの部分で唐突に歌唱が途切れるような、ドロップと呼ばれる演出を用いている楽曲もあります。
ポップな曲調の中に潜む、心がきしむような怖さや違和感、加えて比較的短いメロディーラインが癖になり、若い世代を中心に高い評価を獲得しています。
女性目線の心情描写が目立つ歌詞
異性に対して自分の気持ちを伝えられずにいる、あるいは思いを伝えようとして狂気にひた走る、というような女性目線の歌詞が目立つことも、なきその楽曲が持つ特徴の1つといえます。
素直な胸の内を打ち明けられずにネガティブな感情を抱えている人は現実の世界にも大勢いるため、その生み出す音楽が若い世代を中心に大勢のハートに突き刺さっているとも考えられます。