【SixTONES】「うやむや」に感じるボカロっぽさの考察【ジャニーズ】

【SixTONES】「うやむや」に感じるボカロっぽさの考察【ジャニーズ】

「YouTubeでうやむやって曲がボカロみたいで聞いてたらジャニーズでびっくりした」

「SixTONESが好きでうやむやを聞いていたらボカロっぽいと言われているらしくて気になる」

ボカロで育った世代としてうやむやにすごい心を掴まれた」

このような気持ちや懐かしさを感じながらこの記事を読んでくださっている方も多いのではないでしょうか。

SixTONESのメンバーの松村北斗さんも、「うやむやは自分がイメージを伝えた曲でボカロっぽい曲」だと話しています。

この記事では、SixTONESの「うやむや」にどうしてボカロっぽさを感じるのか、そしてその魅力などを考察していきます。

この文章を読んで、

「そうそうその感覚になった!」

「こういう理由でボカロっぽさを感じたのか」

と感じていただければ幸いです。

 

SixTONES「うやむや」とは

「うやむや」とは SixTONESのファーストアルバム「1ST」の通常版に収録されている楽曲です。

SixTONESはYouTubeチャンネルなどで積極的に自身の音楽活動のプロモーションを行っており

今回のアルバムも例に漏れず、リード曲の「ST」のMVはもちろん、アルバム全曲のdigest動画を公開しています。

ジャニーズでこのようなプロモーションをYouTubeというプラットフォームで行うことに驚いた方も多いのではないでしょうか。

実はSixTONESは「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」として、デビュー前からYouTube活動を精力的に行っており

2018年には日本人初の「YouTubeアーティストプロモキャンペーン」に抜擢され、当時ジャニーズJr.としては異例のMVを作成

現在ではこの動画は2,500万回近く再生されています。

デビュー後もSixTONES公式のアーティストチャンネルでMVやその制作裏側、旅動画から企画モノまで毎週金曜日に動画を更新するなど

まさにSixTONESは「ジャニーズ内のデジタル先進国」という地位を確立しています。

このような背景から、今回のSixTONESの1stアルバム「1ST」のプロモーションを様々な切り口で行えたのでした。

しかしこのうやむやという楽曲だけは、その名の通り発売されるまでその情報がうやむやのまま。

先ほどの動画でも、他の曲は全てサビなどが流れ曲の雰囲気をつかむことができるようになっていますが、「うやむや」に関しては前奏と歌い出し一言が流れるだけでした。

これについてSONY社の担当者は

「1曲くらいCDを買ってから初めて全貌がわかる曲があっても面白いのではないかと考えた」

という解説を後にしています。

ソニーミュージック社のSixTONESの売り方に関してはファンの間でも定評があり、今回のこの試みも大きな反響を呼びました。

そしてアルバムが発売された翌日の1月7日、こちらの動画が SixTONESの公式チャンネルにて投稿されました。

サムネイルから一目で「ボカロ風の曲」だということが見て取れるこちらの動画。

アニメーションをエムメロさん、イラストレーションをダイスケリチャードさんが担当しています。

えむめろさんはHoney Worksから出たユニットLIP LIPの「GOOD BYE」のMVや三月のパンタシアさんの楽曲MVなどを手がけています。

ダイスケリチャードさんはイラストレーションの仕事を主にされており、個展なども開いています。

MVで言えば、えむめろさんと同じく3月のパンタ者さんの楽曲に参加したこともありますね。

今回のうやむやのMVを見て、「ダイスケリチャードさんの絵だ!」と分かった方もいるかと思います。

MEMO

メンバーの松村北斗さんが以前にラジオでリクエストした3月のパンタシアさんの「街路、ライトの灯りだらけ」もこのお二人がアニメーションを作成しています

そしてイラストスタイルのMVということで、アイドルの楽曲ながら本人達は一切登場しません。

普通アイドルといえば顔が商売道具で、MVではかっこいい姿やキラキラした姿などが魅力のものが多いです。

しかしSixTONESは「アイドルだけど、アーティストでもありたい」という想いのもと、今までもデビュー1年目ながら音楽で勝負する施策を数多く打ってきました。

今回の作品も、純粋に曲の世界観や本人達の歌の力で聴衆を惹きつけられる自信があると感じさせられる作品になっています。

それでは、なぜこのうやむやがボカロっぽいと言われているのかについて、早速考察していきましょう。

「うやむや」に感じるボカロ感のわけと近代音楽シーンにマッチした戦略

MVの映像テイスト

初めに話した通り、当然サムネイルと映像がこの曲にボカロっぽさを与えていることはいうまでもありません。

最近ではよく見かけるMV内で歌詞が足早に駆け抜けていく演出は、往年のボカロ曲を代表するものですね。

もう少し細かく見ると、文字の色やフォントが次々と変わったり、イラストの視点がめまぐるしく動いたり、登場人物のスタイルなどもボカロ感を生み出している一因だと考えられます。

ボカロ史の観点から見ると、今回のMVは比較的近年のボカロの流れをくみ取った作品になっていると思います。

ボカロ曲とは、VOCALOIDという初音ミクや鏡音リンなどのキャラクター(音声ソフト)に歌わせた曲ですが

当然初期のボカロ曲のMVでは、その歌っているキャラクターのイラストが主流でした。

現在圧倒的人気を誇っている米津玄師さんも昔は「ハチ」と言う名義でカリスマ的人気を誇るボカロPでしたが

そのハチさんの楽曲のMVでは一貫してボーカロイドのキャラクターがMVに出ています。

そんな中、2013〜14年ごろから曲を歌っているボカロキャラクターとは関係ないオリジナルキャラクターが登場するPVが増加してきました。

これはじんさんのプロデュースするカゲロウプロジェクト、通称「カゲプロ」の大ブームや

女子中高生の間で絶大な人気を誇り、王道少女漫画のような雰囲気が特徴の曲を作成するHoneyWorksさんの影響があるのではと考えています。

この2つは、ボーカロイドを使用しながらも独自のキャラクターとストーリーを展開させ大ヒットを起こした先駆者であるので

この存在が大衆に広く知れ渡った後に、ボカロ楽曲でもオリジナルキャラクターを出すという選択肢が広まったのではないかと考えられるからです。

そして近年では、YOASOBIさん、ずっと真夜中でいいのに。さん、美波さんなど

本人のオリジナル楽曲でMVがボカロキャラクターの出ていないボカロ曲のようなアニメ映像が特徴の歌手も増えてきましたね。

特にYOASOBIさんは2020年度の紅白歌合戦にも出場し、このようなMVの在り方が一般に浸透してきたので

今回の SixTONESの「うやむや」のMVも、元からボカロが好きな層も、最近の音楽のトレンドが好きな層も引きつけるものになっていたと思われます。

今回のアルバム「1ST」のテーマの一つに”ジャンルレス“というものがあります。

デビュー後からのSixTONESのシングル曲は「Imitation Rain」、「NAVIGATOR」、「NEW ERA」と曲調はロックのものが多く、「1ST」のリード曲「ST」も激しいロックになっています。

しかしSixTONESはJr.時代から多くのオリジナル曲を持ち、そのジャンルも様々で元から色々な表情を歌で見せることのできるグループです。

「1ST」の宣伝文句は「待ってろ、世界。」

その言葉通り、SixTONESは視座を高く持ち世界を虎視眈々と見据えた音楽活動をしています。

本アルバムにも「うやむや」のような新しい分野だけでなく、ROCK、HIP HOP、バラードや世界の音楽シーンのトレンドを取り入れた楽曲が多く収録されています。

ただ単純にトレンドの流れに乗るだけでなく、その分野に造詣の深い方と手を組み、クオリティの高い作品を作り世に放つところに、SixTONESとSONY MUSIC社のこだわりを感じますね。

音の数の多さ、BPMの高さ

「うやむや」のボカロ曲っぽさを作り上げている2つ目の要因は、「音の数の多さ」です。

ボカロ曲はいわゆる打ち込みで作成する音楽が主流です。

打ち込みとは、実際にギターやピアノなどを演奏して音を録るのでなく、PCを使い音楽ソフトで音符を入力して曲を作ることです。

そのため、普通の人間が演奏するには難易度の高いような曲も演奏することができます。

このようなことから、いわゆる一般的なポップス楽曲と比べボカロ曲には音の数も多く、BPMも高い曲が多いことも特徴の一つです。

もちろんそれ以外の特徴でボカロっぽさを感じるボカロ楽曲はたくさんありますが、このような特徴の曲を聴いてボカロを想起する人は多いでしょう。

「うやむや」も曲全体を通して主にあるピアノに始まり後ろの電子音から畳み掛けるような歌詞にまで、短い時間に多くの音が入れられています。

このピアノの超高速音というのが、特に2000年代後半、2010年代前半のボカロ曲を連想させているのではないかと考えられます。

この時代では、wowokaさんの「ローリンガール」やcosMo@暴走Pさんの「初音ミクの消失」のように高速ピアノが耳に残る名曲が多いです。

これほどピアノが前面に出ていないものでも、トーマさんの「バビロン」などもこの時代の楽曲の象徴と言えるでしょう。(動画には歌い手に島爺さんが歌ってみたものを引用しています)

特にAメロBメロなどが非常に速いテンポで多くのフレーズが息継ぎする間も無く注ぎ込まれていますね。

トーマさんは2010年初頭に一斉を風靡したボカロPで、「バビロン」のような爽快感と独自の世界観に支配された楽曲が魅力です。

ただこれを聴いた方の中には、「うやむやと全然曲が似ていない」と感じる方もいるかもしれません。

その理由は、「うやむや」は特徴としては古き良きボカロ文化を踏襲しつつも、全体としては近年の音楽シーンの特徴をうまく取り入れた楽曲になっているからだと考えられます。

前述のMVのテイストの話と同様にYOASOBIさんなどを筆頭に、現在の音楽シーンではこのボカロ文化をうまく引き継ぎながらおしゃれさを組み合わせた楽曲が人気を博しています。

実際にYOASOBIさんの代表曲、「夜に駆ける」もBPMが高く、短いパートの中に多くの音が敷き詰められているのがわかると思います。

そもそもYOASOBIはボーカルのikuraさんとプロデューサーのAyaseさんのユニットですが、Ayaseさんはボカロ楽曲も作成しているいわゆる「ボカロP」でもあります。

「ラストリゾート」などは800万回以上の再生回数を誇っており、まさに新進気鋭のクリエイターです。

また前述のヨルシカのn-bunaさんも元々ボカロPとして活動しており、他にも彗星の如く現れたロックバンドヒトリエも伝説的ボカロPであるwowokaさんが所属していました。

その他にも先日デビュー5周年を迎えたPENGUIN RESEARCHの堀江晶太さんはkemu名義で活動していましたし、

大人気アニメ「呪術廻戦」のOPを担当するEveさんもニコニコ動画で歌い手、そしてボカロPとして活動しています。


このように、かつてニコニコ動画でボカロ文化と触れ合い、ルーツの一部になっている方が現在の音楽業界の前線で活躍しており

ボカロの系譜を感じさせかつ磨き上げられたおしゃれさを含んだ楽曲に「最近の曲」というイメージを感じる人が増えたと思われます。

そのような観点から、同様にこの流れを汲んだ「うやむや」も最新のトレンドを感じさせながらも、その根にボカロ感を感じる理由になっているのではないでしょうか。

耳に残るフレーズの連出

前述の「音の数の多さ」にもつながる話ですが、「うやむや」にはキャッチーで耳に残る単語が次々と並べられます。

それはオノマトペ(擬声語)であったり、韻を踏んでいたりと手法は様々に、短い単語でマシンガンのようにフレーズが連射される部分にボカロっぽさを感じた方も多いのではないでしょうか。

またそのような部分で効果的に音程をあまり変えずに進行させているので、よりフレーズが耳に残りかつボカロっぽさを生み出しているように感じます。

他にも、韻を踏むといえばヒップホップ調の曲を連想することが多いですが

ボカロでは通常の曲に比べてより様々なジャンルで韻踏みを多用し、聴く方も歌う方も爽快感を感じる曲が多い傾向があります。

例えばLast Noteさんの「セツナトリップ」や、スズムPさんの「世界寿命と最後に一日」なども、韻を多く踏みながらもHIPHOPでなく完全に「The ボカロ」という曲調を作り上げています。
(動画は「セツナトリップ」を歌い手のkradnessさんが歌ったものを引用しています。)

「うやむや」のBメロやサビなどにもこの特徴がみられ、個人的には特にサビの最後「I must go 脱走 うやむやで」の韻踏みからの裏声締めの部分にボカロっぽさを強く感じました。

6人で歌うことの合唱動画感

こちらはボカロ曲っぽさというよりも「ボカロ界隈曲ぽっさ」といったほうが正しいかもしれません。

ボカロ曲は歌い手というインターネット上で曲をカバーして投稿する文化と切っては切り離せない関係にあり

古くは2009年ごろボカロ曲が次第にニコニコ動画内で広まってきた少し後から、いわゆる「歌ってみた文化」が生まれ

2010年代初頭にはその人気は爆発的なものになり、会員制でユーザー数が限られるニコニコ動画において数百万再生を叩き出す歌い手も次々と出てくるほどでした。

そんな中、同じ曲で異なる人が歌ってみた動画をつなぎ合わせるいわゆる「合唱動画」文化が形成されました。

この時代はまだSNSなども一部の人しか使っていない状態で、「ネットを介して人と会う」ことのハードルが今よりもずっと高く

歌ってみた動画などで2人や3人のコラボはあれど、大勢の人がコラボして動画をあげるという文化はほとんどありませんでした。

そのような時代背景の中で、一度に複数の人の歌声を聞くことができ、他の方の歌と交わることで新たな魅力が生まれたり、好きな歌い手と好きな歌い手の夢のコラボ、なども実現した合唱動画は当時多くのファンを魅了しました。

「うやむや」は当然SixTONESの6人が歌っているので、一般的な「歌ってみた動画」というよりは「合唱動画」のような側面に近いものがあるでしょう。

また合唱動画では、当時ニコニコ動画で既存のボカロ曲をラップアレンジして歌っていた歌い手の方の動画も使用されており、他の歌ってみた動画と混ざることで動画にスパイスを加えていたのですが

「うやむや」でも田中樹さんのパートで一気にSixTONESの曲らしさを出すと同時に、そのような合唱系動画を想起させるまたひとつの部分として感じた方も少なくないかもしれませんね。

歌の入りが早い

最後に、これはあまりボカロ独自の文化ではないのですが、「うやむや」はジェシーさんのボーカルでサビからイントロが始まります。

近年BPMが早めでいわゆるボカロっぽさを感じる曲が増えてきたと話しましたが

このイントロからすぐに人を惹きつけるような曲の構成も多くなってきています。

特に邦ロックの曲やアニソンなどでこのトレンドは見られます。

これはサブスクの普及により1人の人間が触れる音楽の数が一気に増大し、その分曲を聴いてから自分に合う合わないを判断する時間が短くなったので

曲の冒頭からサビやキャッチーな部分を置き、リスナーをつかむような曲の構成が増えたという言説があります。

アニメのオープニングもTVバージョンでは89秒以内に抑えなければいけないという決まりがあるので

こちらも段々と最初にリスナーを掴む構成にし、短い時間により多くの魅力を入れるためにBPMを早い曲が増えたという流れがあります。

SixTONESの3rdシングル「NEW ERA」もアニメ「半妖の夜叉姫」のOPの際には前奏をカットしてサビから始まっていましたね。

こういった点も「うやむや」は意識されて作られたのかもしれません。

うやむやは今と昔の文化を取り入れた様々な層に刺さる秘密兵器

以上のように、「うやむや」は映像や曲のおしゃれさは近年流行っている音楽シーンの流れをうまく汲み取ったものに

耳に残るフレーズを次々と並べて息継ぎままならぬスピード感でピアノと共に疾走していく様に古き良きボカロ文化を感じる構成になっていたと感じました。

このように、最近の音楽に敏感な層にも、かつてボカロを聴いて育ったデジタル音楽世代にも両方にも刺さる作品になっており

今後も多くの人に愛される楽曲なのではないでしょうか。

またこの楽曲の全貌をアルバム発売まで”曖昧”にし、YouTubeにMVとして投稿する流れの美しさには感服ですね。

今後も6つの原石がどのような新しい世界を私たちに見せてくれるのか。

アルバム「1ST」は、この1曲だけを見てもそんな期待が一層膨らんでしまうような作品になっています。

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