1913年に創設されて以来、数々の名作を生み出してきた宝塚歌劇団。
今回はその中でも、初めて宝塚を視聴する人でも楽しめる、トップスター&トップ娘役が主役を演じた作品を5つの部門に分けて紹介すると共に、宝塚ならではの注目ポイントも併せて紹介していきます。
目次
大作部門
ベルサイユのばら
1974年に月組で初演を迎えた、宝塚を代表する史上最大のヒット作として、幾度となく再演されている名作です。
原作は、池田理代子の同名漫画「ベルサイユのばら」。
本作品の特徴は、「オスカル編」「オスカルとアンドレ編」「フェルゼンとマリー・アントワネット編」「フェルゼン編」と4つのバージョンが存在し、バージョンごとに主人公や脚本が異なる点にあります。
おすすめの公演は、2024年7月から10月にかけて、雪組トップスター彩風咲奈の退団公演として上演された、最新作の「ベルサイユのばら-フェルゼン編-」です。
初演が1974年と古いため、ストーリーが分かりにくい、古さを感じる演出が多いなどの理由で人気が低落していましたが、2024年版は構成を見直し、新曲も取り入れるなど、原作未読の方や宝塚の新規のファンでも楽しめる内容となっています。
一方で、舞台の大階段を断頭台に見立てるなど、いままで受け継がれてきた伝統的な演出はそのままなので、古くからのファンも満足の出来と言えるでしょう。
ファントム
2004年に宙組で初演を迎えた、世界的ミュージカル作品の宝塚版です。
原作は1910年に発表された、ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」。
主役は、パリオペラ座の歌姫クリスティーヌと、その彼女の天才的な歌声に惚れ込み、歌を教えるファントムで、非常に高い歌唱力と表現力が必要とされる作品です。
おすすめは、2018年に上演された、「宝塚歌劇団随一の歌唱力」「最高のハーモニー」と絶賛された、雪組の伝説的トップコンビ望海風斗×真彩希帆版。
ファントムに教授されて歌唱力が上達したことを、ささやかな歌声の変化だけで実感させた真彩と、通常なら理解しがたい歪んだ執着を抱えたファントムの心理を、その高い演技力と歌声で見事に描き出した望海による本作は、多くの絶賛を浴びました。
また、ファントムという怪人の異常性や事件の不気味さが中心となる「オペラ座の怪人」と比較して、「ファントム」はクリスティーヌへの愛やファントム自身の人間性に重点が置かれているのも特徴です。
エリザベート -愛と死の輪舞-
1996年の雪組で初演を迎えた、ウィーン・ミュージカル「エリザベート」の宝塚版。
宝塚で上演された海外ミュージカルを元にした作品の中では、最大のヒットとなった作品であり、今まで10回にわたり上演されている人気作です。
タイトルロールでもある主人公のエリザベート役は、若い頃から壮年期までを時間経過を感じさせつつも一人の人間としての連続性をもって演じる必要がある、高度な歌唱力が要求されるなどの理由で、名実ともに揃ったトップ娘役にしか与えられない役柄として知られています。
過去に宝塚でトップ娘役を演じた花總まり、蘭乃はな、愛希れいかは、退団後も外部の舞台でエリザベートを演じており、特に「宝塚の女帝」と呼ばれた花總まりは宝塚での初演である1996年から退団後の2023年までエリザベートを演じ、「エリザ役者」の異名を持つほどの実力の持ち主として活躍しています。
また、トップスターが演じる「死の概念」役も、彼女を愛しその命を奪おうとする抽象的な存在であり、こちらも高い演技力が必要となる難役です。
他にも、物語の語り手でありテロリストのルキーニ役は、後にトップスターとなった龍真咲や望海風斗、月城かなとなどが演じたため、トップスターの試金石と言われるなど、様々な見所を持つ作品としても人気があります。
おすすめは、2014年花組の明日海りお×蘭乃はなと、2016年宙組の朝夏まなと×実咲凜音。
前者は宝塚のトップ級の実力者たちが集まった華やかさ、後者はキャストのイメージが役柄と一致しており、「コーラスの宙組」らしい聞きごたえのある楽曲が楽しめるという特徴があります。
コメディ部門
THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)
2008年に星組で初演を迎えた、同名のブロードウェイ・ミュージカルの宝塚版です。
原作は、バロネス・オルツィの小説「紅はこべ」。
フランス革命の最中にあるパリを舞台に、無実の貴族たちを逮捕・処刑しようとするジャコバン派の革命政府&公安委員会と、彼らを救い出す正体不明の一団「スカーレット・ピンパーネル団」の対立を軸に、愛と友情・冒険を描いたエンターテイメント作品です。
おすすめは、2017年に上演された星組トップコンビの紅ゆずる×綺咲愛里版。
「宝塚のコメディエンヌ」として名高い紅の大仰かつ人間的な温かみを感じる演技、「コスチュームの星組」らしいコスプレ風味の個性的で大胆な衣装、熱いパッションを感じさせる展開に、終始笑いが絶えないでしょう。
また、宝塚版のためにアメリカの人気作曲家フランク・ワイルドホーンが書き下ろしたテーマソング「ひとかけらの勇気」は、多くの宝塚ファンから愛される美しい楽曲として人気があります。
オーシャンズ11
2011年に星組で初演を迎えた、同名ハリウッド映画の宝塚版です。
主人公のダニー・オーシャンをリーダーに、11人の男たちがホテル王の金庫に眠る大金を狙うクライム・エンターテイメント作品。
この作品の人気の理由は、なんといってもその組において人気のあるイケメンたちが11人、舞台に勢揃いして活躍する点にあります。
トップスターから期待の若手まで、今を時めく男役たちを一挙に見ることが出来、なおかつ一人一人がしっかりクローズアップされるため、「宝塚のイケメンを堪能したい!」「どんなイケメンがいるのか知りたい!」という方にイチオシです。
おすすめは、2019年の宙組トップコンビの真風涼帆×星風まどか版。
他の組と比べて組子の身長と等身が高く、現代的なスタイリッシュさを売りにしている宙組と本作は非常に相性が良いため、男役のカッコよさを思い切り堪能出来るでしょう。
恋愛部門
ME AND MY GIRL
1987年に月組で初演を迎えた、同名ミュージカルの宝塚版。
若い二人の身分を超えた一途な愛をコメディタッチで描く、心温まるハッピーなラブストーリーです。
また、主題歌の「ミー&マイガール」始め、「一度ハートを失ったら」「ランベス・ウォーク」など、多くの有名楽曲が披露される点でも人気を集めています。
おすすめは、2016年の花組・明日海りお×花乃まりあ版。
ユーモアと自信にあふれ、一途な気持ちで恋人を愛する明日海と、愛する人のためならどこまでも一生懸命になれる強気でキュートな花乃、そして現宙組トップの芹香斗亜や現月組トップの鳳月杏、元花組トップの柚香光などのメンバーが脇を固めた本作は、非常に華やかな作品となっています。
最新作の2023年星組版は、ヒロインをトップ娘役の舞空瞳、主人公を男役2番手の暁千星と専科(2025年4月28日付けで宙組に異動)の水美舞斗がWキャストで演じるという珍しい配役で上演され、こちらも好評を博しています。
ロミオとジュリエット
(動画は、2021年の星組・礼真琴×舞空瞳版)
2010年に星組で初演を迎えた、有名なシェイクスピアの戯曲を元に、2001年にフランスで初演された同名ミュージカルの宝塚版です。
宝塚によるフレンチロックミュージカルの先駆けとも呼ばれています。
おすすめは「原点にして頂点」と称される、初演の柚希礼音×夢咲ねね版。
「星組のゴールデンコンビ」と呼ばれた2人による、愛の喜びとそれによる悲劇を前面に打ち出した本作は、非常にドラマチックな印象を与える内容となっています。
また、2021年に上演された、最新作である星組トップコンビ礼真琴×舞空瞳版は、2010年版と比較すると、より若さ故の恋への盲目や衝動性、刹那的な生き様を感じさせ、こちらもおすすめの作品です。