配信ドラマや新作映画を次々に控え、熱がさめる事なく見るものを虜にし続けるMCU。
皆さんはMCU作品のどんなところに惹かれますか?
1人1人個性的で深みのあるキャラクター、知名度に頼らず忠実に選ばれたキャスト、「映画」の概念を超え圧倒的なスケールで描かれる物語、細部までこだわり抜かれた衣装…
MCU作品に魅力的を感じる部分は数えきれませんよね。
そして、音楽も絶対的に欠かせない魅力の1つ!
キャラクターの性格や心情をセリフに代わり音楽で表現したり、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のように音楽によって作品全体をさらに彩ったり。
どのMCU作品も、音楽の使われ方にそれぞれ個性があり、作品をより豊かにしている要素の1つでもあります。
そんな魅力的な音楽の使われ方に焦点を当て、新たな目線からMCU作品を掘り下げていきましょう。
今回は、MCU作品と音楽の関係性を紐解くにあたり、絶対的に欠かせない「アイアンマン」とAC/DCについて紹介していきます。
目次
アイアンマン×AC/DC
世界的に高い知名度と人気を誇るAC/DC。
一度聴いたら耳に残るシンプル且つキャッチーなギターリフが非常に多いですよね。
そのため、劇中で楽曲が使われる際にも、イントロが流れた瞬間にシーンの雰囲気が変わったり、感動や興奮をより一層強く感じることができます。
MCU作品で使われたAC/DCの楽曲
まずは作品の公開順に使われたAC/DCの楽曲を見ていきましょう!
それぞれの楽曲が使われたシーンとともに、楽曲が作品にどのように影響を与えたのでしょうか。
「アイアンマン」Back In Black
トニー・スタークが、スターク社の新たなミサイルを披露した後、アメリカ兵に護送してもらう車内でのシーンで「Back In Black」が流れました。
後のMCU作品では豪快ながらもチームをまとめるイメージが強いですが、1作目の「アイアンマン」の時のトニーは、豪快さは伺えるものの、より荒々しく粗雑な印象を受けます。お酒を片手に車内でもサングラスをかけたトニーの姿に楽曲が加わることで、物語が始まったばかりにも関わらず、豪快なキャラクターの印象を強く残しています。
「アイアンマン2」Shoot To Thrill
スターク・エキスポのオープニングに使われました。
会場に向かうため飛行機から飛び降りる時に「Shoot To Thrill」が流れ、サビが盛り上がる絶妙なタイミングで会場に登場するトニー。会場の観客の声援が興奮を代弁するようで、何度見ても気分が上がるシーンですよね。アークリアクターをつけた女性ダンサーや豪華な花火、大勢の観客…映像だけでも十分豪華ですが、AC/DCの楽曲が用いられたことでさらに派手に印象付けられ、1作目からさらにカルスマ性を増したトニーを感じることができます。
「アイアンマン2」Highway to Hell
危機を救ったトニーの功績が讃えられ、勲章をもらう場面で「Highway to Hell」が使われました。作品の冒頭で、トニーのスーツを兵器だと判断し口論した議員に、勲章を渡させるというトニーらしい皮肉が込められたシーン。しかし、笑顔を見せて肩を組むトニーの姿と「Livin’ easy,Lovin’ free(気楽に生きて、自由を愛する)」という歌い出しが重なり、楽曲を存分に活かした使われ方には脱帽です。
「アベンジャーズ」Shoot To Thrill
どこか憎めないキャラクターで今ではすっかり人気のロキが、メインヴィランとして描かれましたね。
ロキに攻撃されたキャプテン・アメリカを救うため、トニーが到着したシーンで「Shoot To Thrill」が使われました。これまでキャラクターの単独作品のみだったMCU作品が、初めて集結したアベンジャーズ。AC/DCの楽曲が、トニーの登場BGMとして使われたことにより、呆れるブラック・ウィドウや真面目で堅実なキャプテン・アメリカとのコントラストが描かれ、トニーの個性が引き立てられました。
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「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」Back In Black
トニーの死後を初めて描いた今作。
ピーターがトニーを失った悲しみを表す場面が作中に散りばめられ今まで以上により作品に感情移入してしまったという方も多いのではないでしょうか。
ピーターの新たなスーツを作るため、ロンドンに向かう機内で「Back In Black」が使われました。トニーの死による喪失感や、ヒーローになりきれない自分の情けなさをトニーの元運転手・ハッピーに吐露した際、ピーターを勇気づけたいハッピーがこの曲を流しました。
スーツをカスタマイズする姿がかつてのトニーと重なり、楽曲と相まって感動的になる…はずが「僕もレッド・ツェッペリンは大好き!」と堂々と間違えるピーター。
心情を伝えるピーターの姿に、思わず涙を誘われますが、決まりきらないピーターの愛らしさと訂正しないハッピーについ笑ってしまいますよね。先ほど紹介したように、「アベンジャーズ」では登場BGMのかのように「Shoot to Kill」が使われましたが、今作ではあえてMCU作品1作目で使われた「Back In Black」が流れたことで、トニー不在の新たなフェーズの幕開けを印象的に感じさせました。
おまけ「デッドプール2」Thunderstruck
AC/DCの楽曲が使われたのは、「アイアンマン2」のオマージュ?
拾いきれないほど、ブラックジョークとオマージュがこれでもかと詰め込まれた「デッド・プール」。MCU作品でないにも関わらず、
「超能力のないただの人、ホークアイと同じ」
「ウィンターソルジャーかよ!」
「黙れ、サノス!」
とMCUネタもてんこ盛りで、「デッド・プール2」では(色んな意味で)さらにパワーアップしていました。
新たなチーム・Xフォースを結成し、目的地に向かうため飛行機から飛び降りるシーンでAC/DCの「Thunderstruck」が流れますが…「アイアンマン2」でトニーが飛行機から飛び降りる場面と重なります。
「Thunderstruck」はアイアンマンの劇中には使われていませんが、サウンドトラック「AC/DC:アイアンマン2」には収録されています。
また、飛行機から飛び降りる前に、「Xフォース!」と腕をクロスさせたポーズは「ブラックパンサー」のワカンダフォーエバーのポーズと同じなので、MCU作品のオマージュの可能性が十分考えられますよね。
なぜ「アイアンマン」にはAC/DCの楽曲が使われた?
1つの作品に止まらずに、4つものMCU作品に同じアーティストの楽曲が使われることは非常に稀です。
「アイアンマン2」においては、「AC/DCの演奏を見てスターク・エキスポのインスピレーションを得た」とジョン・ファブロー監督が話していますが、1作目の「アイアンマン」から数回に渡ってAC/DCの楽曲が使われた理由は明かになっていません。しかし、MCUの歴史を紐解いてみると、AC/DCの楽曲が何度も使われたことに意味を感じます。
原作のアイアンマンは下層キャラクターだった?
今では、桁違いな興行収入を叩き出し、キャストが未定の状態でも新たに作品を作るだけで話題になるMCU。しかし、記念すべき1作品目の「アイアンマン」では世間の期待は非常に厳しいものでした。
スパイダーマンやウルヴァリンなど様々な人気キャラクターがいるにも関わらず、マーベルは80〜90年代に経営困難となり倒産の危機を迎えます。そんなマーベルが大きな賭けに出たのが、今に繋がるMCU作品の1作目「アイアンマン」でした。
- 「X-men」(20世紀フォックス)
- 「デアデビル」(20世紀フォックス)
- 「ハルク」(ユニバーサル・ピクチャーズ)
- 「ブレイド」(ニュー・ライン・シネマ)
- 「スパイダーマン」(コロンビア・ピクチャーズ)
「アイアンマン」公開前にマーベルのキャラクターを実写化した映画は既に多く、「X-men」のようにシリーズ化に成功した映画もありました。
しかし、他の製作会社にキャラクターの実写権利や脚本を任せることなく、キャラクターをより理解する自分たち自身で映画を作る決心をし、MCUが誕生します。
実写化された今となっては圧倒的な人気を誇るアイアンマンですが、マーベルの製作者側も「下層キャラクターだ」と断言するほど、今の華々しいイメージとはかけ離れていました。
原作ファンだけでなくメディアからの酷評も相次いでいたんです。
ロバート・ダウニー・Jrもトニーのように厄介者だった?
アイアンマンに同じく、今ではすっかり人気なロバート・ダウニー・Jr。
演じるだけでなく、脚本にも積極的に提案したり、SNSからも伺えるようにキャストの中心となって現場を明るく盛り上げていました。
しかし、かつてはドラッグの問題が度重なり、共演者からも製作者側からも厄介者として扱われる俳優でした。
また、アイアンマンのキャスティングには、
- トム・クルーズ
- サム・ロックウェル
- ニコラス・ケイジ
など、演技力も人気も兼ね備えた俳優たちの名前が上がっていたこともあり、下層のキャラクターを実写化するだけでなく、「わざわざなぜロバート・ダウニー・Jrが演じるのか?」と厳しい声が上がりました。
甘いマスクと高い演技力から、かつては今と同じように人気を集めていましたが、何度も刑務所に出入りし更生する素振りもなく、製作者側だけでなく世間からも終わりだと見放されていたロバート・ダウニー・Jr。
しかし、大好物のはずのチーズバーガーを食べた時にあまりの不味さに衝撃を受けたことから自身の荒廃ぶりに危機を感じ、ドラッグをやめる決意をします。その後、どんなにわずかな役と報酬でも関わらずに俳優活動をし、トニーの華やかさと影を表現できるのはロバート・ダウニー・Jrだと見込まれ、アイアンマン役という大役を手に入れ現在に至ります。
再起を願ってAC/DCの楽曲が使われた?
倒産寸前でどん底だったマーベルと、大役ながらも今後を左右する崖っぷちに立たされたロバート・ダウニー・Jr。さらにヒーロー作品を実写化するのは、大ヒットするか大コケするかの極端に分かれるもの。
そんな絶体絶命な両者の再起をかけ、世界的ロックバンドのAC/DCの楽曲が使われたのではないかと言われています。
物語の導入に使うことによって、キャラクターの印象を強めるだけでなく、願掛けの意味も含まれていたのかもしれませんね。
結果、「アイアンマン」は絶賛の嵐となりマーベルとロバート・ダウニー・Jr両者の新たな可能性を強く感じさせました。
MCU作品において、あるアーティストが複数の作品で使われることは稀であるにも関わらず、AC/DCの楽曲がその後のMCU作品でも使われることによって、
トニーのアイデンティティが確立される
原点である「アイアンマン」を常に感じさせ作品全体に深みを持たせる
このような大きな影響を与え、音楽の効果を存分に発揮しています。
1作品目の「アイアンマン」が大ヒットしていなければ、現在も続くMCU作品は存在していなかったでしょう。
人気が出てからも、変わらずにAC/DCの楽曲を使う理由としてはトニーと楽曲の相性が良いことはもちろん挙げられますが、マーベルからの感謝やリスペクトの念を感じることができます。
「アイアンマン」がAC/DCに与えた影響も
また、「アイアンマン」で楽曲が使われたことにより、AC/DCは若い世代からも人気を集め、改めてこれまでの楽曲が注目されます。当時、ベストアルバムをリリースしていなかったAC/DCですが、「ACDC:アイアンマン2」には劇中に使われた楽曲だけでなく、これまでのヒット曲も収録され、実質的に初のベストアルバムとなり、ヒットしました。
MCUとAC/DC、相乗効果を生みながらも両者ともに改めて作品が見直されるきっかけともなり、素敵ですね。
俳優や製作者の背景も存分に盛り込まれた「アイアンマン」
先ほど紹介した、ロバート・ダウニー・Jrがどうやってドラッグ中毒から抜け出したのかでピンときた方もいらっしゃるかと思いますが…
「アイアンマン」の劇中でもトニーがチーズバーガーを食べるシーンが登場しますよね。劇中では、何気ないシーンで描かれていますが、彼がドラッグ中毒から目を覚ましたきっかけである背景を知ると、
厄介者として扱われていたロバート・ダウニー・Jrをキャスティングしたマーベル
これまでの自分と決別したロバート・ダウニー・Jr
両者の想いを感じ、見方が大きく変わってきますよね。
また、「アベンジャーズ:エンドゲーム」でトニーの葬式のシーンでも、娘のモーガンが「チーズバーガーが食べたい」と答えるシーンがあります。親子を感じさせる感動的な場面ですが、同時に彼の俳優人生とともに歩んだMCUの歴史を振り返らざるをえません。
このように、マーベルの大きな転機となった「アイアンマン」は製作者の想いがより込められていることが伺えます。
MCU誕生に至るまでの背景を知ると、AC/DCだけがなぜ複数の作品で登場しているのかも頷けますよね。
まとめ
今回は、作品をより鮮やかに彩ったAC/DCの音楽に焦点を当てて、MCUの歴史や「アイアンマン」の誕生に至るまでを紹介しました。
楽曲が使われた背景を知ると、映画に深みが増してより魅力的に映りますよね。
劇中で使われることによって、普段何気なくイヤホンから聴くのとでは全く異なる音楽の影響力や特性を感じることができ、音楽と映画の相性の良さを強く感じることができます。
ストーリー展開や、キャスト、映像だけでなく、
「どのような音楽がどのような場面で使われたか」にも注目して映画を鑑賞すると感動もさらに増すのではないでしょうか。
今後も公開や配信を控えた作品がてんこ盛りなMCU作品。
音楽にも焦点を当てて、さらに作品を堪能してみて下さいね。