超大物から新進気鋭の若手まで、さまざまなアーティストが出演する音楽フェスティバルは、ここ日本でも音楽文化のひとつとして定着しました。
フェスティバルと同じように複数のアーティストが出演するライブ形式として、「対バン」と呼ばれるものがあります。
足繁くライブ会場に足を運ぶ人にはお馴染みの言葉ですが、ワンマン公演にしか行ったことがない人や、ライブ未経験者にとっては初めて目にする用語かもしれません。
当記事では、「対バン」の意味や、そのメリット・デメリット、対バン形式の公演を観に行く際の注意点などを徹底解説していきます。
目次
対バンとは
この記事の主題である「対バン」とは、複数のアーティストが出演し、順番に演奏をおこなうライブ形式のことを指します。
単体のアーティストが出演する公演を「ワンマン」と呼びますが、対バン形式の場合は出演者の数に応じて「ツーマン」や「スリーマン」などと呼称が変わります。
対バンするアーティスト同士は基本的に同格として扱われ、スペシャルゲストやオープニングアクト(前座)扱いで出演するアーティストに関しては、イベントの告知文などでその旨が明記されていることが多いです。ただし、同じステージに立つという意味では、広義の対バンと言えるのではないでしょうか。
同じ音楽シーンに属するアーティスト同士が対バンするケースが多いですが、ときには「この組み合わせが!?」とファンを驚かせる異種格闘技戦のようなライブが観られるのも対バンイベントの醍醐味です。
対バンの由来
「対バン」という言葉の由来は諸説あります。そのなかでも有力とされている説が「バンド同士の対決」です。
実際に対決するわけではないので、ステージに上がった出演者は共演者や主催者に謝意を示すケースが多く、同じステージを分かち合う者同士の絆を感じ取ることができます。
しかし、演奏の良し悪しで勝敗や優劣を決めるものではないものの、お客さんに自分たちのステージを印象付けたいという気持ちはどの出演者も持っているでしょう。
対バンをする理由は
アーティストが対バン形式のライブを開催・出演する理由を解説します。
ひとつめの理由は、イベントの動員数を増やすことです。
単独で100人の動員力を持つバンドが2組出演した場合、単純計算で200人規模のイベントを開催することができます。
もちろん単純な足し算になることは稀ですが、魅力的な対バンイベントを企画すれば、単独公演をおこなうよりも多くの観客を集めることが可能になるのです。
ふたつめの理由は、新規ファン獲得の機会にするためです。
同じイベントに出演する他アーティストのファンに自分たちの音楽を聴いてもらうことで、新たなファン層の開拓につなげることができます。
普段とは違うファン層の前で演奏することは困難さも伴いますが、ファンベースを拡大する上で避けては通れない試練だと言えるでしょう。
対バンのメリット
前項では、対バン形式のライブが企画・開催される理由について解説しました。
この項では、お客さん視点で考える「対バンのメリット」について解説していきます。
複数のアーティストを観ることができる
対バン形式のライブのメリットとして真っ先に挙げられるのが、ひとつのイベントで複数のアーティストの演奏を楽しめることでしょう。
好きなアーティスト同士の組み合わせだったら最高ですし、ずっと気になっていたアーティストを観る絶好の機会にもなるはずです。
限られた予算と時間のなかで多くのアーティストを観たい人にとっては、対バン形式のライブは非常にコストパフォーマンスが良いものだと言えるのではないでしょうか。
未知のアーティストとの出会い
今までその存在すら認知していなかった未知のアーティストと出会うことができるのも、対バン形式のライブに足を運ぶ楽しみのひとつです。
予期せぬ衝撃的な出会いを果たし、ライブが終わる頃には「また絶対に観に行くぞ」と心に誓っていた、という経験を持つ音楽ファンも多いのではないでしょうか。
このような幸せな出会いを繰り返すことが、音楽的な守備範囲を広げることにもつながっていきます。
共演などレアなシーンも
複数のアーティストが出演する対バン形式のライブでは、お互いのステージに飛び入りしたり、対バン相手の楽曲をカバーするなどレアな場面を観られることもあります。
また、イベントの開催を記念して制作されたコラボグッズなど、その日しか入手できないアイテムが販売されることもあるので、ファンとしては是が非でも手に入れたいところです。
対バンのデメリット
多くのメリットをもたらす対バン形式のライブですが、もちろん負の側面も存在します。
この項では、お客さん視点で考える「対バンのデメリット」を解説していきます。
ワンマンよりも演奏時間が短い
対バン形式のライブでは複数のアーティストが出演するため、1組あたりの演奏時間がワンマン公演よりも短くなるのが一般的です。
また、初見のお客さんのために代表曲メインの“鉄板セットリスト”が披露されることが多く、熱心なファンにとっては新鮮さを感じにくい内容となります。
ただし、そのアーティストを初めて観る人にとっては、代表曲がギュッと詰まったコンパクトなセットリストを楽しむことができるので、入門編としては最適の内容だと考えることもできるでしょう。
必ずしも好みの音楽とは限らない
普段聴かないジャンルや未知のアーティストの音楽に触れる機会となる一方、実際に演奏を聴いて「これは自分の好みではない」と感じてしまうこともあります。
これは個人の音楽的嗜好によるものなので、好きになれないと感じるのは仕方がないことです。「世の中にはこういう音楽もあるんだな」と経験のひとつとして理解する程度で問題ありません。
また、そのアーティスト特有のライブでのお約束や、ファン同士のノリが理解できず、疎外感を覚えてしまうこともあります。
出演順がわからないことがある
イベントによっては当日の出演順を公開しない場合があります。
仕事や学校が終わってから会場に向かってみたら、もう好きなアーティストの出番が終わっていた…という悲しい経験をした人も少なくないでしょう。
これは「すべての出演者を観てほしい」という主催者側の意図だと考えられますが、チケットを購入する側としては大きなデメリットのひとつです。
対バン形式ライブで心掛けたいこと
複数のアーティストが出演する対バン形式のライブでは、各アーティストのファンが同じ空間を共有することになります。
この項では、対バン形式のライブを観に行く際の注意点を解説していきます。
マナーを遵守しよう
どの形式のライブについても言えることですが、鑑賞マナーを遵守するように心掛けてください。
SNS全盛の時代なので、「○○ファンのマナーが悪かった」などと書き込まれてしまっては、推しアーティストの評判を下げることにもなりかねません。
お目当てのアーティスト以外の演奏をまったく聴かず、座り込んだりおしゃべりをしたりするのは、アーティスト本人にはもちろんのこと、そのアーティストのファンに対しても失礼な行為です。
他のアーティストのファンも会場にいることを念頭に置き、過度な内輪ノリなどを控え、会場にいるすべての人が心地よく過ごせる空間を作り上げましょう。
オープンマインドで
これまで馴染みのなかったアーティストの演奏を聴ける機会なので、聴く姿勢と楽しむ姿勢を持って、オープンマインドでイベントに臨むことをオススメします。
聴いたことがないアーティストが出演する場合、事前にサブスクなどで有名曲だけでも予習しておくとより一層ライブを楽しむことができるはずです。
実際にライブを観て気に入ったら、SNSに感想をアップしたり、物販でグッズを購入したり、チャンスがあれば出演者に直接感想を伝えたりしましょう。
まとめ
「対バン」の意味や、そのメリット・デメリット、対バン形式の公演を観に行く際の注意点を解説しました。
近年では、単独で大会場を埋めることができる超大物同士の豪華対バンが実現するケースも増え、対バン文化が新たなフェーズに突入した感もあります。
ワンマン公演しか観たことがない人や、ライブ未経験の人は、この記事を参考にして対バン形式の公演に足を運んでみてください。