極めてシンプルで可愛らしい響きのバンド名、それとのギャップを感じざるを得ない本人の貫禄、けれどもやっぱり聴くとなるほどと思えるポップな音楽。
そんな印象を与えるバンド・スカートは、ミュージシャン・澤部渡のソロプロジェクトです。
カルチャでも過去にスカートについて取り上げていますが、その魅力は王道ポップソングの系譜に連なるキラキラした音作りや、時に爽やかで軽やか、時に切なく哀愁漂う楽曲の数々、柔らかく丸みを感じさせる歌声、物語性のある歌詞など、容易に語り尽くせるものではありません。
今回は、そんなスカートの澤部渡とはどんな人物なのか、スカートとはどんなバンドなのか、どんな活動をしていて、どんな作品を出してきたのかということをさらに掘り下げていきます。
そしてスカートの魅力である朗らかで柔らかい音色やメロディと、その中に織り込まれた切なさや哀しみという二つの面を存分に感じていただけるようなおすすめ曲もご紹介します。
心地よいポップソングからちょっとほろ苦い曲、素朴なアコースティック調の曲からファンキーでお洒落な曲まで、スカートの織り成す世界をぜひ覗いてみてください。
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目次
スカートはどんなバンド?
スカートとは
うおーっ!本日!1.あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?) 2.ストーリー 3.海岸線再訪 4. CALL 5.回想 6.おばけのピアノ 7.沈黙 8.さかさまとガラクタ 9.さよなら!さよなら! 10.駆ける 11.静かな夜がいい enc.返信 でした!ちょー楽しかった!最高でした!揚げ物がとっても美味しいです!! pic.twitter.com/qzNUogAu4g
— 澤部渡 / スカート (@skirt_oh_skirt) January 29, 2022
冒頭でも少し触れましたが、スカートは、ミュージシャン・澤部渡のソロプロジェクトとして2006年に活動を開始したバンドです。
公式サイトでは「どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド」と紹介されています。
「不健康ポップバンド」という、普通なら組み合わさることのなさそうな単語を組み合わせた表現に、一筋縄ではいかないこのバンドのカラーが滲み出ているようにも思われますね。
とはいえそのソングライティングとバンドアンサンブルの持つ光と影の二面性は、確かに聴く人を「おや?」と立ち止まらせ、ぐっと惹きつける力を持っています。
スカートというバンド名も、シンプルなだけにかえってインパクトがあり記憶に残りますね。
澤部はバンド名の由来について、「それが自分自身の憧れの象徴だから」スカートという名称にしたと語っています。
ある意味では、自分自身から最も遠いものをバンド名にしていることになります。ここにもスカートというバンドの持つ多面性が象徴されていると言えそうです。
ディスコグラフィと活動歴
澤部は2010年に自身のレーベルであるカチュカ・サウンズを立ち上げ、1stアルバム『エス・オー・エス』をリリースしました。スカートとしての活動はここから本格的に始まったようです。
カチュカ・サウンズからはこれに続く『ストーリー』『ひみつ』『サイダーの庭』まで、4枚のアルバムをリリースしています。
2016年にカクバリズムから『CALL』を、翌2017年にはメジャー1stアルバムとなる『20/20』をポニーキャニオンから発表。
2018年リリースのメジャー1stシングル「遠い春」では、表題曲が映画「高崎グラフィティ」主題歌に起用されているほか、ドラマ「忘却のサチコ」のオープニングテーマも収録されています。
その後も2019年には『トワイライト』、2020年には10周年記念盤として自主レーベル時代の作品を新録したアルバム『アナザー・ストーリー』をリリースするなど、良質な楽曲をコンスタントに世に送り出してきました。
さらに映画「恋は雨上がりのように」の劇中音楽、藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、Adieu(上白石萌歌)など他のミュージシャンへの楽曲提供、レコーディングへの参加など、その活動は多岐にわたります。
2016年にスピッツがミュージックステーションで「みなと」を披露した際には、澤部が口笛とタンバリンで出演していたことも話題となりました。
この映像をきっかけにしてスカートのことを知ったという方も少なくないのではないでしょうか。
Mステ見ました!正直もうちょっとイロモノみたいな扱いかなーと思ってたんですがライヴシーンだけでなくマサムネさんのコメント……泣!当たり前なんですが先週の放送からもう一週間なんですね!記念にスピッツのみなさんとの楽屋でのショットを! pic.twitter.com/cSXsF6VQs6
— 澤部渡 / スカート (@skirt_oh_skirt) April 29, 2016
スピッツとの共演が象徴するように、派手なパフォーマンスや特段目立つ演出があるわけではないけれどもなんとなく目を引く、耳に残る、心に留まる、そんな不思議な魅力を持っているバンド、それがスカートだと言えるでしょう。
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ミュージシャン・澤部渡はどんな人物?
プロフィールと音楽的ルーツ
澤部渡は1987年12月6日生まれ。東京都板橋区出身。
中学時代は吹奏楽部に所属しつつ、椎名林檎のコピーバンドをやったり、NUMBER GIRLの「透明少女」をコピーしたりと、既にプレイヤーとして音楽を楽しみ始めていたことが窺えます。
ギターと歌に限らず、ドラム、サックスなど様々な楽器をプレイでき、先ほど挙げたスピッツとの共演に限らず、サポートメンバーとして他のミュージシャンのレコーディングやライブに参加することも。
時にはお笑い芸人のイベントに出演したりと、様々なところで活躍を見せています。
高校生の頃からオリジナルの楽曲も制作。
大学は昭和音楽大学。作曲や音響を学ぶコースに進みます。その頃からスカート名義での活動を開始していました。
好きなミュージシャンやルーツとなっている音楽としては、自身もサポートメンバーとして参加しているyes, mama ok?や、ムーンライダーズ、はっぴいえんどなどを挙げています。
「いかにもロック」という雰囲気のギターロックよりも、メロディやコード感、サウンドの妙を味わうことのできる音楽を好み、影響を受けているようです。
また、2016年に共演したスピッツについても、全てを描写しすぎない歌詞や、アートワークへのこだわりなどの面で影響を受けたと語っています。
人柄、ラジオ、ブログ
インタビューなどから垣間見える人柄は、物腰柔らかで穏やかな印象。取材した記者の方から、話し方まで穏やかと言われたりもしています。
それでいて言葉の端々にウィットが効いていたり、独特な視点、鋭い分析力が表れていたりと、一筋縄ではいかない雰囲気が滲んでいるのも面白いところです。
ポップでありながらどこか影や毒、ほろ苦さ、孤独、哀愁などをはらんだものとなっているスカートの楽曲の魅力にも通じるものがありますね。
澤部の人柄については、ラジオやブログからも窺い知ることができます。
レギュラー出演しているラジオとして、FM KYOTOのα-STATION「NICE POP RADIO」が毎週金曜日20時からオンエア中。
金曜20時からはNICE POP RADIO!今週は恒例の #新入荷選曲 でお届けします!スカート澤部氏が最近手に入れたおすすめ音源をご紹介、実は今年に入って初!今回もかなり悩んで選曲してくれました。弾き語りもあり!こうご期待!! 🔊https://t.co/mhthEvaRbs #スカート #澤部渡 #FM京都 #ナイポレ pic.twitter.com/TO2CNVYctL
— NICE POP RADIO (@NICEPOPRADIO) February 18, 2022
澤部の選曲したおすすめ音源や弾き語りを楽しむことができます。
また、ブログ「幻燈日記帳」には日々の楽曲制作やハマっているものなどの話が、ユーモアを交えながら淡々と綴られています。
https://sawabe.hatenablog.jp/
エッセイとしても面白く読むことができ、言葉選びのセンスが感じられますね。
スカートの楽曲の、軽快ながら陰影のある魅力の源泉が、こうしたラジオやブログから感じられるのではないでしょうか。
スカートのおすすめ曲6選
ここからは、スカートの多面的な魅力を知っていただけるようなおすすめ曲6選として、サウンドや歌詞の影の面をより強く感じられる3曲と、爽やかさや軽快さの際立つ3曲をそれぞれご紹介します。
煌めくようなポップサウンドも、影のある歌詞や一筋縄ではいかないコード感も、一言では語り尽くせないスカートの世界を味わってみてください。
ODDTAXI
まずは影の面から。
「ODDTAXI」はPUNPEEとのコラボによる楽曲。
2021年に放送されたアニメ「ODDTAXI」のオープニングテーマです。
アニメ「ODDTAXI」は、大都市を舞台とし、キャラクターデザインや画面のポップさとは裏腹に不穏な空気が漂うミステリー。
それに似合う、お洒落なサウンドながら、コード進行や「暗渠に落ちていくようだ」といった歌詞に夜の街の裏路地のような仄暗さが感じられる1曲となっています。
THE FIRST TAKEでのPUMPEEとスカートのパフォーマンスは2022年2月時点で160万回以上再生されており、注目度の高さがわかります。
回想
2016年のアルバム『CALL』収録。
ファンキーなギターとベース、ストリングスやエレクトリックピアノの音色が印象的。ダンサブルで、少し妖艶な雰囲気を持った1曲です。
爽やか、軽やかなポップソングのイメージが強いスカートの楽曲の中では異彩を放っていると言えます。
ランプトン
2017年のドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」でエンディングテーマとして起用された楽曲。
メジャー1stアルバム『20/20』に収録されています。
どことなく昭和歌謡のようなレトロさを感じさせ、メロディアスな中に漂う哀愁がたまらない1曲です。
忘却のサチコ
ここからは爽やかさの際立つ3曲をお届けします。
「忘却のサチコ」は、メジャー1stシングル「遠い春」のカップリング。
高畑充希主演のドラマ「忘却のサチコ」のオープニングテーマに起用されました。
ホーンセクションの音色やポップなリズムはどこまでも底抜けに明るい響き。
と同時に、それに乗せて歌われる「オー! サチコさん/全てを忘れて 誰も追いつけないほどの遠くまで行こう」という呼びかけは、コミカルでありつつどこか哀愁も感じられます。
この愛嬌と哀愁のバランスは、スカートの楽曲の大きな魅力だと言えるでしょう。
駆ける
2020年、サッポロビールのCM「第96回箱根駅伝用オリジナルCM」テーマソングに起用された楽曲。
シングル「駆ける/標識の影・鉄塔の影」に収録されています。
「駆ける」というタイトルですが、疾走感やスピード感のある曲というのではなく、むしろ一歩一歩しっかりと踏みしめながら進んでいくようなビート感。
歌い出しの歌詞が「欠けてしまったものもあるけれど」だというのも捻りが効いていますね。
「綯交ぜの気持ち抱えて/痩せたアスファルト駆ければ/私でもたどりつくかな?」という歌詞からも読み取れるように、迷いや疑いを抱えながらも進んでいこうという気持ちにさせてくれる1曲です。
海岸線再訪
伸びやかで爽やかなメロディに、少し切なさを覚えるコード。
スピッツなどの楽曲も連想させる、ポップスの王道を行くような煌めくサウンドと、「踏みはずそう 今なら 大目に見てくれる」という歌詞からも感じ取れる、屈折していながらも開けた明るさが魅力的です。
シンプルながら聴き手の心に留まる1曲に仕上がっています。
まとめ
スカートというバンド、ミュージシャン・澤部渡、そしてその楽曲についてご紹介してきました。
それでも、今回お伝えできたのはほんの入り口に過ぎません。
タイアップのある作品やシングル曲だけでなく、アルバム曲にも魅力的な作品は数多くあり、王道のポップサウンドと、哀愁漂う歌詞や切ないコード、光と影の入り混じった世界を楽しむことができます。
ぜひ、様々な楽曲を聴いて、スカートの音楽の世界を掘り下げてみてくださいね。
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