「うらみちお兄さん」挿入歌|原作者が作詞した楽曲を徹底解説!

「うらみちお兄さん」挿入歌|原作者が作詞した楽曲を徹底解説!

2021年7月から9月まで放送されたTVアニメ「うらみちお兄さん」。

大人ならば誰しも共感できるブラックな内容と、豪華なキャストが話題となりました。

架空の子ども向け教育番組が主人公・表田裏道(おもたうらみち)の仕事場ということもあり、子ども番組らしい曲が多数放送されました。

注目すべきは、その楽曲の作詞者が漫画原作者・久世岳だということ。

今回は、そんなうらみちお兄さんの世界観が色濃く反映された楽曲の数々を解説します!

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うらみちお兄さんとは

「うらみちお兄さん」は、久世岳原作のWeb漫画です。2017年より連載されており、2021年6月現在で6巻まで発売されています。

「ママンとトゥギャザー」という子供向け番組に出演している31歳の体操のお兄さんである表田裏道が主人公。「仕事つらい」「きつい」「帰りたい」などの大人の本音が見え隠れする情緒不安定な人物です。

2021年7月からアニメが放送され、キャストが豪華すぎることでも話題となりました。

出演声優

  • 表田裏道(おもたうらみち):CV.神谷浩史
  • 兎原跳吉(うさはらとびきち)・ウサオくん:CV.杉田智和
  • 熊谷みつ夫(くまたにみつお)・クマオくん:CV.中村悠一
  • 蛇賀池照(だがいけてる):CV.宮野真守
  • 多田野歌乃(ただのうたの):CV.水樹奈々
  • 木角半兵衛(きかくはんべえ):CV.木村良平
  • 上武裁人(うえぶさいと):CV.鈴村健一
  • 猫田又彦(ねこたまたひこ):CV.小野大輔
  • 枝泥エディ(えでいえでぃ):CV.花江夏樹
  • 縁ノ下カヨ(えんのしたかよ):CV.髙橋ミナミ
  • 神の声:CV.大塚芳忠

キャスト発表当初より、声優が豪華すぎるとアニメファンの中で話題となりました。数多くのアニメに出演し、主要人物を演じている声優たちの名前がズラリと並びます。

「うらみちお兄さん」は、役名がその人の個性を強く表しているネーミングです。企画を考えるのは「きかくはんべえ」、ウェブサイトを運営しているのは「うえぶさいと」など、真っすぐすぎるネーミングにクスっと笑ってしまいます。

楽曲紹介

ABC体操


集まれ よい子のみんな
常識の範囲内で 必要最低限に体を動かそう
ABC ABC ABC

A 延々続く 退屈な毎日も
B ビックリがいっぱい 捉えよう次第さ
C 質問していいですか お兄さん

お兄さんに聞いてみて 何でも
主観で答えるよ
片手間でいいから 聞いていて

ABC ABC ABC ABC…

大人になるのは怖いけど
よい子のみんなが思うほど
悪いものでもないんだ きっと
ウサギもクマも みんな 集まれ

ABC ABC AtoZ
みんなで元気に 遊ぼう

A…
B…
C…
ABC ABC

大人になるのは怖いけど
よい子のみんなが思うほど
悪いものでもないんだ きっと
ウサギもクマも みんな 集まれ

ABC ABC AtoZ
みんなで元気に 遊ぼう

TVアニメ「うらみちお兄さん」のオープニングテーマとなっている「ABC体操」。教育テレビ番組のオープニングで流れるような明るくキャッチーなメロディです。その名の通り体操になっており、声優を務める宮野真守と水樹奈々が実演している動画がYoutubeにアップされています。

つらい、しんどい、帰りたいなど、マイナスな感情を抱える大人が描かれる「うらみちお兄さん」ですが、大人だからこその楽しみや喜びが描かれている部分もあります。「大人になるのは怖いけど よい子のみんなが思うほど 悪いものでもないんだ きっと」は、「うらみちお兄さん」らしさが詰まった部分と言えるのではないでしょうか。

大人になると、誰しも自分で働いて生きていくためのお金を稼がなくてはなりません。そんな環境の中でも、仲間と一緒にお酒を飲んだり、演者同士で互いを気遣ったりと、それぞれが自分のやり方で相手を大切にしていることが感じ取れる本アニメ。大人になると、大変なことも増えますが、楽しいことが増えるのも事実。これから大人になっていく子どもたちに贈るメッセージとしてぴったりの曲です。

体操の振り付けに注目すると、序盤では「ABC」の部分は、腕でアルファベットをつくっていますが、サビになると「C」が「シーっ」と声を潜めるような振り付けになっています。騒がしくはしゃぎまわる子どもたちに「静かにしてね」の意味の「シーっ」とも捉えることができますし、「大人は楽しいよ、でも子どものみんなにはまだ言えないこともあるよ」という秘密の「シーっ」だと捉えることもできますね。

楽しい曲調の中に大人の闇が見え隠れする、本アニメの顔となる一曲です。

傘持ってないときに限って雨降るのなんで


天気予報はくもり時々雨
試される動物的勘

傘を持ってないときに限って 雨が降るのはなんで
逆に持ってきたときは降らないよね
降水率そこそこ高いのに

使いどきのない傘は 一日じゅう荷物になって
何をするにも 地味に不自由

不快

うたのお姉さん(水樹奈々)が歌唱している第2話の劇中歌である「傘持ってないときに限って雨降るのなんで」。インパクト大のタイトルと、「不快」の一言で締めくくる構成で、一度聴くと忘れられない曲です。

朝天気予報を見ると、「くもり時々雨」になっていたから傘を持って出かけたけれど、結局雨なんて降らなかった、という生活でのワンシーンは、誰しも経験がありますよね。逆に、傘を持っていかなかったときに限って突然土砂降りになったり…。自分の「動物的勘」に頼って傘を持っていくかどうか判断する場面はしばしばあります。

MVの中では、傘を持っていないいけてるお兄さんとうたのお姉さんが雨に降られたり、傘を差したいけてるお兄さんとうたのお姉さんが曇り空の下で踊っていたりと、歌詞の内容が完全再現されています。

「あるある!」「わかる!」と頷きたくなる歌詞です。

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得手不得手


できること できないこと
何でも一人で やろうと しないで

できないことを できる人
すごいねって 友達に なろうよ

歌が上手に歌える人
絵が上手に描ける人
面白い話ができる人
そして 跳躍力がすごい人

みんなが人間 ふつうの人間

できないことのほうが多いから
できることと したいことは違うから

できないことをできる人

友達になるって 難しいね
すごいねって 言えないね

すごいねって 友達になれること

それが一番 すごいこと

いけてるお兄さん(宮野真守)とうたのお姉さん(水樹奈々)が第5話で歌唱している劇中歌「得手不得手」。子どもたちに助け合うことや、友達の大切さを教えてくれるような楽曲です。

本当の教育番組で歌われていても違和感がないような曲ではありますが、「跳躍力がすごい人」「ふつうの人間」など、ところどころにちょっぴり耳に引っかかるフレーズが散りばめられています。

大人になると、「友達ってどうやってつくるんだっけ…?」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。子どものころは、いつの間にか仲良くなって一緒に運動場を走り回っていたのに、大人になると友達の概念が分からなくなったりもしますよね。そんな大人がつくり、大人が歌っている「友達になるって難しいね」は心に染みるものを感じます。

この曲が歌われるのは、コンサートの場面。映像をよく見ると、会場に来ている親子らしき人たちの影や、出演者の立ち位置を示すバミリを確認することができます。まるで本当のコンサートで歌われているような雰囲気。映像を一度見ただけでは気づけないような遊び心が散りばめられた楽曲です。

猫が何もない空間を見てる


どこ 見てるの
何が あるの そこに
何もない ない

おまけに お金も 時間もない
生活に 華がない
明日 起きて 食べる物もない

でも 猫がいる
何の役にも立たないけれど
猫がいる
それだけでいい

でも どこを見てるの

何があるの
何もない 何もない

何もないから 生きている
何もないけど 生きられる

うたのお姉さん(水樹奈々)が歌唱している第5話の劇中歌「猫が何もない空間を見てる」。猫を飼っている人が激しく首を縦に振って同感するような楽曲です。

猫を観察していると、何もないところをジーっと見つめて猫がピクリとも動かなくなる瞬間がありますよね。「そこになにかいるの?」と聞いても、猫は答えてくれません。本楽曲は、「猫がジーっと見ている場所にはなにもない」から、お金も時間も生活に華もない主人公へとフォーカスされていきます。

家事を手伝ってくれるわけでもなく、優しい言葉をかけてくれるわけでもない猫。でもそこに猫がいるだけでなんとなく救われる気持ちが伝わってくる楽曲です。作詞の久世岳は恐らく猫好きなのでは…?と思わずにはいられないですね。

どうせそんな人生

うらみちお兄さん(神谷浩史)が歌唱している第5話の挿入歌「どうせそんな人生」。くすっと笑えるけれど、なぜかホロリと涙がこぼれてしまうような楽曲で、放送後に久世岳がご自身のTwitterで歌詞を全編公開したことでも話題となりました。

上を向いて頑張ろう、きっといいことがある!という楽曲で溢れている世の中ですが、この曲は下を見て歩くことも悪いことじゃないと感じさせてくれ、上を向けない人のことを包み込んでくれるような優しさが溢れています。

道路にいた小さなカニを拾って川に戻してあげたら小指をちょっと挟まれたり、道を譲って舌打ちをされたりなど、理不尽で溢れている世界。それでも世の中を憎めないのは、別に愛しているからじゃなくてそんな元気がないからだと、無気力感に満ちている一曲です。

アニメ内では、コンサート公演の後、打ち上げには行かずに一人で夜道を歩くうらみちお兄さんが映し出されるシーンで流れています。声優・神谷浩史の歌声がとても優しく、疲れた大人の心に染み入る楽曲です。

浪花の恋のペアルック


あなたとわたしの
アクリルニット
黒と白 イロチの スカルマーク

ああ あなたの腰パン
少し剥げた金メッキの
ウォレットチェーン
わたしはつけま
2枚重ねに
ピンクのカラコン

フードコートであなたと
食べたたこ焼き
肩よせあったら 静電気

第6話と第12話の挿入歌として歌われている「浪速の恋のペアルック」。歌のお姉さんになる前は、売れない演歌歌手・追出やす子として活動していた多田野詩乃(水樹奈々)が歌唱しています。

売れない芸人の彼氏と同棲している多田野詩乃。彼氏は関西人のため、「浪速」という言葉が使われているのでしょう。彼氏の前ではカラコンやつけまつげをして、かわいく見せようと努力する女性の健気さを感じます。

本楽曲は演歌調で、歌手としても活動する水樹奈々の歌唱力が話題となりました。あまりの完成度の高さに「この曲で紅白出場してくれ」というファンの声も。アニメ内では数十秒しか歌われていない隠れた名曲です。

エンドレス猛暑


今年の夏はどこへゆこう どこへゆこう
海 海 海 海へゆこう

夏だから 夏だから
海へ行ってバカさわぎ
海水浴にバーベキュー

楽しんでるフリ悟られないよう
どうでもいいような誰かの目
今日も気にして生きるんだ

ああ ぼくには似合わない
それでもやってくる
エンドレス猛暑

ホントはね 言ってほしい
冷房の効いた暗い部屋で
過ごす夏も間違いじゃないよって
野外フェスなんか行くなって

蚊を見失ってしまって安眠できない
帰宅後 クーラーのリモコン行方不明

汗でまとわりつくシャツが気持ち悪い
なかなか脱げない
エンドレス猛暑

いけてるお兄さん(宮野真守)とうたのお姉さん(水樹奈々)が歌唱している第10話の劇中歌「エンドレス猛暑」。夏感満載の一曲ですが、制作の関係で真冬に撮影が行われた楽曲のため、ところどころに冬を感じるMVとなっています。

タンクトップと短パンを身に着けて海へ走っていくいけてるお兄さんやうらみちお兄さんが映ったシーンは、空がどんより曇り空。海に入って笑顔を浮かべるお兄さんたちですが、寒さに負けてプルプルと震えています。

また、浜辺でのスイカ割りのシーンでは、真冬でスイカが手に入らなかったため、縞模様を描いた冬瓜が使われています。水鉄砲をかけるシーンでは、冷たい水を体にかけないように、あえて的を外す心遣いも。楽曲単体でも思わずニヤついてしまう内容ですが、アニメを見ていると、より楽しめる一曲です。

極寒スパイラル


踏み固めた雪はすごい危ない
信じられないほど滑る

立ち上がれない
立ち直れない
すごい危ない すごい痛い
あちこち痛い 心も体も痛い(痛い)

朝のミーティング
思い切って発言
信じられないほど滑る

斬新な発想
物怖じしないで(Say)
発言しろって言ったじゃない
凍てつく空気
真冬の曇り空(Sky)

温もりが欲しい(だけ)
震える手
照準はあったか〜い(Hot)
押し間違えて(Hit)
落ちてきた つめた〜い(Cold)

踏み固めた雪はすごい危ない
信じられないほど滑る

かじかんだ心は
キャンプファイヤーでも溶かせない

寒い(こころ)
寒い(ふところ)
寒すぎる(先輩の武勇伝)

ラララ ルルル
ラララララ… ルルルルル…

いけてるお兄さん(宮野真守)とうたのお姉さん(水樹奈々)が歌唱している第10話の劇中歌「極寒スパイラル」。「エンドレス猛暑」とは逆で、この曲は冬の楽曲ですが、制作の都合上夏に撮影されました。

セーターを着て、マフラーを巻いて歌っているいけてるお兄さんとうたのお姉さんの顔は汗でびっしょりです。CGで雪が降っているように見えますが、よくよく見ると空は青空。こたつに入っているシーンの後ろでは、半そで短パンでうちわを仰ぐディレクターの姿や扇風機が確認できます。

「踏み固めた雪はすごい危ない 信じられないほど滑る」の箇所では、ツルっと滑るウサオくんが映っていますが、夏で雪はないので、足元にあるのはバナナの皮。かわいい番組スタッフにバナナを差し入れされたと思い込んで舞い上がるウサオくんの中身・兎原跳吉でしたが、「皮は撮影で使うのでとっててください」と言われ撃沈する一幕もありました。

雪は滑るというところから、斬新な発想はスベる、先輩の武勇伝は寒いと繋がっていく大人の苦みたっぷりな楽曲です。

試食でめっちゃ美味しかったパン買って帰ると普通なのなんで


珍しく早く上がれた仕事終わり
ふと立ち寄ったパン屋さん
店員さんがくれた一切れのパン

いつもは街灯頼りに歩く道
今日は違うよ
だって夕日が少し見えてる
今月一番ハイな時間

なんの変哲もない塩パンの切れ端
この世で一番美味しい食べ物だと思ったんだ
ほんとだよ

思わず買った塩パンをふたつ
店員さんの笑顔が眩しくて
虚勢を張った

家に帰っても一人なのに
塩パンをふたつ

なんで(なんで)
家に帰ったらめっちゃ普通

この世で一番美味しかったはずの
パンが普通(めっちゃ普通)

どこへ行ったの
輝いたはずの世界 あの胸の高鳴り
どうしてこの部屋はこんなに暗いの
先週 電球換えたとこなのに

本当はわかってた
あの時と違うのはパンじゃなくて自分の心

またいつか早く帰れたら
あのパン屋へ行こう

一時(ひととき)の夢でもいいから
きらめく世界よ もう一度

ララララ ララララ…

いけてるお兄さん(宮野真守)とうたのお姉さん(水樹奈々)が歌唱している第11話の劇中歌「試食でめっちゃ美味しかったパン買って帰ると普通なのなんで」。タイトルに歌詞の全てが詰め込まれた楽曲です。

試食でものすごく美味しいと感じて買って帰り、家で食べると別にそうでもなかった…という経験は誰しもあるのではないでしょうか。しかもこの楽曲では、試食をしたのは珍しく早く帰れた日の帰り道。一か月の中で一番ハイテンションな瞬間に食べた試食のパンは、世界一美味しく感じますよね。

家に帰るとひとりきりなのに、「二つください」と虚勢を張ってしまうのもクスリと笑ってしまうポイントです。店員さんは何も気にしていないだろうけれど、「この美味しいパン、大切な人と二人で食べるので二つください」という主人公の見栄に笑ってしまいます。

「本当はわかってた あの時と違うのはパンじゃなくて自分の心」と気付いてしまう切なさと、誰しも一度は感じたことがある気持ちが歌われた一曲です。

まとめ

TVアニメ「うらみちお兄さん」の楽曲、いかがでしたでしょうか。漫画の原作者である久世岳が作詞を手掛けているということもあり、「うらみちお兄さん」の世界観が強く反映されているものばかりでしたね。クスリと笑えて、時にはホロリと泣ける名曲ばかりです。

アニメを見る時は、ぜひ楽曲にも注目してみてくださいね。

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