やっぱりロックはあの頃が最高なんだよね。
ビートルズとかレッド・ゼ…ゼ…ゼペリーン?
レッド・ツェッペリンのことかな…。
無理にロック通を気取らなくてもいいんだよ。
そうそう。ツェッペリン、ツェッペリン。
で、どうなのかな?
あの頃みたいなサウンドを出してるバンドはいるの?
それならGLIM SPANKYがオススメだね。
絶対に気に入るはずだよ。
60~70年代のクラシック・ロックの香りを強烈に放つ骨太なサウンドを鳴らす2人組ロックバンド、GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)。
27歳の若さで急逝した天才シンガー、ジャニス・ジョプリンを彷彿とさせる天性のロックヴォイスを持つ松尾レミ、そして松尾の絶唱に応えるかのようなブルージーなギタープレイで存在感を放つ亀本寛貴が生み出すサウンドは、耳の肥えたロックファンからも高く評価されています。
その芳醇でヴィンテージ感あふれるサウンドは、ふたりが平成生まれであるという事実を忘れさせるのに十分な破壊力を有しており、若さゆえの付け焼刃的なところはまったく見受けられません。
また、“やっぱりロックは60~70年代が最高なんだよね”という時代錯誤、懐古趣味の落とし穴にも嵌らず、現代のバンドとしてのセンスをしっかり持ち合わせているバランス感覚の良さも彼らの強みだと言えるでしょう。
過去の良さをしっかりと継承しつつ、そこに自分たちの価値観を加えた新しい音楽を想像するバンド、GLIM SPANKYの魅力をご紹介していきます。
目次
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)
- 松尾 レミ / ヴォーカル、ギター
- 亀本 寛貴 / ギター
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)・メンバー
松尾 レミ / ヴォーカル、ギター
- 氏名:松尾 レミ(まつお れみ)
- 生年月日:1991年12月7日
- 出身地:長野県下伊那郡豊丘村
GLIM SPANKYのほぼすべての楽曲で作詞・作曲を担当する松尾レミは、倍音を含んだハスキーヴォイスが魅力の女性ヴォーカリストです。
ロックカルチャー全般を愛してやまないという松尾は、音楽だけではなくファッションやイラスト、映画をはじめとする周辺カルチャーにも造詣が深く、GLIM SPANKYの衣装やアートワークなどの方向性を決定する役割も担っています。
親類にもアーティストが多かったという松尾は、アートの才能をバンドに生かすべく、日本大学芸術学部デザイン学科に進学したほどです。(バンド活動が多忙を極めたため中退)
父親がレコードコレクターという恵まれた環境に生まれ、幼い頃から多くの音楽に囲まれて育ったという松尾。
幼少期に聴いていた音楽で特に気に入っていたのは、渋谷系を代表するグループとして名高いピチカート・ファイヴで、音楽性もさることながらヴォーカルの野宮真貴のファッションセンスにも影響を受けたと語っています。
自分から進んで音楽を聴くようになってから好きになったのが、BUMP OF CHICKENやThe White Stripesといったリアルタイムで活動しているロックアーティスト。
家で流れていた60年代のアーティストのレコードは「サウンドが古臭い」と感じていた松尾でしたが、そんな彼女に大きな衝撃を与えたのがクラシック・ロックをベースとしながらも現代的な感覚を持ったサウンドで注目を浴びていたThe White Stripesでした。
The White Stripesのおかげで古い世代の音楽も聴けるようになったという松尾が特に好んで聴いていたのがThe Beatlesで、中でもジョン・レノンの低めでエッジの効いたロックヴォイスは、女の子らしい高い声が出せずに悩んでいた彼女のコンプレックスを完全に打ち砕きました。
ジョン・レノンの声に出会わなかったら、松尾レミという稀代のシンガーが世に出ることはなかったかもしれません。
そんな松尾が初めてバンドを組んだのは2007年、彼女が高校1年生の時。
“文化祭に出演したい”という動機で結成されたのがGLIM SPANKYでした。
つまり、生まれて始めた組んだバンドでデビューを果たし、今も活動を続けているというわけです。
文化祭で演奏した楽曲はBUMP OF CHICKENの“アルエ”だったそうです。
亀本 寛貴 / ギター
- 氏名:亀本 寛貴(かめもと ひろき)
- 生年月日:1990年8月24日
- 出身地:長野県飯田市
個性の塊のような松尾レミの声に埋もれない骨太なギターサウンドを鳴らすのが、松尾の高校の1年先輩である亀本寛貴。
松尾の歌を生かすギタープレイを意識しているという亀本ですが、単なる伴奏に留まることなく印象的なリフやソロを聴かせる若きギターヒーローです。
元々は熱心なサッカー少年だったという亀本がギターを手にしたのは高校2年生の時。
あまりサッカーが強い高校ではなかったために暇を持て余し、サッカー以外に何か趣味を持とうと思ったのがきっかけでした。
ギターを手にして以来、部活感覚で毎日2~3時間の練習を続けた結果、かなり短期間でメキメキと上達したそうです。
GLAYやL’Arc-en-Cielがロックの入り口だったという亀本は、Guns N’ Roses、Nirvana、Oasisといった海外の有名ロックバンドを聴き漁るようになり、そこからさらに時代を遡って松尾が聴いているようなクラシック・ロックへ行き着きました。
影響を受けた楽曲としては、伝説のギタリストとして知られるジミ・ヘンドリックスの“All Along the Watchtower”を挙げています。
原曲はボブ・ディランですが、「史上最高のカバー曲」を語る際には必ず名前が挙がる超名カバーです。
現在の相棒である松尾レミと出会ったのは、亀本が高校2年生の時でした。
当時のGLIM SPANKYのベーシストとバイト先が同じだったことが縁となり、「入りたいです!」と立候補してバンドに加入することになりました。
スリーピースとしてスタートしたGLIM SPANKYでしたが、「ギター弾いて歌うのはレミちゃんが大変だから…」と松尾のことを心配したベーシストがギタリストを探し始め、松尾が気が付いた時には亀本が加入していたそうです。
高校卒業後は地元の長野を出て、名古屋の大学に進学した亀本。
しばらくはバンド練習のために長野と名古屋を往復する日々を送っていました。
しかし、その1年後に高校を卒業した松尾に「東京に行かない?」と誘われ、関東の大学に入学し直すことを即決。
それだけ大きな決断を即座にできるあたり、亀本は松尾の声に果てしない可能性を感じていたということでしょう。
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)・バンド名の由来
高校1年生の松尾レミが文化祭に出演するためにメンバーを集めたバンド、GLIM SPANKY。
結成時からすでに現在と同じ名義だったというから驚きです。
GLIM SPANKYというバンド名はどこから来たのでしょうか。
バンド名の由来についてご説明しましょう。
高校生の頃から幻想文学を読むようになったという松尾は、「(ろうそくの)光」や「灯火」という幻想的な意味を持つ英単語GLIMをバンド名に使おうと考えました。
そして、その幻想的なイメージとは真逆の攻撃的な響きを持つSPANK(=ピシャリと打つ、平手打ち)という言葉をくっつけ、GLIM SPANKYというバンド名が誕生しました。
その対極的なイメージを内包したバンド名は音楽性にも影響を与えており、幻想的なサイケデリックなパートと骨太でパワフルなロックを併せ持つ彼らの音楽にピッタリな名前だと言えるでしょう。
松尾の幻想文学好きは筋金入りで、自身でも幻想文学的ショートストーリーを執筆して寄稿するなど、読むだけではなく書き手としても才能を発揮しています。
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)・経歴
GLIM SPANKYは2013年に全国流通盤『MUSIC FREAK』をリリースして以来、現在までにフルアルバム4枚、ミニアルバム4枚(自主制作盤を除く)をリリースしています。
結成から現在までを簡単に振り返っておきましょう。
結成~デビュー
2007年に学校の文化祭に出演するため、松尾レミによって結成されたGLIM SPANKY。
文化祭終了後すぐにメンバーチェンジがあり、松尾の高校の先輩である亀本寛貴らが加入して初期4人編成のラインナップが完成しています。
コピーバンドとしてスタートしたGLIM SPANKYでしたが、次第に松尾が書いたオリジナル曲を演奏する方向にシフトし、地元のスタジオに朝から晩まで籠る練習漬けの日々で腕を磨いていきます。
結成翌年の2008年には、ソニーミュージック主催のライヴバトルイベント「ロック番長」で優勝を果たすなど着実に実力をつけていきました。
さらに2009年には10代のアーティストを対象としたコンテスト企画「閃光ライオット2009」では、5500組の応募の中からファイナリストの14組に選出。
受賞こそ逃しましたが、ファイナリストまで残った事実はふたりの将来へのヴィジョンに影響を与え、本気でプロのミュージシャンを目指すきっかけになったと語っています。
2010年にベーシストとドラマーが脱退し、現在の2名体制へ。
松尾が大学進学に伴い上京するタイミングに合わせ、名古屋の大学に通っていた亀本も関東の大学に入り直し、GLIM SPANKYは東京進出を果たしました。
脱退したベースとドラムのポジションには正式メンバーは迎えず、東京進出以降はサポートメンバーの力を借りてライヴ活動を継続しています。
2012年3月には自主制作ミニアルバム『MUSIC FREAK』をリリース。
現在はすでに廃盤となりプレミアが付いている同作は、2013年12月に同名のミニアルバム『MUSIC FREAK』(収録曲は異なる)をリリースする直前まで販売が続けられていました。
2012年12月には、東京事変のメンバーとしても知られる大物音楽プロデューサー亀田誠治の誘いにより、彼のお眼鏡にかなった若手アーティストが集うイベント「子亀祭」に出演。
期待の若手バンドとして知名度を高めていきます。
2015年2月リリースのメジャー1stシングル『褒めろよ』は亀田誠治がプロデュースを手掛けており、その後もプロデュースやステージでの共演などさまざまな場面でタッグを組んでいます。
2013年12月に初の全国流通盤ミニアルバム『MUSIC FREAK』をリリースすると、翌2014年6月にはミニアルバム『焦燥』でついにメジャーデビュー。
『焦燥』は大きなチャートアクションは得られなかったものの、同年10月から放送が開始となったSUZUKIのワゴンRスティングレーのテレビCMで使用されたジャニス・ジョプリンのカバー“Move Over”における松尾の堂々たる歌唱が話題となり、GLIM SPANKYの名前は一躍全国に広がっていくことになりました。
さらなる飛躍へ
2015年はGLIM SPANKYにとってまさに飛躍の年となりました。
亀田誠治プロデュースのシングル『褒めろよ』を2月にすると、同作のリリースツアーは大盛況。
7月に発表した待望のフルアルバム『SUNRISE JOURNEY』がオリコンチャート最高39位と好調な売れ行きを記録すると、同作に伴うリリースツアーの最終公演となった赤坂BLITZ公演も完売するなど、上昇気流に乗ったアーティストならではの勢いを見せつけました。
GLIM SPANKYが大型フェスティバル初出演となったのもこの年で、なんと初陣はあのFUJI ROCK FESTIVAL。
初出演ながら満員のRED MARQUEEステージを見事に盛り上げてみせました。
翌2016年も精力的に活動を続けたGLIM SPANKYは、1月にミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』をリリースしたのを皮切りに、半年後の7月には早くもセカンドアルバム『Next One』を投下。
『Next One』はオリコンチャート9位を記録し、ついに10位の壁を打ち破りました。
ライヴバンドとしての凄まじさは評判が評判を呼び、アルバムに伴うツアー『Next One TOUR 2016』は全日程ソールドアウトを記録。
一度観たらまた次も観たくなるのが彼らのライヴの魅力だと言えるでしょう。
日本武道館~海外進出
ライヴハウス級の会場を売りつくしたGLIM SPANKYでしたが、まだまだその攻撃の手を緩めようとはしません。
ハードロックからフォークまですべてを飲み込んだ名作ミニアルバム『I STAND ALONE』を2017年4月にリリースすると、6月には東京の日比谷野外大音楽堂、大阪の大阪城音楽堂という野外の名門会場での公演をあっさりと成功に導きます。
I stand aloneは地元・長野で活動していた時、松尾がひとりでアコースティックライヴをおこなう時に使用していた名義だそうです。
9月にリリースしたアルバム『BIZARRE CARNIVAL』はオリコンチャートで前作を上回る7位を記録。
続いて開催されたリリースツアーも大盛況となりました。
2018年1月には初の海外公演となる台湾でのワンマンライブを開催。
日本語で歌いながらも「日本語がわからない人達にも伝わる音楽をやる」ということを目標に掲げる彼らにとって、夢の実現への第一歩となったと言えるでしょう。
5月12日、彼らが憧れるThe BeatlesやLed Zeppelinなど数々の伝説アーティストも立った夢の舞台、日本武道館公演を敢行。
彼らの音楽性に共鳴する超満員の観客の期待にしっかりと応え、憧れのレジェンド達に肩を並べて見せました。
日本武道館公演の余韻も冷めやらぬ11月には現在のところ最新作となるアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』を発表し、こちらもオリコンチャート最高10位と好調な売れ行きを見せています。
ももいろクローバーZや上白石萌音へ楽曲提供をおこなうなど、近年では活動の幅をさらに広げているGLIM SPANKY。
2020年6月には完全宅録による新曲“こんな夜更けは”を発表し、その創作意欲はコロナ禍においてもまったく衰えていません。
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)・オススメ曲
褒めろよ
メジャー1stシングルで、2015年7月にリリースされた初のフルアルバム『SUNRISE JOURNEY』に収録されています。
The Knackの“My Sharona”を思わせるドラムビートでスタートする“褒めろよ”は、クラシック・ロックと呼ぶにふさわしい軽快かつハードにロックするキラーチューンです。
松尾が要塞のようなドラムキットを叩きまくるMVも必見。
大人になったら
“褒めろよ”と同じく『SUNRISE JOURNEY』に収録された“大人になったら”は、ライヴのハイライトのひとつとなる珠玉のアコースティックナンバーです。
松尾の実体験から生まれた楽曲で、大人びたふりをして他人の夢を否定する人たちへの反発を歌っています。
アコースティックとは言っても、中盤からはエレキギターが入って来て素晴らしいプレイを聴かせるのですが、アレンジの良し悪しを超越した揺るぎない楽曲の力を感じさせる曲だと言えるでしょう。
ストーリーの先に
2019年11月にリリースされたシングルで、オリコンチャート最高28位を記録しています。
先ほどご紹介した“大人になったら”と同じようなテンポのスローな楽曲ですが、浮遊感のあるギターメロディや要所要所で印象的なプレイを聴かせるピアノなどアレンジ面での聴きどころも満載です。
松尾のヴォーカルの素晴らしさは絶品で、海外の伝説的シンガーではなく、松任谷由実の名前を引き合いに出して語りたくなるような日本人の琴線に触れる歌唱を聴かせてくれます。
GLIM SPANKYとしてのひとつの到達点となる楽曲だと言えるのではないでしょうか。
GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)・まとめ
黄金期のサウンドを彷彿とさせる骨太なロックを鳴らすロックバンド、GLIM SPANKYをご紹介しました。
彼らの素晴らしいところは、クラシック・ロックへのリスペクトを最大限に表現しつつも、“ロック通だけがわかればいい”という敷居の高さを排除しているところだと思います。
Led Zeppelinをリアルタイムで経験した世代からJ-POPしか聴かない若者まで、すべての世代が共通して「かっこいい!」と思えるバンド、それがGLIM SPANKYです。
かつて多くの伝説的なバンドが少年少女にとっての“ロックへの入り口”となったように、GLIM SPANKYもまた同じ役割を担うバンドになることでしょう。
▼あわせて読みたい!