コロナ禍による音楽業界の変化 ~活動自粛の中、立ち上がる新人アーティストたち~

コロナ禍による音楽業界の変化 ~活動自粛の中、立ち上がる新人アーティストたち~

世界規模で猛威を振るうコロナウイルスは音楽業界にも大きな影響を与え、本来の活動ができないでいます。

しかし、そんな逆境の中でも飛躍し、活躍するアーティストたちがいます。

コロナ禍の中で注目されるストリーミングサービスを用いて、自分たちができる最大のパフォーマンスでファンを盛り上げてくれるアーティストの面々。

今回の記事では、コロナをきっかけに変化する音楽業界について触れながら、この過酷な現状の中でも最大級のパフォーマンスとブレイクを果たしたアーティストについて触れていきます。

ぜひ、最後まで御覧ください。

コロナ禍に影響を受ける音楽業界

2020年初頭より、世界中で広がり続けるコロナウイルス。

その被害規模は予測できず、人々の生活だけでなく、仕事や娯楽にまで影響を及ぼすほどの驚異となっています。

それは、音楽業界も例外ではありません。外出自粛が言い渡されている今、ファンだけでなく、アーティストたちの活動にまで支障をきたしています。

下記の項目では、コロナ禍によって音楽業界にどのような影響を与えているのかをまとめていますので、ぜひ御覧ください。

3密による練習場所の制限

コロナウイルスの蔓延によって、アーティストの活動が極端に制限されています。

3密を避けるために、音楽スタジオが開放されていなかったり、営業不振により閉店する店舗もあります。

全員が全員、歌や楽器の演奏ができる環境を持ってはいません。日頃からスタジオを借りて音楽と触れ合ってきたアーティストからすると、仕方のないことだとわかっていても歯がゆいでしょう。

また、練習によってモチベーションを上げていく人もいるので、デビューを目指す歌手や演奏家にとっては死活問題となっています。

イベントの中止・延期

そして、コロナによって影響を受けるのは練習場所だけではありません。

例え練習ができたとしてもドームやアリーナ、野外フェス、ライブハウスといった、アーティストとファンにとって一番の盛り上がりでもある公演などが、今回のコロナ騒動で自粛の動きとなっています。

しかし、中止や延期はそう簡単なことではありません。それまでにかかった会場の費用やコンサート演出に関わる費用や人件費、機材レンタル費用など、金銭面での負担はアーティスト側に請求されます。

興行中止保険という制度がありますが、これらは悪天候や交通機関の事故、出演者が出演不能になる障害や疫病などが対象なので、今回のコロナによる感染症は対象外としているところが多いようです。

大手事務所に所属しているアーティストであれば、ある程度は問題ないかもしれません。しかし、大手ではない個人事務所に所属しているアーティストは、自己破産という最悪のケースも考えられます。

2020年の2月頃にRADWIMPS野田洋次郎さんが、Twitterでこのように呟いていることが話題となりました。

自然災害等と違ってウィルスは興業の保険適用外となる。ドーム4カ所を含む今回のツアー、全部中止にした場合ウチのような個人事務所が生き残る可能性はどのくらいあるんだろうかと考える。安全、安心、リスク。あれこれ頭に巡らせながら毎日リハをしています。

その他に歌手の椎名林檎さん西川貴教さんも個人事務所の代表取締役を務めています。強行して開催して感染者を出せば、メディアやネットで袋叩きにあうことでしょう。しかし、中止をすればそれだけの負債がのしかかるという、どっちに進んでも好転しない板挟みにあっています。

アーティストにとって最大の見せ場でもある公演の中止は、アーティストだけでなく、それを楽しみにしていたファンにとっても大きな痛手となっています。

アーティスト活動を諦める人も

公演の中止などによって収入が激減するアーティストも少なくありません。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、カルチャーシーンの再生を促すプロジェクト「RE:CONNECT」が発足されました。その際、10代から40代のアーティスト200人を対象に行なったアンケートによると、80.5%のアーティストがコロナによって活動に影響があると回答しています。

ほぼ全てのアーティストが活動に支障をきたしており、それによって収入が減ったと回答したのは74.2%。その収入の減りを埋めるために40%のアーティストが副業を始めたそうです。

そして、コロナによって満足な活動ができないために、48%はアーティスト活動そのものを諦めようと思っていることがわかりました。

自分たちの音楽が売れる売れないではなく、そもそもアーティスト活動ができないほどに、コロナウイルスは大きな猛威を振るっていることがわかります。

ストリーミングなどの需要が高まる

新型コロナウイルスによって音楽業界にも大きなダメージを与えました。

アーティストも活動自粛をせざるを得ず、収入面などから本来の活動ができないでいます。

しかし、アナログだけだった頃とは違い、現在はネット社会です。ストリーミングなどを用いたネット配信を行うことができるので、多くのアーティストがこの機会に参入を始めています。

では、ネットを通じた音楽がどのような影響を与えているのか、簡単にまとめてみました。

人気アーティストを筆頭に無観客ライブ配信

コロナ騒動を受けて、ライブなどのイベントが自粛される中、アーティストたちはただ座して待つだけではありません。

YouTubeといった動画配信サービスを利用した無観客ライブなどを実施。一部ではまだ動画配信に抵抗はあるものの、人気アーティストを筆頭に徐々に広まりつつあります。

ここ最近ではサザンオールスターズが無観客ライブを開催し、8つのメディアで同時配信を行ったところ約50万人が視聴しました。

有料配信では約18万人がチケットを購入したそうで、ネットを通じた音楽の可能性を見出しました。

あわせて読みたい!

子供から大人まで楽しめる

実際にライブに通うとなると、小さいお子さんがいる家庭は簡単ではないかもしれません。

子供の体力的な面もありますが、熱狂するライブ会場に子供を連れて行くのは、安全性に欠けると考える人もいると思います。

しかし、ネットを通じた配信であれば、家庭で子供と一緒に楽しみながらライブを観ることができます。

もしかすると、自分の好きなアーティストに興味を持ってくれるかもしれないので、子供との会話がより広がるかもしれません。

遠方でもネットがあればライブ気分

ネット配信であれば、わざわざ交通機関を利用してライブ会場に足を運ぶ必要はありません。家でパソコンやタブレットを用いれば、その場でライブ気分を味わうことができます。

泊りがけなら問題ないかもしれませんが、日帰りの場合は終電や渋滞なども考慮する必要があります。

また、ライブに通う交通費も節約できることを考えると、ネット配信を用いたライブの敷居はそれほど高くはないでしょう。

一部では物足りないという声も

しかし、一部では物足りないという声があるのも事実です。

肌で感じるライブの雰囲気と、映像でしか楽しめないライブでは、やはり実際に会場で楽しみたいと思う人が多数です。

とくにこのコロナウイルスの影響もあって、ライブのほとんどが自粛されている今、ライブ通いを趣味にしていた人にとってはもどかしい気持ちでしょう。

また、これは感覚の問題かもしれませんが、ライブ配信にチケット代を払いたくはないという人も一定数いるようです。

コロナ禍の中でデビューしたアーティスト

コロナ禍によって音楽業界は大きく変化しつつあります。

ネット配信などを通じて現状を打開しようと画策していますが、やはり従来のようなやり方とは違うため、まだ地に足がついていない状況にも思えます。

そんな過酷な環境の中、コロナに立ち向かうかのごとくデビューを果たしたアーティストがいます。

現在のユーザー視点からデビューした者や、コロナによってデビューが遅れた者。

ここでは、そんな一部のアーティストを紹介したいと思います。

総視聴回数2億回超えY系ロックバンド

YouTubeで活動する人をYouTuber(ユーチューバー)と称しますが、今回紹介するのはそのYouTubeからデビューを果たしたロックバンドです。

通称Y系ロックバンドと呼ばれているNon Stop Rabbitは、YouTubeでの登録者66万人。総視聴回数は2億回を超える、本格派です。

元々バンドとして活動していたNon Stop Rabbitは、2018年よりYouTuberとして活動を始めました。

バラエティ色の強い動画に注目が集まり、現在に至るまでチャンネル登録者数を増やしてきました。

そして登録者数の増加に伴ってバンドとしての知名度も上昇。2019年にリリースしたアルバム「細胞分裂」は、オリコンデイリーランキングで1位を獲得する快挙を成し遂げます。

しかし、コロナ騒動によって活動自粛。2020年の3月には豊洲PITのワンマンライブを予定していましたが、チケット完売済みでありながら中止を断念することとなります。ファンにとってもアーティスト個人にとっても重い決断となったことでしょう。

そんなコロナに対する現状の思いを込めた楽曲「全部いい」を、開催できなかったライブに合わせるように3月に配信。この配信された楽曲が元となり、ポニーキャニオンから熱烈なオファーが届き、メジャーデビューを果たしました。

Non Stop Rabbitメンバー

  • 田口達也(Gt./Vo.)
  • 矢野晴人(Vo./Ba.)
  • 太我(Dr.)

ハワイ生まれのシンガー

ハワイ生まれのシンガーLAHIKIはコロナの影響もあってデビューが遅れたアーティストとして話題となりました。

2019年5月に自身のインディーズレーベルからアルバム「MAHALO」をリリースし、関東を中心に人気を集めていました。その人気から2020年4月にミニアルバム「はじまりの歌」を日本コロムビアよりリリースして、デビューすることが決定。

デビューが決まったLAHIKIは、ハワイで学生生活を送りながらデビューに向けた準備を進めていましたが、新型コロナウイルスの影響で来日することができなくなってしまいます。

その後も日本国内での緊急事態宣言や、出入国禁止などによりデビューが困難に。また、それだけでなくリリースする予定であったミニアルバムまで延期となってしまう始末。4月にデビューの予定が、7月まで引き伸ばされることになりました。

その後もコロナの状況は収まらず、デビュー一週間前になっても来日することができませんでした。来日するどころかデビューも取り消されるのではと危惧していた時、なんとデビュー前日にサンフランシスコ経由で日本に降り立つことができました。

来日後は2週間ほど外出自粛を行い、コロナによる影響で遅れはしましたが、無事にデビューを果たすことができました。

リリースされた「はじまりの歌」は、古典的なハワイアンミュージックとは一味違い、南国の突き抜ける風を感じさせる、さわやかで伸びのある歌声が特徴的なポップチューンとなっています。


LAHIKI(ラヒキ)。1997年6月28日、ホノルル生まれ。名前はハワイ語で「昇る太陽」の意味がある。2018年春にTAG LINEのプロデューサーの目に留まり、スカウト。2019年に自身のインディーズレーベルからアルバム「MAHALO」をリリースし、関東を中心としたハワイ、フラ関連のイベントへ出演し、知名度を広げていきました。

バーチャルの世界からデビュー

YouTubeではVirtual YouTuber(バーチャルユーチューバー)も人気を博しています。

通称VTuber(ブイチューバー)と呼ばれる彼らは、キャラクター(アバター)の姿を通してYouTubeで活動しています。

そんなVTuberからアーティストが誕生。音楽事務所RIOT MUSICが実施した「VIRTUAL ARTIST AUDITION Vol.1」より、3名の新人アーティストが合格し、2020年9月15日からデビューすることが決まりました。


https://twitter.com/RIOTMUSIC_info/media

同事務所では道明寺ここあ芦澤サキといったVTuberが所属しており、コロナによってネット配信が主となっている現在の音楽業界を盛り上げる存在となるかもしれません。

現在、それぞれのYouTubeチャンネルが開設されているので、気になる方はぜひ覗いてみてください。

松永依織(まつながいおり)

「VIRTUAL ARTIST AUDITION Vol.1」に合格し、RIOT MUSIC所属となる。
可憐で優美なパフォーマンスが特徴。ファンの支えとなれるような歌を歌うことを目指しています。

長瀬有花(ながせゆか)

「VIRTUAL ARTIST AUDITION Vol.1」に合格し、RIOT MUSIC所属となる。
幼い見た目から発せされる歌声と独特な雰囲気が特徴。あまり感情を表には出しませんが、歌に関しては強い熱意を持っています。

凪原涼菜(なぎはらすずな)

「VIRTUAL ARTIST AUDITION Vol.1」に合格し、RIOT MUSIC所属となる。
見た目のクールな印象とは違い、感情を込めた力強い歌声が特徴。感動を与えられる歌を披露したいと目標に掲げています。

最後に

ネット配信による新しい道を模索している音楽業界ですが、アナログだった頃と比べると、まだまだ盛り上がりに欠ける印象です。

各種ストリーミングサービスなどを通じてライブ配信などは行っていても、やはり実際のライブなどとは違い、本来の楽しさを味わうことは難しいでしょう。コロナの驚異とは恐ろしいものです。

しかし、こんな過酷な状況の中、ファンを喜ばせようと新たな道を開拓してブレイクするアーティストやデビューするアーティストがいるのも事実です。

ファンもそんなアーティストに応えられるように、以前と比べるのではなく、現状を楽しめるように工夫してみましょう。ファンの楽しむ姿が、アーティストたちの力にもなります。

そしてコロナが終息したときは、今までで一番盛り上がれるように準備をしておきましょう。

この記事をシェアをしよう!

この記事を書いた人

この記事に関連するタグ

関連記事

新着記事