七尾旅人 ー 珠玉の名曲を世に放つ孤高のシンガーソングライター|多くのアーティストからリスペクトされる素顔とは?

七尾旅人 ー 珠玉の名曲を世に放つ孤高のシンガーソングライター|多くのアーティストからリスペクトされる素顔とは?

若干18歳で彗星のごとく音楽シーンに登場した七尾旅人

数十年に一度の天才アーティストとの呼び声高く大きな話題になりました。

本人曰く「ミスチルのような有名アーティストになる!」と意気込んだものの、その類稀なる才能を秘めた音楽性は理解してもらえず奇人扱いされていたと当時を振り返っています。

自らアンダーグラウンドシーンに身を置き独自のスタイルを貫く七尾旅人は、2011年の東日本大震災により被災した人々と触れ合うなかで「歌の力」を再認識することに。

それまでのアヴァンギャルドな作風から一変、「誰もが口ずさめる歌」を世に送り出し珠玉のポップセンスを昇華させていきます。

今回はそんな才気あふれる孤高のシンガーソングライター七尾旅人の魅力に迫ります。

七尾旅人とは?


本名:七尾旅人
生年月日:1979年8月20日
出生地:高知県高知市
年齢:42歳(2021年12月現在)
血液型:B型
デビュー:1998年

七尾旅人の経歴

天才と呼ばれたデビュー当時

七尾旅人は1998年に18歳でデビューしました。

日本ではカラオケで歌えるポップス全盛期。いわゆる「小室ファミリー」がヒットチャートを賑わせていた時代に、果たして彼の音楽はどう響いたのでしょうか。

デビューEP『オモヒデ・オーヴァ・ドライヴ』は儚げでイノセントな歌声がファンタジー性を印象づけるカラフルなサウンド。
とても18歳とは思えないカオティックな音楽性は、多くのアーティストから絶賛され「天才少年」とまで言わしめました。

その後もデビューから半年間で3枚のシングルと、1stアルバム『雨に撃たえば!…【disc2】』を精力的にリリース。

甘いマスクの少年が紡ぎだすグランジ感を内包したファンタジックなポップセンスは、コアなリスナーの琴線を大きく揺るがしました。

問題作で世間を圧巻?

2007年には前作から3年振りとなる3rdアルバム『Fantasia 9.11』を発表。

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロから50年後の世界を物語仕立てで描いた3枚組の超問題作は、過激な内容とお爺さんが孫を相手に昔話をするというアルバム構成により、世間から賛否両論の評価を受けることになります。

デビューからアルバムを発表するごとに進化する七尾旅人。
彼の独創的でイマジネイティブなセンス、誰よりも自由に音楽と向き合うアグレッシブさに世間が追いついていない印象さえ与えます。

その3年後、七尾旅人の名を一躍有名にした代表曲『Rollinn’ Rollin’』を含む4thアルバム『billion voices』をリリース。

アコースティックギター1本で、変幻自在かつ壮大なアプローチを繰り広げる彼のライブパフォーマンスをよりスリリングにパッケージングしたこのアルバムは、七尾旅人の底知れぬ可能性を示唆し音楽シーンに衝撃を与えました。

またアルバム最後の曲『私の赤ちゃん』は日本屈指の女性シンガー・UAにカバーされ、彼女のアルバム『KABA』にも収録されています。

名盤『リトルメロディ』完成の裏側

アルバムをリリースするたびに進化を遂げる七尾旅人が、東日本大震災を経て、集大成ともいうべき渾身のアルバムを発表します。

「口だけで伝えられるような素朴な歌をつくりたい」

これまでの、一聴しただけでは掴みづらい世界観や、ジャンルレスなサウンドで自身の音楽性を提示してきた七尾旅人が、「素朴な歌」を作りたいと思ったのはなぜでしょう。

被災地に足しげく通う日常のなかで、どうしようもない無力感に打ちひしがれながらもうっすらと見える希望の光。

そんな中、被災した一人の女性ファンからのメッセージが届きます。

「家もおじいちゃんも弟も大切なピアノも流された。でも旅人さんの歌は全部覚えている」

そのメッセージが「歌の力」を再認識させるきっかけになったと七尾旅人は語っています。

『リトルメロディ』は多彩なサウンドが交錯しながらも、繊細で美しいメロディと静謐な緊張感が見事に絡み合った究極のポップアルバムです。

収録された曲は全16曲。
3.11後の情景と心情をそのまま描いた『圏内の歌』や都会の夜に潜む孤独を歌ったメロウなソウルナンバー『サーカスナイト』、タブラ奏者U-zhaanやジャズベーシスト鈴木勲と圧巻の音のセッションを繰り広げる『アブラカダブラ』など、現代のポップシーンを代表する名盤との呼び声高く評価されます。

ただのチャリティアルバムにはしたくなかったと語る七尾旅人にとっても、ダイレクトに歌の力を伝える渾身の1枚になったのではないでしょうか。

初のライブ映像作品『兵士A』

6thアルバム『リトルメロディ』で極上のポップフィールドを築き上げた七尾旅人ですが、2015年11月に多くのリスナーを驚かせるワンマンライブを開催します。

のちにライブ映像作品としてリリースされる「特殊ワンマン『兵士A』」


近い未来起こりうるであろう戦争に行き、最初の戦死兵となる日本人自衛官・兵士Aを主軸にした100年の物語です。

このライブを開催するにあたり七尾旅人は、定番の反戦メッセージを訴えるだけの内容にしたくなかったと語っています。

『兵士A』は過去3年間温めてきた新曲を網羅し、およそ3時間にも及ぶ大巨編、各地の映画館でも上映されました。

本人の敬愛するミュージシャン岡村靖幸は、この大作に対して「とても大事な体験をした気がする」と感想を述べています。ほかアーティストにも大きな衝撃を与え、その強烈なリアリティあふれるメッセージ性に共鳴しました。

犬を観客にライブも『Stay Dogs』

大の犬好きで知られる七尾旅人。満を持して?行われたユニークなライブパフォーマンス「犬たちのためのコンサート」は、一見理解しがたい企画と思われましたが、本人とオーディエンスである犬の飼い主には犬愛を共有する大真面目なライブでした。

またタイトルに犬が使用されている7thアルバム『Stray Dogs』「別れをくり返しながら、野良犬のように生きていく」というコンセプトで制作されました。
バラエティに富んだ曲展開と深く沈む底の孤独な魂に手を差し伸べるようなトーチのバランス。新たに誕生した最高傑作と絶賛されました。

七尾旅人の私生活は?


数々の問題作を世に生み出し続ける七尾旅人ですが、私生活についてはあまり触れられていません。

・結婚はしているのか?
・両親との関係は?
・交友関係は?

など自然に疑問が湧きますよね?
その謎のベールに包まれた七尾旅人の私生活に触れていきましょう。

七尾旅人は現在は海の近くで愛犬に囲まれ一人暮らしをしているようです。
過去に結婚歴があると本人のライブで語られることもありますが、はっきりとしたことは分かりません。

また両親に関する情報も、両親は20歳前後で結婚したことと父親がジャズ好きだという情報だけでエピソードなども語られていません。
ただ、祖父母は高知県で養護学校の教諭をされていたとのこと。本人は裸一貫から学校を設立した祖父を心から尊敬する孫だったようです。

そんな七尾旅人ですが、交友関係はとても広いことで有名です。

デビュー年が同じ向井秀徳とは佐賀県の実家に行き来するほどの仲。ライブではよく実家でお坊ちゃま扱いされる向井秀徳をディスった内容のトークで笑いをとっています。

他にも原田郁子やU-zhaan、青葉市子、環Roy、Kan Sanoなどそうそうたるメンバー。建築家で作家の坂口恭平とは戦友と呼び合うほどの関係を築いています。

そんな仲間とコラボした作品やライブは数多く、その場にいるだけでユーフォリアを感じる圧倒的なパフォーマンスを展開しています。

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七尾旅人・人気曲

サーカスナイト

4thアルバム『リトルメロディ』に収録された通算11枚目のシングル。都会的で洗練されたメロウなスイートソウルナンバーですが、最初からヒットしたわけではありません。

ライブの定番曲として演奏することで、じわじわとファンの間で話題になり、青葉市子や向井秀徳がカバーしたことでファン以外のリスナーからもリアクションを得るように。
現在ではYouTubeでも600万回以上の再生回数を誇る七尾旅人の代表曲となっています。

また作家のよしもとばななが彼のファンであることを公言し、『サーカスナイト』という曲名をそのままタイトルにした小説を発表したことでも大きく話題になりました。

oh baby 今夜のキスで
一生分のこと 変えてしまいたいよ
ここは楽園じゃない
だけど 描ける限りの 夢のなか

どこか深遠さが漂い、やり場のない孤独感を優しいメロディラインにのせて代弁する、七尾旅人ならではのポップセンスが光る一曲です。

青葉市子ちゃんのカバーVerもおすすめ。若さゆえの哀感が儚く漂います。

Rollin’ Rollin’

アンダーグラウンドシーンでは知らない人はいないほど数多くの楽曲参加を誇るHIPHOPアーティストやけのはらと最強タッグを組んだ、アーバン・ヒップホップ・ソウル。

もはやシティポップ界のレジェンドとなったオザケンこと小沢健二×スチャダラパー『今夜はブギーバック』を彷彿とさせるフロア・アンセム必至のナンバーで、音楽シーンでは「ゼロ年世代の今夜はブギーバック」だと絶賛されました。

そんなライブ会場を一つにするキラーチューン『Rollin’ Rollin’』
2011年8月に行われた世界同時多発フェスティバルFUKUSHIMA!でも所縁あるミュージシャンたちとのコラボで圧巻のステージを魅せました。

八月

うれしい歌で かき消したら もう帰るね
君の前髪が揺れるから 怖くなって しゃがんだ

デビューシングル『オモヒデ・オーヴァ・ドライヴ』に収録された、ファンの間で人気の高い一曲です。

16歳から突如詩を書き始めたという七尾旅人は、その才気あふれる詩の世界をどこか懐かしいフォーキーな曲調に落とし込み、ジェンダーレスな甘い声で感情をふり絞るように歌います。その中性的で繊細なルックスそのものに幻想性を秘め、多くのファンを魅了しました。

また歌詞の途中で呪文のように登場する、

「プーティー ウィッ?」

は、本人が敬愛するアメリカのSF作家、カート・ヴォネガットの小説に出てくる鳥の鳴き声です。

18歳の少年が編む詩の世界観がキャッチーにリスナーの心を捉えた隠れた名曲とも言えるでしょう。

湘南が遠くなっていく


9枚目のシングルで、6thアルバム『リトルメロディ』にも収録されている美しい旋律が切ない究極のポップナンバーです。
3.11の震災後に関東の海に通った日々の感情から生まれた曲。

時よ止まれ 時よ戻れ そして
ぜんぶ嘘だと言っておくれ
どうか

曲の終盤で感情を絞り出すように静かに熱唱する七尾旅人の心情はどのようなものだったのでしょう。

海を身近に育った自分が、いまでは海との関係性が変わったような気がすると語る七尾旅人。大きな喪失感を背負いながら、もがく気持ちをストレートにぶつけたような歌詞とメロディ展開。
弾き語りの演奏は聴く者の心に強く迫ります。

震災で多くのものを失い機能不全となっても、美しく真摯に向き合う人たちにもたくさん出会ったと語る七尾旅人の入魂の一曲です。

七尾旅人/社会活動

稀有な音楽性が進化し続ける七尾旅人。社会的な活動も精力的に続けています。

東日本大震災義援金活動「DIY HEARTS」や、今年8月にはTwitterでの呼びかけでコロナ感染による自宅療養者に食料を置き配する支援活動を始めました。

支援の輪は自然に広がり多くのメディアに取り上げられるなど、その心優しき動向から目が離せない存在となっています。

まとめ

自由自在に飛び回る才能、七尾旅人。彼の活躍のフィールドはまだまだ広がり続けます。
まさに『Rollin’ Rollin’』の歌詞である「Rollin’ Rollin’ 回り続ける 運命に運ばれて」そのままに。

今度は何を魅せてくれるのか、期待大の注目アーティストです。

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