音楽のアイディアやエッセンスはアーティストからアーティストに受け継がれていき、スタイルを変えながらもさらに磨かれていきます。
そこで今回は、アーティストが音楽を始めたきっかけとなったバンドや人物などをご紹介していきます!
目次
あのアーティストが影響を受けた音楽
藤原聡(Official髭男dism)
ピアノを弾きながら、オシャレなポップソングを歌っているOfficial髭男dismの藤原聡さんですが、意外にも高校生の頃はハードロックやヘヴィメタルが好きで、Deep Purple、Bon Jovi、Dream Theaterなどのコピーバンドを組んでキーボードを弾いたりドラムを叩いていました。
Official髭男dism結成のきっかけは、当時高校2年生の藤原聡さんがライブハウスで中学3年生の現メンバー小笹大輔さんに声をかけ、2人共フィンランドのヘヴィメタルバンドCHILDREN OF BODOMが好きだったことで意気投合したからです。
この頃、ヘヴィメタルと同時にブラックミュージックのEarth, Wind & FireやStevie Wonderにも衝撃を受けます。
また、様々なジャンルに触れながらもブラックミュージックをルーツに持つaikoさんがJ-POPでもカッコイイ音楽を作っていることを知りました。
そしてMichael JacksonやONE OK ROCKの4thシングル「完全感覚Dreamer」を聴いてから、自分も歌いたいとヴォーカリストを志すようになりました。
米津玄師
リリースする曲全て大ヒットの米津玄師さん。
元々ボカロプロデューサーだったことは有名ですが、多種多様なジャンルの音楽をミックスさせた米津玄師さんならではの独特な曲を生み出せる理由が気になりますよね。
米津玄師さんのオリジナリティ溢れる音楽性のルーツになったアーティストは、様々なジャンルに及んでいます。
そのなかで最も強く影響を受けたRADWIMPSの野田洋次郎さんについては、「RADWIMPSからはすごく影響を受けている」「クソみたいな高校生だった頃のヒーロー」とインタビューなどで度々語っているほどです。
今では2人はとても仲が良くてSNSにツーショット写真がアップされていたり、米津玄師さんにとっての野田洋次郎さんを「偉大な父親」と影響の大きさを例えるだけでなく、5thアルバム「STRAY SHEEP」にはコラボ曲「PLACEBO + 野田洋次郎」も収録。
BUMP OF CHICKENの藤原基央さんも、米津玄師さんが影響を受けたと公言しているアーテイストです。
「小学5年生の頃にBUMP OF CHICKENの曲に合わせたアニメを見たことが音楽の原体験」と語り、本格的に音楽に興味を持つきっかけとなりました。
また、人生を変えた1曲としてP-MODEL平沢進さんの「MOTHER」を挙げて、「新しい音楽でありながらもどこかに懐かしさや郷愁感を感じる」と称賛しています。
井口理、常田大希(King Gnu)
今や日本を代表するバンドKing Gnuのヴォーカル2人、井口理さんと常田大希さんは共に東京芸術大学で音楽理論や基礎を学んでいます。
井口理さんは音楽学部声楽科を卒業し、常田大希さんは「社会と結びついた音楽をしたい」と音楽学部器楽科を中退しました。
井口理さんは、小さい頃に見ていたテレビ番組「ハッチポッチステーション」でThe Beatlesの存在を知ったそうです。
King Gnuのメンバーに教えてもらうまでThe Beatles以外の洋楽はほとんど聴いておらず、現在でも布施明さんや尾崎紀世彦などの昭和歌謡とチューリップや安全地帯などを聴いているそうです。
そんな井口理さんが最も影響を受けたのは、シンガーソングライターの七尾旅人さん。
声の質感と特に初期の癖の強さや若干感じる不快感が好きで、ハマると抜け出せなくなる中毒性が出てくるとのこと。
常田大希さんは、両親がピアノを弾く家庭に生まれギターなどの楽器に囲まれて育ちました。
子供の頃に始めて買ったCDは、テレビ番組「ポンキッキーズ」に出演していたヒップホップグループスチャダラパーのもの。
その後、オルタナティヴ・ロックのNirvanaを聴き衝撃を受けてバンドを始めました。
常田大希さんは革新的なミクスチャーバンドとも称されるKing Gnuを率いていることもあり、様々なジャンルの音楽を吸収しています。
クラシックはストラヴィンスキーやプロコフィエフなどのロシアの作曲家、ジャズのThelonious MonkやMiles Davis、ロックではRadioheadやArctic Monkeys、Gorillaz、さらに日本のBLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTなどです。
音楽性だけでなくアーテイストとしての動きも含めて特に影響を受けているのは、同世代の「ヒップホップの新王者」Kendrick Lamarです。
Official髭男dismの藤原聡さん、King Gnuの井口理さん、米津玄師さんの3人が共通して影響を受けたと公言しているのがポルノグラフティです。曲と調和した軽やかなヴォーカルを聴かせる岡野昭仁さんと、ギターに触れているアーティスト達も絶賛する完璧な技巧のギタリスト新藤晴一さんによるテクニックに頼らないキャッチーなJ-POPを、3人共本格的に音楽を始める以前から聴いていました。
藤原基央(BUMP OF CHICKEN)
BUMP OF CHICKENといえばストーリー仕立ての歌詞やアグレッシブなサウンドが思い浮かびますが、ほぼ全曲の作詞・作曲を手掛けている藤原基央さんのルーツはサザン・ロックです。
1960年から1970年代にかけてアメリカ南部で生まれたサザン・ロックは、カントリーやブルース、ジャズ、R&Bなどアメリカの土着的な音楽を基にした、シンプルで哀愁のある男っぽいロック。
藤原基央さんがサザン・ロックを知るきっかけとなったのは、ヘヴィメタルの帝王Ozzy OsbourneのバンドのギタリストZakk Wyldeが、1991年に結成したバンドPride & Gloryです。
Pride & Gloryが最も影響を受けた音楽性のルーツになっているバンドで、Zakk Wyldeは自分にとってのギターヒーローと名前を挙げています。
他にも、サザン・ロックを代表するバンドLynyrd Skynyrd、The Allman Brothers Bandを聴いていました。
TAKA(ONE OK ROCK)
2010年代から絶大な人気を誇っているONE OK ROCKのヴォーカルTAKAさん。
TAKAさんは、森進一さんと森昌子さんの長男として生まれ、幼い頃からお父さんの歌を聴きながら育ちました。
中学生の頃にジャニーズ事務所に所属してNEWS結成メンバーとして活動を始めましたが、3か月後に脱退しジャニーズ事務所を退所。
それまで積み上げてきたもの全てをリセットした頃に、ライブハウスでRIZEの演奏を聴いて衝撃を受けロックに目覚めたそうです。
RIZEがいなければ、ONE OK ROCKは存在していなかったかもしれません。
そしてもう1つのバンド、RIZEと並ぶTAKAさんのルーツはELLEGARDENです。
ELLEGARDENの特にヴォーカル細美武士さんを「一方的に愛している」とまで語り、ライブ前には必ずELLEGARDENのDVDを見てテンションを上げていた時期もあったほど。
2つのバンドからは音楽性だけでなく、ライブパフォーマンスやロックバンドのスタイル、生き方にも影響を受けているそうです。
日本のバンド以外にも、Linkin ParkやRed Hot Chili Peppersもリスペクトしているバンドです。
milet
人気シンガーソングライターmiletさんは学生時代をカナダで過ごしています。
幼少期からクラシックに親しみ、小学生でフルートを始めると同時に、お兄さんの影響から邦ロックや洋ロックを聴き始めました。
そんなmiletさんが初めて買ったCDは、グラミー賞を2度受賞しているイギリスのロックバンドMUSEの2ndアルバム「Origin of Symmetry」。
どんなアーティストか知らないままに黄色のジャケットに惹かれてのジャケ買いでしたが、最初の一音で「すごい!」と思ったそうです。
男性ながら美しいファルセットを聴かせるMatthew Bellamyのヴォーカルやクラシックを思わせるピアノなど、ドラマチックで濃厚な曲に衝撃を受けました。
長屋晴子(緑黄色社会)
力強く透明感ある歌声の緑黄色社会のヴォーカル長屋晴子さんは、小学生のときに初めて買ったCDが大塚愛さんの「さくらんぼ」でした。
曲を作って歌うシンガーソングライターを大塚愛さんから知り、自分も同じことをしたいと思うように。
高校生で緑黄色社会を結成した際には、いきものがかりのような国民的なバンドになることを目標にしました。
ヴォーカル吉岡聖恵さんのように自分自身が心から楽しんで歌って、聴く人には希望や元気や勇気を与えられるアーティストになりたいと思ったそうです。
ikura(yoasobi)
小説を音楽にするユニット「YOASOBI」と、アコースティックセッションユニット「ぷらそにか」のメンバーでもあるikuraさん(本名:幾田りら)。
音楽に囲まれた環境で育ち、小学1年生でピアノを始めて、6年生からはギターで作詞・作曲を始めました。
幼少期にシカゴに住んでいたことがあり、小学生の頃はミュージカル劇団に所属していたことからも、本格的に音楽の世界に入ろうと決意したきっかけは、ディズニー・チャンネルのミュージカル番組「ハイスクールミュージカル」です。
「ハイスクールミュージカル」のサウンドトラックを買って毎日聴いていたそう。
ミュージカル仕込みの発声や表現力とコンポーザーAyaseさんが作る楽曲の融合がyoasobiです。
大森元貴(Mrs.GREEN APPLE)
新体制に向けてProject-MGA進行中のMrs.GREEN APPLE大森元貴さんは、小学生の頃にお兄さんが聴いていたMONGOL800に夢中になり、卒業式の謝恩祭で演奏する為にバンドを結成します。
中学生からすでに将来プロになろうと決意して30~40曲のオリジナル曲を制作し、中学1年生の終わりには事務所のオーディションに合格してライブも行いました。
そんな早熟の大森元貴さんが現在リアルタイムで影響を受けているのは、同世代のThe Vamps。
さらにアメリカを代表するバンドMaroon 5です。
The Vampsはチープな雰囲気も漂わせる80年代風の曲にシンパシーを感じ、Maroon 5はヴォーカルAdam Levineの歌の上手さに感動していつも聴いているそうです。
はっとり(マカロニえんぴつ)
メンバー全員が音大出身のマカロニえんぴつのヴォーカルはっとりさんは、お父さんがハードロック・ヘヴィメタルのバンドを組んでいたことから、幼少期から常にロックやクラシックなどに触れていました。
通っていた保育園も個性を尊重するところで、外でみんなで遊んだり1人で絵を描いたり、そのときやりたいことを自由にさせてくれたそうです。
その幼稚園で、子供向けの歌を出していたトラや帽子店の曲を歌ってコンサートに行くうちに、歌うことの楽しさを知りました。
トラや帽子店のヴォーカル増田裕子さんは、その後ケロポンズを結成。ケロポンズは、「おかあさんといっしょ」「ポンキッキーズ」「それいけ!アンパンマンくらぶ」などに出演と楽曲提供をしています。
バンドを始めていた高校生の頃には、ユニコーンをはじめ、くるり、エレファントカシマシなど王道の邦ロックバンドから影響を受けて、マカロニえんぴつらしい歌モノを作っていました。
最後に…
アーティスト達が影響を受けた音楽を見てみると、思いがけない発見があって面白いですよね。
リスペクトする音楽を受け継ぐというのは、曲やパフォーマンスのスタイルをそのまま模倣するのではなく、価値観や思想などを継承するもの。
一見ルーツとは違っているように見えても、アーティスト達の中には憧れのバンドや人物の音楽がしっかりと息づいているようです。