YouTube発、21歳の現役大学生ながら数々のヒット曲を作り出しているVaundy。「東京フラッシュ」「不可幸力」など数多くのヒット曲を作り出し、2021年7月には初のドラマタイアップも決まっています。
そんな中、2021年9月17日、彼の新曲が活動の発端であるYouTubeチャンネルではないあるところにアップされました。それは、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の公式HPです。
#Vaundy 🦱
現在放送中の
NHK 大河ドラマ「青天を衝け」
をイメージした #インスパイアードソング『偉生人』
を書き下ろしました‼︎✨
楽曲が使用されている
スペシャルムービーはこちらから
🎥https://t.co/y7n6EuSK3Yぜひチェックしてください🙌🏻@nhk_seiten #青天を衝け#吉沢亮#NHK https://t.co/ZEKvCiCKDz
— Vaundy_ART Work Studio (@Vaundy_AWS) September 17, 2021
今回の記事では「青天を衝け」のインスパイアードソングとして公開されている新曲「偉生人(いせいじん)」についてピックアップします。
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目次
大河ドラマ「青天を衝け」のあらすじ
楽曲をより楽しむために、まず「青天を衝け」のストーリーを簡単にご紹介します。
大河ドラマは歴史上の人物をピックアップして物語を作っていくのですが、今回取り上げられているのは「日本資本主義の父」と呼ばれ、現みずほ銀行をはじめ200以上の大企業を作り上げた渋沢栄一。2022年から1万円札の顔になる方です。演じるのは人気俳優・吉沢亮です。
幕末から明治初期という激動の時代の中で、百姓の出である彼が日本にどう資本主義を取り入れ、日本経済を変えていったのかを描いています。
2021年9月現在、作中で描かれているのは彼の中で転機となったヨーロッパ訪問から帰国し、明治政府の要職として奮闘する「明治政府編」の最中。銀行、株式会社など彼の功績に関連するキーワードも出てきており、物語も佳境です。
Vaundyが楽曲に込めた思い
「青天を衝け」公式サイトにて、渋沢栄一はじめドラマの登場人物を思い浮かべながら作った曲だとコメントを出しています。このコメントで注目したいのが、「暗い過去から立ち上がれないでいるその時代の多くの日本人」という部分。
ドラマの主人公・渋沢が生まれた1800年代は、ペリー来航など海外からの圧力を受け開国をしたタイミングと被ります。同時に、大塩平八郎の乱や坂下門外の変をはじめ、国内で幕府への不満が爆発し始め、「尊王攘夷」「攘夷志士」という言葉が出てきたのもこの時代です。アニメなどでおなじみの「新選組」が結成し、活動していたのもこの頃です。
海外からの圧力が強まり、討幕を志す若者が増え、血を見ることが多かった幕末という時代。そんな中で、渋沢はヨーロッパ周遊で見たこと、学んだことから一つの希望を見出す。そんな彼の姿から周囲が勇気をもらう様子を思い浮かべて書いた曲だそうです。
また、現代の人にもこの勇気が伝わってほしいともコメント。コロナ禍により先が見えない状況でも、どこかで希望を見出してほしい。そんな気持ちも込められています。
歌詞・映像からひも解く「青天を衝け」というドラマ
スタジオ見学などを通じ、作品の理解を深めた状態で書かれたこの曲。曲の歌詞、そしてNHKの公式HPに上がっている動画から、歌詞の考察を進めていきます。
※一部ドラマ本編のネタバレ要素も含まれます。ご注意ください。
序盤~1番サビ -いち百姓と将軍との出会い-
まずは序盤。動画では主人公の渋沢の産まれ故郷である武蔵野国(現・埼玉県)での出来事が流れます。歌詞にも「子供」という言葉がある通り、彼の幼少期の姿そのものを指しているのでしょう。
そんな子供のころの真っすぐさを持ったまま大人になり、渋沢は江戸に出ます。続けて映像で出てくるのは、ペリー来航等開国を巡る騒動や幕府から要請された金銭支払いに関し憤りを感じる場面。彼なりの葛藤を、「僕らは何千と違う心に穴を開けて生きてた」と表現しています。
そして、1番のサビへ。このサビにおける「先生」は、彼が尊王攘夷思想に目覚めるきっかけとなった学者・海保漁村や、作中で山崎銀之丞演じる大橋訥庵を指しています。
彼の下で学び、横浜焼き討ちなど過激な活動を行おうとする最中に出会うのが一橋慶喜、のちの江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜です。
歌詞の中の「悲しみが未来を そう、作っているって」というのはそんな攘夷志士たちの過激な活動を指しており、慶喜との出会いは渋沢に「愛しさと未来を」を見出させたのでしょう。このサビで、渋沢と攘夷思想との決別を歌っています。
2番~間奏 ―京都へ上京、そして海外へ―
2番の序盤で流れるのは、京都にたどり着いた渋沢の姿。生まれ故郷と江戸という世界を「守って精一杯」だった彼にとって、京都の町は刺激ばかりです。
そして慶喜の家臣となるのですが、田舎の百姓だった彼にとっては大きなプレッシャーでもあったでしょう。歌詞にある「でっかくなったが変わることが苦しい」というのは家臣として働きだした彼の苦悩を表現しています。
そして、激しく場面が変わりながら流れるのは主君である慶喜、共に戦う兵、そして長年連れ添ってくれている妻の千代。彼の中にあった「胸にいっぱいの葛藤」を包み込んでくれる「愛しさ」をくれた仲間達です。そして、2番のサビへ。
このサビの映像で、彼の人生を変えたヨーロッパ周遊が始まります。歌詞の中にある「ここにあるもの」は日本国内にある学問や経済システムを指していると考えられます。
そして、この2番サビにおける「先生」は主君・慶喜に変えてみると映像と歌詞がいかにリンクしているか理解しやすいはずです。
間奏後~大サビ ―渋沢が切り開く未来―
そして、大サビ前のこのフレーズ。「理想郷目指した 誰より早く 間違いなく 自分のために」。
曲の冒頭にも似たフレーズがあるのですが、「辿り着くために」から「自分のために」に変わっています。漠然と描いていた明るい未来を、自分の手で切り開く。そんな渋沢の決意が見える言葉を選んでいます。
そして、大サビ。1番サビ・2番サビでそれぞれ出てきたフレーズを組み合わせています。そして動画内の渋沢の顔は笑顔や意気揚々さが読み取れるシーンが多いです。
攘夷活動を通じて感じた悲しみ、そして日本に「全然足りなかった」ものを学んだヨーロッパ周遊の知識を生かし、「愛しさ」をくれる仲間とともに「笑って」いられる未来を作る。最後の「もう、笑っていこうぜ」というフレーズは未来をともに笑っていきたいという渋沢の心境を表しているのでしょう。
「インスパイアードソング」と銘打っているだけあって、作品の流れをしっかりくみ取った歌詞になっています。そしてアップテンポな曲調は、気持ちを前向きにさせてくれるもの。本人のコメントにあった「勇気」を感じさせるものに仕上がっています。
他にもある!インスパイアードソング
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これまでアーティストと作品のコラボレーションというと、テーマ曲などでのタイアップが定番。作品を踏襲して楽曲作成をしているものもあれば、そうでないものもありました。
しかし、最近は作品の内容をすべて理解したうえで楽曲作成を行う「インスパイヤードソング(インスパイアソング)」というスタイルでリリースされる楽曲増えています。今回の偉生人もその一つ。
最近リリースされた楽曲でいうと、BiSHのアイナ・ジ・エンドが9月20日にソロ名義でリリースしたEP「BORN SICK」収録の「ロマンスの血」もインスパイヤードソングとして書かれています。
これは暴力団の抗争を描いた映画「孤狼の血 LEVEL2」をもとに作られた曲です。
YouTubeに公開されているPVには、「映画を見た後に曲を聞いたら衝撃を受けた」「劇中で流れなかったのが残念」というコメントがあり、作中の流れをしっかりくみ取った曲であることが見受けられます。
インスパイアードソングはタイアップソングとはまた違う、映像作品とのコラボの形とも言えるもの。今話題のアーティストがこの手法を用いて話題になっていることから、今後インスパイアードソングが増えていくかもしれませんね。
最後に
大河ドラマの内容をもとに作った「インスパイアードソング」として公開された「偉生人(いせいじん)」。2021年10月現在配信リリース等の予定はなく、曲を聴けるのはドラマの公式サイトかNHKの公式YouTubeチャンネルのみ。
ぜひドラマを見ながら、この曲をかみしめてくださいね!
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