ジャンルやカルチャーの垣根を越え、2010年代後半を代表する世界的アーティストとして名を馳せた若き天才、ポスト・マローン(Post Malone)。
顔にまで彫られた無数のタトゥー、物議を醸す言動、若者からの熱狂的な支持などの諸条件を完全に満たした彼は「現代のロックスター」と称されることも多く、ビリー・アイリッシュらと並んで音楽シーンを語る上で欠かすことのできない存在のひとりです。
白人ラッパーとしてシーンに登場したポスト・マローンですが、様々な音楽ジャンルを内包した彼の楽曲はカテゴライズが難しく、本人も「俺の音楽はジャンルレスだ」と断言するほど。
2020年9月には初開催の音楽フェスティバルSUPERSONICのヘッドライナーとして再来日が決定しているポスト・マローン。
昨年リリースされた圧倒的傑作サードアルバム『Hollywood’s Bleeding』を引っ提げたポスト・マローンの最新ライヴは必見です。
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目次
ポスト・マローン(Post Malone)
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- 本名:オースティン・リチャード・ポスト(Austin Richard Post)
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- 生年月日:1995年7月4日
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- 出身地:アメリカ合衆国ニューヨーク州シラキュース
- 肩書:ラッパー、歌手、作曲家、プロデューサー
1995年にニューヨークで生まれたポスト・マローンは、父親がNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のダラス・カウボーイズ関連の仕事に就くため、9歳の時にテキサス州へ引っ越しました。
父親であるリッチ・ポストは結婚式で音楽を流すDJの仕事をしていたため、ポスト・マローンは幼少期から多様なジャンルの音楽に囲まれて育っています。
彼の“ジャンルレス”と評される幅広い音楽性は、このような環境が育んだものかもしれません。
影響を受けたアーティストとして、ボブ・ディラン、カート・コバーン(Nirvana)、ジョニー・キャッシュ、50 Cent、カニエ・ウェストなど各ジャンルでカリスマ的な人気を誇る面々の名前を挙げています。
ポスト・マローンはNirvanaの熱烈なファンとして知られており、コロナウイルス感染拡大で外出禁止が続いていた2020年4月25日には、Nirvanaの楽曲だけを演奏するライヴを自宅から配信しました。
ヴォーカルスタイルは評論家に「簡潔」とも評されるクセのないもので、圧倒的なラップスキルや広いヴォーカルレンジなどを持ち合わせているわけではありませんが、メロディラインの良さを表現するのに十分な歌唱力を持っています。
音楽以外の事業にも力を入れており、2019年に合法マリファナブランドShaboinkを設立したほか、2020年には南フランスのブドウ畑で収穫されたぶどうを使用したロゼワインを発売しています。
ポスト・マローン(Post Malone)・名前の由来
ポスト・マローンというステージネームを使用し始めたのは、彼が14~15歳の時でした。
殿堂入りも果たしたNBAの名バスケットボール選手カール・マローンが由来だという説もありましたが、この説は後にポスト・マローン本人によって否定されています。
マローンという名前に特に深い意味はなく、ラッパー風の名前を自動生成する“rap name generator”というアプリを使って出てきたもので、それと本名のポストを組み合わせて出来上がったのがポスト・マローンという名前です。
ポスト・マローン(Post Malone)・タトゥー
ポスト・マローンのトレードマークのひとつとも言えるのが全身に数多く彫られたタトゥーです。
あれだけ彫っていると昔からのタトゥー愛好家なのかと思いきや、初期の写真や映像における彼の身体にはタトゥーは見当たりません。
彼が初めてタトゥーを彫るきっかけとなったのは、なんとあのジャスティン・ビーバーでした。
ふたりでスタジオで作業していた時、ジャスティンお抱えのタトゥー・アーティストが遊びに来たため、「自分はジャスティンよりもタフガイなんだ!」ということを示すためにウサギを彫ってもらったのが最初だったとか。
それを機にタトゥーはどんどん増えていき、その中にはボブ・ディラン、第39代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ、21歳の若さで急逝した天才ラッパー・リル・ピープなど実在の人物の肖像画も含まれています。
そのタトゥー熱は冷めやらず、現在では顔に複数のタトゥーを入れるまでになったポスト・マローン。
顔に彫った理由を訊かれた彼は、自分のルックスに対する劣等感によるものであると答えています。
また、日本人にとって驚きなのが、彼の左足の外側に入っているタトゥーです。
なんと高橋留美子原作の人気漫画『犬夜叉』に登場するヒロイン・日暮かごめが彫られてます。
かなり目立つ位置に彫られているので、SUPERSONICでは日暮かごめの姿を肉眼で確認できるかもしれません。
— Post Malone (@PostMalone) April 3, 2017
ポスト・マローン(Post Malone)・経歴
初期~鮮烈のデビュー
DJだった父親の影響で多くの音楽に囲まれて育ったポスト・マローン。
ギター型のコントローラーを使用してプレイするゲーム『ギターヒーロー』に熱中していた彼は、本物のギターを手に取って練習するようになります。
2010年には地元テキサスのメタルコアバンドCrown the Empireの加入オーディションを受けますが、不運にも演奏中に弦が切れてしまい不合格になったことも。
バンド名は不明ですが、ポスト・マローンがプロのミュージシャンとしての道を歩み始めた時、彼はまだヘヴィメタルバンドのメンバーだったことが明かされています。
ギタリストとして腕を磨く一方、16歳の時には無料音楽制作ソフトを使った初めてのミックステープ『Young and After Them Riches』を制作するなど、この時期からすでに才能の片鱗を見せ始めていました。
高校卒業後に地元の大学に進学しますが、わずか4ヶ月で退学。
自宅に戻ってきた息子に対し、彼の父親は「何をやるにしても頂点を極めろ」とアドバイスしたそうです。
音楽活動に専念するためにロサンゼルスに引っ越すと、そこで出会ったプロデューサーやアーティストとBLCKVRDというグループを結成し、レコーディング活動を開始。
その後、BLCKVRDのメンバー数人とサンフランシスコへ転居し、音楽プロダクション・チームFKiと出会ったことがポスト・マローンの運命を変えました。
2015年2月、FKiの力を借りてレコーディングしたオリジナル楽曲“White Iverson”をネット上に公開すると、再生回数は瞬く間に100万回を突破。
突如としてシーンに登場した若き白人ラッパーにヒップホップ界の賛否は分かれ、デビューと同時に物議を醸す存在として知られることになりました。
“White Iverson”はチャート上でも成功を収め、ビルボードのラップチャート3位、総合チャートでも14位を記録。
注目の存在となった彼を業界が放っておくはずもなく、2015年8月にはテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデなど大物アーティストが所属するレコード会社Republic Recordsと契約を結んでいます。
また、ジャスティン・ビーバーやカニエ・ウェストといった超大物アーティストとも接点が生まれ、ポスト・マローンの名はさらに広まっていきました。
2016年5月13日には、デビュー・ミックステープ『August 26th』をリリース。
タイトルはデビューアルバムの発売日を予告するものでしたが、結果的にその日に発売することはできず、ポスト・マローンは謝罪のコメントを出しています。
当初の予定より3ヶ月ほど遅れて12月9日にリリースされた待望のファーストアルバム『Stoney』は大ヒット。
彼にとって初のトップ10シングルとなった“Congratulations”などを収録した同作は、全米最高4位まで上昇し、300万枚以上を売り上げを記録しています。
初の全米制覇
デビューアルバムが大成功を収めたポスト・マローンでしたが、彼が本当に“現象”になるのはここからでした。
2017年9月、21 Savageをフィーチャーしたシングル“Rockstar”で初の全米1位を獲得すると、2018年2月のシングル“Psycho”でも再び首位を獲得。
2018年4月27日、セカンドアルバム『Beerbongs & Bentleys』が発売されると、当然のように全米初登場1位を獲得。
現在までに300万枚以上を売り上げた同作は、まさに記録破りの1枚となりました。
ポスト・マローンが打ち立てた記録をご紹介しておきましょう。
- 発売初日におけるアメリカ国内のSpotify最多再生回数を樹立(4,790万回)
- Billboard Hot 100の20位圏内に9曲同時にランクイン
- Billboard Hot 100の40位圏内に14曲同時にランクイン
ちなみにBillboard Hot 100の20位圏内の同時チャートイン記録は、それまでThe BeatlesとJ. Coleが保持していたもので、曲数は6曲でした。
それを3曲も更新してしまったのですから、ポスト・マローンの勢いがどれだけ凄まじかったのか理解していただけるでしょう。
前作『Stoney』の勢いも衰えず、2018年8月にはマイケル・ジャクソンの『Thriller』が34年間に渡って保持していたビルボードR&B and Hip-Hop Albums chartの連続チャートイン記録77週間を破り、新記録を樹立しています。
マイケル・ジャクソンの『Thriller』は総売上が1億枚以上とも言われる音楽史上最強のモンスターアルバムです。
その記録を破ってしまったポスト・マローンって…
2019年2月には、第61回グラミー賞の4部門に初ノミネート。
残念ながら受賞は逃しましたが、授賞式でRed Hot Chili Peppersと共演し、青いテレキャスターをかき鳴らして歌うなど“ロックスター”ぶりを見せつけてくれました。
セカンドアルバムで数々の記録を樹立したポスト・マローンでしたが、彼に対して懐疑的な見方をする評論家も多く、『Beerbongs & Bentleys』のディスクレビューでは星ひとつという最低評価をするメディアもあったほどです。
ポスト・マローンとしてはフラストレーションの溜まる時期であったことは想像に難くありません。
『Hollywood’s Bleeding』で再び頂点へ
前作の衝撃も冷めやらぬ中、ポスト・マローンは再び新曲をリリースし始めます。
2019年8月30日にリリースしたシングル“Circles”はロングヒットとなり、発売から3か月後の11月30日に首位を獲得したほか、38週間に渡ってトップ10入りを記録するなど息の長い1曲となりました。
ポスト・マローンがセカンドアルバムからサードアルバムの間にリリースしたシングルは、そのすべてが全米3位以内を記録する大ヒットとなっています。
2019年9月6日、現在のところ最新作となるサードアルバム『Hollywood’s Bleeding』をリリース。
トラヴィス・スコットやオジー・オズボーンら超豪華なゲスト陣も話題になりました。
数多くのヒットシングルを収録した同作は、2作連続となる全米初登場1位を記録。
衝撃のデビュー以来、まったく衰えない勢いをまざまざと見せつける結果になっています。
また、前作では芳しくなかったメディアからのレビューですが、『Hollywood’s Bleeding』はおおむね好意的に受け止められ、ジャンルレスな傑作として評価されています。
“現代のロックスター”として話題を提供し続けるポスト・マローン。
2020年3月には、ステージ上での奇行がSNS上で取り上げられ、精神状態や薬物の乱用などを心配する声が上がりましたが、本人とマネージャーが健康状態に問題がないことを表明しています。
SUPERSONICでは元気な姿を見せてくれることを期待しましょう。
ポスト・マローン(Post Malone)・オススメ曲
24歳の若さにしてすでに数多くのヒットシングルを持つポスト・マローン。
その中から厳選したオススメ曲をご紹介します。
White Iverson
ポスト・マローンの大出世作となったシングル“White Iverson”。
NBAの黒人スター選手アレン・アイヴァーソンからインスピレーションを受けたバスケ愛あふれる歌詞と、メロウな曲調に乗せたポスト・マローンの朴訥としたラップとメロディがクセになる楽曲です。
5000ドルの予算とたった1日の撮影期間で撮ったというMVは、彼の黒人文化への憧れがあからさまに表現された内容となっています。
この内容を快く思わない層がいるであろうことは容易に想像ができるものの、ここまであけすけに自分の憧れを表現できるポスト・マローンの無邪気さに微笑ましさを感じるのも事実。
MV中のポスト・マローンの編み込みヘアーはアレン・アイヴァーソンの真似をしたもので、本当にアイヴァーソンをヒーロー視していることが伝わってきます。
Take What You Want
ヘヴィメタルの帝王オジー・オズボーンと全米チャートを幾度も制した大物ラッパー・トラヴィス・スコットをゲストに迎えた“Take What You Want”は、最新作『Hollywood’s Bleeding』からのヒットシングルです。
哀愁を感じさせるオジー・オズボーンの声、トラヴィス・スコットのオートチューンを効かせたヴォーカルの魅力を最大限に引き出したドラマティックな名曲となっています。
モダンなヒップホップとハードロックを自然すぎるほど見事に融合させたポスト・マローンの手腕に感服するしかありません。
オジー・オズボーンも「ソロアーティストになってから歌った曲の中でも特に気に入っている」と仕上がりに満足しており、彼の最新ソロアルバム『Ordinary Man』にボーナストラックとして収録したほどです。
Circles
全米1位に輝いたシングル“Circles”は、サードアルバム『Hollywood’s Bleeding』に収録されています。
中世ヨーロッパを舞台とした剣と鎧の世界を描いたファンタジックなMVとは裏腹に、曲調はキラキラの超王道ポップソング。
ラップでもロックでもない超高性能なポップチューンまで手に入れてしまったポスト・マローンに死角はあるのでしょうか。
タイトルにふさわしい円を描くようにリフレインするコーラスのメロディが心地よく、SUPERSONICのような野外フェスでは特に映える楽曲になりそうです。
ポスト・マローン(Post Malone)・まとめ
2020年9月にSUPERSONICのヘッドライナーとして来日することが発表されたポスト・マローンについてご紹介してきました。
若き白人ラッパーとしてシーンに登場した彼ですが、もうすでにジャンルという枠組みが無意味に感じられるほど幅広い音楽性を獲得しています。
ヒップホップ、ロック、エレクトロ・ミュージック、R&Bなど様々な音楽的嗜好を持ったオーディエンスを全員ノックアウトすることのできる全方向的アーティスト、それがポスト・マローンだと言えるでしょう。
SUPERSONICでの彼のステージは、世界の音楽シーンにおけるトップ中のトップのライヴを体験できる非常に貴重な機会になるはずです。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、SUPERSONICは2021年へ延期されることが発表されました。
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