新年明けて間もない2022年1月5日、この国における夏フェスの代名詞”ロッキン”こと“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”が、今年から千葉市蘇我スポーツ公園での開催となることが公に発表されました。
「ひたちなかで開催されてこそのロッキンなのでは」と、思わず本音を漏らしたくなる邦楽ロックファンはきっと多いのではないでしょうか。
ですがその気持ちは、ロッキンの総合プロデューサー・渋谷陽一氏(株式会社ロッキング・オン代表取締役)が誰よりも強く感じているはず。
この記事では、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”が国内最大規模の夏フェスへ成長を遂げるまでの歩みや、今後の向き合い方について書いていきます。
目次
ROCK IN JAPAN FESTIVAL とは
“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”通称ロッキンは、毎年8月頃に数日間にわたって開催される国内最大規模の野外音楽フェス。
音楽雑誌”ROCKIN’ON JAPAN”で知られる株式会社ロッキング・オンの代表取締役・渋谷陽一が主催者となり、2000年の8月に2日間にわたって開催されたのが全ての始まりでした。
茨城県ひたちなか市にある国営ひたち海浜公園で開催されるのが、フェス発足初期からの恒例。東京や神奈川、埼玉など首都圏で生活している人からすれば、その程良い距離感からちょっとした旅行気分を味わえるのも魅力の1つではないでしょうか。
国営ひたち海浜公園は、茨城県ひたちなか市の太平洋岸に位置する国営公園。広大な敷地面積を持ち、その広さは東京ディズニーランドの約5倍に匹敵するほど。緑が生い茂り自然豊かで、四季折々の花々や木々を楽しむことができる。
ロッキンは新型コロナウイルスの影響を受け一昨年、昨年と2年連続でやむを得ず中止となり、邦楽ロックファン(顧客側)、株式会社ロッキング・オン(主催側)双方どちらの視点に立っても苦しい状況が続いています。
こうした状況下で、今月5日に国営ひたち海浜公園から場所を移して千葉市蘇我スポーツ公園で開催することを宣言し、3年ぶりのロッキン開催を実現すべく着々と準備を進めています。
千葉市蘇我スポーツ公園は、毎年ゴールデンウィークの時期に数日間にわたって開催される野外音楽フェス“JAPAN JAM”の開催地。フェスの主催は、ロッキンと同様に株式会社ロッキング・オンが担当。
ROCK IN JAPAN FESTIVAL の歩み
ロッキン初開催(2000年)
ロックの祭典“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”が初開催されたのは、2000年の8月12日。
当時の日本にはまだフェス文化が浸透していなかったこともあるためか、記念すべき第1回目のロッキンは、12日〜13日の土日2日間という比較的ミニマムな期間で開催されました。
2日間の観客総動員数は約6万人。総出演アーティストは全16組で、エレファントカシマシやくるり、NUMBER GIRL、スピッツなど当時のロックシーンを代表するアーティスト達が名を連ねました。
炎天下の中で熱いステージ演奏が繰り広げられた会場は、ロッキンお馴染みの国営ひたち海浜公園。出演者が立つステージはまだ1箇所のみでした。
ロッキンとひたちなか市。ロッキンが国内最大規模の野外フェスとして日本中に浸透するまでの二人三脚の歩みは、2000年から始まったのです。
ロッキン3日間開催(2001年~2013年)
ロッキン初開催から1年後の2001年からは、2日間の開催ではなく3日間にわたる開催に変更。
月曜日から金曜日まで働くサラリーマン層を意識し、金・土・日の3日間で日程が組まれました。
2001年開催時の全ステージ数はGRASS STAGEとLAKE STAGEの2ステージのみでしたが、DJブース、SOUND OF FORESTなどお馴染みのステージが新設されていき、2006年には計5ステージまで拡大しました。
2013年にはKANA-BOONの大ブレイクをきっかけに、フェスで踊れる四つ打ちダンスロックが若者の間で瞬く間に大流行しました。
フェス文化が10代〜20代の若い世代を中心に浸透していく中で、四つ打ちダンスロックの流行というのは、もはや必然的なものだったと言わざるを得ません。
2001年の開催時は、3日間で参加アーティストの数が40組程度だったロッキンですが、2013年には約150組が参加するほどに拡大していきました。
▼あわせて読みたい!
ロッキン4日間開催(2014年〜2018年)
KANA-BOONやフレデリック、キュウソネコカミなど、高速ビートの四つ打ちダンスロックを軸に名を広めたバンドがブレイクを重ね、空前のロックフェスブームを迎えた頃、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”はついに3日間開催から4日間の開催に変更されました。
4日間通しで行うのではなく土日2日ずつ、1週間の間隔を空けて開催するスタイルは、当時としては画期的なものだったのではないでしょうか。
2016年度からは、ステージ数が新設のHILLSIDE STAGEを加えた合計7ステージの形態で定着。
従来の一般的なステージはGRASS STAGE、PARK STAGE、LAKE STAGE、SOUND OF FOREST、BUZZ STAGE、WING TENT、HILLSIDE STAGEの7つ。
2013年までは10万人台だった総動員数が、開催期間が4日間に拡張されたことを機に20万人を超えるようになり、参加アーティストの数もなんと約200組に増加しました。
ロッキンの人気は歳月を重ねても衰えることはなく、2018年には当時過去最多となる総動員数27万6千人を記録しています。
ロッキン史上初の5日間開催(2019年)
2014年から2018年までの5年間は4日間での開催を続けていたロッキンですが、2019年に突入するとさらに細分化された5日間での開催に変更されています。
参加アーティストの数は総勢250組と、計り知れない規模の夏フェスへ成長を遂げました。
5日間で過去最多の動員数33万7千人を記録し、国内屈指の人気夏フェス”サマーソニック”の動員数(30万人)を上回る快挙を達成しています。
コロナによる開催中止(2020年〜2021年)
ロッキンが夏の風物詩として順風満帆にその存在感を増幅させていくかのように思えていた頃、2019年の12月初旬に中国・武漢市で新型コロナウイルス感染症の第一例が報告されました。
その後新型コロナウイルス感染症は瞬く間に広がりを見せ、当たり前だった日常が奪われていきます。
リモートワークやオンライン飲み、不要不急の外出という言葉をよく耳にするようになり、新型コロナウイルスは私たちの日常生活のみならず、ライブや音楽フェスの在り方にも大きな影響を与えてしまいました。
フェス運営陣が練りに練って感染症対策を講じた努力も虚しく、2020年、2021年ともにロッキン開催の願いは叶わず。
株式会社ロッキング・オン代表兼ロッキン総合プロデューサーの渋谷陽一氏は、ロッキン公式Twitterを介して想いを綴るなど、度々悔しさを滲ませていました。
千葉市蘇我スポーツ公園での開催が決定
2022年から、ロック・イン・ジャパンは千葉市蘇我スポーツ公園で開催します。
ROCK IN JAPAN FESTIVAL総合プロデューサー渋谷陽一のメッセージをご覧ください。https://t.co/2SRSZXT2I9 pic.twitter.com/SyR8Gd37YV
— rockin'onフェスOFFICIAL (@rockinon_fes) January 5, 2022
2022年1月5日、衝撃的な知らせが耳に飛び込んできました。
「2022年から、ロック・イン・ジャパンは千葉市蘇我スポーツ公園で開催します。」
ロッキンといえばひたちなか、といったイメージがあまりにも強いため、この決断に驚いた人は多数いるかと思います。
総合プロデューサー渋谷陽一氏からのメッセージを拝借して、千葉市蘇我スポーツ公園での開催を決めた意図を読み解いていきましょう。
千葉市蘇我スポーツ公園を選んだ理由
千葉市蘇我スポーツ公園は野外音楽フェス“JAPAN JAM”でも使用されている会場で、5〜6万人を収容できる巨大なライブエリアがあり、まずそこにステージを2つ立てることができます。
JAPAN JAMは、毎年ゴールデンウィークの時期に数日間にわたって開催される野外音楽フェスで、主催は株式会社ロッキング・オンが担当している。夏フェスならぬ春フェスとも呼ばれ、涼しく快適に過ごせるのが特徴的。
それに加えて、2〜3万人を収容可能な中規模ライブエリアが昨年オープンしたことで、さらに追加ステージを2つ立てることが可能に。
観客は移動をせずともその場から2つのステージを同時に観ることができ、またステージエリアを移動する際は、広く設けられた導線をわずか数百メートル歩くだけで移動が完了します。
渋谷陽一氏が千葉市蘇我スポーツ公園を開催地に選んだ理由は、密になるのを避けながら、たった数分でのエリア移動が可能と判断したためです。
アクセス
ロッキンお馴染みの国営ひたち海浜公園へのアクセスは、電車で勝田駅に到着後、さらに十数分間シャトルバスに乗り、下車後もそれなりの距離を歩いて会場に向かう必要がありました。
今後の開催地となる千葉市蘇我スポーツ公園へのアクセスは、蘇我駅から徒歩約10分程度と問題なく歩いていける距離感のため、バスを使わず密を避けながら目的地へ向かうことができるのも好ポイントです。
楽しみ方
最後に“2022年版ROCK IN JAPAN FESTIVAL”の楽しみ方の提示ですが、これはもう本能に身を任せて思うがままに各々が楽しむだけです。ただそれに尽きます。
コロナ感染症対策を万全に参加するのは絶対条件ですが、フェス参加の際は何よりも”楽しむこと”を忘れてはならない、と筆者は考えます。
ひたちなか開催でないからといって「従来のロッキンとは別物だ」なんて悲観的になる必要はないですし、この際にロッキンの新たな姿と向き合ってみてはいかがでしょうか。
最新情報
開催日決定!
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022の開催日時が公式に発表されました!
気になる日程は以下の通りとなります。
-
8月6日(土)・7日(日)/11日(木・祝)・12日(金)・13日(土)
JAPAN JAM 2022、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022の開催日決定!どちらも今年は5日間開催となります。
以下、Jフェス総合プロデューサー 渋谷陽一からのメッセージです。https://t.co/Urt5Zx5KJY pic.twitter.com/qXkTySgTuQ— rockin'onフェスOFFICIAL (@rockinon_fes) January 27, 2022
最後に
2022年から、国営ひたち海浜公園ではなく千葉市蘇我スポーツ公園での開催が決定した、”ロッキン”こと“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”。
新型コロナウイルスの出現以降、「音楽を止めない。フェスを止めない。」をテーマに掲げ、ロッキング・オンのフェス運営陣は苦しみながらも試行錯誤を続けてきました。
このテーマに込められた想いを死守するためには、慣れ親しんだ地・ひたちなかを離れる覚悟を決め、最大限に密の問題を解消できる場所での開催を決行することが、唯一の手段だったのです。
数年前までひたちなかの広大な地に轟いていた爆音はもう浴びることはできませんが、新天地・蘇我ではきっとフェス文化の復活を予感させる希望の爆音が鳴り響くことでしょう。
▼あわせて読みたい!