悪魔の子【楽曲解説】「進撃の巨人」と共に世界に飛躍! ヒグチアイが歌う正義と悪魔とは?

悪魔の子【楽曲解説】「進撃の巨人」と共に世界に飛躍! ヒグチアイが歌う正義と悪魔とは?

「悪魔の子」の魅力

考察を深める歌詞

「悪魔の子」の歌詞は、テレビで流れる1番はアニメに近い内容を、サビは分かりやすい内容を、2番は自分の解釈や意図を込めた内容を、という意識で書いたと語るヒグチアイ。

「進撃の巨人」は現実にも結び付く物語だと考えている彼女は、アニメの話に思えて聴き手自身の話にも捉えられる歌詞を織り交ぜたりと、あらゆる考えを生む仕掛けを入れています

世の中で、自分と相手それぞれの正しさが対立することは不可避です。
「悪魔の子」の歌詞にはそういったテーマが込められていて、正義に悩む自分を重ねると同時に、自分を信じることへの憧れを抱かずにはいられません。

「世界は残酷だ それでも君を愛すよ
なにを犠牲にしても それでも君を守るよ」
ストレートで力強いサビの一節。

しかし最後には
「気づいたんだ 自分の中 育つのは悪魔の子
正義の裏 犠牲の中 育つのは悪魔の子」
と、”正しさの中に存在する矛盾”という気づきを歌っています。
その矛盾こそが、答えのない世界や人間の心を映し出しているのではないでしょうか。

また、2番の「この言葉も 訳されれば 本当の意味は伝わらない」という歌詞も絶賛されています。
自分の思いを美化せず、自然な言葉で歌にしようと挑んできた彼女ならではのこのフレーズ。
訳すという行為に限らず、自分の思いををそのまま伝えるのは非常に難しいものです。
思慮深い歌詞には、思わずコミュニケーションや人間関係の難しさを考えさせられます。

「進撃の巨人」のエンディングテーマとしては物語への愛情と深い考察が投影されたものに、一楽曲としては人間の心や関係性に踏み込んだものに感じられる「悪魔の子」の歌詞

普遍的な魅力を持つ言葉は、これからも多くの人の心を動かし続けていくでしょう。

ダイナミックな展開とサウンドアレンジ

「悪魔の子」制作において、展開やサウンドの構想はヒグチアイが、アレンジは作曲家・ピアニストの兼松衆が担当しています。

アニメの楽曲はサビで転調するイメージが強かったというヒグチアイは、「悪魔の子」にも転調を取り入れました。

歌とピアノ、笛の音色だけで進み、静寂さと不穏さを漂わせるAメロ。
そこから徐々に音数が増えていき、Bメロには緊張感が張り詰めます。

「ただただ生きるのは嫌だ」
痛烈な言葉でサビへと繋がり、勢いのあるストリングスと共に転調。
雄大なオーケストラが広がるサビは、聴き手の涙を誘う程の神々しさを放っています

2番に入ると、存在感を増していくドラムと様々な楽器の音色とが相まって、更にドラマティックなサウンドが膨らんでいきます。

このドラムを担当するのは、バンドtricot吉田雄介
弾けるようなドラミングと他の音色に寄り添うドラミングの切り替えが絶妙で、印象的でありながらも、ヒグチアイの歌声や全体の世界観と見事にマッチしています。
彼のテクニカルなドラムは、楽曲の目まぐるしい展開をまとめ上げ、彩りまでも加えています

楽曲全体を通して、ティン・ホイッスルという笛の音色を筆頭とする異国感や、サウンドの複雑さが特徴的な「悪魔の子」

ダイナミックな展開や、希望や絶望、混沌とした世界が映し出されたサウンドアレンジは、「進撃の巨人」の奥妙さを表現しつつ、物語を知る知らないを問わず人々を圧倒する力を持っています

琴線に触れる歌い方と豊かな表現力

困惑や苦難といった雰囲気を演出するために、ナチュラルが妥当な箇所にフラットの音程を入れたりして少し聴きづらいメロディにしたというヒグチアイ。

彼女は難しいメロディのこの楽曲を、一節では慈悲深く、一節ではパワフルにと巧妙に歌い分け、物語を豊かに表現しています

沸々とした感情を心の中で呟くかのように歌うAメロ。
2番のフレーズ「それならなんで あいつ憎んで」のコブシの効かせ方からは、怒りや憎みの感情が滲み出るかのようです。
Bメロでは伸びやかな高音を切なく響かせたかと思えば、サビでは一言一言を力強く、決意を込めたかのように全身全霊で歌い上げるのです。

息を呑むようなライブ映像は必見。
彼女の歌声や歌い方には、聴き手を身震いさせる程の迫力と、苦しくさせる程の美しさがあります

「悪魔の子」は、彼女の圧倒的な表現力があるからこそ、こんなにも人々の心を打つのでしょう。

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最後に

世界中から”マスターピース”というコメントが寄せられる「悪魔の子」は、聴けば聴く程考えさせられる奥深さがあり、その評価に思わず頷いてしまうはずです。

身近な事柄への疑問を投げかけてきたヒグチアイは、これからも私たちに様々な気づきと感動を与えてくれることでしょう。
世界へと飛躍した彼女から、ますます目が離せません。

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