[2019年5月、無期限の活動休止を発表をしたロックバンド「きのこ帝国」。
突然の発表に、ファンは動揺を隠せませんでした。
けれども、活動休止中であるにもかかわらず、”きのこ帝国の音楽”にハマっていくファンが増えています。
抜きんでた才能を持ち、特異な世界観を描き続けた「きのこ帝国」にスポットを当てます。
目次
きのこ帝国とは
あけましておめでとうございます!!
2018年のきのこ帝国もよろしくお願いいたします!!
みなさまの笑顔が溢れる年になりますように…。 pic.twitter.com/s6UGkqQ6M3
— きのこ帝国 (@kinokoteikoku) December 31, 2017
大学の同級生で結成
きのこ帝国は、2007年に立正大学の同級生4人(Vo.Gt.佐藤千亜妃・Gt.あーちゃん・Ba.谷口滋昭・Dr.西村”コン”)で結成されたロックバンドです。
2008年より本格的に音楽活動を開始し、下北沢や渋谷などを拠点にライブ活動を展開していきました。
1st demo『1st demo』、2nd demo『夜が明けたら』を発表し、鋭い温度感で広がっていく特異な音楽が、次第に話題を集めるようになりました。
2nd demo『夜が明けたら』は、ディスクユニオン週間チャートで3位にランクイン。
2011年には、台湾のロックバンド・透明雑誌(TOUMING MAGAZINE)ジャパンツアーへの参加や、ベーシストで漫画家の劔樹人(つるぎみきと)さんによる企画イベント「Kill your T.V 2011」に出演するなどして、知名度とともに人気も上昇させていきました。
代沢レコーズからインディーズデビュー
2012年4月、レミオロメンやSyrup 16gなど人気バンドを何組も輩出してきた下北沢のインディーズレーベル、DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.が設立12年目にリリースしたコンピレーションアルバム『代沢時代 ~Decade of Daizawa Days~』に期待の新人として参加。
同年5月、デビューアルバム『渦になる』をリリースし、2013年には1stフルアルバム『eureka』をひっさげ、キャリア初のワンマンライブを成功させました。
2014年10月にリリースされた2ndフルアルバム『フェイクワールドワンダーランド』が、全国のCDショップ店員による投票で選ばれる「第7回CDショップ大賞2015」の10作品に入賞し、耳の肥えた音楽ファンをも唸らせるバンドとして、その名は全国的に知られることとなりました。
メジャーデビュー
一気に人気が高まり、2015年4月1stシングル『桜が咲く前に』でメジャーデビュー。
2016年11月にリリースされたメジャー2ndアルバム『愛のゆくえ』の表題曲は、宮沢りえさん主演の映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の主題歌として書き下ろされたもので、元々きのこ帝国のファンだった中野量太監督と直接ディスカッションして完成させた楽曲でした。
2017年に結成10周年を記念し、全国ツアー「夢見る頃を過ぎても」を全国9か所9公演で開催。
全公演ソールドアウトし、節目のステージを大盛況のうちに終了させました。
2018年9月、メジャー3rdアルバム『タイム・ラプス』をリリース。
10周年を記念した同アルバムは、きのこ帝国が4人で歩んできた”音の軌跡”の集大成的な仕上がりになりました。
無期限活動休止
2019年5月、Ba.谷口滋昭さんの脱退と同時に、無期限のバンド活動休止を発表。
ネガティブな脱退ではなく、きのこ帝国のメンバーとして達成感を覚えたことと、家業を継ぐことが理由でした。
これまでのこと、そしてこれからのことを、とても清々しく語るBa.谷口滋昭さんの顔を見て、メンバーは寂しさや悲しみを感じながらも、気持ちよく背中を押したのです。
しかし、Ba.谷口滋昭さんはメンバーにとって、10年以上もの歳月を共に過ごし、真剣に音楽を作り上げてきた戦友であり、時にはふざけあったりもする心許した親友でもあります。
その彼の代わりとなるサポートメンバーを迎えての活動は想像できず、やむなく無期限活動休止という道を選んだのでした。
現在はBa.谷口滋昭さんの籍は置いたまま、きのこ帝国としての活動は休止しており、メンバーそれぞれがソロ活動を行なっています。
きのこ帝国・メンバー
佐藤千亜妃(さとうちあき)
【佐藤千亜妃】Twitter始めました!
これからソロの情報等、更新して行きますのでぜひフォローお願いします!@chiaki_sato0920 pic.twitter.com/NvA6AGjVxU— きのこ帝国 (@kinokoteikoku) July 26, 2018
きのこ帝国のフロントマンを務める佐藤千亜妃さん。
2004年に開催された「ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを受賞し、女優としても活動していました。
端正な顔立ちと、感性豊かで中性的な透き通る歌声が魅力です。
きのこ帝国の全楽曲の作詞・作曲を手がけています。
バンド活動時もソロ活動を行なっていましたが、東京メトロのCM「日比谷 歴史と文化が色づく」篇のキャンペーンソング『太陽に背いて』を、「佐藤千亜妃と金子ノブアキと小林武史」名義で発表し、シンガーとしてさらに話題を集めました。
2020年4月から予定されていた「佐藤千亜妃 LIVE TOUR 2020 PLANET +」が新型コロナウィルス感染拡大の影響で延期になりましたが、2020年7月28日の岩手を皮切りに振替公演が開催されます。
さらに、横浜赤レンガ地区野外特設会場で開催される、日本最大級のカルチャーフェスティバル「GREENROOM FESTIVAL’20」にも出演が決まっています。
様々なアーティストのカヴァーを披露するライブ【VOICE】を不定期に開催しており、毎回人気を博しています。
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あーちゃん
真世さん( @mayomacoco )があげてくださったこの写真ほんとまじ盛れてるからインスタのアイコンにしようかな😳❤️💖 pic.twitter.com/aenhq8yaSd
— あーちゃん⛩🎸🐍きのこ帝国/シンガイアズ (@a_chanjai) September 17, 2019
きのこ帝国ではギターやピアノを担当しているあーちゃんさん。
ソロ活動は「世界のあーちゃん」名義で行なっています。
きのこ帝国のメジャーデビューシングル『桜の咲く前に』では、あーちゃんさんのピアノが印象的に描かれており、きのこ帝国の優しい音色はあーちゃんさんが奏でる音によるものが多くあります。
”きのこ帝国”という個性的なバンド名は、結成当時のあーちゃんさんの髪型が”きのこ”のようだったことと、ロックバンド・ゆらゆら帝国の”帝国”を合わせたもの。
もしもあーちゃんさんがきのこ頭でなかったら、違うバンド名になっていたのかもしれません。
西村”コン”(にしむらこん)
今日はリハからのワンマン衣装合わせからスタイリストさんと飲み行ってきたー!今日は全身きのこグッズコーデでリハやったでー!スタッフT永が写真撮ってくれた!イェイ✌️ pic.twitter.com/6vXNv1OqYa
— コン きのこ帝国dr (@nishimurakon) February 23, 2017
ドラムを務めるきのこ帝国のリズム隊の一人、西村”コン”さん。
15歳でドラムを始め、ロックバンド・waffles(ワッフルズ)に所属していたドラマー奈良部大さんに師事していました。
人気シンガーソングライターあいみょんのライブサポートメンバーを務めるなど、他アーティストからも絶大な信頼を得ているドラマーです。
2019年11月、シンガーソングライターのタグチハナさんと可愛い連中・ex-アカシックのベース黒川”バンビ”絢太さんと共に、新バンド「add(アド)」を結成しています。
谷口滋昭(たにぐちしげあき)
メッセージやプレゼントをみんなありがとう!!
ひっそりと誕生日を過ごすんだろうなーと思ってたけど、思いがけずみんな気付いて声をかけてくれて嬉しかったです。
とてもいい1日でした◎メンバーが部屋に来て祝ってくれたよー! pic.twitter.com/58fjz2PKcp
— きのこ帝国Baしげ (@zishotaniguchi) July 28, 2017
きのこ帝国のベースを務める谷口滋昭さん。
谷口滋昭さんのベースなくしては、きのこ帝国の世界観は完成しません。
谷口滋昭さんと西村”コン”さんの2人によるリズム隊の安定感は、聴いていてとても落ち着きます。
2019年5月をもって、家業を継ぐため脱退してしまいましたが、谷口滋昭さんの籍は今もきのこ帝国に残っています。
いつでも帰ってこられるようにという思いから、籍を残しておこうと決めたメンバーやスタッフの気持ちが感動的です。
きのこ帝国・魅力
きのこ帝国の音楽は、シューゲイザーやポストロックの影響を色濃く受けています。
ポップで鮮やかな楽曲もあれば、ノスタルジックで不思議な雰囲気を醸す楽曲もあり、さらには轟音鳴り響くハードな楽曲もあります。
そして、どれも唯一無二の独特な世界観で描かれています。
少し聴いただけだと、暗いような、冷たいようなイメージを抱いてしまいがちですが、どれも必ず温かみがある温度感が繊細に映された楽曲です。
きのこ帝国がその温度感で愛を描くと、胸をギュッと締め付けるような名曲に仕上がるのです。
きのこ帝国・おすすめ曲
東京
2ndフルアルバム『フェイクワールドワンダーランド』の1曲目に収録されている『東京』は、きのこ帝国の代表曲ともいえる名曲。
「東京というタイトルのついた曲が名曲ばかりの中、数ヶ月という時間をかけてつくりあげた自信作」と佐藤千亜妃さん自身が語るほどです。
アルバムに先行する形で、100円シングルとして5000枚限定リリースされましたが、枚数を大きく上回る予約が殺到しました。
MVには、モデルの臼田あさみさんが出演していることでも注目を浴びました。
東京という街が叶えてくれた「あなた」との出会いを、愛おしく、切なく描いた名曲です。
桜の咲く前に
メジャーデビューシングルである『桜の咲く前に』は、『東京』の10年前を歌ったものです。
岩手県出身の佐藤千亜妃さんが上京してきた頃の思いと、『東京』の主人公を重ね合わせ、時を経て紐解いた楽曲です。
『東京』で「あなた」に出会った主人公は、10年前に「10年後の君は どこで誰と笑っているのだろうか」と思っていた。
誰に何を言われようが、どうしても叶えたいと思った夢を追いかけ、街を出てゆく若者の心情を描いた曲です。
愛のゆくえ
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の主題歌であり、アルバムの表題曲。
不倫、愛、死を描く映画のストーリーに寄り添うように作られた『愛のゆくえ』も、名曲です。
中野量太監督からは、「ギターサウンドでエモーショナルな高ぶり」を表現して欲しいとリクエストされ、見事な仕上がりになっています。
猫とアレルギー
メジャー1stアルバム『猫とアレルギー』の表題曲で、アルバムジャケットに写る4匹の猫がとてもキュートで話題となりました。
猫アレルギーだった彼と別れた女性を描いた、優しい失恋ソングです。
佐藤千亜妃さんの作詞の秀逸さが際立って光る曲です。
終わりに…
きのこ帝国の時計は、今、止まったままです。
その針が動き出す時が来るのかどうかは、わかりません。
しかし、いつしかまた、きのこ帝国の音楽が聴こえてくることを、ファンは願ってやみません。
今、私たちにできるのは、きのこ帝国が置いていってくれた音楽を、優しく温めるように聴き続けることだけですが、きっとまた、どんな形であれ、笑って帰ってきてくれることでしょう。