スリーピースオルタナロックバンド羊文学のブレイクを一例に、日本のバンドシーンで注目されつつあるシューゲイザーというプレイスタイル。
アイルランド出自のバンドMy Bloody Valentine(通称:マイブラ)が先駆者となり、90年代初期辺りからシューゲイザーという言葉は本格的に浸透していきました。(起源は80年代後半とされています)
そんなシューゲイザー由来のサウンドを奏でるバンドの注目株として、今絶対に抑えておきたい若手バンドが福岡発のクレナズムです。
本記事では、そんなクレナズムのメンバー、ライブ定番曲を紹介していきます。
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目次
クレナズムとは
クレナズムは、2018年に福岡で結成された4ピースバンドです。
着実にバンドの規模を拡大させているクレナズム。去年の11月〜12月にかけて行われた『クレナズム ワンマンツアー 2021 ~本州を通りもん~』では、スタンディング時のキャパ約500人(フル収容時)を誇る代官山UNITにて最終公演を行いました。
彼らのサウンドの特徴は、シューゲイザー由来の轟音フィードバック・ノイズにJ-POP要素を融合させポップに昇華した唯一性。
現在も福岡を拠点に活動を続けているクレナズムですが、首都圏でライブをする機会が大幅に増加し、地上波など拡散力の大きいメディアへの露出も増えてきています。
結成年に『りんご音楽祭2018』のオーディションライブに運試し感覚で出演するとそこで見事に合格するなど、結成当初から実力派バンドとしての下地が出来上がっていたように感じられるバンドです。
バンド名の由来
クレナズムというバンド名は、萌映の一言で決まったものです。
4人体制でバンドを結成した当初、中々バンド名が決まらず思い悩んでいた彼ら。
煮詰まった状況で萌映が案の一つに”クレナズム”を提案すると、その瞬間初めて4人全員の感性が一致する感覚をおぼえたそう。
バンドメンバー4人共通の感性が集約したバンド名こそが、クレナズムなのです。
萌映は元々、日本語特有の繊細な表現が好きで、そうした表現からインスピレーションを受けて思いついた造語がクレナズム。
クレナズム-メンバー紹介
萌映(Vo./Gt.)
萌映はクレナズムにおいて唯一の女性メンバーで、ボーカル兼ギターを務めています。
伸びやかで透明感があり、儚さを内包した彼女の歌声は、ポップネスで形成される聡明な音世界のみならず、歪んだ轟音が満ちたドリーミーな音空間にもよく馴染みます。
バンドの顔として圧倒的な存在感を放つのみならず、クレナズム楽曲の作詞作曲も務めています。
大学ではデザインを専攻し、軽音サークルに所属して趣味感覚で音楽を楽しんでいたという彼女。進路に悩み、サークルの引退を控えた時期に同じサークルに所属していたまこ(Ba.)からバンドの誘いを受け、クレナズムのボーカリストとしての道を歩むことに。
けんじろ(Gt.)
クレナズムのギタリストはけんじろ。高身長がトレードマークです。
ステージを広く使って轟音を大胆にかき鳴らすギタープレイには、比類なき迫力があります。
萌映同様、作詞作曲どちらも行うことができ、昨年10月リリースの4thミニアルバム『Touch of figure』収録曲『あまりふたつ』、『酔生夢死』の作詞作曲は彼によるものです。
クレナズムのメンバーとして始動したのは萌映、まこの2人と同時期。萌映と同様サークルの引退を控えた時期にまこに誘われ、メンバー入りすることに。
まこ(Ba.)
クレナズムのベーシストはまこ。バンドの大黒柱として、厚い信頼を置かれています。
ステージ上で5弦ベースを小気味良く操る姿には、リーダー的な頼もしさを感じます。
大学時代に萌映のボーカリストとしての資質を見抜き、見事クレナズムのバンドスタイルを確立させてみせた仕掛け人的存在。
しゅうた(Dr.)
クレナズムのドラマーはしゅうた。クレナズム楽曲の作曲を多く務めています。
轟音が犇く中で正確かつ力強くドラムを叩き、バンド全体のリズムの根幹を支えています。
けんじろと友人関係にあったしゅうたは、けんじろに誘われてクレナズムの4人目として正式加入。
クレナズム-ライブ定番曲5選
白い記憶
『白い記憶』は、クレナズムのライブのオープナー(1曲目)として披露されることが定着している楽曲。
轟音が軋むボーカルレスのイントロが1分以上続き、彼ら特有の幻想的な音世界にじっくりと時間をかけて誘いこんでいきます。
大サビ前の間奏ではけんじろのギターが悲痛な呻き声をあげるかのようにノイジーで強烈な音を放つなど、シューゲイザーの系譜を辿るバンドとしての記名性がはっきりと表れています。
白い記憶という名の通り、雪が降り頻る白銀の世界にぴったりな音像が魅力的です。
ひとり残らず睨みつけて
『ひとり残らず睨みつけて』は2020年8月に配信リリースされた楽曲で、歌詞に綴られた切ない心情を疾走感あふれるキャッチーなメロディーに昇華しています。
フジテレビ系音楽番組”Love music”の2020年9月度オープニングテーマに抜擢されており、クレナズムを代表する一曲です。
世間的に見た彼らのイメージに最も近しい曲であるといっても過言ではありません。
花弁
『花弁』は、イントロから歪みきったドリーミーな轟音が響き、夢の世界に閉じ込められているような感覚に支配される一曲。
イントロ冒頭で鳴る4発のスネアは、シューゲイザーの先駆者My Bloody Valentineの代表曲『only shallow』を彷彿とさせ、クレナズムが90年代のシューゲイザーシーンからの影響を色濃く受けているバンドであることが伺えます。
人気、知名度ともに『ひとり残らず睨みつけて』と肩を並べる、クレナズムの代表曲です。
積乱雲の下で
2021年に配信リリースされた『積乱雲の下で』は、『花弁』の音像を”陰”と表すならばそれとは真逆の”陽”と形容できる陽だまりのような音像で、探究心を刺激します。
J-POP性の強い柔和なサウンドを基盤として、ピアノの音がフックとなるアレンジワークがひと夏の終わりの瑞々しい一風景を想起させています。
現実世界とアニメーション世界が交錯したような、色鮮やかなタッチで描かれたストーリー調のMVも見どころ満載です。
青を見る
『青を見る』は、クレナズムのライブで最後に披露されること定着した楽曲。
ライブでは、けんじろが弓(ゆみ)を手に取ってギターの弦に擦らせる艶やかなプレイングに惹きつけられます。
アウトロで鳴らすギターの歪な動きが琴線に触れる、ライブのフィナーレを飾るに相応しい一曲です。
最後に
本記事では、シューゲイザーとJ-POPの融合させたサウンドが特徴の4ピースバンド・クレナズムについて紹介しました。
福岡を拠点として活動を続ける彼らですが、現在は地方の垣根を越えて首都圏での活躍が目立ってきています。
4月1日にはHakubi対バンツアー『巴・粉塵爆発ツアー』の広島公演に出演し、大勢のHakubiファンの耳に自分達の音楽をしっかりと届けた彼ら。
90年代にムーブメントが起きたシューゲイザーを再定義してJ-POPに接近させた独自のサウンドを武器に、クレナズムが本格的なブレイクを果たす日はすぐそこまで迫っているかもしれません。
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