WEAVER(ウィーバー)は杉本雄治、奥野翔太、河邉徹の3人で構成されたピアノバンドです。音楽を紡ぐというテーマを掲げ、ピアノを軸にした独創的な世界観を音で表現しています。
観客に何を見せたいのかを常に意識し、時には海外留学で国外の音楽にも触れるなど、音楽に対する意識が非常に高いバンドでもあります。
今回はそんなWEAVERというバンドの魅力について触れながら、結成からの出来事やメンバーのプロフィール、おすすめの楽曲について紹介します。
目次
WEAVER(ウィーバー)
WEAVER(ウィーバー)は兵庫県神戸市出身のスリーピースのピアノロックバンドです。
2004年に高校生の同級生として知り合い、当時は4人のメンバーでツインギターバンドとして活動をしていました。
2007年、メンバーのひとりが脱退し、杉本雄治(ボーカル&ピアノ)、奥野翔太(ベース&コーラス)、河邉徹(ドラム&コーラス)の3人の構成で、ギターリストがいないギターレスバンドとして現在の形に落ち着きました。
東京事変のベーシストである亀田誠治がプロデューサーを務めており、同じレーベルA-Sketchに所属するflumpoolから高い評価を得ており、公演での前座として出演するなど、度々交流があるようです。
ピアノの旋律を軸にしたベースとドラムの共鳴が特徴的で、明るいポップチューンだけでなく、影を落としたような音を表現することにも長けています。
彼らもまだまだ音楽の幅を広げることができると考えているようで、リリースする曲には少しずつ変化が表れています。
また、小説家としても活動している河邉さんの執筆した小説を音楽とコラボさせるなど、自分たちの技術を磨くだけでなく、斬新な発想で展開するスタイルで様々な可能性を引き出しています。
バンド名の由来と意味
WEAVERというバンド名には『音楽を紡ぐ人』という意味が込められています。
「織る、編む」の英語である「Weave」が元となっており、末尾に「er」をつけて『WEAVER』となりました。
「Weaver」という単語には「織り手、織工、編む人」という意味が元々あり、そこから広げて「3人が紡ぎ出す音」「音楽を紡ぐ人」という意味を込めたようです。
ちなみに「紡ぐ」という単語を英語に直すと「spin」となりますが、こちらは広義で解釈をしてほしいそうです。
WEAVERのメンバー
杉本雄治(Vo./Pf.)
杉本雄治(すぎもとゆうじ)は、WEAVERのリーダーを務めており、ボーカルとピアノを担当しています。生年月日は1988年12月3日。ニックネームは杉くん。
母親がピアノの先生だったそうで、なんと2歳の頃からピアノと触れ合っていたそうです。その経験が今に生かされているんですね。
しかし、そんな杉本さんも一時はピアノから離れていた時期があります。小学生の頃、男がピアノを弾くなんて変だとからかわれたからだそうです。その一言は杉本さんにとって心に深い傷を負わせてしまいます。子供というのは時に残酷ですから怖いですね……。
幼い頃から生活の一部ですらあったピアノが嫌になってしまい、当時習っていた先生から「プロのピアニストになるか、普通の学生に戻るか」と問われた際は、普通の学生に戻りたいと話したそうです。
杉本さんはそれ以降、音楽に関わらなくなるようになったかというとそうではありません。やはり、長年続けてきたことを突然止められるはずもありません。
高校生の頃に同級生であった奥野さんに誘われてバンドを組むことにしたのです。そしてそこに河邉さんが加わり、再びピアノと触れ合うようになります。意図せずに杉本さんに再び音楽の道を歩ませた奥野さんにはまさに救世主ですね。
ちなみにピアノとボーカルが基本のスタイルである杉本さんですが、実はギターやアコーディオン、シンセサイザーなども操ることができます。幼い頃から音楽と触れ合ってきただけあり、その技術は多才に溢れています。
また、WEAVERの楽曲のほとんどの作曲を行っており、バンドにとってはなくてはならない存在です。
ボーカルも作曲も務める杉本さんは、音楽を続けていくうえで「一人ひとりに歌を届けるという気持ち」を抱いていると語っています。今後もどのような音楽を表現してくれるのか、ファンは楽しみで仕方ありませんね。
奥野翔太(Ba./Cho.)
奥野翔太(おくのしょうた)は、WEAVERのベースとコーラスを担当しています。生年月日は1988年8月18日。ニックネームはおっくん。
中学時代にバンドを組んでいた経験があり、同級生であった杉本さんと河邉さんを誘ってバンドを組んだのが始まりでした。
WEAVERのデビュー当時は5弦ベースを使用していましたが、現在は6弦ベースや7弦ベースに加えてフレットレス・ベースの5弦を弾くことがあります。ベースを巧みに操る様は見事の一言です。
そんな奥野さんですが、実は自身が憧れてベースを弾くようになったわけではないとのこと。これには少し驚きですが、その理由は中学で組んだバンドが要因でした。
当時、イベントでバンドを組むことになった奥野さんは、アコースティックギターを弾いていた経験もあり、ギターを担当しようとしたそうです。しかし、自分よりもギター歴の長い人がいたため、奥野さんはたまたま空いていたベースを担当することに。
バンドではよくある話かもしれませんが、しかし、今ではベーシストとして重要な立ち位置にいるので、結果的にはよかったのかもしれません。
音楽的ルーツの1つとしてBUMP OF CHICKENを挙げています。「こんな曲を作りたい」「こんなアーティストになりたい」という思いが今の奥野さんへと成長させました。
ちなみに音楽以外にも多才なスキルを発揮しており、SNSでは自身が描いたデッサンを投稿しています。これが非常に上手く、ファンからも高評価を得ています。
奥野さん曰く、絵を描くことは一種のリラックスだそうで、柔軟な考えを養うようにしているとのこと。趣味ですら音楽につなげるのですから、奥野さんの音楽に対する意識は非常に高いようです。
河邉徹(Dr./Cho.)
河邉徹(かわべとおる)は、WEAVERのドラムとコーラスを担当しています。生年月日は1988年6月28日。ニックネームはべーちゃん。
WEAVER結成時のメンバーですが、たまたま教室の前を通りかかったところ、奥野さんに呼び止められて加入したそうです。ちなみに当時はまったく面識がなかったそうで、もし教室の前を通りかからなかったら今の河邉さんはいなかったのかもしれませんね。
バンドのほとんどの作詞を担当しており、BUMP OF CHICKENの『jupiter』にとくに影響を受けたと語っています。
ドラマーとしてバンドを支える河邉さんですが、実は音楽活動以外で作家としての顔を持ちます。ドラムスティックからペンに持ち替え、2018年には『夢工場ラムレス』で小説家としてデビューを果たします。
また、2019年に出版した『流星コーリング』は第10回広島本大賞に選ばれ、書店では選書フェアに招待されたりと、作家として河邉さんを知っている人も多くいるようです。
ちなみに『流星コーリング』は同バンドの同一タイトルでアルバムをリリースしており、収録されている曲はこの小説を題材にしているとのことです。
小説以外では写真家としても知られており、2020年には星空・風景写真集を作り、即完売したとのこと。なんともハイスペックな人物です。
WEAVERの経歴や魅力
メジャーデビューの翌日に日本武道館
2004年に結成されたWEAVERは、一時は受験などで活動を休止しますが、再開後はワンマンライブやサマーソニック(SUMMER SONIC)に出演するなど、積極的に活動を続けてきました。
ちなみに結成当時は4人でしたが、1人が離れた場所から通っていたこともあり、満足な活動ができなかったため、それぞれの夢を目指すためとして脱退してしまいます。
3人になってしまったWEAVERですが、メンバーを増やさずに活動することを決めて活動を再開します。
そして結成から5年後の2009年10月21日にメジャーデビューを果たし、デビュー曲『白朝夢』は着うたフルshort ver.がレコチョク ロック・フルで2週連続1位を獲得する活躍を見せます。
その同じ年にはなんと、日本武道館で出演することが決まります。しかも、メジャーデビューをした翌日の10月22日、23日という前代未聞の出来事です。
これには誰もが驚くかもしれませんが、実はWEAVERがメインのものではありません。
メジャーデビューをしたWEAVERの所属レーベルは『A-Sketch』なのですが、同じレーベルに所属するflumpoolが彼らの音楽を評価していました。そんな経緯があったことから、flumpoolがメインの日本武道館公演で前座(オープニングアクト)として出演することが決まったのです。
ちなみにflumpoolも今回が初の日本武道館公演でした。デビュー直後のバンドには、先輩アーティストの晴れ舞台でもあり、そして多くのアーティストが目標とする日本武道館に出演するというのは相当な重圧があったと思います。
公演前には「flumpool初武道館公演に注目新人バンドが出演決定」といったネット記事も掲載され、WEAVERへの注目も少なくありませんでした。
そんな中、WEAVERはデビュー曲である『白朝夢』と当時未発表シングルの『トキドキセカイ』を演奏し、無事に前座の役割を果たしてflumpoolへと繋げました。
上の動画にWEAVERの演奏は映ってはいませんが、実際の武道館でのダイジェストドキュメンタリーです。もちろんチケットは完売しており、満員の中での演奏でした。これだけの人を前に演奏をできたのは、今後にとってもいい経験になったことだと思います。
ちなみにその後もflumpoolとは交流があり、ミュージックビデオに出演、ラジオで共演など、良い先輩後輩の関係であるようです。WEAVERのメンバーもラジオでは「先輩」と呼ぶことがあり、見ててい少し微笑ましくなります。
突然の海外留学!ロンドンで得たものとは
そんなWEAVERですが、結成から10年目、メジャーデビューから5年目という節目に海外留学を決意します。
元々海外でのライブを開催することはあったそうですが、音楽以外でもコミュニケーションを取る方法はないかとの考えての行動でした。
その考えに至ったのは、メンバー全員が何かに行き詰まっている感覚があったとのこと。それを打破するために今までやっていないことをしてみようと話し合った結果、イギリス・ロンドンへと留学するという話にまとまりました。
自分たちの音楽を変えたいとWEAVERは思っていたようですが、実際に何かを変えようとすることはとても勇気がいることです。それを決断して行動に移すことができるのは、メンバーがそれだけ音楽のことを本気で考えているからでしょう。
ちなみにロンドンでは3人バラバラで暮らしたそうで、語学学校も別で通っていたそうです。海外の文化に慣れるため、多くの人に出逢うためにも、一緒じゃないほうがいいという考えからとのこと。
週に2回はスタジオに集まり、まったく会わなかったわけではなかったそうですが、それでも簡単に真似できることではありませんね。文化も言語も違う場所で、1人で暮らすことは相当な覚悟が必要でしょう。
そうしてメンバーが各々の場所で生活をする中、杉本さんは「大外れを引いてしまった」と早速のトラブルに後悔したそうです。
それは居住する場所が問題だったとのこと。部屋はベッドしか置けないようなスペースしかなく、冬の寒い日の暖房は休みの日の夜のみ。食事もパンとジャムだけという過酷な空間。
さすがにこれでは精神的にまいってしまうと2週間で引っ越したそうです。文化の違いはあれど、最低限の生活ができる場所は必要ですからね。逆によく2週間も耐えたものです。
そんなトラブルから始まったロンドン留学ですが、音楽に対する楽しさを改めて実感したそうです。
杉本さんがとくに挙げているのが意志の強さのようです。それは、WEAVERにとっては見失いかけていたものでもあると語っています。
また、様々なミュージシャンとの交流もあり、自分たちにはないジャンルを取り入れたことで新しいプレイスタイルを模索できるようになったそうです。
ちなみにロンドンへ留学してからしばらくは、楽器が届かなかったというトラブルもあったとのこと。それまではスタジオに入ることもできず、ようやく届いたのが1ヶ月後。やはり見知らぬ土地に足を運ぶというのは、トラブルがつきものなんですね。
文学と音楽で紡ぐ物語
ピアノを軸としてベースとドラムが合わさった深いサウンドが特徴的なWEAVER。
flumpoolの『花になれ』を彷彿とさせるデビュー曲『白朝夢』は、彼らのバンド名の由来である『音楽を紡ぐ人』をまさにそのまま表現しているかのようにすら感じさせます。
ポップな盛り上がりの曲だけでなく、ささやくような細々としたサウンドまで、幅広い音を紡ぐことができます。しかし、彼らはさらにその上を目指し、音楽というジャンルだけでなく、文学を音楽にまで取り入れてしまいます。
作詞を担当する河邉さんは、バンドのドラマーとしての活動だけでなく、小説家や写真家という複数の顔を持っています。
2018年に小説家としてデビューを果たした河邉さんは、翌年に『流星コーリング』を執筆し、それをWEAVERの音楽に取り入れました。
同タイトルでリリースされたアルバム『流星コーリング』は、デビューから10周年を迎えるにあたり、メンバーで話し合って制作されたものでした。
音楽とはまた違う景色を見せることができるのではないかという考えのもと制作されたアルバムは、WEAVERにとって挑戦でもあり夢でもありました。
高校生の頃に結成されたWEAVERは、1つのアルバムで物語を語れるような、ストーリーのある作品を作りたいと話していた時期があったそうです。
実際に歌詞を考える河邉さんの曲にはどれもドラマ性があり、そのドラマに杉本さんと奥野さんが色をつけて演奏することで、自分が物語の主人公ではないかと錯覚させられます。
ただ、実際の小説に音楽をつなげるというのは簡単なことではありません。文章を音に直すのはとても慎重な作業を要します。
やはりWEAVERの面々もその点にはとても苦労をしたようで、文章と音楽の距離感を保つことには必死になったそうです。
しかし、そんな大変な時であっても、WEAVERは新しいアイデアを生み出し続けることを忘れません。2014年には音楽の修行と題してロンドンへ海外留学を行ったメンバーは、国内のバンドにはない音楽性に触れる機会がありました。
それは功を奏し、バンドの表現の幅に広がりを感じさせるものでした。デビュー当時の曲と比べてみるとそれは顕著に表れており、常に成長を続けていることに気付くことができるでしょう。
そうした成長の中であっても、彼らは音楽を紡ぐことを基本に、様々な音を届けています。『流星コーリング』による文学と音楽の共演は、彼らにとっては始まりに過ぎないのかもしれません。
WEAVERおすすめの楽曲
くちづけDiamond
2015年にリリースされたシングル『くちづけDiamond』は、テレビアニメ『山田くんと7人の魔女』のオープニング主題歌に起用されました。
テンポの良さとキャッチーな耳に残りやすい歌詞は聴いていて楽しさを感じさせます。ギターレスバンドであるという特徴を生かした、ピアノが際立つサウンドにはついつい体がリズムに乗って揺れてしまいます。
僕らの永遠〜何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから〜
2010年にダウンロードシングルとしてリリースされた『僕らの永遠〜何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから〜』は、auの『LISMO!』CMソング、映画『ラブコメ』の主題歌として起用されました。
WEAVERの曲の中でも聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。
愛し合ったときも喧嘩したときも、それを含めて自分たちであり、そして自分の存在はあなたがいるからだと叫び続けているような歌詞には、相手への想いがこれでもかと詰め込まれていますね。
こっちを向いてよ
2014年にリリースされたシングル『こっちを向いてよ』は、映画『百瀬、こっちを向いて。』の主題歌に起用されました。
恋心を抱いたまま、一歩を踏み出せない気持ちが曲の中に溢れた楽曲です。振られてしまうんじゃないかという怖さと、それでも想い人に好きだと言いたいという思春期真っ只中の青少年の胸中が見事に歌われています。
Hard to say I love you 〜言い出せなくて〜
2010年にリリースされたシングル『Hard to say I love you 〜言い出せなくて〜』は、フジテレビ系ドラマ『素直になれなくて hard to say i love you』の主題歌として起用されました。
「愛している」という言葉を素直に言えないというもどかしさが表現されており、その葛藤で胸の内がかき乱されるような激しさと切なさが漂う曲になっています。
WEAVERは音楽を紡ぎ続ける
以上、WEAVERのご紹介でした。
音楽を紡ぐという表現とピアノを生かしたサウンドには彼らだけの独創的な世界観を作り上げています。
そのどれもが発展途上であり、これからも様々な表現でファンを楽しませてくれるでしょう。
ぜひ、そんなWEAVERの音に注目してみてください。
ここまでご覧いただきありがとうございます。