日本の音楽シーンに登場して以来、特異な存在感を放つ「凛として時雨」(りんとしてしぐれ)。
似たような音楽はたくさんありそうで、いろんなアーティストを回ってはまた戻ってきてしまいます。
パンク?ハードコア?メタル?プログレ?どのジャンルにも確かにルーツは感じますが、それだけに収まらない何かがあります。
そのオンリーワンの魅力は一体どこからやってくるのでしょうか。
調べてみるとさまざまな理由が見えてきました。
今回は、そんな凛として時雨の隠された真実をご紹介します。
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目次
凛として時雨のメンバー
TK
・本名:北嶋 徹(きたじま とおる)
・生年月日:1982年12月23日
・担当:ボーカル、ギター、ピアノ
TKさんは、全ての楽曲の作詞・作曲を担当しています。
バンドの中核をなすTKさんですが、エレキギターに出会ったのは高校生の時とミュージシャンにしては比較的遅く、影響されていそうなイギリスのロックミュージックも聞き始めたのは大学生になってから。
よく聴いていたのは王道のJ-POPや邦ROCKということで、凛として時雨の音楽性からすると意外です。
そしてプログレ要素を強く感じる凛として時雨ですが、TKさん自身は当初プログレを意識したことはありませんでした。
しかしビートルズは昔から聞いており、ポップな印象が強いビートルズですがサイケデリック期などは実験音楽と言っていいような作品もあるので、本人も気付かないうちに影響されていたのでは?と思います。
TKさんは曲のエンジニアリング・ミックス・マスタリングにも参加しており、制作へのこだわりが感じられます。
レコーディングでは思い付きで様々なアイデアを試しており、ギターのチューニングを少しずらしたり、345さんとのユニゾンでは若干のタイムラグを設けて立体感を表現したりするなど、聞いていてワクワクするような試みがなされています。
「TK from 凛として時雨」としてソロ活動も行っています。
345
・本名:中村 美代子(なかむら みよこ)
・生年月日:1983年4月1日
・担当:ベース、ボーカル
345さんはもともとピアノを習っており、高校生になってからギターを始めました。
そのため、凛として時雨に加入する前のバンドではギターボーカルを担当していました。
ベース未経験で凛として時雨に加入したというので驚きです。
345さんのボーカルはTKさんに呼応するように楽曲を彩り、目を惹く魅力があります。
バンドの個性となる重要なキャラクターです。
JUDY AND MARY、椎名林檎、中島みゆき、小谷美沙子などの女性ボーカルを好み、ツインボーカルの1人としてバンドに貢献していることには必然性があります。
音楽以外では落書きが好きで、自身が描いた猫の絵がデザインされたピックを使っています。
345さんの落書きはTシャツなどのグッズにもなっており、ファンにはたまらないアイテムです。
ピエール中野
・本名:中野 正敏(なかの まさとし)
・生年月日:1980年7月18日
・担当:ドラム、ギター
ピエール中野さんは、LUNA SEA、SLIPKNOTやX JAPANに影響を受けており、バンドの中では一番メタル要素を感じさせるメンバーです。
特にX JAPANのYOSHIKIさんには大きな衝撃を受けたそうです。
小学5年生から中学時代にかけては、尾崎豊や電気グルーヴにもはまっており、これらのアーティストは今でも聴くとのことなので、ピエール中野さんのプレイにはその影響が現れているのかもしれません。
また大変なアイドル好きとしても知られており、perfumeのファンです。
また、BABY METALと共演したりでんぱ組.incのレコーディングに参加したりと、アイドルとの共演も活発です。
ピエール中野さんのドラムからは、やはりYOSHIKIさんに影響されていることもあってメタルな印象を強く感じますが、アイドルの楽曲を聴いたり、perfumeはテクノ要素があるのでこのことからも広い音楽性が想像されます。
「DJピエール中野」としてソロ活動も行っています。
バンドの歴史
もともとはtkさんと345さんが大学時代に結成したバンドが、他のメンバーの就職によって解散してしまったところに、ドラマーとしてピエール中野さんを迎え入れたのが始まりです。
2004年に結成されたバンドは、1年後の2005年に自主レーベルからファーストアルバムとなる『#4』をリリース。
その後もアルバムを発表し続け、2008年にメジャーデビューを果たしています。
2011年からはTKさんとピエール中野さんがそれぞれソロ活動を開始し、メンバーはどんどん新しい表現を模索しています。
楽曲制作
凛として時雨は、セッションによってメンバー全員で楽曲を組み立てていくタイプのバンドではなく、TKさんが打ち込みで詳細まで作りこんだデモを仕上げ、それをもとに3人で演奏しながらいろんなパターンの構成を考えていくスタイルです。
一般的にアーティストの楽曲制作は、大まかな構成を作ってセッションに持ち込み、そこで曲の印象や細かな変更を加えていくイメージです。
しかし、あらかじめ作り込まれたものを持ち込みセッションでは構成にこだわるというのも、凛として時雨が他のバンドと違って聴こえる理由の1つかもしれません。
癖のあるボーカル
TKさんは極めて個性的な歌い方で有名です。
一般的なアーティストは、高音域を出すときに地声と裏声の中間のようなイメージで発せられるミックスボイスという歌唱法を使うことが多いです。
しかし、TKさんはそのミックスボイスよりも高い、男性の裏声の最高音のさらに1オクターブ上の声域まで出しています。
そのため、聴く人によっては単なる金切り声のように聴こえてしまい、好き嫌いが分かれやすいボーカルでもあります。
音楽番組に出演した際は、毎回といっていいほど賛否両論を巻き起こすお騒がせな一面もあるバンドです。
意外性のあるバックグラウンド
作詞・作曲を手掛けバンドの中核を担うtkさんですが、意外にもよく聴いていたのはJ-POPや邦ROCKだとといいます。
凛として時雨の音楽からするとちょっと意外だと感じてしまいますよね。
ですが楽曲をよく聴くと、そこには激しく歪んだサウンドの中に確かにJ-POPにおいて主体である「メロディ」を感じます。
ハードな印象を与えるサウンドの中で、こうしたメロディアスな感覚を表現するのは簡単なことではありません。
大抵は単にハードなだけになったり、少しでもメロディを意識すると途端にポップ寄りな印象を与えてしまいます。
こうした絶妙なニュアンスをうまく表現できてしまうことも、凛として時雨が既存のジャンルでは割り切れない理由ではないでしょうか。
おすすめ楽曲
凛として時雨はこれまでにフルアルバム6枚、ミニアルバム2枚を発表しており70曲近いナンバーをもっています。
その中でも世間的に有名で、ファンからの評価も高い曲をいくつか紹介します。
鮮やかな殺人
ファーストアルバム『#4』の1曲目に収録されている曲です。
いわばバンドの自己紹介になる最初のアルバムの1曲目から「鮮やかな殺人」は刺激的ですよね。
曲全体としては雰囲気が統一されているものの、衝動を感じる場面から感傷的な雰囲気に変わったり、やはりAメロBメロという独特の構成を持つJ-POPの影響が表れているのではないかと思います。
しかし、間奏が長めに取られているところなどは演奏やサウンドへのこだわりが感じられ、洋楽っぽい、プログレみたい、などジャンルをわからなくさせる要因だと思います。
abnormalize
「abnormalize」は、テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』のオープニングテーマとして起用されたことでも有名になりました。
凛として時雨を、まだ一部のファンにだけ支持されるコアなバンドから、全国区に知られるアーティストへと押し上げるきっかけになったと言われています。
アルペジオで始まるイントロは感傷的で冷たい印象を与えますが、次第に曲は激しさを増し最高潮に達したとき、まるで衝動そのものが吐き出されたような鋭い感覚に陥ります。
他の楽曲よりも構成がJ-POPに近くドラマチックな展開を描くこの曲は、そういったわかりやすさからも世の中に広く受け入れられたのかもしれません。
これから凛として時雨を聴いてみようという方にも入り口としておすすめな1曲です。
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Telecastic fake show
TelecasticはTKさんの造語なので意味は誰にもわかりませんが、telecastが「テレビ放送」という意味なので、「見せかけの」というような意味になるのではと推察されています。
そう考えるとfakeという言葉とも関連性があるので、皮肉っぽい意味を込めた曲なのかもしれませんね。
歌詞の内容も、現実世界に意味を見出せなくなった何処となく無気力なイメージに仕上がっています。
曲は終始疾走感を持ち続けたまま怒涛のように過ぎていくのですが、演奏が一瞬鳴り止み次第に激しさを取り戻す「静と動」、間奏と歌でテンポが変化する「疎と蜜」のコントラストが曲に刺激的な効果をもたらしています。
特に演奏中にテンポを変える演奏力の高さ、さらに歌が入ったときの方がテンポが上がることなどは、凛として時雨のバンドとしてのポテンシャルに並々ならぬものを感じます。
まとめ
今回はバンドのプロフィール、歴史、楽曲をご紹介しました。
凛として時雨が唯一無二の輝きを放つのは、お手本にとらわれずメンバーがそれぞれのルーツや好みを素直に表現してきたからではないでしょうか。
カッコつけて洋楽を無理に聴こうとするのではなく、自分の良いと感じたj-popを偏見なく大事にするTKさん。
女性ボーカル好きというところからもわかるように、単なるベースプレイヤーではなく楽曲に新鮮な響きを加え、2人目のボーカリストとしてバンドに欠かせない345さん。
メタルの影響を強く受け、一見するとバンドの音楽性とは全く異なる世界であるアイドルにも造詣が深いピエール中野さん。
メンバーの持つ個性は決して珍しいものではなくありふれていますが、異なる個性を持った3人が1つのバンドとして音を合わせた時に、一気にかけがえのない音楽になるのではないでしょうか。
それぞれが持っている性格や趣味がうまく自身のバンドに活かせているからこそ、楽曲の中に言葉では言い表しがたい世界を見せてくれるのだと思います。
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