【日本の至宝】くるり 驚異的な音楽的冒険を続けるバンドの経歴やオススメ曲は…?

【日本の至宝】くるり 驚異的な音楽的冒険を続けるバンドの経歴やオススメ曲は…?

今回は、立命館大学の音楽サークル「ロックコミューン」出身の…..という枕詞でお馴染みの、京都らしいこだわりの音作りでも知られている、邦ロックの至宝くるり特集です。

1996年の結成以来、ファンも驚くほど作品リリースごとに変わる音楽性と心情表現が巧みな歌詞、ライブでの激しいパフォーマンス、多くの有名アーティストとのコラボといったいわゆるバンドとしての活動だけでなく、レーベルNOISE McCARTNEY RECORDSの主宰や地元京都でのフェス京都音楽博覧会の開催など、邦ロックシーン発展への貢献度でも多くのアーティスト達からも支持されています。


https://kyotoonpaku.net

1996年から活動しているベテランのバンドですが、近年ますます存在感を高めています。

相鉄線都心直通を記念して2019年12月に公開された、二階堂ふみさんと染谷将太さん主演のムービー「100 YEARS TRAIN」のテーマソングに、くるりの「ばらの花」とサカナクションの「ネイティブダンサー」を合わせた「ばらの花 × ネイティブダンサー」が起用されました。

「ばらの花 × ネイティブダンサー」は、Spotifyの人気プレイリスト「Spotify Tokyo Super Hits」内で、2020年に再生回数が多かった曲を集めた「Best J-Tracks of 2020」に選ばれています。

2020年11月20日に配信リリースされた新曲「大阪万博」は、「宇宙兄弟」とコラボした360度VR映像でも話題に

11月11日にもシングル「益荒男さん」を配信限定リリース、12月25日にはCDシングル「コトコトことでん / 赤い電車 (ver. 追憶の赤い電車)」もリリースと、2021年に結成25周年を迎えるバンドとは思えないほど精力的に活動しています。

激変する音楽性に合わせるように頻繁なメンバーチェンジもお約束で、もはやバンドというよりもプロジェクトに近い存在とも言えます。

くるり不動のメンバーはこの2人

まずは、初期メンバーで主要メンバーでもある2人の簡単なプロフィールから。

岸田繁(Gt & Vo)


https://shigerukishida.com


・生年月日 1976年4月27日
・出身地 京都府京都市北区

ギター・ヴォーカルの岸田繁(きしだしげる)さんは、ほとんどの楽曲の作詞・作曲を担当しているバンドのフロントマンです。

大の鉄道ファンとしてもよく知られており、毎度おなじみ流浪の番組「タモリ倶楽部」にも度々出演し、飄々とした佇まいと口調ながらタモリさんと熱い鉄道トークを交わしています。

広告代理店に勤めていた音楽好きの父親の影響で、幼少期からチャイコフスキーやベートーベンなどのクラシックと、ロック、ハードロック、J-POP、ハワイアン、ジャズなど様々なジャンルを聴いて育ちました。

また、近所の京都市交響楽団の定期演奏会と年末コンサートも聴きに行くほど、大人数でハーモニーを響かせるオーケストラの生演奏も好んで聴いていたそうです。

中学3年生でモテるためにアコースティックギターを始め、高校生でエレキギターに目覚めてThe BeatlesやDeep Purpleのコピーバンドを組みました。

この頃に、くるりのベーシストである盟友佐藤征史さんと出会い、岸田繁さんから「バンドやるんやけど」と声をかけて、「やろっか」という返事をもらいバンドメンバーになりました。

そして地元のライブハウスに出演し始め、立命館大学進学と同時にくるりを結成します。

佐藤征史(Ba)

MEMO

一緒に写っている女性はファンファンさんです。


・生年月日 1977年2月1日
・出身地 京都府亀岡市

ベーシストの佐藤征史(さとうまさし)さんは、高校からの同級生岸田繁さんの相棒的な存在であり、くるりの所属事務所NOISE McCARTNEYの代表取締役社長も務めています。

岸田繁さんに誘われて入ったくるりの前身バンドでベースを弾き始めました。

立命館大学の「ロックコミューン」に所属し、初代ドラムの森信行さんも加えた3人でくるりを結成します。

活動当初は、同じく「ロックコミューン」にいた小泉大輔さんのグループママスタジヲにも参加していました。

MEMO

『作品至上主義』とも言えるこだわりで目まぐるしく音楽性を変えているフロントマン岸田繁さんのよき理解者であり、バンド活動がスムーズに行えるように陰からも支えています。

くるり略歴

くるりの由来は、岸田繁さんの当時の彼女が、京都市営地下鉄にあったUターンを指示するマークを見て、バンド名は「くるりがいいよ」と言ったことから。

バンド名は英語で「なんとかズ」と思っていた岸田繁さんでしたが、オノマトペを付けるバンドは他にないだろうからと、くるりにしました。

オルタナティブ・ロックバンドとしてデビュー

キセル、越後屋、Limited Express (has gone?)など多くのアーティストを輩出した、京都系ミュージックの拠点のひとつである音楽サークル「ロックコミューン」には、結成当初の3人と後にギタリストとして加入する大村達身さんもいました。

くるりは、コンテストの優勝賞金10万円目当てに1996年9月に結成。

コンテストでは見事優勝し、10万円はほとんど飲み代に消えたのだとか。

岸田繁さんいわく当時のくるりは、「音が大きくて演奏が下手で、ただ叫んでるっていう音楽」だったそうです。

その後、ライブのパフォーマンスやデモテープが関係者の目に留まり、まずはインディーズで活動して話題を集めてからメジャーレーベルからデビューする、という方針でスタートしました。

1997年2月には、初音源の8曲入りカセットテープ「くるりの一回転」を発売。

そして11月のインディーズ1stアルバム「もしもし」の後に、1998年5月に2ndアルバム「ファンデリア」とアルバムリリースを続けて、1998年10月にシングル「東京」でメジャーデビューしました。

バンドを揺るがすダンスミュージックへの接近

GLAYやBOØWYなどを手掛けた佐久間正英さんプロデュースによる1stアルバム「さよならストレンジャー」と、Sonic Youthにも在籍していたJim O’Rourkeプロデュースの2ndアルバム「図鑑」をリリースした頃までのくるりは、オルタナティブ・ロックバンドでした。

「図鑑」以降は、飛躍的に音楽性の幅を広げていくようになります。

スピッツやCorneliusのエンジニア高山徹さんが携わった2000年10月リリースの6thシングル「ワンダーフォーゲル」や、SUPERCARのフルカワミキさんがコーラスで参加した7thシングル「ばらの花」などヒット曲を収録した3rdアルバム「TEAM ROCK」は、打ち込みを多く取り入れたテクノ・ハウス系のダンスミュージックを意識した作品です。

ただ、以前から岸田繁さんは、「ロックコミューン」の元部長でバンド内で最も技術があった森信行さんの活動へのモチベーションにかなり不満を募らせており、4thシングル「街」は森信行さんではなく、プロデューサーでベーシストでもある根岸孝旨さんがドラムを叩いています。

そこでバンド内の人間関係を改善しようと、「ロックコミューン」の先輩である大村達身さんをギタリストとして呼んで4人体制になりましたが、関係性はますます悪化し、ついには2002年7月に森信行さんが脱退してしまいます。

MEMO

オリジナルメンバーの森信行さんは脱退はしましたが、「京都音楽博覧会2010」でくるりと再共演しています。現在は複数のバンドに所属しつつ、斉藤和義さんやスガシカオさんなどのライブ・レコーディングに参加するなど、フリーのドラマーとして活動中です。

京都コミュニティからのスケールアップ

それまでは「ロックコミューン」関係者など限られた範囲内で活動していたくるりでしたが、この頃からロック以外の様々なアーティストとのコラボレーションを活発にしていきます。

また2代目のドラムとして、アメリカツアー中に知り合ったアメリカ人ドラマーのクリストファー・マグワイアさんが、サポートを経て2003年11月に正式加入。

MEMO

クリストファー・マグワイアさんの在籍期間は約1年間だけでした。その理由は、異国の日本で生活することに多大なストレスを感じていたからのようです。岸田繁さんによると、「ライブが終わると、目立つ為に学ランを着て『おれはくるりだ!』と言いながら夜の街を徘徊してしていた。僕も何度か付き合わされて、ほんとしんどかった(笑)」そうです。

くるり又は岸田繁さんがコラボや楽曲提供したアーティストは、矢野顕子さん、木村カエラさん、RIP SLYMEなど。

また、レイ・ハラカミさんは「ばらの花」をリミックスし、Coccoさんをボーカルに迎えたロックバンドSINGER SONGERとしても活動しました。

才能豊かな多くのアーティスト達との交流により、元々多様なジャンルの作品を発表していたくるりは、さらにスケールアップしました。

この間、くるりの作品に関わったのは、アヒト・イナザワさん(NUMBER GIRL)、あらきゆうこさん、沼澤尚さん(シアター・ブルック)、堀江博久さんなどです。

モーツァルト生誕の地ウィーンでオーケストラと共演

2006年7月にはこれまでを総括するベストアルバム「ベスト オブ くるり -TOWER OF MUSIC LOVER-」をリリースし、活動に一旦区切りをつけます。

そして次なる展開は、幼い頃から慣れ親しんでいたクラシックへのチャレンジでした。

ただあまりの音楽性の変化もあって、ギターの大村達身さんは2007年2月25日をもって脱退。

MEMO

「ロックコミューン」の先輩だった大村達身さんも脱退しても2人と仲が良く、2010年の「京都音楽博覧会」で森信之さんと共にくるりと共演しています。

2006年に岸田繁さんはモーツァルト生誕250年で沸いていたウィーンを訪ねて、巨匠Nikolaus Harnoncourtが指揮したウィーン・フィルハーモニーの演奏に感銘を受け、次作の方向性を固めました。

そして2007年2月よりウィーンに滞在し、国立歌劇場(オペラ座)のすぐ側のアパートでメンバーは共同生活をしながら、当地のエレクトロ・ダンスシーンの発信地であるフィードバック・スタジオで、7thアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」を制作。

邦ロックバンドが音楽の都ウィーンでレコーディングしたのは、くるりが初めてです。

「ワルツを踊れ Tanz Walzer」には、18thシングル「JUBILEE」」や「BREMEN」など、クラシックの影響を感じさせる壮大なスケールの曲が多く収録されました。

さらに2007年7月から敢行された初のホールツアー『くるり ホールツアー2007「ふれあいコンサート」』のパシフィコ横浜国立大ホールでの公演では、アルバムにも参加したウィーン・アンバサーデ・オーケストラとの共演も果たし、この模様を収録したライブベストアルバム「Philharmonic or die」もリリースしています。

再び原点のシンプルなバンドサウンドへ

「ワルツを踊れ Tanz Walzer」以降は、サポートアーティストの人数を増やしてよりハーモニーを重視するようになり、クラシックの曲の作り方を学んだことで抜本的に作曲が変わりました。

そして改めてバンドサウンドの表現を追求していこうと、これまで広げてきた音楽性を深化させる方向に進み始めました。

「さよならリグレット」を収録した8thアルバム「魂のゆくえ」や、松任谷由実さんとのコラボ曲「シャツを洗えば」などが入った9thアルバム「言葉にならない、笑顔を見せてくれよ」では、オーケストラとの共演を経たくるりらしい情感たっぷりなバンドサウンドを展開しています。

2011年6月にリリースされた2枚目のベストアルバム「ベスト オブ くるり -TOWER OF MUSIC LOVER 2-」に合わせて、トランペット奏者のファンファンさん、ギター・吉田省念さん、ドラム・田中佑司さんが加入し、くるりは5人の正式メンバーで活動を始めました。

ですが、半年後の12月に田中佑司さんが脱退し、2013年4月には吉田省念さんも脱退してしまいました。

MEMO

2人共に、メンバーやスタッフを含めて話し合った末の脱退でした。

以降のくるりは、岸田繁さん、佐藤征史さん、ファンファンさんの3人を正式メンバーとして活動しています。

フロントマン岸田繁が京都精華大学で教鞭をとる

オリジナルの多国籍サウンドを追求していくうちに、くるりにしか辿り着けない独自の音楽を展開するようになりました。

邦ロックバンドがやれることを一周したと思われていたくるりでしたが、2014年9月には傑作「THE PIER」のリリースでさらに評価を高めます。

そして、元々邦ロックシーンやアーティスト、クリエイターから評価が高いプロ好みの岸田繁さんは、2016年4月1日より地元の京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教授に就任(現在は特任准教授)

これまで以上の音楽の探求と後進への普及を始めました。

2015年から妊娠と子育ての為に活動を休止していたファンファンさんは、2017年7月より復帰。

2018年9月には、再び『うた』に回帰した12thアルバム「ソングライン」をリリースしました。

クラシックとアカデミックをかけ合わせ独自のポップミュージックに昇華

音楽の都ウィーンでのレコーディングやオーケストラとの共演も果たし、岸田繁さんが大学で音楽を追求するなど、どのロックバンドも実現しえなかった地点にくるりは到達。

2016年9月21日には渋谷・Bunkamura オーチャードホールで、「ワルツを踊れ Tanz Walzer」に参加した作曲家Flip Philipp及びウィーン・アンバサーデ・オーケストラと再共演しています。

また岸田繁さんは、京都市交響楽団から依頼を受けてオーケストラ作品「交響曲第一番」を制作。

2016年12月にはロームシアター京都コンサートホールでコンサートも開催され、2018年12月に愛知県芸術劇場コンサートホールで「交響曲第二番」も演奏されています。

一方くるりでは、ますますシンプルで根源的な『うた』を展開。

また、2020年に開催予定だったツアーがコロナウイルスの影響から中止になったことで、急遽1998年から2018年までの未発表曲を集めたアルバム「thaw」を、4月に配信を5月にはCDでもリリースしています。

2013年頃からくるりのサポートメンバーには女性コーラスが増えており、柔らかく聴きやすい歌モノが多くなっています。

2021年、再び2人体制へ

2021年3月5日、くるりの公式ホームページを通じて、トランペット奏者のファンファンさんの脱退が発表されました。

4月にニューアルバム『天才の愛』のリリースを目前に控えたタイミングでの脱退発表は、多くのファンにとって大きな驚きだったことは想像に難くありません。

脱退は友好的なもので、かねてから第二子を授かりたいと思っていたファンファンさんからの申し出を岸田さん、佐藤さんが受け入れた形になります。

ファンファンさんは第一子の出産後、2015年4月から約2年間の産休を取ったことがあり、岸田さんと佐藤さんは「今回もそうすればいいじゃないか」と提案したそうですが、ファンファンさんにとって2度目の産休という選択肢は無かったようです。

ホームページに掲載されたファンファンさんからのコメントはくるりへの愛情、そしてまだ見ぬ第二子への思いがあふれたもので、読んでいるだけで涙がこぼれそうになります。

再び岸田・佐藤2人体制になったくるりが今後どこへ向かっていくのか。次なる一歩に注目です。

くるり人気おすすめ曲

くるりが生み出した名曲はまだまだあります。

その中でおすすめ5曲をリリース順にご紹介します。

1999年2月に2ndシングルとしてリリースされ、1stアルバム「さよならストレンジャー」に収録。

岸田繁さんが「くるりを象徴している曲」と語る初期の代表曲です。


丘の向こうから
羽のないかげろうが
虹を下さいと水芭蕉呼んでいる

冒頭からの文学的な歌詞でも注目されました。

『ダメな僕』というワードが、当初のくるりでした。

惑星づくり

2000年1月にリリースされた、Jim O’Rourkeプロデュースの2ndアルバム「図鑑」収録曲。

歌詞の無いインストゥルメンタルであることによって、くるりのサウンドへの強いこだわりが表れています。

この頃はプロとしての技術の無さを痛感し焦りながらの制作だった為に、作品のクオリティの高さとは違い、バンド内の関係は最悪の時期だったのだとか。

水中モーター

2002年3月リリースの4thアルバム「THE WORLD IS MINE」に収録。

一見、本当にくるり?と思ってしまうヴォーカルが印象的です。


OH素晴らしきスピードだ
まわるハイトルク ブラックモーター
電励少年左手で飛んだ
フレミング回れ水中モーター

意味がわかりそうでわからない歌詞が、デジタル色の強い「THE WORLD IS MINE」に絶妙にマッチしています。

言葉はさんかく こころは四角

2007年7月リリースの19thシングルで、7thアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」に収録。

ウィーンで現地のオーケストラも参加して制作された「ワルツを踊れ Tanz Walzer」ですが、映画「天然コケッコー」テーマソングとなったこの曲は、意外なことにかなり早い時期にレコーディングされました。

琥珀色の街、上海蟹の朝

2016年7月にリリースされた、現在までくるり唯一のEPの表題曲です。

結成20周年を記念した特別な曲にしようと、いかにもくるりっぽさを排除したものを目指しました。

出身地の京都はブラックミュージックが主流ということで、くるりはあえてアメリカ音楽を避けようとヨーロッパや古典音楽やクラシックを取り入れてきましたが、普段とはちがうことをと制作されたこの曲では90年代風ビートのヒップホップをイメージしています。

最新情報

ニュー・アルバム「天才の愛」リリース

4月28日に新アルバム「天才の愛」がリリースされました。完全限定生産盤A/B、通常版の3パターンの販売と、各種ストリーミングサイトで聞くことができます!

フジロック出演決定

出演アーティスト第2弾としてくるりの出演も発表されました。

くるりはRADWIMPSがヘッドライナーを務める1日目に出演予定です!

「野球」のリリックビデオ公開

最新アルバム「天才の愛」より「野球」のリリックビデオがYouTubeで公開されました。

プロ野球選手の名前が続々と登場するこの歌は野球関係者やファンの間で話題となりました。

是非リリックビデオも楽しんでみてください!

最後に…

くるりほど大胆に音楽性を変えて、そのうえ幅広い音楽を表現しているロックバンドは、日本はもとより世界中隅々まで見渡してもかなり稀です。

いつも良い意味でファンを驚かしてくれるくるりを、これからも楽しみにしていましょう!
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