幼少期の海外生活や不登校を幾度と経験し、フリースクールで音楽に出会ってから自分を表現できる場所を見つけた折坂悠太さん。
そんな彼のルーツをもとに製作された楽曲からは、日本の原風景のような懐かしさや異国情緒さが感じられます。
唯一無二な折坂さんの楽曲は、宇多田ヒカルさんをはじめ多方面から高い評価を得ています。
今回は、これからも注目されていくこと間違いなしの折坂悠太さんについて紹介します!
目次
折坂悠太(おりさかゆうた)のプロフィール
・生年月日:1989年9月16日
・出身地:鳥取県
公式プロフィールにはこう書かれています。
現在は弾き語りでの独奏のほか、東京を拠点とするメンバーから成る合奏、京都を拠点とするメンバーから成る重奏の3形態で活動を行っている。
独特の歌唱法にして、ブルーズ、民族音楽、ジャズなどにも通じたセンスを持ち合わせながら、それをポップスとして消化した稀有なシンガー
なんだか他のアーティストさんとは違う雰囲気を醸し出していますね。
折坂悠太について
折坂悠太さんは鳥取県出身で、父、母、姉の4人家族で仲睦まじく幼少期を過ごしていました。
姉とは仲が良く、よくお風呂で遊んでいたそうです。
また、アルバム『平成』の中で姉の名前が由来の「みーちゃん」という曲を制作しており、幼少期のエピソードをモチーフにした楽曲となっています。
その後父の仕事の関係で、小学校1年から3年までの約3年間をロシアで過ごしました。
帰国後はなかなか学校になじめず不登校となり、1年間自宅に引きこもってしまいます。
小学校4年生から千葉県柏市のフリースクールに通い始め、再び学校生活をスタート。
中学校に上がると、再び父の仕事の関係でイランに2年間滞在し現地の日本人学校に通いましたが、帰国後には不登校になりフリースクールに通うようになりました。
高校は美術系に進学しましたが、ここでもなじめずに中途退学し再びフリースクールへ。
最後のフリースクールに通っていた時に、仲間たちとバンドを組んだことが音楽活動を始めたきっかけとなりました。
学生時代は人間関係を構築することが苦手で、音楽を始める前までは家族くらいしか関わりを持っていませんでしたが、音楽活動を通して自分を表現するようになってからは、音楽を軸として人と関わることができるようになったそうです。
また、内気で集団行動が苦手でしたが、学芸会などのイベントの時だけは生き生きとしており、心の奥深くには表現したいという思いをずっと持っていたことがうかがえます。
表現することで自分の生き方を見つけてきた折坂さんは、シナリオライターの一面も持っており、音楽を始める前はシナリオライターを目指していました。
通っていたフリースクールで年1回行われる演劇に関して、シナリオ制作や演出を担当することがあり、その場の雰囲気に魅力を感じて自分を表現できるものの1つとして手ごたえを感じていました。
音楽活動スタートからデビューまで
2006年にフリースクールでバンドを結成してから、折坂さんの音楽活動がスタートしました。
数年間はフリースクール時代のメンバーと活動をしていましたが、少しずつ実力をつけていき2013年には初めてフリースクール以外の場所で自分の曲を披露。
好評を得たのをきっかけに、自主アルバムの制作に取り組むことになりました。
以降の活動を下記にまとめたいと思います。
2014年
・ミニアルバム『あけぼの』を発表(11月22日)
・「のろしレコード」の立ち上げ。
・折坂悠太、松井文(シンガーソングライター)、夜久一による自主レーベル。
・松井文の呼びかけにより旗揚げ。
2015年
・のろしレコードより、アルバム『のろしレコード』発表(5月6日)
2016年
・自主ファーストアルバム『たむけ』を発表(9月7日)
・神保町にある「神保町 視聴室」にて、1stフルアルバム『たむけ』発売記念のワンマンライブを初の合奏形態で開催
2017年
・代官山にある「晴れたら空に豆まいて」にて、ワンマンライブを開催。
・NHK-FM「世界の快適音楽セレクション」喫茶謎ジングルにおいて、タイアップ曲を発表
・政府広報 消費者保護「母との約束」篇にて、タイアップ曲を発表
2018年
・初のスタジオ作EP『ざわめき』を発表(1月17日)
・全国23か所で弾き語り投げ銭ツアーを敢行し話題を集める。
・FUJI ROCK FESTIVAL 2018、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO、New Acoustic Campなどの夏フェスに出演
・セカンドアルバム『平成』を発表(10月3日)
・『ミュージック・マガジン』「ベストアルバム・2018」において日本のロック部門1位を受賞
2019年
・第11回CDショップ大賞2019受賞
・ノーリツ TVCM「家族の真ん中に」篇に、「湯気ひとすじ」がタイアップとして採用
・配信限定シングル「抱擁/櫂」(3月29日)、「朝顔」(8月5日)発表
・「朝顔」が、フジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』主題歌に抜擢
・のろしレコードより、アルバム『OOPTH』を発表
アルバム『平成』に込めた思い
折坂さんは平成元年生まれで、まさに平成と共に人生を歩んできました。
とあるインタビューで、「平成は自分にとって肩書きのようなものと捉えている」と語っています。
父の転勤により国内外を転々とし、地元と言える場所がないまま育ってきた自身のルーツを、捉えどころのなかった平成という時代に重ね合わせています。
そのような平成という時代に生きてきたというコンプレックスに対してしっかりと向き合い、その思いを言葉や音に乗せ自身の肩書として『平成』を書き下ろしました。
宇多田ヒカルさんから称賛された楽曲「あさま」
唯一無二の感性から作り出される折坂さんの作品の数々に、多方面のアーティストから称賛の声がかけられています。
代表例として、宇多田ヒカルさん、ゴンチチさん、後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、伊集院光さん、小山田壮平さん(ex: andymori)、坂口恭平さん、寺尾紗穂さんなどが挙げられます。
特に、宇多田ヒカルさんは自身のアルバム制作時に「好きで何度も聴いていた曲」として、折坂さんの「あさま」を挙げました。
宇多田ヒカルさんのことを「先生」と呼称するほど尊敬している折坂さんにとってこれほどうれしいことはなく、ものすごく光栄だったと語っています。
演奏スタイル・楽曲制作
折坂さんの演奏スタイルは、弾き語りの独奏、バンド形式の合奏、重奏の3つを取っています。
中でも、ガットギターを持った弾き語りは折坂さんの原点であると言えるでしょう。
ギター1本で弾き語る曲は、ゆったりとした風景が浮かぶ言葉や語りの部分、言語ではない叫びがあるなど、民族音楽のような印象を受けるものが多くあります。
自身の生い立ちの中で聴いてきた日本や海外の曲から様々な影響を受けており、それらをルーツとしつつ独特の歌唱法をもってポップスとして表現するなど、これまでになかった音楽ジャンルを築いています。
聴くものに対し、どこか懐かしさを与えつつも衝撃を与えるような斬新さも持ち合わせており、時代に流されない楽曲として評価され続けていくことでしょう。
『監察医 朝顔』のタイアップ
フジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』の主題歌に、折坂さんの楽曲である「朝顔」が抜擢されました。
『監察医 朝顔』は、東日本大震災後母の不在と向き合う父と監察医の娘の生活を描いたドラマで、「死」というテーマの作品において折坂さんの力強くも優しい歌声が作品の世界観に寄り添うものであるとし、タイアップが決定。
楽曲「朝顔」を提供した折坂さんは次のようにコメントを寄せています。
「もの言わぬ人の想いを汲み取り、代弁し、暗い夜の先に、ひとすじ光を見出す。
主人公・朝顔の「監察医」という仕事は、「歌手」として生きる自分とも重なります。
このドラマを見た人がただ、朝に始まる明日を愛せるように。
物語の登場人物たちの歩む道が、僕や、大切なあの人と交差しますように。
そう願って歌います。」
歌手と監察医で職業は違っても、人の思いを伝えるという共通点があり、折坂さんの楽曲がこの作品を引き立てていることは間違いないでしょう。
おすすめ楽曲
折坂さんの楽曲の中で、おすすめのものをいくつか紹介していきたいと思います。
あさま
宇多田ヒカルさんより「好きで何度も聴いていた曲」と称されたこの楽曲は、折坂さんの幼少期の体験が描かれた曲となっています。
小学校6年生からフリースクールで毎年北軽井沢へキャンプに行っていましたが、そこでの体験が折坂さんの人生にとって大きな位置を占めています。
「あさま」は夏休みの思い出をただそのまま歌ったものですが、そのピュアさが聴くものを懐かしさで包み込んでくれます。
曲の歌いだしからどこか昔に聞いたことがある民謡のようで、一瞬で折坂さんの世界観に引き込まれます。
また、歌詞の中の「白樺の木陰」などはまさに、浅間山付近の情景がよく浮かぶことでしょう。
曲の最後の「やまぬ・・・」と連呼していくところも強烈な印象を与えます。
湯気ひとすじ
https://www.youtube.com/watch?v=8FldXB17_6I
この楽曲は、湯まわり設備メーカーである「ノーリツ」のCMソングとして折坂さんが手がけた楽曲で、お風呂が沸いた時のお知らせメロディーが取り入れられており、ユニークさとほのぼのとした曲調が印象的な楽曲です。
この楽曲はミュージックビデオがおすすめで、父と娘がお風呂で紡いできた歴史が幼少期から大学入学で家を離れるまで描かれており、娘の成長と父の思いが交差する感動的な作品となっています。
折坂さんの歌声が、切なくも優しい気持ちにさせてくれる楽曲となっています。
まとめ
人付き合いが苦手な少年が音楽と出会い、自分を表現できる場所を獲得してから一気に才能が開花する。
そして、人々に勇気や感動を与える。
「自分を表現」することの大切さや本質について、作品を通して伝えてくれていると思います。
懐かしさや驚きなど、本能の部分に語りかけてくるような楽曲たちは、時代に流されることなく輝き続けていくことでしょう。
これからも、折坂悠太さんの活動から目が離せません。