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歌手としてのIU
IUは2008年9月に1stミニアルバム「Lost and Found」でデビュー。アイドルグループが多いK-POP業界の中でソロ活動をする歌手は珍しく、どのような活動をしていくのか期待されていました。
IUがデビューした2008年は、SHINeeや2PMなど数々のアイドルグループが続々とデビューしたまさに「アイドル戦国時代」で、ポップでダンサンブルな楽曲が音楽業界を賑わせている中、IUは「미아(ミア:迷子)」というハイブリッドポップ曲で勝負しますが、独特な世界観とアイドルグループの人気に押され、思ったような結果は得られませんでした。
Lost Child(미아)
2009年4月には1st フルアルバム「Growing Up」を発売。タイトル曲「Boo」では、デビュー曲で見せた大人っぽさとはいい意味で真逆の若々しさを感じるスタイルを披露し、早くもアイドルコンセプトに路線変更しています。
Boo
しかし、コンセプトを変更しても変わらなかったのはIUの歌唱力の高さです。アイドルグループのような爆発的な人気は出なかったものの、IUの歌唱力には以前から注目が集まっており、徐々にではありますがIUへの関心が見られるようになってきました。
そしてIUは、2010年に発売された3rdミニアルバム「Real」で一気にトップ歌手の座を射止めました。タイトル曲「Good Day」が韓国の音楽サイトで1位を独占すると音楽番組でも1位を獲得。2012年韓国大衆音楽受賞式では「今年の歌」にも選ばれるなど、ファンだけではなく韓国国民から支持されるIUの代表曲となりました。
中でも疲れが出始める曲の終わりに、あえて10秒以上高音を出し続ける「3段ブースター」と呼ばれるテクニックが注目されています。「3段ブースター」とは高音パートから徐々にキーを3つ上げる歌い方で、一切音を外さずに歌い上げる姿が話題となりました。
3段ブースターの前に出てくる「아이쿠(アイク:あらら) 、하나둘(ハナトゥル:いちに)」という掛け声や、明るい楽曲にもかかわらず失恋の曲という意外性も話題となりました。
Good Day(좋은 날)
「Good Day」をきっかけにIUの楽曲はますます人気となり、発売する楽曲は常に音楽チャートや音楽番組で1位を獲得。2013年10月に発売された3rdフルアルバム「Modern Times」ではアルバムに収録された楽曲全てが音楽配信サイトの上位にランクインするなど、IUの楽曲がいかに評価されているかが窺えました。
アイドルからアーティストへ
デビューした当初は、曲調やスタイルが「アイドル」の印象が強かったIUですが、2013年頃からは「シンガーソングライター」の印象に変わっていきました。IUは作詞、作曲、プロデュースを自身で行うようになっており、幻想的だったIUの楽曲は誰もが1度は感じたことのある「迷い」や「日常的な不安や喜び」を表現した歌詞が多く見られるようになりました。
また、楽曲もスウィングやジャズなど幅が広くなっていき、どんな楽曲にもハマるIUの歌唱力と音楽センスがファン以外にも注目されるようになっていきました。
The red shoes(분홍신)
2014年には80年代、90年代に韓国で流行した楽曲を集めたリメイクアルバム「花しおり」という新たなジャンルのアルバムを発売します。このアルバムは若者には新鮮さを、40代以上の世代には懐かしさを感じさせ、実際にこのアルバムがきっかけでIUの楽曲を聞くようになったというファンもいます。
このリメイクアルバムは限定でレコード盤も製作され、レコード盤にはCDには収録されなかった楽曲「オホヤドゥンギドゥンギ」が収録されています。1970年代当時、大衆文化規制のもとで作られたレコードには「健全歌謡」と呼ばれる愛国歌謡の中から必ず1曲を収録しなければならないという義務があったそうで、IUは当時の義務も忠実に再現しました。
「花しおり」は2017年に2作目が発売され、日本でもダウンタウンがバラエティ番組で歌ったことから有名になった「オジャパメン」の原曲「ゆうべの話」が収録されています。
어젯밤 이야기(Last night story)
2015年10月には、IUが初めて自身のアルバムをプロデュースした4枚目のミニアルバム「CHAT-SHIRE」が発売されました。「不思議の国のアリス」のような雰囲気を醸し出しながらも、アルバムに収録された「Twenty-Three」では23歳になったIUが、周りの大人たちや自分を取り巻く環境を可愛く皮肉った等身大のIUを表現しました。
Twenty-three(스물셋)
この後もIUは自身の年齢をキーワードとした楽曲を発表していきます。2017年4月に発売された4枚目のフルアルバム「Palette」では25歳のIUを表現しており、今までの活動を振り返りながら自分を肯定し、自分自身を応援しているような考えが歌詞に現れています。