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ザ・ブルーハーツ・名歌詞10選
ザ・ブルーハーツが残した名曲の中から、筆者が特に感銘を受けた名歌詞10選をご紹介します。
本当ならばすべての楽曲のすべての歌詞を書き出したいくらいなのですが、さすがにそういうわけにもいきませんので、読み過ぎてボロボロになった歌詞カードとにらめっこしながら選出してみました。
残念ながらザ・ブルーハーツは公式YouTubeチャンネルが存在せず、サブスクリプションの音楽配信サービスも解禁されていないため、音源のリンクが貼れないことをご了承ください。
ブルーハーツのテーマ
何か変わりそうで眠れない夜
君の胸は明日張り裂けるだろう
あきらめるなんて死ぬまでないから
“ブルーハーツのテーマ”は1987年8月2日にリリースされた自主制作シングルです。
すでにメジャーデビューを果たした後でしたが、歌詞の一部がレコード制作基準倫理委員会(レコ倫)の基準に抵触するため、自主制作という形で発売されました。
『MEET THE BLUE HEARTS』や『ALL TIME SINGLES 〜SUPER PREMIUM BEST〜』といったベスト盤で聴くことができます。
SEX PISTOLSを思わせるシンプルなギターリフでスタートする“ブルーハーツのテーマ”は、前述の理由によりアルバム未収録となっていますが、ファンの間では絶大な人気を誇る名曲です。
<あきらめるなんて死ぬまでないから>
どれほどの少年少女たちがヒロトのこの言葉に背中を押されたことでしょう。
未来への不安と期待、「自分は何か意味のある人間になれるのだろうか」という焦燥感で布団の中で身悶えする日々を救ってくれた楽曲です。
未来は僕等の手の中
僕等は泣くために 生まれたわけじゃないよ
僕等は負けるために 生まれてきたわけじゃないよ
1987年にリリースされたファーストアルバム『THE BLUE HEARTS』のオープニングトラックです。
ヒロトの噛みつくようなヴォーカルが印象的なプリミティヴなパンクチューンで、2分半にも満たない短い曲ですが、筆者がザ・ブルーハーツにのめり込んだ理由がすべて入っていると言っても過言ではありません。
初めて聴いた瞬間、「これは僕のための曲だ!」と確信しました。
生きていれば誰しも感じるであろう「失ってばかりの人生だ」「この先、何か大切な物を手にすることができるのだろうか」という不安。
そんな不安に寄り添ってくれた楽曲が“未来は僕等の手の中”でした。
ザ・ブルーハーツと同時期に人気を誇ったイギリスのロックバンドThe Stone Rosesも“She Bangs The Drums”の中で、<The past was yours but the future’s mine.(過去はあんたのものだけど、未来は俺のものだ)>と歌っており、国は違えど若者たちのヒーローとなったバンドが同じような歌詞を書いているのも非常に興味深いところです。
すべてが自分の手の中をすり抜けてしまったような気持ちになった時は、そっと手を開いてみてください。
きっと未来はまだそこにあるはずです。
少年の詩
どうにもならない事なんて どうにでもなっていい事
デビューアルバム『THE BLUE HEARTS』の6曲目に収録されているメロディアスなパンクチューンです。
<そしてナイフを持って立ってた>という大人たちが眉をひそめそうな歌詞があるため、そこだけを聴いて安直に「これは暴力を助長する曲だ!」などと言う人もいるかもしれません。
しかし、もちろん実際にはそんなことはなく、“自分の頭で考えること”と“行動すること”の大切さを歌っている曲です。
“自立の歌”と言い替えてもいいかもしれません。
自分の足で歩んで行った先にきっと待ち受けているであろう挫折。
己の不甲斐なさに失望する僕等に対し、<どうにもならない事なんて どうにでもなっていい事>と再び歩き出す理由をくれる曲になっています。
ダンス・ナンバー
人の目ばっかり いつでも気にして
口先ばっかり 何もしないで
そんなのちっとも おもしろくないよ
そんなのとっても たいくつなだけさ
同じく『THE BLUE HEARTS』収録曲で、ザ・ブルーハーツ屈指の高速チューンです。
攻撃的な歌詞と疾走するドラムビートで約1分半をあっという間に駆け抜けていきます。
誰かが決めたルールにとらわれず自分らしく生きることについて歌われた曲ですが、今の時代に改めて読んでみると、同調圧力や些細な事柄でのSNS炎上など近年問題になっている事柄についての曲のようにも思えてくるから不思議です。
頭の固い親や教師、職場の上司に悩まされているすべての人は、“ダンスナンバー”を大音量で聴いて(迷惑にならない範囲で)モヤモヤを霧散させましょう。
僕の右手
いまにも目からこぼれそうな
涙の理由が言えません
今日も 明日も あさっても
何かを捜すでしょう
1988年リリースのサードアルバム『TRAIN-TRAIN』の5曲目に収録されています。
同アルバムはパンク寄りだった前2作と比べ、多彩なアイデアが導入された音楽性の幅が広い作品となっていますが、“僕の右手”は従来の路線を引き継いだサウンドを持つパンキッシュなナンバーです。
<僕の右手を知りませんか?>と始まるこの曲は、隻腕のパンクロッカーとして知られ、1992年に亡くなった故・MASAMIをモデルにしたものだと言われています。
この曲に込めた想いは作曲者であるヒロトのみぞ知るところですが、<人間はみんな弱いけど / 夢は必ずかなうんだ>と歌われていることから、誰かを応援するための楽曲であることは間違いありません。
筆者が特に好きなのは上記で引用した部分です。
自分の人生に何かが欠けているような気がするという正体不明の喪失感。
だからきっと、<涙の理由が言え>ないのでしょう。
逆に言えば、“足りない何か”を捜すために毎日を懸命に生きているのかもしれません。
井上陽水の“夢の中へ”やイギリスの重鎮ロックバンドThe Whoの“The Seeker”のように“何かを捜す”系の名曲は数多くありますが、“僕の右手”もその系譜に連なる名曲としてこれからも聴き継がれていくことでしょう。