パスピエは大胡田なつき、成田ハネダ、三澤勝洸、露崎義邦の4人で構成されたポップロックバンドです。クラシックの印象主義音楽を根源とし、当初は素顔を見せないバンドとして注目を集めました。
今回、そんな彼らの魅力について、バンド名の由来やメンバーのプロフィール、経歴、音楽性について紹介していきます。
また、最後におすすめの曲を紹介しているので、ぜひご覧ください。
目次
パスピエとは
パスピエとは大胡田なつき、成田ハネダ、三澤勝洸、露崎義邦の4人によって構成されているポップロックバンドです(2020年現在。当時はやおたくやを含めて5人)。
2009年に成田さんを中心に結成された同バンドは、メンバーの脱退があったものの現在の形に落ち着き、2012年にミニアルバム『ONOMIMONO』をリリースしてメジャーデビューを果たしました。
クラシックの流派のひとつである『印象主義音楽』を基盤に、ニュー・ウェイブやテクノポップを融合させたポップロックを表現。成田さんの作曲と大胡田さんの歌詞が合わさったハイセンスな演奏が持ち味です。
また、大胡田さんの卓越した表現力で制作されたミュージックビデオやアートワークは話題を呼び、若者を中心に支持を集めています。
アートワークでしかメンバーの素顔を判別する要素がなく、当初はミステリアスなバンドとして注目を浴びていましたが、2013年にiTunes限定配信の『名前のない鳥』のリリースを機に実写ビジュアル(ぼかし)を公開。
同年、iTunesから「今年ブレイクが期待できる新人アーティスト」の1組として話題を呼び、徐々にその知名度を集めるようになります。
その後、楽曲提供やタイアップ曲を手掛け、数々の大型ロックフェスにも出演。全国でのワンマンツアーの他に、対バン形式の自主イベント『印象』シリーズを開催。全公演チケットが完売する人気を博しました。
2015年には、デビューから3年という短さで日本武道館単独公演『GOKURAKU』を開催。その後も積極的な活動を続け、2016年には3枚ものシングルをリリース。
同年、デビュー5周年を迎えるバンドは『永すぎた春/ハイパーリアリスト』をリリースと同時に、これまでぼかしでしかなかった素顔を完全に公開。多くの話題を呼びながら、2016年11月23日にデビュー5周年を迎えました。
2017年にはドラムのやおさんが脱退してしまい、4人体制での活動がスタート。新体制となるもサポートメンバーを加えて全国3都市4公演など、精力的な活動を収めました。
2020年にはユニバーサルミュージック内の自主レーベル『NEHAN RECORDS』を設立し、その他結成10周年を記念した公演『EYE(いわい)』を開催。その時のチケットは完売してしまい、その人気は更なる飛躍を見せました。
バンド名の由来
バンド名パスピエは、結成の中心人物である成田さんに関連しています。
大学生時代にクラシック音楽を学んでいた成田さんは、バンド音楽に興味を持つようになりパスピエを結成するに至りました。
クラシックを学んでいた時期から、フランスの作曲家Claude Debussy(クロード・ドビュッシー)を好んでおり、その中で『ベルガマスク組曲』の第4曲『パスピエ』をバンド名として用いたようです。
また、バンド名の由来に関連するだけでなく、ドビュッシーの音楽や絵画の分野で知られている『印象派』という言葉がバンドのキーワードでもあり、下地にもなっていると語っています。
パスピエのメンバー
- 大胡田なつき(おおごだなつき)
- 成田ハネダ(なりたはねだ)
- 三澤勝洸(みさわまさひろ)
- 露崎義邦(つゆざきよしくに)
- 岸本篤志:2010年脱退
- やおたくや:2017年脱退
大胡田なつき(Vo.)
大胡田なつき(おおごだなつき)。静岡県御殿場市出身。7月28日生まれ。
パスピエのメンバー唯一の女性にして、ボーカルを担当しています。ボーカルの他に作詞とアートワークを手掛けるなど、多彩な才能を持っている人物です。また、楽器ではキーボードを担当することもあります。
実家が音楽教室だったため、常日頃から音楽と触れ合える環境にあった彼女は、4歳の頃にはピアノを習っていたそうです。
そんな音楽とともあった彼女ですが、最初から音楽を将来の夢とはしていなかったそうです。彼女が目指すものは、何かを表現したい人。そのため音楽・絵・舞踊・文学・生け花など、表現することを目的とした様々な分野に触れ、幼い頃から研鑽してきました。
そういった経験を積み上げていく中で、自分にはどれが一番向いているのか。どれが自分を表現することができるのかと考えた時、残ったのが音楽だったため今に至ります。
その後の進路は音楽だけに打ち込むようになり、自身の歌唱力とキーボードの打ち込みを鍛えるために上京。『印象H』というバンドで活動をしていました。
しかし、バンドでの活動中、クラシックからバンド音楽の道を模索していた成田さんと出会い、パスピエ結成メンバーのひとりとして賛同します。
この時大胡田さんは、成田さんとバンドを組むことで「絶対に何かができる」と感じていたそうです。
何かを表現したいという昔からの目標が、こうして現在のパスピエの活動を支えるものとなっており、彼女の表現するアートワークやミュージックビデオには、多くの反響を呼んでいます。
成田ハネダ(Key.)
成田ハネダ(なりたはねだ)。神奈川県横浜市出身。1987年8月22日生まれ。本名は成瀬悠郎(なるせゆきお)。
元々はピアニストを志していた成田さんですが、クラシックからバンド音楽に興味を持って現在に至ります。パスピエではキーボードを担当しており、バンド結成の中心人物でもあります。
ピアニストを目標としていたため、大学在籍時にはクラシック音楽を学んでいました。しかし、大学1年生の頃の冬にCOUNTDOWN JAPANを観たことでバンド音楽へと興味を抱くようになります。
その興味は薄れることなく、むしろ日に日に増すばかりで、成田さんは芸術大学生としては珍しい、ポップミュージックの道を志すことを決めました。
ポップバンドでメジャー・デビューを目指すため、成田さんはバンド『スキャンダラスストロベリー』を結成。夢に向けて一歩前進となりました。
しかし、これまでバンド経験のない成田さんは、ポップ音楽に近づけようとするも思うような演奏をすることができず、挫折を何度も味わったそうです。
成田さんはバンドを組むだけでは思い描くようなものにはならないと考え、自分自身のルーツである『印象主義音楽』にポップやロックを織り交ぜるというコンセプトを立てました。
その後、自分の音楽性に賛同してくれる人を探し、知人を通じて大胡田さんと出会い、三澤さんを勧誘。その三澤さんが露崎さんを連れ、偶然にも成田さんと小学校の同級生だった岸本さんと知り合い、2009年にパスピエを結成するに至りました。
パスピエでは楽曲の作曲を担っており、『素顔』『メーデー』『音の鳴る方へ』などでは、大胡田さんと作詞を一緒に行ったりもしました。
キーボードの他にはコーラスを担当することもあり、音源ではギターを弾くこともあるそうです。
三澤勝洸(Gt.)
三澤勝洸(みさわまさひろ)。山形県村山市出身。4月26日生まれ。
パスピエではギターを担当しており、メンバーの露崎さんとは専門学校在籍時代の同期だったようで、現在に至るまで『R』『ミサワバンド』などの複数のバンドで共に過ごしてきました。
ヘヴィメタルを好んで聴いていた時期があり、とくにMetallica(メタリカ)のアルバムは思い出のひとつとして挙げています。
また、三澤さんのルーツのひとつとして、ジャズギタリストのPat Metheny(パット・メセニー)を挙げています。複雑なコードや音楽理論を学ぶようになったのは、彼のライブを聴いてからだそうです。
パスピエでの活動の他には、山形出身ということもあってFM山形『MAGIC』のコーナーの『OTONARI ROOM』を月に1度担当しています。パスピエのメンバーで単独レギュラーのコーナーを持つのは三澤さんが初めてことです。
プライベートでは可愛い一面も持ち合わせており、ウサギを飼っていることをSNSなどで明かしています。
また、大のアニメ好きを公言しており、少し前のTwitterプロフィールでは「パスピエのギターとうさぎとアニメ担当」と記載。その縁もあってか、アニメ『けものフレンズ』のキャラクターソングアルバム『Japari Café2』では、収録楽曲に参加しました。
露崎義邦(Ba.)
露崎義邦(つゆざきよしくに)。千葉県四街道市出身。10月27日生まれ。露崎の『崎』は『﨑』が正しいが、便宜上あえて『崎』を使用しているとのこと。
パスピエではベースを担当しており、三澤さんとは専門学校在籍時代の同期でした。成田さんが三澤さんをメンバーとして引き入れた際に、三澤さんの紹介でパスピエのメンバーとして加入しました。
ピックを用いない指弾き奏法の他に、スラップ演奏といった様々な演奏法を使い分ける器用さを持っています。そのため、複雑な旋律にも柔軟に対応することができます。
そんな露崎さんですが、左利きであるにも関わらず右利き用のベースを使用しています。これは間違えて購入したわけではなく、右利き用の機種の選択肢の広さ、ゼロから覚えるなら右も左も関係ないということで右利きのベースを利用しているとのこと。
現在でも右利き用のベースを利用しており、5弦ベースも使用。その腕前からベース専門誌『ベース・マガジン』では5弦ベースの特集に名を連ねるほどです。最近ではシンセベースも使用しています。
パスピエでの活動には動画編集でも関わっており、一部ミュージックビデオでは監督として編集も行っているそうです。また、ファンクラブサイトで公開されている動画の編集も手掛けています。
プライベートではDIYを得意としており、小物から大がかりなものまで器用に制作することが可能。その腕前を生かして、ファンクラブサイト内では、自身の作品をプレゼントする企画が行われることがあります。
パスピエの魅力や小ネタを紹介
ここではパスピエの魅力や小ネタについて触れていきます。
彼らの演奏する音楽や結成当初の顔隠しでの活動理由。話題となったアートワークなどについて紹介しているので、ぜひご覧ください。
前衛的なアートワークの数々
パスピエと言えば音楽もさることながら、CDのアートワークにも注目したいところです。
今となっては顔出しで活動を行っているパスピエですが、活動当初はアーティスト写真の代わりに大胡田さんが描き下ろしたイメージイラストが使用されていました。
その前衛的なイラストによるジャケットは現在でも大胡田さんが描き下ろしており、結成当初は正体不明なバンドと相まって多くの話題を呼びました。
イラストにこだわるのには何かわけがあるかと考える人も多いと思いますが、実はこれには深い意味はないそうです。
バンドのコンセプトは顔を出さないということではなく、たまたまイラストをアートワークとして使用しただけであり、気がついたらこのようなかたちに落ち着いたとのこと。
しかし、白バックにシンプルな絵柄が施されたものや、浮世絵風であったり漫画風であったりと、写真では表現できないイラストの数々には見ているだけでも楽しさを感じます。
イラストを手がける大胡田さんは、将来の夢として表現できる人になりたいと語っていました。
このアートワークはなんとなくで始まったものかもしれませんが、大胡田さんのバンドに対する想いがイラストととして表現されているのだと思います。
少女漫画のような感情あふれる歌詞
パスピエは成田さんが最初に曲を作り、その曲のイメージから大胡田さんが歌詞をつけていくという手法で制作されています。クラシックを元にしたリズム感のある曲に歌詞が乗り、聴く人を魅了します。
リズム感のある歌詞の中にはことわざや慣用句や比喩表現など、日本語ならではの表現や技法が多数使用されており、成田さんも大胡田さんも読書家ということもあってか、読み聞かせのような安心感すら感じさせます。
また、大胡田さんのイメージした乙女心をくすぐる女性らしい二面性を表現した言葉の数々には、数多くの文学作品からヒントを得たものを使用しており、曲と合わさることでまるで少女漫画のような世界観を作り上げています。
印象主義音楽による音楽性
パスピエの音楽性は、成田さんが学生時代に触れていたクラシックの流派のひとつ『印象主義音楽』のアプローチから成り立っています。この印象主義音楽とは、その時代の背景が色濃く反映されたもので、いわゆるジャンルのようなものです。
成田さんが取り入れたこの印象主義というのは、今までのクラシックの表現をしりぞけ、情緒や物語性の描写よりも、雰囲気の表現に寄せた音楽様式です。特徴として長調と短調を混同させたり、不協和音を多用した音作りとなっています。
実際にパスピエの音楽を聴いてみると、その特徴的な音作りに強く影響されていることがわかります。その音に童歌のような東洋的な音階とシンセサイザーなどの電子楽器を使ったポピュラーな音を融合したものが、パスピエの世界観を形成しています。
しかし、この世界観は良い意味で驚いてしまうと成田さんは語っています。
パスピエの楽曲は、まず成田さんが曲を作り、そこに大胡田さんの歌詞が入り、バンドメンバーのアレンジが加えられていきます。
『チャイナタウン』という曲は、最初に曲を聴いた大胡田さんが中国の印象を抱いたことで制作され、成田さん自身はその意識をまったくしていなかったそうです。
また、中にはまったくイメージが沸かない曲もあり、『ONE』という曲のデモバージョンではベースとギターが入っておらず、ドラムとシンセサイザーだけだったためにメンバーは困惑したそうです。大胡田さんに至っては、これをどう歌えばいいのかと戸惑いを覚えたとのこと。
この融合した世界観によって、本来ではありえないような方向へシフトしていく摩訶不思議なサウンド。時にはお互いのセンスがぶつかり合いながら生まれ、成田さん自身も驚くサウンドに昇華していくのでしょう。
面白がって顔を隠し続けた
大胡田さんが描いたアートワークが先行したことにより、当初は正体不明なバンドとして認知されていたパスピエですが、バンドのコンセプトに顔を隠すとは計画していなかったと語っています。
ネットやメディアの発達に伴い、音楽が身近になる一方で、人はその飽和状態から取捨選択することが難しくなってきました。
そのため、違った角度から自分たちを見せる必要があり、当初のコンセプトにはなかった顔隠しを続けようと成田さんは語っていました。
その結果、顔隠しに注目し、パスピエの音楽性にも触れてもらえるようになり、この意図していなかった顔隠しが、パスピエという音楽を知ってもらえるきっかけにもなったそうです。
素顔を隠すことに関して、成田さんは面白がっていたとも語っています。その理由として、そもそも完全には顔を隠してはいなかったからです。デビュー当時からのパスピエの活動を見たことがある人はわかると思いますが、彼らはメディアでの露出は素顔を隠し、ライブでは面を覆わずに活動をしていました。
バンドのコンセプトではないけれど、ファンが喜んでくれる。だから面白い。そういったファンの反応を楽しめることに成田さんは顔を隠す活動を通してきました。
しかし、初の日本武道館公演を終えた2015年。彼らはひとつの節目を迎えたと実感し、何かを変えていこうと話し合いました。その結果、曖昧だった素顔を晒すことにトライしてみようといこうことになり、
そこにはもちろん不安もありました。素顔を晒すことにファンをがっかりさせてしまわないか、と。彼らがファンをとても想っていることがうかがえます。
それでもパスピエの根本のスタイルは変わらないと、意を決して素顔を晒すことにしたのです。良い音楽とライブを届けることを軸に、もっと面白いことに手を出していけばいい、と。
そして実際に顔を出した際のファンの反応は、変わらないどころかむしろ盛り上がりを見せました。素顔を隠していたバンドが素顔を晒したという反応もありましたが、パスピエの音楽性を好いてくれる人がほとんどです。
パスピエはその後も積極的な活動を続け、多くのツアーやタイアップ曲を手掛けました。これからも彼らはファンを楽しませるバンドとして活躍してくれることでしょう。
パスピエのおすすめ楽曲
S.S
メジャー1stフルアバム『演出家出演』に収録されている『S.S』。
浮遊感を感じさせるキーボードの音色に存在感のある重低音のベースの軽快さ。気だるさを感じる大胡田さんの歌声に注目です。
MATATABISTEP
2014年にリリースされた両A面の3rdシングル『MATATABISTEP』。2ndアルバム『幕の内ISM』にも収録されています。
サイレンを思わせる中毒性のあるメロディが特徴的で、サビのフレーズには可愛らしさを感じさせます。
電波ジャック
2011年にリリースされた1stミニアルバム『わたし開花したわ』に収録されている『電波ジャック』。
本来、歌詞は大胡田さんが担当していますが、この曲は成田さんも共同で作詞を担当しています。サビ部分では周波数を合わせるような大胡田さんの独特な歌声に注目です。また、このミュージックビデオは全編、大胡田さんが手描きにて制作されました。
とおりゃんせ
2013年にリリースされた配信限定シングル『とおりゃんせ』。2ndアルバム『幕の内ISM』にも収録されています。
童歌をタイトルに持ってきているだけあり、楽しさと同時にそこはかとなく不気味さを感じさせます。ミュージックビデオでは障子を利用した光と影、黒衣(くろご)を加えた演出による工夫が施されています。
トキノワ
2015年にリリースされた4thシングル『トキノワ』。テレビアニメ『境界のRINNE』のエンディングテーマとして使用されました。
「輪廻の輪」をテーマにした曲は、大胡田さん独特の解釈で生まれた歌詞とキュートな歌声で構成され、エフェクティブな演出でポップさとキャッチーさを上手く取り込んでいます。
最新情報
独特な音楽性に今後も期待
以上、印象主義音楽を元にしたバンド『パスピエ』の紹介でした。
パスピエはただのポップなバンドではなく、そこから独自の音楽性を取り入れたことで多くのファンに注目されるようになりました。
素顔の解禁でファンが離れることもなく、むしろその勢いは増すばかりです。
これからも独特な音楽性でファンを盛り上げてもらいたいですね。
それでは、ここまでご覧いただきありがとうございます。