ELLEGARDEN(エルレガーデン)は、細美武士(Vo.Gt.)、生形真一(Gt.)、高田雄一(Ba.)、高橋宏貴(Dr.)の4人から成るロックバンドです。
1998年に結成され、2001年に1stミニアルバム『ELLEGARDEN』でインディーズデビュー。
その後、2002年の1stフルアルバム『DON’T TRUST ANYONE BUT US』から、2006年の『ELEVEN FIRE CRACKERS』まで5枚のスタジオアルバムをリリースしました。
『ELEVEN FIRE CRACKERS』ではオリコンウィークリーチャートの1位を獲得するなど、音楽ファンから熱く広く支持されているバンドです。
2008年に活動休止を発表しましたが、10年の時を経て2018年に活動を再開。復活のニュースに驚き、そして沸いたファンは少なくないでしょう。
以来、ONE OK ROCKとのツアーや、10-FEET、マキシマム ザ ホルモンとの3マンツアー、YouTubeでの生配信など、精力的に活動しています。
2022年2月からは6枚目のアルバム制作に入ることも発表されました。
新作への期待も高まるところですが、今回はそんなELLEGARDENのこれまでの作品を振り返ってみましょう。
ELLEGARDENがなぜこれほどまでに支持されているのか。5枚のスタジオアルバムからその魅力が存分に伝わるはずです。
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目次
DON’T TRUST ANYONE BUT US
1stフルアルバム『DON’T TRUST ANYONE BUT US』は2002年4月3日リリース。
シークレットトラックとなっていた「The End Of The World – Album Mix」を含めて12曲を収録。約48分にわたる本作は、ELLEGARDENのフルアルバムの中で、ベストアルバムを除くと1作目にして最大のボリュームです。
もちろん、注目すべきは長さだけではありません。今なお多くのファンから人気を誇る名曲が揃っています。
TOYOTA「HEART LABE」CMソングに起用された「Bare Foot」や、彼らにとって初の日本語詞のシングルでありメロディアスなバラード調の「指輪」、優しさと寂しさを湛えたクリスマスソング「サンタクロース」、歌詞に心動かされたというファンも多く名曲の呼び声も高い「風の日」などが収められた1枚。
既にELLEGARDENというバンドの真髄に触れることのできるアルバムとなっていたと言えるでしょう。
中でも長きにわたって多くのファンを魅了してきた曲として挙げられるのが「風の日」です。
ギターの轟音から始まり、アレンジやバンドサウンドは硬派な印象。
それでいて歌詞には繊細な優しさが感じられ、そこがELLEGARDENの楽曲の大きな魅力の一つとなっています。
「雨の日には濡れて/晴れた日には乾いて/寒い日には震えてるのは/当たり前だろ」という歌詞には、聴いていてフッと肩の力が抜けるような、当たり前の感覚や感情を肯定してもらえるような響きがあります。
「次の日には忘れて/風の日には飛ぼうとしてみる/そんなもんさ」という、軽やかで包容力のあるフレーズに、自然と前を向かせてもらえたという人も多いのではないでしょうか。
この「風の日」に象徴されるように、力強く、時に荒々しくもあるバンドサウンド、メロコアやパンクを連想させる曲調と、そこにのせられた歌詞の繊細さや優しさ、純粋さ、切なさとの組み合わせの妙は、後の作品にも強く表れています。
ネガティブな感情を吹き飛ばすようなパワフルな音とメロディ、それでいてポジティブさを押し付けたり弱さや痛みを否定したりはしない、優しく、思慮深さも感じられる歌。
そういう意味での「ELLEGARDENらしさ」は、この1stアルバム「DON‘T TRUST ANYONE BUT US」で既に完成されていたと言えるでしょう。
BRING YOUR BOARD!!
ELLEGARDENの楽曲には、音楽的にはギターロックやメロディックパンクと呼ばれるジャンルに分類されるものが多く見られます。
2ndアルバム『BRING YOUR BOARD!!』はそんなカラーがぐっと強まった1枚。
ヘビーで厚みのあるサウンド、躍動感と臨場感溢れるパフォーマンスは、より一層力強く聴き手の心を捉えていきました。
リリースは2003年7月2日。
オリコンチャートで75位と、初のトップ100入りを果たしました。
どれをとっても強力な楽曲が揃ったアルバムですが、その中からシングルカットされているのが「ジターバグ」です。
アップテンポで疾走感のあるアンサンブルに、遠回りをすることや間違うことも悪くないと勇気づけられる歌詞。
それでいてただ単に励ますというのではなく、歌詞の中の「僕」もまた誰かに救われ、自分もそうありたいと思っていることが読み取れます。
「いつだって君の声がこの暗闇を切り裂いてくれてる/いつかそんな言葉が僕のものになりますように/そうなりますように」というサビの歌詞は、優しく切実な願いのよう。
ELLEGARDENの曲が多くの聴き手に寄り添うものとなり得ているゆえんは、こういうところにあるのかもしれません。
それ以外にも、今なおファンから愛されている曲が収録されています。
「No.13」は、残暑が居座っている9月の晴れた日に聴きたくなる1曲。
帰らないであろう「君」を待つという歌詞と、もうすぐ終わる夏の光景、その寂しさとは裏腹に底抜けに明るい曲調が組み合わさって、何とも言えない切なさを生みます。こういう感傷もELLEGARDENの魅力のひとつです。
「金星」もELLEGARDENの日本語詞の名曲と言えます。
ややゆったりとした8分の6拍子で歌われるメロディと呼び掛けるような歌詞が一度聴いただけでも耳に残ります。
「ねぇ この夜が終わる頃/僕らも消えていく/そう思えば 僕にとって/大事なことなんて/いくつもないと思うんだ」という歌詞は、逆説的にその「いくつもない」大事なものを大事にしようとする意思表示にも思えるのではないでしょうか。
2ndアルバム『BRING YOUR BOARD!!』は、音楽的にも、歌詞や楽曲の独自性という点でも、ELLEGARDENというバンドの在り方を明示する1枚となりました。
Pepperoni Quattro
3枚目のフルアルバム『Pepperoni Quattro』は2004年5月26日リリース。
オリコンチャートでは17位を獲得しており、バンドの人気の高まりを印象付けました。
フルアルバムの中では唯一、シングル曲が収録されていないアルバムですが、そうとは思えないほどインパクトがあり強烈な魅力を持った楽曲が揃った作品でもあります。
「Supernova」や「スターフィッシュ」といった楽曲を聴けば、名曲と呼ぶにふさわしいエネルギーを感じられるでしょう。
いずれも疾走感溢れる力強いリズム、耳に残るギターのリフに、キャッチーでありながら切実さも感じさせる歌詞とメロディ。
これだけでも既にバンドの円熟を感じさせるような充実感です。
また、このアルバムを語る上で外せない曲として、「Make A Wish」を挙げることができます。
願うこと、祈ること、祈り、といったテーマはELLEGAEDENの曲に度々登場しています。
例えば「ジターバグ」のサビも祈るような歌詞でした。
「Make A Wish」は、曲名からして「願い」の歌。
弾き語り風に始まり、途中で曲調が変わって力強いビートにのせて歌われるのは、誰かがあなたの隣にいるように、という願いです。
パンクロック調のサウンドだからこそ、その尖った音と対照的な歌詞の優しさが胸に迫ります。
『Pepperoni Quattro』は、エモーショナルなバンドサウンド、ドラマチックなメロディやアレンジと、内省的な歌詞とのバランスや、それらの組み合わさった楽曲の完成度がさらに高まった名盤となっていました。
そうしたバランスは、次の『RIOT ON THE GRILL』にも繋がっていきます。
RIOT ON THE GRILL
豪快にスパゲッティを啜る少年の写真がインパクト抜群のジャケット。
そこに収録された楽曲も、ジャケットに負けず劣らず強烈な印象を残します。
2005年4月20日にリリースされた4枚目のアルバム『RIOT ON THE GRILL』は、タイトルを直訳するなら「グリルの上の暴動」。
その名前にふさわしく、収録されているのはパンチがあって目の覚めるような曲や、ピリッと効いてくるスパイスのような曲、疾走感溢れる熱い曲。カラフルでバリエーション豊富な具材がずらりと並んで、鉄板の上で爆ぜたりくすぶったり、そんなイメージも思い浮かびます。
ハードロック調の曲もあればミディアムナンバーもあり、ノリの良い曲、ライブで盛り上がれる曲もバランスよく配置。
全体として、ELLEGARDENの作品の中では比較的ポップな印象です。あまりパンクロックを聴かないという人でも入りやすいアルバムだと言えるでしょう。
オリコンチャートでも初のトップ10入りとなる3位にランクインしており、ELLEGARDENの知名度を急激に押し上げました。
その1曲目を飾るのは「Red Hot」。
穏やかに刻むギターとボーカル、と思いきやそこから一気に加速してパンクロック調に。
歌詞の主人公は、仕事の面接に行くから電車賃を貸してと頼んだり、ビタミンを摂るためにポテトチップスを食べようとしたりする、言ってしまえばどうしようもない人。
それでも、1日に20回落ち込んで(”I’m going down like 20 times a day”)、100万回以上浮上する(”I’m floating up more than a million times a day”)と言ってみたり、ウィンカーを消して直進しようと言い放ったりしているのを聴くと、痛快さに胸がすくような思いがするはずです。
赤くて辛い”red hot chili”が吹き飛ばしてくれるというフレーズの持つ爆発力は、まさに「暴動」のアルバムの1曲目にぴったり。
MVも非常に爽快です。なぜか強風で色々な物が飛んでくるガレージらしき場所で演奏するメンバーの姿は、コミカルであり同時に格好良い。サビに入る瞬間のジャンプをつい真似してみたくなったりもします。
シングル曲としては、本作には「Missing」を収録。
ギターの音色には哀切な響きも感じられます。
いずれ失ってしまう・失われてしまうものに思いを馳せるような歌詞とメロディ。
「一滴の水で泳ぐ勝算みたいなもの/あたたかい毛布も大切なんだ」というフレーズには、そういう不確かなものや頼りないものを決してないがしろにするまいという切実さが滲んでいます。
ELLEGARDENというバンドの在り方を象徴するような曲だと言うこともできるでしょう。
また、「虹」もファンから高く評価されている曲です。
「迷わずにすむ道もあった/どこにでも行ける自由を/失う方がもっと怖かった」という一節は、「ジターバグ」の歌詞とも呼応しています。
何かを失ったり、間違ったりしても前に進んでいけると肯定してくれる曲であり、彼らの一貫性を感じられる作品です。
『RIOT ON THE GRILL』は、先ほども書いたようにバンドの知名度を高め、聴き手の裾野をぐっと広げたアルバムですが、それはこのアルバムが、ELLEGARDENの元来持っている懐の深さを感じさせるものだったからかもしれません。
ELEVEN FIRE CRACKERS
5枚目のアルバム『ELEVEN FIRE CRACKERS』は2006年11月8日リリース。
バンドとして初めて、オリコンウィークリーチャートで初登場首位を獲得しました。
同年には全米デビューも果たしており、ELLEGARDENの人気が揺るぎないものとなっていた中でリリースされた本作は、前作からさらにロックンロール色を強め、強靭でエモーショナルな1枚になっています。
同時にメロディの美しさや歌詞の訴求性にも磨きがかかり、MVも制作されている「高架線」をはじめとして、伸びやかな旋律が激しいバンドサウンドにのって響くさまは圧巻です。
『RIOT ON THE GRILL』以降の急激な人気の高まりの中、葛藤や戸惑いを経て築き上げられたとされる『ELEVEN FIRE CRACKERS』は、そうした緊張感を反映しつつ作品に昇華させた名盤として、高い評価を得ていると言えるでしょう。
シングル曲では「Space Sonic」、「Salamander」を収録。
「Space Sonic」のMVは、音楽番組のパロディのようなセットで女装したメンバーが歌うという演出。
ハードなサウンド、シリアスな歌詞と映像のギャップも注目されました。
「Salamander」ではヒリヒリしたバンドサウンドとメロディにぐっと引き込まれます。
シングル「Salamander」のカップリング曲だった「Alternative Plans」も、冒頭部分に弾き語りのようなパートが追加されて収録されています。
歌詞に登場する人物は“alternative plans”(ほかのプラン)を夢見ながらも上手くいかず、どこか冴えない様子。キャッチーで疾走感のある曲調ながらどこか寂しさを感じさせますが、その両義性が大きな魅力となっています。
シングル曲から、こうしたカップリング曲やアルバム曲に至るまで、研ぎ澄まされたサウンドとドラマチックなメロディ、そして寂しさや痛みと優しさや少しの希望を併せ持った歌詞から成っているのが『ELEVEN FIRE CRACKER』というアルバムです。
その中で、ELLEGARDENの代表曲として間違いなく挙げられるであろう1曲が「高架線」です。
「高架線」は、比較的シンプルな構成で曲の長さも2分半足らずと短いものの、伸びやかなメロディが美しく終盤にかけての展開は壮大にすら感じられる1曲。ELLEGARDENの作品の中でも高い人気を誇っています。
2008年7月にリリースされたベストアルバム「ELLEGARDEN BEST 1999-2008」ではアルバムの最後を飾りました。
「何億年も前に つけた傷跡なら残って/消えなくてもいいさ 痛みはもうないからね」という歌詞に見られるように、ネガティブな感情や痛みも否定せず、そこに寄り添いながら前を向かせてくれるという、ELLEGARDENの強さと優しさが結実しています。
この先にはきっとある、という希望も垣間見える曲。
この「高架線」と、それを収めた活動休止前最後のアルバム『ELEVEN FIRE CRACKERS』は、それ自体がひとつの到達点であるとともに、その先を予感させる出発点としても位置付けられるものだったと言えるでしょう。
まとめ
ELLEGARDENの5枚のスタジオアルバムについてご紹介してきました。
今回は取り上げきれませんでしたが、このほかにもEPとして、インディーズデビュー作となったセルフタイトル盤『ELLEGARDEN』と(2001年5月23日リリース)と、『My Own Destruction』(2002年10月16日リリース)が出ています。
この2枚も、バンドの初期衝動や、その頃からあった熱量を感じることのできる作品です。
5枚目のフルアルバム『ELEVEN FIRE CRACKERS』 のリリース後、彼らは2008年5月2日に、メンバー間のモチベーションの差を理由として活動を休止します。
しかしその後もメンバーはそれぞれの活動を続け、休止から10年後の2018年5月に復活したのでした。
その後の活動からは、遠回りをしても間違っても進んでいけると歌ってきたバンドの在り方が今なお一貫しているということが感じられます。
ELLEGARDENはこの先、どんな音楽を鳴らし、どんな光景を見せてくれるのか、見届けていきたいところです。
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