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「夜に駆ける」に込められた意味
小説『タナトスの誘惑』を原作とする楽曲「夜に駆ける」。
その話題性はメロディーや歌詞だけでなく、MVのアニメーションを担当した藍にいなさんによる、幻想的でありながらもどこかリアリティーさを含ませた演出も人気の1つです。
小説と楽曲タイトルの接点
2人の男女が描かれたストーリーと演出にはどのような意味があるのか。その答えは原作小説『タナトスの誘惑』のタイトルで気付いた方も多いと思います。
“タナトス”とは、ギリシア神話に登城する神の一種です。死そのものが神格化されたもので、いわゆる”死神”という解釈ができます。
また、別名“夜の子”とも呼ばれ、楽曲名や歌詞と通じるものがあります。
イントロから歌詞を追っていくと、別れの言葉をフェンス越しに受け取る男性の視点が描かれています。
原作小説でのタナトスとは、人間を支配する存在であり、タナトスに支配された人間は死神が見えるようになるという設定があります。
また、死神は見る人間にとって最も魅力的な姿をしており、男性の視線の先にいる女性は死に誘惑されている状態であることが分かります。
フェンス越しのさよなら
そしてフェンス越しのさよならがどういう意味であるのか。多くの人が連想できると思いますが、死に魅了された女性が今まさに飛び降りようとする姿です。
そしてそれを必死に止めようとする男性。歌詞を掘り下げていくと、それは一度や二度のことではなく、死神を追う彼女を止めようとする描写が歌詞の中で何度も描かれています。
いつか死神から解放され、分かり合えると信じる男性。ですが、何度も繰り返すうちに心身ともに疲れ果ててしまいます。
物語の結末と怖さ
「夜に駆ける」は、一部で怖いという感想を抱く人がいます。
それは恐らく、楽曲の最後がどのような結末を迎えたのかを理解したからでしょう。
死神を追う女性。止めるために何度も言葉をかけてきた男性ですが、そのどれもが届かず、ついには「終わりにしたい」と諦めの言葉を吐露します。
そして最後には曲名をなぞるように「夜を駆け出していく」。その前の歌詞には、男性が女性から差し出された手を取る描写があります。
この歌詞から、2人で手を取り合って飛び降りたことが読み取れます。
結局は死神の魅了から目を離すことができず、衝撃的な結末を迎えることになりました。
これには多くの人を驚かせ、一種のホラーとして恐怖を抱いた人もいるでしょう。
彼女は引き止めて欲しくなかった
2人の飛び降りで結末を迎えた楽曲ですが、これは単なる悲壮感に包まれたものなのかというとそうでもないように思えます。
タナトスに支配された女性。男性はそれを何度も止める日々が続きます。2人の間には明るい話題もなく、男性は死神に視線を向ける女性に嫌悪感すら抱いていました。
しかし、男性が諦めの言葉を吐露した時、女性は初めて笑みを零しました。
“初めて”とあるように、2人の間柄がどれだけ悲惨な状況であったのかを物語っています。
その後、その笑顔にこれまでの鬱憤とした日々が癒やされる男性の描写。そして優しく死へと誘われます。
女性がなぜこれまで笑みを浮かべなかったのか。それは、理解されていなかったからです。
止めて欲しいのではなく、ただ一緒に飛んで欲しかった。
諦めの言葉に対して笑ったのは、一緒に分かり合えたからであると読み取れます。
人によっては怖い、可哀想と思うストーリーではありますが、これも一種の愛の形なのかもしれません。
まとめ
以上が、YOASOBIの「夜に駆ける」の意味についてでした。
小説を題材にしているだけあり、楽曲の歌詞に込められた意味に深みがあります。
今回ご紹介した内容は、筆者の独断と偏見によるものなので、歌詞の意味が必ずしもこれであるとは限りません。
もし気になる方は題材になっている小説から歌詞を眺めてみることをおすすめします。凝縮した歌詞の中にもしかするとこういう意味があるのかもしれないと、新たな発見があるかもしれません。
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