一度聴いたら忘れられない、澄んだ歌声が特徴のSalyu。
2000年のデビュー以来、多くのミュージシャン・著名人が彼女のファンを公言する実力派のシンガーです。
今回はそんなSalyuの歩みを彼女の多彩な楽曲と共に追いかけてみましょう!
目次
Salyuがデビューするまで・Lily Chou-Chouとしての活動
1980年、横浜に生まれたSalyu。
幼い頃に風邪をこじらせ肺炎を起こした経験から、体力をつけるために歌を始めます。
歌に魅了され歌手を志したSalyuは、雑誌に掲載されているオーディションに参加したり、養成校に通いトレーニングを続けたりと、歌手への道を歩み始めます。
17歳の時、資料としてSalyuが作成したビデオが、音楽プロデューサー・小林武史の目にとまります。
小林は、岩井俊二監督の映画「リリイ・シュシュのすべて」で音楽を担当しており、物語の中で登場するアーティスト・Lily Chou-Chou役としてSalyuを抜擢。また、実際にLily Chou-Chouというユニットを立ち上げ、シングル2枚・アルバム1枚をリリースしました。
映画「リリイ・シュシュのすべて」は大きな反響を呼び、Lily Chou-Chouは現実と物語の世界をさまようアーティストとして、音楽ファンの間で話題となりました。
Lily Chou-Chouを代表する作品といえば、「グライド」。
繰り返される「I wanna be」という歌詞が印象的な一曲です。
気だるさを演出する進行、Salyuのシンプルな歌声が特徴的なこの楽曲のアンニュイな雰囲気が、映画「リリィ・シュシュのすべて」の重厚な世界観を創り上げています。
ソロシンガー”Salyu”としてデビュー
2004年4月、SalyuはRIP SLYMEのMC・ILMARIと共に、「Ilmari×Salyu」としてシングル「VALON」をリリース。このシングルで初めて、Salyuという名義での活動を開始します。
その2カ月後には、Ilmari×Salyuの楽曲をソロバージョンにアレンジした「VALON-1」をリリースし、ソロシンガーとして改めてデビューしました。
デビューから2か月後に発売した2ndシングル「Dialogue」のMVは、スペースシャワーTVが主催する「SPACE SHOWER Music Video Awards 05」において「BEST NEW ARTIST VIDEO」を受賞。映像作品でも評価されることとなります。
2005年、初のアルバムとなる「landmark」をリリース。収録された作品は、Lily Chou-Chou時代とは趣向を変え、Salyuの多彩な歌声を活かした幅広い楽曲が揃っています。
Salyuの歌声は全国区に!
2006年、Salyuは、Mr.childrenの櫻井和寿と小林武史が率いるスーパーバンド、Bank Bandとコラボレーションし、Bank Band with Salyuとして、シングル「to U」を発表しました。
愛や平和についての強いメッセージが込められたこの曲は、TBS系「筑紫哲也 NEWS23」のテーマソングとなり、オリコン週間シングルチャートで2位を獲得。Salyuの歌声を全国に知らしめることとなります。2007年には同曲のソロバージョンも収録された2ndアルバム「TERMINAL」を発売。
2008年には、自身初のベストアルバム「Merkmal」のリリースに、武道館公演を含めた全国ツアー「Salyu Tour 2009 Merkma」を敢行し、名実ともに、トップ女性シンガーとなりました。
2009年に発売した11枚目の両A面シングル「コルテオ〜行列〜 / HALFWAY」で、Salyu名義では初となるオリコンシングルチャートベスト10にランクインを果たします。
「コルテオ〜行列〜」はシルクドソレイユ第8弾「ダイハツ コルテオ」のテーマソング、「HALFWAY」は映画「ハルフウェイ」の主題歌となり、Salyuの唯一無二な歌声が様々な舞台で注目を集めました。
2010年、初のセルフプロデュースとなる3rdアルバム「MAIDEN VOYAGE」をリリースし、オリコンアルバム週間チャートで初登場7位を記録。その後、再び小林武史をプロデューサーに迎え、2012年には4thアルバム「photogenic」を、2015年には5thアルバム「Android & Human Being」をリリースするなど、精力的にソロ活動を続けています。
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「salyu × salyu」としての活動
2011年、Salyuの新たな試みとして、CORNELIUSの小山田圭吾にプロデュースを依頼した新プロジェクト・salyu×salyu(サリュ・バイ・サリュ)が始動します。
Salyuの歌声を多重録音するという手法を使い、新たな楽曲を制作。
同年4月にはアルバム「s(o)un(d)beams」、8月には、配信限定のシングル「話したいあなたと」をsalyu×salyu名義でリリースしました。
salyu×salyu名義の作品はすべて、CORNELIUSが作曲を担当。
作詞には、いとうせいこう、七尾旅人、国府達矢など、Salyuの歌声に魅せられた数々の著名アーティストが参加しています。
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なかでも注目を集めた楽曲が、ゆらゆら帝国の坂本慎太郎が作詞を担当した「ただのともだち」。
リズム・歌声を駆使し、ミニマルミュージックのような多重録音の面白さと、Salyuの高い技術力を引き出した一曲となっています。
TOY’S FACTORY公式YouTubeにて公開された「ただのともだち」のライブパフォーマンスは45万回再生を記録。この完成度の高さは、音楽ファン必見です。
Salyuの音楽は新たなステージへ
2017年になると、Salyuは音楽劇にも挑戦。宮沢賢治の作品をもとに人類学者・中沢新一が脚本を手がけ、小林武史がオペラに仕上げた音楽劇「四次元の賢治」で、宮沢賢治の妹・とし子役として出演しました。この音楽劇は2019年まで断続的に実施され、Salyuの新たな魅力が花開きます。
また、ボーカリストとしても、ソロ活動に加えて、他アーティストのトリビュートアルバムやコラボレーション、ゲストボーカルなど、多岐にわたって精力的に活動。
2020年には、13thシングルタイトル「新しいYES」と同名の「株式会社新しいYES」を設立し、さらに活動の幅を広げていくため、その足場を固めています。
近年のSalyuの活動の中で特に注目の音源が、フォーク・ロック・バンド、ROTH BART BARONとのコラボライブで披露した「HERO」。贅沢な生演奏とSalyuの歌声、ROTH BART BARONのボーカル・三船雅也とのハーモニーを味わえます。人間が集った時のファンダメンタルな高ぶり、祝祭のような雰囲気を感じさせるこの音源は、日常から別世界へと連れて行ってくれることでしょう。
Salyuの隠れた名曲3選
これまでに取り上げたように様々な楽曲があるSalyuですが、ぜひ聴いてほしい名曲はまだまだあります。ここからは、Salyuの隠れた名曲を3曲ピックアップしご紹介します!
name
7thシングル「name」は、作詞・一青窈、作曲・小林武史という豪華タッグで制作。2ndアルバム「TERMINAL」にも収録されています。
ファルセットと地声を使い分けるSalyuの繊細な技術と、ロングトーンの美しさにハッとさせられる楽曲です。サビの最後のフレーズ「うわごとのような響き」という歌詞は、まさにこの楽曲でのSalyuの魅力を言い当てた言葉のような気さえしてきます。
ドラムとベースが安定したリズムを刻む中、急上昇・急降下を繰り返しながら紡がれるメロディ。Salyuの音域の広さに思わず唸ってしまう作品です。
旅人
4thアルバム「photogenic」の最後を締めくくる一曲。
テレビ東京系列「ワールドビジネスサテライト」のエンディングに採用された、Salyuの美しい高音部を堪能できるナンバーです。
ピアノとストリングスを中心とした演奏、そしてSalyuの歌声と、すべての純度が高い上質なスローバラードです。
言葉の発音が綺麗なSalyuだからこそ、歌詞の深さが際立つ作品。ハーモニーがだんだんと豊かになりながら、生きること・旅路について問いかけています。
アイニユケル
2014年に発売されたシングル、「アイニユケル」。
松山ケンイチ主演の映画「家路」の主題歌としてご存じの方もいるかもしれません。冒頭は、楽器の音数が少ない中、何かを打ち明けるようなSalyuの独唱から始まります。
サビに入りギターの音色が加わると、その意志の強さを表すように歌声も徐々に力強くなっていき、最後の大サビでは、宣言とも思わせるようなSalyuの歌声が響きます。
Salyuの圧倒的なテクニックと丁寧な描写力を感じる大作です。
終わりに
今回は、Salyuの魅力についてご紹介しました。ミステリアスな雰囲気もSalyuの魅力の一つですが、知れば知るほど魅力的な音楽に出会うことができること間違いなし。
他の誰とも似ていない声、アグレッシブな挑戦など、多様な表現に取り組むSalyuの音楽に、みなさんも浸ってみてはいかがでしょうか?
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