2016年のメジャーデビュー以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を増し、いまや存在を知らないほうがマイノリティーと言えるほど知名度が高まった、”楽器を持たないパンクバンド“ことBiSH。
デビュー曲『星が瞬く夜に』のMV撮影では本物の馬糞を投げつけられ、糞にまみれていた”新生クソアイドル“(Brand New idol SHiT)こそが、BiSHというアイドルグループです。
こうして改めて文字に起こしてみると、「こんなアイドル存在していいのか?」と懐疑的な見方をしてしまうほど、衝撃的なデビューを飾っていますよね。
今回は、そんなBiSHが2019年にリリースし、メンバーが作詞作曲どちらも手掛けたことで注目された楽曲『リズム』を紹介します。
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目次
BiSHを代表するバラード曲『リズム』
『リズム』は、BiSHが2019年11月にリリースした両A面シングル『KiND PEOPLE/リズム』に収録されている表題曲です。
“楽器を持たないパンクバンド”という通り名からはイメージが湧かない、ピアノの音色が印象的な飽きのこないバラード楽曲となっています。
BiSHメンバーのモモコグミカンパニー作詞、アイナ・ジ・エンド作曲の楽曲として、リリース当時清掃員を中心に話題となりました。
清掃員とはBiSHファンを表す総称で、”クソを掃除する者”を意味します。
ここでは『リズム』のバラード楽曲としての魅力や、本楽曲を楽しむ上で押さえておくべきポイントを紹介します。
ピアノ伴奏が心地よいメロディー
『リズム』を聴いて真っ先に魅力的に感じるのは、穏やかなピアノの伴奏です。
イントロ、Aメロで流れるそれぞれ異なるピアノリフが、バラード楽曲であることを確かに主張しています。
また、ゆるりと優しいピアノ伴奏と力強いストリングス、すなわち弦楽器隊の混合も『リズム』における重要な魅力の一つです。
心地よいピアノの音色だけでなく、途中でバイオリンなどの弦楽器のフレーズが加わることで、バラード楽曲としての深みを増幅させています。
とくにラストサビ前の間奏で流れる美しいバイオリンの音色は、ぜひ一度耳を研ぎ澄ませて聴いてみることをおすすめします。
心の奥底から何かがグワっと込み上げてくるような、そんな感覚を味わえますよ。
工夫が施されたパート割
ピアノが心地よい『リズム』、バラード楽曲としての美しいメロディーもさることながら、パート割に工夫が凝らされているのも注目すべきポイントです。
歌い出しは作曲を担当したアイナ・ジ・エンドのソロパートから始まり、サビに入る直前のパートは作詞を担当したモモコグミカンパニーの歌唱。
イントロ直後とサビの直前に2人を置くことで、『リズム』という楽曲におけるアイナ・ジ・エンドとモモコグミカンパニーの存在を、より大きく目立たせているかのようです。
またこの曲はBiSHの楽曲としては珍しく、サビの一部をユニゾン、すなわち6人全員で同時に歌っています。
BiSHには、ユニゾンで歌うパートがある楽曲はほとんどありません。
メンバーそれぞれが持つ個性的な声色を引き立たせるよう、基本的には一人ひとり歌唱パートがきっちり分かれているのです。
『リズム』は、貴重なユニゾンを聴くことができる、とくに清掃員にとっては堪らない楽曲です。
メンバー全員の声の重なりを聴くことができるのは、ラストサビ終盤の
「扉開けてもまだ何もないけど 瞳凝らしてほら 見えた見えた見えた」
というフレーズ。
力強く繊細に響くストリングスとユニゾンで奏でられる歌声の調和は、途方もない宇宙空間に解き放たれたような錯覚を引き起こし、言葉にならない感動を覚えます。
生のライブで聴く『リズム』のラストサビのユニゾンは、まさに圧巻の一言でしょう。
テレビCMのタイアップソング!
『リズム』は、2019年12月に放映開始となった花王『フレア フレグランス』のテレビCMソングです。
大人気女優、石原さとみさん出演のテレビCMということもあり、「どこかで見た記憶がある!」という人も多いのではないでしょうか。
石原さとみさんは、同CMに2011年から出演し続けており、10年以上の歴史があるというから驚きです。
『リズム』の優しいメロディーが、石原さとみさんとフレアフレグランスが共に歩んできた道のりを祝福するかのように、CMの映像に彩りを加えています。
アイナ・ジ・エンドが『リズム』を作曲したきっかけ
現在ソロアーティストとしても活躍するアイナ・ジ・エンドさんが、過去に『リズム』の作曲をしたきっかけは、声帯手術を受けることになり活動休止を余儀なくされたこと。
2016年、BiSHの活動が多忙を極め、歌唱の限界を感じ始めた頃にはすでに声がガラガラな状態になってしまったようで、緊急的に声帯手術が決まりました。
『リズム』リリース直前の2019年10月、アイナさんは本楽曲に対する想いをこのように語っています。
リズムは2016年の手術する際、活動休止させてしまったりでどうしようもない気持ちを吐き捨てるように作った歌でした。
全く世に出す勇気はなかったのですが、モモカンが歌詞を書いてくれてスクランブルズが編曲をしてくれて大切で愛おしい曲になりました。
時を経てみなさんの耳に届くことが幸せです。— アイナ・ジ・エンド (@aina_BiSH) October 11, 2019
当時の行き場のない感情がそのままメロディーとなり、バラード楽曲『リズム』が産声をあげたようですね。
モモコグミカンパニーさんが『リズム』に詞をのせることになった経緯は、次に続きます。
『リズム』の歌詞が誕生した経緯
『リズム』の歌詞は、メンバーの中で最も多くBiSH楽曲の作詞を担当している、モモコグミカンパニーさんによって書かれたものです。
モモコさんが『リズム』の歌詞を書くことになった経緯を調べてみると、そのきっかけはほんの気まぐれのようなものでした。
2018年、いつかの仕事終わり、トボトボと落ち込んだように歩くモモコさんの姿を見たアイナさんが声をかけ、「(リズムの)歌詞書いてみない?」と話を持ちかけたことから始まったそう。
ある種気まぐれのような些細な会話から、運命的に『リズム』は完成へと向かっていったんですね。
モモコグミカンパニー作詞の歌詞に注目
『リズム』の美しいメロディーは、モモコグミカンパニー作詞の歌詞によって彩られていることを忘れてはいけません。
アイナ・ジ・エンドさんがモモコグミカンパニーさんに作詞を持ちかける前から、実は仮の歌詞がついていたそう。
アイナさんが書いた仮の歌詞を読み、モモコさんなりに解釈し自身の心情も加えた上でアップデートした歌詞が、『リズム』の正式な歌詞となりました。
1番のAメロの歌詞「泣きたい心 画面で笑う 絵文字はいつも 嘘をついてる」がとくに印象的。
本当は弱さを見せたい。決して強がりたいわけではないのに、大切な人の前ではなぜか素直になれず強がってしまう。
ドラマのワンシーンを思わせる情景が脳裏に浮かんでくるような文字の羅列に、思わず見惚れてしまいます。
モモコグミカンパニー作詞のおすすめ楽曲3選
『リズム』を聴いて、モモコグミカンパニーさんの作詞センスに気づいた人は多いのではないでしょうか。
モモコグミカンパニーさんは現在まで、『リズム』を含む合計17曲において作詞を担当しています。
その中でも特におすすめしたい、モモコさんのセンスが光る楽曲を3つ紹介します。
DA DANCE!!
『DA DANCE!!』は、甘酸っぱい青春期を思い出すかのような、片想いに煩わしさを感じる女子のちょっぴりトゲトゲした感情を歌った、グルーヴィーな楽曲。
BiSHのインディーズ1作目となったアルバム『Brand-new idol SHiT』に収録されています。
Aメロで繰り返される「ダンスしようよ」というフレーズが脳内をぐるぐる巡り、思わず踊り出してしまいそうになります。
ライブでイントロが流れた瞬間、歓喜する清掃員は非常に多いのではないでしょうか。
サビの歌詞には「めっちゃ」「ドキドキ」などキャッチーな表現が多用されており、ミディアムテンポでノれる痛快青春ソングに仕上がっています。
カラオケで歌えば、こじんまりとした部屋がダンスフロアへと変貌を遂げること間違いなし!
ぴらぴろ
その意味を理解しようにも、到底理解できるはずのないタイトルの通り、サビで「ぴらぴろぴらぴろ」と呪文のようなフレーズを繰り返すなど、まさに奇怪という言葉がお似合いの『ぴらぴろ』。
先ほど紹介した『DA DANCE!!』と同じく、『Brand-new idol SHiT』に収録されている楽曲です。
モモコグミカンパニーさんが何を想い、何を伝えようとしてこのような歌詞を書いたのかは本人ではないので分かりませんが、リスナーとして想うことは
「こんなにも意味不明で、最高な曲を作ってくれてありがとう」
これに尽きます。
それほどまでに、聴いていると脳内が「ぴらぴろ」一色となり、良くも悪くもアホになれる一曲です。
Nothing.
『Nothing.』は、BiSHの刺々しい一面ではなく、希望の光を掴み取るかのような、素直なポジティブさが現れた楽曲です。
BiSHメジャーデビュー後のミニアルバム『GiANT KiLLERS』に収録されています。
イントロがなく、いきなり耳に飛び込んでくるアイナさんの伸びやかな歌声には、思わず声が出るほど圧倒されます。
1番のサビに登場する「FiNAL DANCE放たれて 始まる景色の先を見ていたいだけ」という歌詞が注目ポイント。
『FiNAL DANCE』とは、BiSHの前身である第1期BiSの解散前にリリースされたラストシングルで、BiSの栄光に別れを告げ、BiSを超える”BiSH”として生きていく強い覚悟のようなものを、この歌詞から感じ取れますね。
「リズム」まとめ
ピアノのリフから入るイントロが心地よいバラード楽曲として突如産声をあげ、BiSHを代表する一曲となった『リズム』。
アイナ・ジ・エンドが書いた曲に、モモコグミカンパニーが織りなすように歌詞をのせることで完成した楽曲『リズム』は、飽きのこない極上のバラード楽曲です。
BiSHは刺々しいアバンギャルドな楽曲のイメージが先行しがちですが、『リズム』のような壮大なバラードも歌えるアイドルグループであることが、強みとしてはっきり現れています。
モモコグミカンパニーの書く詞と、アイナ・ジ・エンドの作る曲。
この2つがもう一度重なり合い、BiSHを象徴する一曲が新たに誕生する瞬間を楽しみに待ちましょう。
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