“楽器を持たないパンクバンド“ことBiSHが、前作3.5thアルバム『LETTERS』から約1年ぶりとなる最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』を、8月4月にリリースしました。
タイトルに含まれる“DESTRUCTiON”(日本語で「破壊」を意味する単語)のとおり、“破壊”をテーマに作られたアルバムとなっています。
全14曲収録とフルアルバムらしくボリューミーで、メンバー作詞の楽曲、タイアップソングも多く収録されており、非常に聴きごたえのある一枚です。
今回は、さまざまな解釈の”破壊”が楽しめるアルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』について概要や、全収録曲のもつ魅力をそれぞれ紹介します。
▼あわせて読みたい!
目次
最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』について
2021年8月4日に発売された最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』は、BiSHのメジャー4枚目となるフルアルバム。
ケースにヒビ割れの特殊加工を施した”破壊盤”のCDが話題で、“破壊盤”用のCMも作られています。
待望の4枚目フルアルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』とは一体どんなアルバムなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
“破壊”をテーマにしたアルバム
8月4日にリリースされたBiSHの最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』は、“破壊”(destruction)をテーマに作られています。
アルバムの形態は、以下の全4形態を展開。
- CD盤…楽曲収録のCDのみ(いわゆる通常盤)
- 破壊盤…CDケースにヒビ割れの特殊加工が施され、メンバー1名の直筆サイン入り
- DVD盤…MTVによるアコースティックライブプログラム”MTV Unplugged”収録のDVD付き
- 初回生産限定盤…”MTV Unplugged”に加え、出演時の裏話が聞けるオーディオコメンタリーも収録のBlu-ray+100ページにわたるボリューム満点のフォトブック特典
特典がそれぞれ豪華で、アルバム発売を待ち望んでいた清掃員にとってはたまらないですね。
以上4形態の中でとくに注目すべきなのは、破壊盤です。
特殊加工により本作『GOiNG TO DESTRUCTiON』のコンセプトである“破壊”を可視化しており、BiSHらしさ溢れる斬新さが非常に魅力的。
破壊盤のヒビ割れは製品ごとに程度が異なり、仕上がりには個体差があるため、わずかな差によって世界に一枚だけのアルバムが完成します。
このヒビ割れは、CDの再生には影響しないのでご安心を。
メンバー作詞の楽曲に注目
アルバム収録の全14曲のうち、計6曲がメンバー作詞の楽曲となっています。
アイナ・ジ・エンド、アユニ・Dがともに2曲、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニーは1曲ずつ作詞を担当しました。
たとえばチッチ作詞の『狂う狂う』には、サビでド直球の下ネタを吐き捨てるBiSHの代表曲『NON TiE-UP』を彷彿とさせる狂気を感じ、一方でアユニ作詞の『STAR』からは、破壊とは縁遠い愛のあるメッセージを享受できるなど、各楽曲が”破壊”を捉える角度はさまざま。
メンバーそれぞれの個性が燦然と輝く歌詞に注目です。
豊富なタイアップ曲
アルバム収録の全14曲のうち、計6曲がタイアップソングとなっています。
『BE READY』とともに本アルバムのリード曲の位置付けとなる楽曲『STACKiNG』は、あの大人気漫画『キングダム』のアニメopテーマ曲です。
その他はスマホゲームのテーマソングやドラマ主題歌など、多種多様なタイアップを実現しており、現在の邦楽シーンにおける”BiSH”の存在の拡大を感じます。
『GOiNG TO DESTRUCTiON』収録全14曲解説
BiSHの最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』において、さまざまな角度から解釈が可能な”破壊”を表現しているのが、全14曲もの収録曲。
焦燥感から沸き立つ”破壊”の衝動、新たな創造のために行われる”破壊”、臆病な心に打ち勝てず「壊せない」と葛藤する様子など、曲ごとに異なる”破壊”の属性が、リスナーなりに噛み砕いて楽しめる約53分間に凝縮されています。
全14曲の収録曲について、作詞を担当したメンバー、タイアップの内容にも触れつつ各楽曲のもつ魅力を紹介するので、一曲目から順にお付き合いください。
1. CAN WE STiLL BE??
“破壊”がテーマのアルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』の一曲目を飾るのが、『CAN WE STiLL BE??』です。
トップバッターとして先陣を切っていく覚悟を示すかのようなメロディアスなバンドサウンドが、リスナーを”破壊”の音響空間へと誘います。
「焦燥感」がキーワードのように耳に刻まれる曲で、計4回登場する「焦燥感」のフレーズはすベて異なるメンバーが歌唱。
アイナから始まり、リンリン、アユニ、最後はチッチへと渡っていく「焦燥感」のバトンは聴きごたえバツグンで、リピート必至です。
2. in case…
『in case…』はTVアニメ『ゴジラS.P <シンギュラポイント>』のopテーマ曲です。
とにかく”攻め”の姿勢を貫いた重低音のサウンドや歌詞が脳内をかけ巡る、非常にアグレッシブな一曲。
サビにはラップも混ざり込む挑戦的な構成となっており、聴けば聴くほどクセになること間違いなし。
アイナ考案のゴジラを意識した振り付けが、曲本来のかっこよさを引き立てており、ライブ映えする楽曲の一つです。
3. STACKiNG
『GOiNG TO DESTRUCTiON』のリード曲的ポジションとなる『STACKiNG』は、TVアニメ『キングダム』第2クールのopテーマ曲です。
『キングダム』第1クールのopテーマ曲として昨年4月にリリースされた『TOMORROW』は、縦ノリを誘発する力強いバンドサウンドが印象に残る曲でしたが、それとは対照的にストリングスの効いたサウンドが特徴的。
戦乱の世を駆け抜ける確固たる意志や絆のようなものが、シンフォニックなメロディ、難解な歌詞によって表現されています。
詞を書いた竜宮時育さんは、後ほど紹介する本アルバム収録曲『I have no idea.』の作詞も行なっているだけでなく、BiSHの問題作『OTNK』を含む過去曲5つの作詞を担当するなど、BiSHを支える影の功労者です。
4. BE READY
『STACKiNG』と同様アルバムのリード曲に位置する『BE READY』は、スマホゲーム『ラグナドール』の主題歌。
『in case…』『STACKiNG』と2連続でアニソンが続きましたが、ここで一旦休憩。
BiSH楽曲としては珍しく、随所でユニゾンの歌唱が聴ける一曲となっており、各メンバーの声の重なりを楽しんでいると、瞬く間に最後のフレーズ「目にもの見せてやるから」を迎えます。
サビのフレーズ「白黒つけてやるから」には、眼前にそびえる壁を自らの手で破壊していこうとする決意が感じられ、このポジティブさはまさにリード曲としてふさわしい要素といえるでしょう。
5. ZENSHiN ZENREi
曲の長さが1分53秒と非常に短く、メジャーデビュー曲『DEAD MAN』を彷彿とさせ、”パンクロック”という言葉がまさにお似合いの『ZENSHiN ZENREi』。
吉岡里帆主演のフジテレビ系ドラマ『レンアイ漫画家』(2021年6月17日に放送終了)のopテーマ曲として、作品を盛り上げました。
常に全身全霊でパフォーマンスを行うBiSHを体現するかのような曲として、清掃員からも愛され続けていくこと間違いなしです。
6. NATURAL BORN LOVERS
『ZENSHiN ZENREi』が痛快なメロディを残していった直後に迎え入れる『NATURAL BORN LOVERS』は、アイナ・ジ・エンド作詞の楽曲です。
BiSHのメジャー5作目シングル『stereo future』を彷彿とさせる、壮大なストリングスをイントロから楽しめるのが魅力的。
最初のサビ頭では、アイナが放つ「苦しまないでよ」というフレーズの持つ力強さに胸を打たれます。
アウトロが非常に長いため、アウトロを聴いている間、まるで映画本編終了後のエンドロールに浸っているかのような気分を味わえるのも魅力の一つです。
7. I have no idea.
アルバムの折り返しに差し掛かるタイミングで迎える『I have no idea.』は、イントロからいきなり6人全員のユニゾンが耳に飛び込んでくるのが印象的な楽曲。
サビ直前、唐突にぶち込まれる「ちーんちんちんちんちんちーん」というフレーズが衝撃的で、頭にこびりついて離れなくなります。
間奏では「いいたいことがない」というフレーズをひたすら繰り返すなど、奇怪に感じる要素が多い曲のため、可能な限り頭を空っぽにした状態で聴くのがおすすめ。
8. WiTH YOU
「ちーんちんちんちんちんちーん」というフレーズが頭から離れない状態で迎える『WiTH YOU』は、メロディー、歌詞、タイトルすべてから優しさを感じる、モモコグミカンパニー作詞の楽曲です。
「WoW Oh Oh Oh〜」と全員で歌うユニゾンが合唱団のようで非常に聴き心地が良く、思わずため息を漏らしてしまいます。
作詞をしたモモコは「今までのBiSHを振り返って歌詞を書いた」とインタビューで語っており、ライブの終盤にメンバー全員で肩を組んで歌っている情景が、容易に想像できる一曲です。
9. 狂う狂う
異国情緒漂うクセのあるイントロで幕が開ける『狂う狂う』は、セントチヒロ・チッチ作詞の楽曲。
『OTNK』に並ぶBiSHの問題作『NON TiE-UP』を彷彿とさせるサビのメロディーに、型にはまらない自由な歌詞がたまらなくクセになります。
「たまには少しハメを外して狂ってもいいんだ」
そう思わせてくれるような、聴くだけで楽観的になれる一曲です。
10. MY WAY
「僕は僕のやり方で 誰も邪魔できないよ」というサビのフレーズが、己の決めた道(MY WAY)を信じて突き進む勇気を与えてくれる楽曲『MY WAY』。
静かで落ち着きのあるAメロからBメロに差し掛かる途端、急にラップ調の歌唱が始まるのが特徴的です。
『in case…』で展開されたラップとはまた様子の異なるノリとなっており、BiSH特有の歌唱表現の幅広さを改めて実感します。
曲中で4回言い放たれる「わがままなままでいいじゃん」という言葉は、わがままでいることを躊躇い、一度決めた道を貫けないでいる人たちの背中をきっと押してくれるはずです。
11. Beginning, End and Beginning
洋楽ロックを彷彿とさせる、重低音でエネルギッシュなイントロで心揺さぶられる『Beginning, End and Beginning』は、アユニ・Dが作詞を行なった楽曲。
地響きのように唸る重低音のサウンドからは直感的に”破壊”を連想しますが、アユニの書いたアグレッシブな歌詞をしっかり頭に入れた上で聴いてみるとどうでしょう。
きっと“創造”の二文字が頭に浮かぶような感覚に襲われるはずです。
本楽曲は、サウンド的には最も”破壊”に近しいのにもかかわらず、“破壊”以外のインスピレーションも湧き出てくる面白みのある仕上がりとなっています。
12. STORY OF DUTY
モバイルゲーム『Call of Duty:Mobile』のタイアップソング『STORY OF DUTY』は、アイナ・ジ・エンド作詞の楽曲です。
お気づきかと思いますが、ゲーム表題『Call of Duty』にあやかり、曲のタイトルにも DUTY(日本語で「義務」や「任務」を表す単語)が付けられています。
格闘ゲームの戦闘シーンでBGMとしてかかりそうな打ち込み音が乱立する本楽曲について、作詞を担当したアイナは「『Call of Duty』に出てくる臨場感ある戦場をイメージしてます」と語っており、曲のアレンジ、歌詞の両方で『Call of Duty』へのリスペクトが前面に表れているようです。
MVではメンバーそれぞれのド派手な必殺技が炸裂する様子が見られるので、気になる人はぜひご覧あれ。
13. BROKEN
『BROKEN』を作曲したのは、BiSHの過去曲『Primitive』『My distinction』の作曲にも携わった井口イチロウさん。
過去2曲とも”静”と”動”の緩急が心地良いエモーショナルなサウンドが魅力的で、『BROKEN』のサウンドにも同様のエモーショナルさが表れています。
「壊せないんだ」「壊れちゃうのが怖いんだ」など、誰もが持っているはずの普段言葉にできない素直な畏怖を吐露するように歌で表現してくれる、代弁者のような楽曲です。
本アルバム中である意味最も人間臭く、多数の人が共感しやすい楽曲かもしれません。
14. STAR
“破壊”がテーマのアルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』を締め括る楽曲は、アユニ・D作詞の『STAR』です。
ハシヤスメ・アツコ主演の読売テレビドラマ『ボクとツチノ娘の1ヶ月』(2021年3月26日に放送終了)の主題歌。
作詞したアユニ自身が「私らしくないほどくさい愛のうた」と語る、”空(そら)”のイメージがぴったりな本楽曲は、聴いているだけで自然と頭上を見上げてしまうような力を持っています。
ラストサビで放たれるリンリンの熱のこもったソロパートには、リスナーをハッとさせるような力強さがあり、まさに“圧巻”の一言です。
最後に
BiSHの最新アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』は、”破壊”を単なる”モノを壊す行為”として捉えるのが馬鹿馬鹿しく感じてしまうほど、楽曲ごとにさまざまな角度から”破壊”を捉えている魅力的な作品です。
話題のタイアップソングはもちろん、メンバー作詞の楽曲にも注目。
丸々聴くことでやっと完成するアルバムとなっているので、一曲目の『CAN WE STiLL BE??』から最後の『STAR』まで、ぜひ聴いてみてくださいね!
▼あわせて読みたい!