「残響散歌」- TVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」の主題歌に込められた意味とは…?

「残響散歌」- TVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」の主題歌に込められた意味とは…?

2021年12月から放送され、社会現象を巻き起こすほどの人気を博しているTVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」。

2019年4月から放送された「鬼滅の刃 竈門炭治郎立志編」、劇場アニメ「鬼滅の刃 無限列車編」に続くストーリーです。

そんなアニメの世界を強く反映しているのが、Aimerが歌唱する主題歌である「残響散歌」。

今回は、TVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」オープニングテーマであるAimer「残響散歌」についてフルサイズで詳しく解説します。

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Aimerとは?


TVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」オープニングテーマ「残響散歌」を歌唱しているのは歌手・Aimer。読み方は「エメ」です。

本名や生年月日、身長や血液型も公表していないミステリアスな存在である彼女。Aimerはフランス語で「愛する」「好む」を意味する動詞です。Aimer自身の長年の愛称でもあり、ダブルミーニングとしてこの名前を付けたといいます。

楽しく明るい曲ですら、悲しい歌に変えてしまうような唯一無二の歌声が音楽プロデューサー・玉井健二の目にとまり、2011年に音楽活動を開始しました。一度聴いたら忘れられない歌声で、数多くのアニメ・ドラマ主題歌を歌唱しています。「残響散歌」はAimerの記念すべき20作目のシングルとなりました。

「残響散歌」の意味

「残響」は、「音が停止した後も音が響いて聞こえる現象」のこと。「散歌」は造語ですが、仏教において誰かの供養のために花を散布することを指す「散華」の意味を持つのではないかと言われています。

「散華」は、「若くして亡くなる」という意味でも使われる言葉。鬼滅の刃は、鬼と戦っていく中で若くして亡くなる隊士も大勢います。「鬼滅の刃 無限列車編」では、炎柱・煉獄杏寿郎の最期が描かれました。「残響散歌」という言葉にはそういった仲間の想いが今なお生きている者の胸に響いているという意味が込められていると捉えられます。

「鬼滅の刃 遊郭編」の中心人物は音柱・宇髄天元。そして、物語の舞台が、琵琶の音が響く遊郭ということもあり、音をキーワードとしたタイトルとなっているのではないでしょうか。

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歌詞解説

戦いの始まりを呼び起こす1番Aメロ


誰が袖に咲く幻花(げんか)
ただ そこに藍(あい)を落とした
派手に色を溶かす夜に 銀朱の月を添えて

「鬼滅の刃 遊郭編」の舞台は吉原遊郭。「袖に咲く幻花」という言葉が、花魁の着物の袖を彷彿とさせます。ただ、そこにあるのは「袖に咲く花」ではなく「袖に咲く幻花」。「幻花」は、一日限りの夢を魅せる花魁だと捉えることもできるでしょう。

次に出てくるのは「藍を落とす」という言葉。MVの冒頭に、一筋の涙がこぼれる描写があることから、これは涙が一粒着物の袖に落ちた表現ではないでしょうか。

「派手に色を溶かす夜」「銀朱の月」から連想するのは、「鬼滅の刃 遊郭編」の中心人物である音柱・宇髄天元。派手なものが好きで、「ド派手」という言葉をよく使い、自分のことを「派手を司る神」と言うくらいの派手好きな彼。さらに、宇髄天元は、銀色の髪色と朱色の瞳をしていることから月=宇髄天元だと考えられます。

着飾った着物姿の花魁が、着物の袖に涙を落とす真っ暗な夜。そこに現れた音柱・宇髄天元が遊郭に潜む鬼を倒し、暗闇を照らしてくれるという場面が頭に浮かびます。

挫折と悲しみを越えて戦う隊士の姿が描かれた1番Bメロ


転がるように風を切って
躓くごとに強くなった
光も痛みも怒りも全部 抱きしめて
選ばれなければ 選べばいい

「転がるように風を切って 躓くごとに強くなった」からは、多くの戦いを経験し、挫折を乗り越えながら成長していく隊士の姿が想像できます。

炎柱・煉獄杏寿郎の死を受けて、自分の弱さに打ちひしがれた主人公・竈門炭治郎。発熱した状態だと体の調子がいいと気づき、体調不良の中修行を重ねたり、目から血が出てしまうくらい体の負担が大きい大技を連発したりと、強くなるための努力を惜しまない人物です。

鬼に襲われている人を助け、「ありがとう」と感謝される、体と心の痛み、無差別に人を襲い、幸せを奪っていく鬼に対しての怒り、そのすべてを抱きしめて歩んでいく主人公・竈門炭治郎をはじめとする隊士たちの姿が描かれているのではないでしょうか。

戦いの勢いがピークに達する1番サビ


声よ 轟け 夜のその向こうへ
涙で滲んでた あんなに遠くの景色まで響き渡れ
何を奏でて? 誰に届けたくて?
不確かなままでいい
どんなに暗い感情も どんなに長い葛藤も
歌と散れ 残響

鬼が人を襲うのは夜。その理由は、「日光を浴びると鬼は死んでしまうから」です。そのため、鬼殺隊はいつも鬼に有利な夜の中で戦っています。夜の向こうにあるのは朝。「声よ轟け夜のその向こうへ」という歌詞からは、鬼がいない朝に向かって戦いを乗り越える竈門炭治郎たちの姿が想像できるでしょう。

「あんなに遠くの景色」が指すのは、恐らく、「昔の幸せな思い出」や「未来の鬼がいない世界」。今は涙で滲んでしまってよく見えないけれど、声と想いをその場所まで届けたいという気持ちを汲み取ることができます。

疑問形の歌詞のように「何を奏でて?誰に届けたくて?」と自問自答する隊士たちも、その答えを見つける時間も与えずに人を襲い続ける鬼と戦わなくてはなりません。今は答えがわからないけれど、とにかく戦え、とにかく人を守れと、様々な葛藤を抱えて刀を持つ鬼殺隊の姿が浮かびます。

サビの最後の歌詞「歌と散れ 残響」は、Aimerのハスキーボイスが背中をトンと押してくれるような勢いがあります。様々な想いを抱え、もう会えなくなった人たちの想いを胸に戦い続ける鬼殺隊に対してのAimerなりのエールなのかもしれません。

MEMO

鬼殺隊とは、刀を持って鬼と戦う隊士を指します。

鬼目線の歌詞ともとれる2番AメロBメロ


ただ一人舞う千夜
違えない帯(たい)を結べば
派手な色も負かす様に 深紅の香(か)こそあはれ

この先どんなつらい時も
口先よりも胸を張って
抱いた夢の灯りを全部 辿るだけ
逃げ出すため ここまで来たんじゃないだろ?

選ばれなければ 選べばいい

2番のAメロにあたるこの部分。アニメ内では1番しか流れませんが、2番の歌詞にも興味深い点が数多く散りばめられています。

2番でも鬼と戦う隊士たちの強い決意、どんな時も胸を張って前を向いて、鬼のいない世界をつくるという夢への邁進と捉えることができますが、見方を変えれば、2番は鬼目線の歌詞として見ることもできます。

「数多くの夜」を表す「千夜」という言葉。蕨姫花魁という名前で遊郭に住み、多くの人間を食べていた上弦の陸・堕姫は、100年以上前から存在していました。その長い間、一人で夜の遊郭を舞い、着物の帯に人を取り込んで多くの人間を喰っていた堕姫の姿を思い起こさせます。

「派手な色も負かす様に 深紅の香こそあはれ」からは、音柱・宇髄天元の派手さを喰ってしまうくらいに口紅と血で赤く染まった堕姫のニヤリと笑う唇を想像することもできます。

長年鬼として孤独ながらも強く生きてきた彼女ですが、鬼の始祖である鬼舞辻無惨にはデレデレで、気に入られようと奮闘する場面も。堕姫の「抱いた夢」が鬼舞辻無惨に褒められることだと考えると、その夢を叶えるためにつらいときでも胸を張り、鬼殺隊と戦ってきた堕姫の姿が浮かびます。

「逃げ出すため ここまで来たんじゃないだろ?」は、上弦の陸にまで上り詰めた自分自身への言葉だと捉えることもできますし、自分を倒しに来た鬼殺隊に向かって吐いた挑発の意味の言葉なのかもしれません。

MEMO

「上弦の陸」とは、堕姫の役職的なもの。鬼の始祖・鬼舞辻無惨に直接仕える強い鬼12体を十二鬼月、その中でも鬼上位6体を「上弦の鬼」、下位6体を「下弦の鬼」と呼びます。堕姫は、上弦の鬼の中で6番目の強さを持ち、鬼殺隊の柱を何人も倒してきました。

決意と想いを胸に戦い続ける姿が浮かぶ2番サビ


声をからして 燃える花のように
闇間を照らしたら
曖昧過ぎる正解も譜面にして
夜を数えて朝を描く様な
鮮やかな音(ね)を鳴らす
どんなに深い後悔も どんなに高い限界も
掻き消して 残響

曲の終盤となる2番のサビ。「譜面」「鮮やかな音」など、ここにも音柱・宇髄天元を彷彿とさせる言葉が散りばめられています。

声を枯らすほど泣いていても、胸の中で響く大切な人の声が闇を照らしてくれ、見えてくる道。どれが正解かわからない状況でも、鬼がいない朝を迎えるために戦い続ける鬼殺隊の姿を映し出す歌詞です。

音柱・宇髄天元は派手な装飾を付けており、動くとシャララと音が鳴ります。そんな鮮やかな音と共に、後悔を抱え、限界を超えて続けられる戦いが目に浮かびます。

CD発売後の反響

ビルボード・ジャパンソングスチャートで快挙達成

「残響散歌」は2021年12月15日公開のビルボード・ジャパンソングスチャートにてダウンロード1位、ストリーミング再生1位となりました。さらに、その翌週はダウンロード1位、ストリーミング再生1位、YouTube1位の3冠を達成しました。

オリコン週間合算シングルランキング1位獲得

2022年1月21日発表のCDの売上枚数、デジタルダウンロードのDL数、ストリーミングの再生数を合計した「最新オリコン週間合算シングルランキング」で1位を獲得しました。

「残響散歌」MVが再生回数2700万回突破

Youtubeで公開されている「残響散歌」のMVが、公開から40日で再生回数2700万回を突破しています。

まとめ

TVアニメ「鬼滅の刃 遊郭編」のオープニングテーマであるAimer「残響散歌」を解説しました。

アニメの舞台が遊郭ということもあり、どこか妖しい華やかさが漂う一曲。アニメの内容が色濃く反映されており、歌詞をじっくり読むとまた新たな意味が見えてくる興味深さがあります。

アニメを見る時は、ぜひ楽曲にも注目してみてくださいね。

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