tricotは2010年に結成された、女性3人と男性1人による4人組のロックバンドです。
高い演奏力とビビッドな躍動感で世界中の音楽通を唸らせてきたその音楽性は、デビューから現在に至るまで孤高の存在感を放ちつづけています。
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目次
tricotの魅力とは?
tricotの魅力は何といってもJ-POP的でメロディアスなボーカルと、変拍子を多用したスリリングな楽曲展開でしょう。
ドライな詩情が冴えわたる歌詞も相まって、その楽曲にはロックバンドとしての凄みが漂っています。
また、日本では邦ロックとして捉えられている一方で、海外ではマスロックというジャンルに位置付けられているのも特徴です。
本記事ではtricotの代表曲の中でも、
「エモーショナルなサウンドに心を揺さぶられたい!」
「スリル満点の疾走感を楽しみたい!」
等の観点から、国内外で人気を集めるtricotの魅力を堪能できる名曲の数々をご紹介します。
また、tricotが好きな方にオススメしたい海外のマスロックバンドもあわせて掲載しています。
tricotの代表曲10選:ダイナミックな疾走感とスリリングな迫力
TOKYO VAMPIRE HOTEL
『TOKYO VAMPIRE HOTEL』の魅力は、ヒリヒリした疾走感にあります。
変拍子を駆使した独創的なリズム、ポップなメロディライン、現代社会の虚ろさを歌うような歌詞が混然一体となって、アクセル全開で駆け抜けていくようなアグレッシブさを楽曲に与えています。
また焦燥感が漂うAメロ、控えめなBメロ、滑らかなサビへと進むメリハリの効いた展開は聴く側の感情をダイナミックに揺さぶり、曲の世界へ引き込む重要なファクターとなっています。
バンドのあらゆる魅力が高水準でまとまっている代表曲と言えるでしょう。
※3rdアルバム『3』に収録されています。
※Amazonプライム・ビデオで配信された『東京ヴァンパイアホテル』のオープニングテーマになっています。
おちゃんせんすぅす
『おちゃんせんすぅす』は2013年にBBC Radio 6 Musicで取り上げられたことにより、tricotの海外での躍進に大きく貢献した楽曲です。
その特長は摩訶不思議なポップセンスが織りなす、中毒性のあるサウンドにあります。
ドラムンベースの影響を感じさせるテクニカルなドラムス、軽やかに飛び交うギターとベース、ひたすら「おちゃんせんすぅす」と繰り返す艶みのあるボーカルが溶け合いながら、陶酔感のあるサウンドを醸成しています。
浮遊感が漂うイントロから始まり、拍子の転換を繰り返しながら徐々にアグレッシブなロックサウンドに展開していく構成には、スリルだけでなくインテリジェンスも感じます。
※1stアルバム『THE』に収録されています。
99.974℃
『99.974℃』の魅力は、tricotの楽曲のなかでも一際ハイボルテージな熱量でしょう。
意表をつくリズム展開、アグレッシブなギター、激情的なボーカルがぶつかり合い、血がたぎるような衝動を生み出しています。
最初から最後までその熱さが冷めることはなく、ライブでの人気曲にもなっています。
※2013年にリリースされた1stシングルで、1stアルバム『THE』にも収録されています。
E
AメロBメロの抑制された熱量とサビでの爆発が、『E』の特色でしょう。
アグレッシブに研ぎ澄まされたビート、鋭利なギターリフ、囁くようなボーカルによるヒヤリとした緊張感が、サビに突入すると抑え込んでいたものが一気に吹き出すような盛り上がりへ発展します。
歌詞には心の混乱が描かれていますが弱々しさはなく、物怖じせずに突き進んでいく気迫に心を惹かれます。
バンドの代表曲のなかでも、tricotの媚びないかっこよさを一際分かりやすく体現しているナンバーです。
※2ndアルバムの『AND』に収録されています。
18, 19
スリリングでアグレッシブ、エモーショナルで迫力全開、独創的な疾走感。
そんなtricotの真髄とも言うべきエッセンスに、悲しみをプラスしたのが『18, 19』でしょう。
ストイックなリズム感覚、タイトで金属質なギター、胸をかきむしるような感情を歌うボーカル。
ヒリヒリした緊張感ともの悲しい雰囲気を宿したまま楽曲は展開していき、終わっていきます。
荒涼とした余韻を後に残す、激しくも物憂いナンバーと言えるでしょう。
※3rdアルバム『3』に収録されています。
ブームに乗って
『ブームに乗って』の特徴を一言で表すならば、「浮遊感が漂うインディーロック」です。
ゆらゆらとしたビート感覚、天衣無縫に絡み合うギターとベース、耳なじみの良いボーカルのメロディラインが空間的な奥行きを演出しています。
突如としてリズムが転換する局面では、無重力空間で翻弄されているような歌詞とリンクした感覚を味わえるのも印象的です。
tricotのユニークなポップセンスが発揮されている楽曲と言えるでしょう。
※2018年にリリースされた5thシングル『potage』に収録されています。
※メジャー1stアルバム『真っ黒』にもボーナストラックとして収録されています。
箱
『箱』は、アフロファンクの影響を昇華している異色作です。
パーカッションを中心にしたプリミティブなグルーヴ、エッジの効いたギター、ドライな言葉を連ねるボーカルがトライバルな陶酔感を創り出しています。
かと思えば、邦ロック的でエモーショナルなサウンドがふっと顔を出したりもする、既存の音楽的枠組みにとらわれない独創性を秘めた楽曲と言えるでしょう。
※メジャー2ndアルバム『10』に収録されています。
悪戯
疾走感のなかにセンチメンタルな柔らかさを漂わせているのが、『悪戯』の素敵なところです。
メランコリックなギターリフとボーカルがキャッチーさを生み出す一方で、さらっと織り込まれた変拍子が独特のリズム感覚を楽曲に与えています。
瑞々しい躍動感と肩肘の張っていない自然体の雰囲気が両立し、邦ロック的な魅力がしなやかに発揮されています。
確かな演奏技術と天性のポップセンスが一際高い水準で結晶化した、近年のtricot屈指の代表曲と言えるでしょう。
※メジャー2ndアルバム『10』に収録されています。
tricotとマスロックバンド:世界への調性と個性
tricotは2013年頃からマスロックバンドとして海外メディアで紹介されることにより、国境を越えて人気を集めるようになりました。
(興味深いことに、tricotのメンバーはマスロックに詳しくないそうです)
マスロックとは?
高い演奏技術、変拍子を用いた精緻な楽曲構成、アグレッシブな演奏、エモ・ハードコア・ポストロック等との類似性を特徴とするジャンル。なお、ボーカルは必須要件ではない。
本記事ではtricotが海外で受け入れられた理由を探るべく、マスロックのなかでもtricotと共通点が多いバンドをピックアップして紹介します。
Delta Sleep
Delta Sleepはtricotと同じく2010年に結成されたUKのバンドです。
テクニカルな演奏、意表を突く鋭利なリズム展開、エモーショナルで激しいサウンドなどtricotと似ている部分もありますが、勢いが魅力的なtricotに対してDelta Sleepの方がやや内省的な印象を受けます。
代表曲『Lake Sprinkle Sprankle』も激しさのなかに繊細さを宿しています。
Marnie Stern
女性アーティストでは、まずアメリカのMarnie Sternの名前を挙げるべきでしょう。
Marnie Sternのハイテンションでテクニカルなギターが凄腕のドラムスがぶつかりあって、狂騒的でハードコアなサウンドを創り出しています。
ノイジーなのにキュートでポップ、その中毒性の高さに惹き付けられます。
This Town Needs Guns(TTNG)
This Town Needs Guns(TTNG)は2004年に結成されたバンドで、UKマスロックシーンの筆頭株と言えるでしょう。
優美な旋律と激情的な爆発が行き来する展開を中心にして、楽曲は進んでいきます。
テクニカルな演奏によって純朴な透明感に満ちたサウンドを紡いでおり、内省的な優しさが印象的です。
特に初期の代表曲『26 Is Dancier Than 4』は必聴です。
Ponytail
Ponytailは2005年にアメリカで結成されたバンドです。
エキセントリックな歌い方をする女性ボーカルはもちろんですが、NUMBER GIRLの影響を受けたギタリストたちによるエッジの効いたサウンドも強烈に個性的です。
感性のままに突き進むハイテンションなフリーダムさとカオティックな爆発力が、心躍るような高揚感を楽曲に与えています。
比較:tricotのオリジナリティ
海外のマスロック、いかがでしたか。
tricotと似ている面は確かにある、でも違う面も確かに存在している。
そんな印象を受けるのではないでしょうか。
tricotは欧米のシーンにとって完全に異質な存在ではなかったけれど、J-POP的なメロディなど稀少価値のあるオリジナリティを持つバンドでもあったのでしょう。
tricotが海外で人気を集めた背景には、彼等の音楽的多様性があったのかもしれません。
まとめ
本記事ではtricotの代表曲と、tricotと似た音楽性のマスロックバンドを紹介しました。
世界中から愛されるtricotの魅力、その一端でもお伝えできたのなら幸いです。
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