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ポップしなないでの人気曲
魔法使いのマキちゃん
2017年にMVが公開、1stフルアルバムでは1曲目に収録されている「魔法使いのマキちゃん」。
少し寂しげで可愛らしいピアノの旋律から始まったかと思えば、「マキちゃんは実家に帰って魔法使いになったらしい」とパンチの効いた言葉が飛び出します。
甘い歌声や脱力感のあるチャーミングなラップは小気味良いビートに乗せられ、聴き手の身体の中にすっと入り込んできます。
そのようなライトでリズミカルなサウンドと、伸び伸びとした歌声やピアノのパワフルなサウンドを自在に行き来しながら、幻想的な世界観を広げていくこの楽曲。
「優柔不断な僕らは/背中を押されて旅に出よう」
漠然とした寂しさを漂わせながらも、ふわりと前向きな気持ちを運んできてくれるかのような心地よさが魅力です。
事実や世界は変えることができないけれど、自分の見ているもの、考えていることと向き合うことで、いい方向に進んでいけるかもしれない。
そういった彼らの意図を、しっかりと感じ取ることができる楽曲になっています。
MVにはアイドルの和田輪が出演。
公開以降、再生回数は伸び続け、現在では総再生数120万回を誇る程の人気ぶりです。
この楽曲は、ポップしなないでの代表曲と言えるでしょう。
Creation
「Creation」は2019年6月に配信シングルとしてリリースされた楽曲。
彼らは、「魔法使いのマキちゃん」を最初のターニングポイントだとすると、作詞作曲にもアウトプットにも変化があったこの楽曲が第2のターニングポイントだと語っています。
結成当初は華やかなものを目指して作曲していましたが、デトロイトのハウスミュージックの影響もあり、リズムも言葉もシンプルなものを好むようになったというかわむら。
この楽曲は、4つ打ちのドラムをベースにした構造にピアノを纏わせ、彼らならではのポップスを追求してつくられています。
ピアノの音数は少なく、ドラムもタイトでシンプル。
その分、要所要所のアレンジは効果的に光り、言葉ひとつひとつも印象的に響きます。
かめがいの放つ歌声も、表面はキュートでありながらも内面には芯を感じさせ、聴き手の奥深いところにまで優しい針を刺すかのようです。
この楽曲で、かわむらは自分の中のあらゆる気持ちや孤独を見つめ直し、素直に吐き出したと言います。
本来なら表に出したくないような感情を言語化し、それを見事にポジディブな音楽として昇華。
そしてかめがいは、そういった傷や悲しみを全身で受け止め、時に語りかけるように、時に劇的に歌い上げるのです。
「私の国ではとっても綺麗な桜が咲くから」
苦しいことがあっても春は必ず来ると感じさせてくれるこの歌詞に、涙する人もいることでしょう。
かわむらは、音楽の中で描かれる季節と、曲を聴く人が過ごす季節という2つの時間の存在に美学を感じると語っています。
そんな彼の表現する季節の移り変わりは、切なく、しかし温かみを帯びていて、しみじみと日本の趣を感じさせます。
「Creation」は、何回でも、何年先にも聞き返したくなるような、普遍的な魅力に溢れた楽曲です。
かぞえうた(『シナぷしゅ』2021年10月のうた)
「かぞえうた」は、2021年、テレビ東京の0〜2歳児向け番組『シナぷしゅ』の10月のうたとして書き下ろされた楽曲です。
同番組は、民放初の0〜2歳児向け番組。
赤ちゃんの脳の発達に繋がりつつ、親の肩の力も抜いてくれるような動画コンテンツの展開を掲げています。
ひとつひとつの言葉をハッキリと聞き取ることができるという、かめがいの歌声の特徴が有効に発揮された「かぞえうた」。
数字や曜日、干支などがリズミカルに数えられるフレーズや、繰り返される「わたしここでかぞえていたい」というメロディは、一聴しただけで覚えてしまう程キャッチー。
耳に残る言葉やメロディに加え、聴き手を癒すような朗らかな曲調の楽曲は、こどもが喜ぶだけでなく、大人からも大きな反響を呼ぶことになりました。
「かぞえうた」は、2022年8月にリリースされた『シナぷしゅ』のサウンドドラック「シナぷしゅのうた 3」に収録されています。
彼らのクリエイティビティの幅広さや、年齢問わずに愛されるようなポップセンスが感じられる楽曲です。
最後に
摩訶不思議な印象を持ちながら、根底には聴き手の人生をも肯定してくれるような優しさを備えているポップしなないで。
2人はこれからも、私たちをまだ見ぬ世界へ連れて行ってくれることでしょう。