そよ風のような軽やかさを兼ね備え、時には突風のごとく時代のど真ん中を吹き抜ける藤井風の音楽。
音楽家としての彼の才能は、ももクロなどの楽曲を数多く手掛ける超有名音楽クリエイター・ヒャダインが「ここ数十年で一番天才!」と大絶賛するなど、多方面から多大な評価を受けています。
岡山出身ならではの一人称「ワシ」などの方言での歌唱や、岡山弁でダイレクトに書かれた歌詞が「これまでにない」と注目され、天性のピアノセンスと相まってとんでもない楽曲、パフォーマンスを量産し続ける藤井風。
今回はそんな藤井風が今年の3月にリリースした楽曲『旅路』の詳細、歌詞の解釈、MVの内容について解説していきます。
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目次
藤井風の『旅路』とは?
2021年3月1日に配信リリースされた藤井風の『旅路』。
人生という果てしないテーマを『旅路』に例えて、彼の甘く繊細な歌声で歌い上げた曲です。
発売日である3月1日には、テレビ朝日をはじめとしたANN系列『報道ステーション』に藤井風本人が出演し、この曲を生のピアノ演奏で披露しています。
リリースから半年ほど経過した『旅路』ですが、一体どのような曲なのでしょうか。タイアップや同曲のMVなどに注目して見ていきましょう。
ドラマ『にじいろカルテ』の主題歌
藤井風が3月にリリースした『旅路』は、テレビ朝日系ドラマ『にじいろカルテ』の主題歌となっています。
2021年1月21日から放送開始され、3月18日に最終回を迎えた『にじいろカルテ』は、実力派カメレオン女優・高畑充希主演の医療ドラマ。
医療ドラマといえど学術的な要素の介入は少なく、それよりも個性豊かな登場人物たちの人間模様に魅せられるヒューマンドラマとして、視聴者の心に安らぎを与えました。
藤井風がドラマ主題歌を担当したのは本作が初めてで、そもそもタイアップ自体が初ということもあり、いくら天才とはいえ『旅路』の完成は一筋縄ではいかなかったそう。
彼が実際にドラマの撮影現場に足を運び、主演の高畑充希を中心に大勢のキャストと交流を深める中で、初のタイアップに苦労しながらも自信を持って完成させた主題歌こそが『旅路』なのです。
藤井風は「主演の高畑充希さんの、あまりにナチュラルな、演技にいつ入ったのか分からないくらいの演技にはすごく感銘を受けました。だから、わしももっと自然で、自分の内側から勝手に溢れてくるような、あったかい音楽を添えられたらなと思いました。」と、コメントを残しています。
藤井風の地元・岡山で撮影されたMV
藤井風が「こんな風にMV撮りたいな。。そんな風に撮れました。」と語る『旅路』のMVは、自身の出身地である岡山県里庄町で撮影されました。
MVは藤井風の公式YouTubeチャンネルにアップされており、2021年9月11日現在、その再生数は830万回と、1000万回も視野に入る驚異的な数字を叩き出しています。
MVの監督は、BiSHや日向坂46など、その他数多くの有名アーティストのMVを手掛けるdutch_tokyoこと山田健人。
レトロなフィルムカメラで撮られたかのようなノスタルジー漂う映像が魅力で、MVが終わりに向かうにつれて徐々に日が暮れていく様子は、より一層の“エモさ”を演出しています。
藤井風が母校で渡り廊下を駆け抜けたり、寝そべってみたり、下駄箱の前で黄昏てみたりするシーンは、視聴者に対して彼の過ごした学生時代を想像させ、まるで彼の旅路の1ページに入り込んだかのような錯覚を引き起こします。
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岡山弁が一切登場しない
『何なんw』『もうええわ』など、強烈な岡山弁が炸裂しまくる曲を世に多く出してきた藤井風ですが、この『旅路』では、クセのある岡山弁が一切顔を出しません。
『旅路』はすべて標準語で歌唱されており、『何なんw』を歌うシンガーソングライターと同一人物が歌っている、という事実を疑いたくなるほどです。
自身の持ち味である岡山弁をあえてシャットアウトすることにより、『旅路』に込めた温かみのあるメッセージを、屈折なくリスナーに届けようとしているのかもしれませんね。
『旅路』の歌詞に込められたメッセージ
人生という果てしないテーマを旅路に例えた『旅路』の魅力は、ノスタルジックで優しさ溢れるメロディーだけでなく、「生きていれば色々ある」「人生で経験するすべてに意味がある」と歌った、前向きで温かみのある歌詞に詰まっています。
ここでは、そんな『旅路』の歌詞がリスナーに投げかけるメッセージについて、個人的な解釈も含めて解説します。
幼き日々の失敗は、未来の笑い話
あの日のことは忘れてね
幼すぎて知らなかった
恥ずかしくて消えたいけど
もう大丈夫 旅路は続く
曲の冒頭では、思わず顔を覆いたくなる若かりし頃の失敗に触れつつ、その失敗は恥じることのない貴重な経験だ、とリスナーに寄り添うように歌う藤井風。
「学生時代なんてものは、長い長い人生という旅路においてスタートラインに居るも同然で、そこでいくら失敗をしようと気にする必要はない。笑い話にしてやろうではないか。」という具合に、ポジティブなメッセージを感じ取れます。
すべてを愛せる自分で在るために
あーあ
僕らはまだ先の長い旅の中で
誰かを愛したり 忘れたり
色々あるけどあーあ
いつの間にかこの日さえも懐かしんで
全てを笑うだろう
全てを愛すだろう
サビ部分では、「たとえどんな旅路を辿ろうと、歩みを進めていく過程で得た経験や、その時々に抱いた感情すべてを愛し、懐かしみ、笑えるフィナーレを誰もが迎えられるはずだ」と歌っています。
とはいえ、すべてを愛するというのは容易いことではなく、器が余程大きくない限り、キャパオーバーしてしまうでしょう。
器の大きい人間の前提として挙げられる特徴は、心に余裕があり、常に“優しさ”に満ちていること。
サビの歌詞は「旅がいつか終わりを迎える時、辿ってきた路(みち)の全てを愛せる自分で居られるように、常に”優しさ”を持って生きていこう」と、リスナーに対して“優しさ”の大切さを暗示しているようにも思えます。
愛を与え合える人の存在
あーあ
これからまた色んな愛を受けとって
あなたに返すだろう
永遠なる光のなか
全てを愛すだろう
曲終わりのサビでは、先程のサビの歌詞とは異なり、<色んな愛を受けとって あなたに返すだろう>と歌っています。
この歌詞が表現しているのは、愛はたった1人の世界では生まれないという事実。
自分以外の大切な誰かが存在することで愛が誕生し、ギブアンドテイクの関係性が構築されていく。
愛を与え合いたいと思える大切な人の存在があってこそ、最高のフィナーレへと歩みを進めていけるのではないでしょうか。
藤井風最新情報
YouTubeで無料配信ライブを開催
“日産スタジアムの素晴らしい天然芝の上に、ピアノと藤井風だけ”という斬新なコンセプトの元、9月4日に無料配信ライブ『Fujii Kaze “Free” Live 2021』が開催されました。
疾走感溢れる『きらり』から始まり、ライブ終盤でエモーショナルな『旅路』からバトンを受けたキラーチューン『何なんw』がトリを務める本ライブは、彼のパフォーマンスを全方位から楽しめます。
9月11日現在もYouTube上にアーカイブとして残っているので、「見逃した…」という方はぜひ、藤井風の公式YouTubeチャンネルを訪ねてみてはいかがでしょうか。
芝・空・藤井風が三位一体となった、飽きの来ない新感覚ライブとなっているため、繰り返し何度でも観てみることをおすすめします。
最新シングル『燃えよ』をリリース
新曲「燃えよ」緊急リリース🔥
”MO-EH-YO (ignite)” Surprise Release🔥https://t.co/5k3yihloN4 pic.twitter.com/ubundutkqI
— 藤井 風 (@FujiiKaze) September 4, 2021
藤井風は9月4日の配信ライブ終了後、同ライブで初披露した曲『燃えよ』をリリースしました。
タイトルにもなっている「燃えよ」は、韻を踏んでいる「もうええよ」というフレーズと共に度々登場します。
肩を横に揺らす穏やかなイントロから始まり、サビに突入した辺りから打楽器のリズミカルなサウンドが存在感を増幅。
その後も、目まぐるしく打楽器のアプローチは変化していき、シンセによる特徴的なビートと相まって、「燃えよ」という力強いメッセージを後押ししています。
最後に
人生を旅路に例え、甘く繊細な藤井風の歌声で歌い上げた『旅路』は、リスナーを温もりに包み込むような、優しさに満ちたメッセージソングです。
彼の地元・岡山県里庄町で撮影された風情あるMVも魅力的で、まるで一本のショートフィルムのような仕上がりとなっています。
9月4日に最新曲『燃えよ』をリリースし、ますます瞬間最大風速を増していく令和の風・藤井風は、今後私たちにどのようなアプローチを仕掛けてくるのでしょうか。
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