KID FRESINO(キッドフレシノ)- 研ぎ澄まされた感性と先鋭的センスで大注目!新世代ラッパーのプロフィールや経歴は?

KID FRESINO(キッドフレシノ)- 研ぎ澄まされた感性と先鋭的センスで大注目!新世代ラッパーのプロフィールや経歴は?

いま最も注目のラッパー・KID FRESINO(以下、キッドフレシノ)。あどけない端正な顔立ちにバズカットが印象的な彼は、いまや日本のヒップホップシーンを代表する存在のひとりです。

もとはトラックメイクを主として活動していたキッドフレシノは、2011年に結成したFla$hBacksのメンバー・JJJよりラップを勧められます。2013年にJJJのSoundCloud上に自身のトラックをアップ。わずか10カ月のラップ歴で1stアルバム『HORSEMAN’S SCHEME』をリリースしました。そのセンセーショナルなデビュー作は、英語と日本語が流れるように絡み合うリリックと先鋭的センスでヒップホップ界に新たな旋風を巻き起こします。

唯一無二のラッパー/トラックメイカーとしての位置を不動のものにしつつも、ヒップホップのリスナー以外に認知度が急上昇した去年。松たか子主演のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の主題歌『Presence』に参加し、本人出演のMVが大変話題になりました。

2022年1月からは女性お笑いコンビAマッソとの2マンライブも開催予定のキッドフレシノ。今回はそんな多方面の活躍が注目される彼のプロフィールや経歴、おすすめ曲などを徹底解説していきます。ラッパー以外の活動からも目が離せないキッドフレシノの魅力にぜひ触れてみてください!

KID FRESINO(キッドフレシノ)/プロフィール



本名:佐々木寛明(ささきひろあき)
生年月日:1993年11月25日
出身地:埼玉県所沢市
事務所:SPACE SHOWER MUSIC

アーティスト名のKID FRESINO(キッドフレシノ)のFRESINOは、ロサンゼルスの地名。語感がよく字面が気に入ったことでこの名に決めたそうです。

現在28歳のキッドフレシノは、中学1年生のときに聴いたアメリカ出身のヒップホップMC、EMINEM(エミネム)をきっかけにトラックメイクを始めます。のちにFla$hBacksを結成することになるMC/トラックメイカーのFebb as Young Mason(以下、Febb)と同じ中学校で仲良くなり、お互いに触発しあいながらヒップホップにのめり込んでいきます。中学2年生のときにはKORGのシンセサイザーやMPC2000などを使用し、トラックメイクに熱中する日々を送っていました。

MEMO

2011年結成のFla$hBacksでヒップホップファンのみならず、同世代アーティストからも絶大な支持を得たMC/トラックメイカーのFebb(本名・安井誠一)は、2018年2月15日に不慮の事故で死去しています。一周忌である翌年2019年同日、キッドフレシノをはじめとする所縁あるアーティストらによる追悼ライブが開催されました。

KID FRESINO(キッドフレシノ)/経歴

もともとはトラックメイカーとしてデビューしたキッドフレシノ。お互いに刺激しあう仲間との出会いや人生観に影響を与えたC.O.S.Aとの交流、日本を飛び出しNYのハーレムで実績を積んだ彼のこれまでについて、詳しく紹介していきます。

デビュー~Fla$hBacks加入


中学時代からMPCでトラックメイクを続けていたキッドフレシノ。友人であり、のちに同じユニットで活動することとなるFebbのバックDJを務め、アーティストとしてのキャリアをスタートさせます。

その後、Febbがラッパー/トラックメイカーのJJJと結成したヒップホップユニット・Fla$hBacksに加入。メンバー全員がMC/トラックメイカーという新世代ユニットとして注目されます。

2013年、自主制作でリリースされた1stアルバム『FL$8KS』は、シーンの話題を独占します。発売後即完売、追加生産も追いつかない状況が続くなか、ミュージックマガジンの年間ベストディスク(HIPHOP部門)を獲得!このときキッドフレシノとFebbは若干19歳、メイントラックメイカーのJJJは23歳という若さでした。

ラップ歴10ヵ月でソロ名義の1stアルバム『Horseman’s Scheme』リリース

2012年、当時ラップ経験のなかったキッドフレシノはJJJに勧められ、彼のトラックに初のソロ『Come In』をアップ。これが大きな反響を生み東京のシーンで最もリスペクトされるレーベル・DOG EAR RECORDSは、その類まれなる才能に注目します。

2013年5月には、なんとラップ歴10ヵ月でソロ名義の1stアルバム『Horseman’s Scheme』をDOG EAR RECORDSからリリース。『Come In』までリリックさえ書いたことがなかったキッドフレシノの天性の感度とヴァイブスが、ヒップホップリスナーに鮮烈な印象を与えました。

10代の終わりに短時間で制作された『Horseman’s Scheme』。勢いに任せた初期衝動が粗削りな仕上がりを印象づけながらも、アシッドジャズやソウルの要素で厚みを持たせたメロディとエッジの効いたリリックの絡み加減が秀逸。未知の可能性を感じさせるキッドフレシノ必聴の1枚です。

愛知県出身のラッパーC.O.S.Aとの出会い


キッドフレシノの現在を語るうえで外せないのが、愛知県出身のラッパー・C.O.S.Aとの出会い。イベントで知り合い、その瞬間からお互いにシンパシーを感じたという2人を強く結びつけるものは何でしょう。

年齢が6歳年上のC.O.S.Aは男気あるライブとリリカルなラップスタイルを特徴としたラッパー/トラックメイカーです。恰幅のいい風貌とヒューマンライクなリリックが硬派な印象を与えるC.O.S.Aについて、「ライブを観ていると涙が出る」と語り「C.O.S.Aと出会って素直に言葉で表現できるようになった」と語るキッドフレシノ。

日本のヒップホップには可能性を感じず、自分をさらけ出すラップスタイルを「ダサい」と吐き捨ててきたキッドフレシノが、C.O.S.Aに出会い家族や恋人について歌うことを始めたというほど心酔しています。


一見まったく迎合しない二つの個性が、ソウルメイトとでもいうべき吸引力で結びついている印象を覚えますね。年齢を重ねるごとにヒップホップにおける表現のあり方や価値観を更新してきたキッドフレシノ。最も身近で、その人生観にも影響を受けた存在がC.O.S.Aといっても過言ではありません。


また、2016年にはそんな2人のユニットC.O.S.A×KID FRESINOで『Somewhere』をリリース

映画『この世界の片隅に』の音楽制作中のコトリンゴを迎えた『Swing at somewhere feat. コトリンゴ 』を収録するなど話題を集めました。彼女の大ファンというキッドフレシノとC.O.S.Aが、フォーマルな装いでピアノを弾くコトリンゴにうっとりするシーンがチャーミングなMVも見応えあり。往年のアメリカ映画を彷彿とさせるドラマチックな展開に、コトリンゴの透き通るファニーボイスが映える色彩豊かな1曲です。

ニューヨークを拠点に活動

2014年、Fla$hBacksとして活動中だったキッドフレシノは、日本のヒップホップシーンに可能性を見いだせず単身ニューヨークに渡ります

ヒップホップシーンのみならず、東京の若者のダサさに幻滅したという理由や「自分たちよりカッコいいヒップホップは生まれない」と豪語するキッドフレシノ。帰国後に数々のアーティストたちと出会いを重ね、音楽的視野を広げながら柔軟性を培っていくことになるとは本人もまったく思っていなかったであろう発言です。

NYのハーレムに一人暮らしを続けながら語学学校に通い、楽曲制作に明け暮れる毎日。他愛のないコミュニケーションや日本ではありえないユーモアを含んだやりとり。

それらが心地よく当たり前の景色として映るなか、エンジニアとしての技術を学びラップはきっぱり辞めようと考えていた彼が見つめたものは、日本で築いてきた仲間との関係性や純粋な郷愁だったのかもしれません。

2ndアルバム『Conq.u.er』はそんな心情が垣間見えるポジティブさを孕みつつも、捨てきれない厭世観が漂う1枚。2015年、ニューヨークで全曲制作された同アルバムでは盟友JJJやC.O.S.Aなどをフィーチャリングで迎え、本場の空気感を携えたビートといつもながら流れるようなフロウが軽快に刻まれます。特にJJJとのメロウネスなリードトラック『Turn.(who do)feat.JJJは円熟味さえ感じさせる2人のフックがゾクゾクするほどカッコいいです。



このmuiscはfatherやmother 最高にだっせぇが愛してるbrother
それからstreetにpeace願うsister 言葉にする意味もねぇよなmy step brother
そんで俺の相棒に ey men,yo keep 1人のhoney ヤツも当然
このhandおさまりきるほどのlibation この先増える一方なら俺は思い描く
己の才能に敬意を示した くだらねぇdreamでmid-night目覚めた

ニューヨークで一人佇むキッドフレシノを思い浮かべてしまう2バースに、21歳という若さが放つ哀愁を感じずにはいられません。

結婚~バンドセットで楽曲制作『ài qíng』から最新アルバム『20,Stop it.』


2017年には日本帰国のフェーズで制作された4曲入りEP『Salve』をリリース。キッドフレシノ自らがディレクションを手掛けバンド編成による楽曲制作には、兼ねてから敬愛するベーシスト、ペトロールズの三浦淳悟をはじめとする錚々たるプレイヤーを迎えて敢行されます。

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その流れのまま2018年の日本帰国後、ヒップホップ界のみならずミュージックシーンを揺るがす超話題作『ài qíng』をリリース。本人3作目となる同アルバムのタイトル『ài qíng』は、結婚した中国人カメラマン、フィッシュ・チャンから教わった言葉で「愛情」を意味するそうです。新境地を開いたバンドセットや結婚というライフイベントを経て、ますますその動向が気になるばかり。

超絶クールでカッコいい1曲目『Coincidence』はポストロック的なアプローチ。楽曲を通して一種の緊張感を帯びながら展開します。

2021年1月、暴走する進化をもはや止められないキッドフレシノの待望の4thアルバム『20,Stop it.』は、これまでのバンド編成をより増強したメンバーを軸に楽曲制作。共同で楽曲を制作発表したシンガーソングライター・カネコアヤノをはじめ、長谷川白紙などフィールドの違うミュージシャンや、本人が敬愛するラッパー・Campanellaなど豪華客演陣をフィーチャリングアーティストとして迎えた超傑作アルバムとなりました。

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1曲目のスチールパンの土着的なリズムとキッドフレシノの1バースと共に疾走するトラックの不穏な展開に、高揚感はマックスです。

またCDジャケットの写真は妻のフィッシュ・チャン撮影プロデュースはJJJSeihoのほか、ロンドンを拠点に活動するobject blueという最高にクールな面々が担当しています。

これ以上は想像不可能な傑作を輩出しても尚、キッドフレシノは軽やかに躍動し続けます。

KID FRESINO(キッドフレシノ)の魅力

音楽シーン以外にもフレキシブルに活動するキッドフレシノ。ファッションアイコンとしても多くのクリエイターから支持されています。

髪型とファッション


キッドフレシノといえばバズカット=坊主頭と端正な顔立ちが印象深いですが、2ndアルバム『ài qíng』発表前まではツーブロックツイストでした。現在の坊主頭も美しいですが、ツーブロックツイストの印象には初々しさがありますね。


キッドフレシノはモデル活動も行っているため、ファッションにも独自のセンスにこだわりがありそうです。90年代ヒップホップシーンにマストなブランド・Carhartt(カーハート)をスタイリッシュに着こなし、『ài qíng』のリードトラック『Coincidence』のMVで着用したCarharttの定番アイテム・チョアコートが注目されました

ラップスタイル

英語と日本語を巧みに織り交ぜ、メロディーに一体化させた聴き心地のよいサウンドでリスナーを魅了してきたキッドフレシノ。ビートに対する言葉の当て方に独自のアプローチを示すそのスタイルは、ヒップホップシーンに新世代のムーブメントを予感させながらもクラシカルを貫くスタンスにストイックさを感じます。

かつて、わずか10カ月のラッパー歴でソロアルバムをリリースしたキッドフレシノ。研ぎ澄まされた感性と圧倒的センスはあらゆる方向性をも輝かせていくでしょう。

KID FRESINO(キッドフレシノ)/マルチな活動

キッドフレシノの活躍の場は多岐にわたります。これまでもマルチな才能を余すことなく発揮してきました。その一部をご紹介していきましょう。

映画『イリュミナシオン』主役

2014年、南北に分断された近未来日本を舞台にしたSF映画『日本零年三部作』のvol.1『イリュミナシオン』で主役の少年・ヨウスケを演じました

タイトルの『イリュミナシオン』とは、タイムトリップができるドラッグのこと。若者の間で流行るこのドラッグに出会い、主人公らが彷徨う夜の風景を2014年の東京での原風景と声を織り交ぜながら進んでいくストーリーです。この映画は第15回ドイツのニッポンコネクション・審査員特別賞を受賞。2017年に渋谷のUPLINKで上映会が催されました。

モデル活動


Nikeのスニーカーをこよなく愛するキッドフレシノは、2019年3月に『AIR MAX 720』のイメージモデルに起用されます。今回で4度目の共演となる映像作家の山田智和がキッドフレシノとトラックメイカー・Seiho(セイホー)をフィーチャーした作品『720』を制作したことで話題になりました。


東京を拠点とする人気スケートブランド『Diaspora Skatebords』とGAPによるコラボレートコレクション『GAP×Diaspora skateboards』でモデルにも起用されたキッドフレシノ。同コレクションのルックブックでは独自の存在感をアプローチしています。

東京五輪CM出演


2020年の東京五輪オフィシャルスポンサーとして、体操日本代表選手を応援している三菱地所のTVCMにオリジナル曲を提供しました。CMにはキッドフレシノ本人も出演。アスリートたちの競技とキッドフレシノのラップが重なり、エネルギッシュに時代を繋いでいく様子がシャープに描かれています。

どんなシーンにも圧倒的な存在感で溶け込み、見るものを魅了するキッドフレシノ。今後も目が離せませんね。

KID FRESINO(キッドフレシノ)/代表曲

数々のアーティストとコラボしてきたキッドフレシノ。そのなかで代表的な作品と人気曲も含め紹介していきましょう。

Cats&Dogs feat.カネコアヤノ


4thアルバム『20,Stop it.』収録の『Cats&Dogs feat.カネコアヤノ』。キッドフレシノが敬愛する同世代アーティスト・カネコアヤノに楽曲制作を依頼し、およそ1年をかけて完成しました。実は2019年に恵比寿LIQUIDROOMで開催された『KID FRESINO BAND SET LIVE』でカネコアヤノを迎え、ファンの前で初披露された同曲。音源化が待ち望まれていました。


ジャンルにカテゴライズされない活動が浸透してきたキッドフレシノと、独特の世界観で音楽ファンを魅了し続けるシンガーソングライターのカネコアヤノ。2人の個性が交じり合い日常のリアリティーを鮮明に打ち出す流れが心地いい1曲です。

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Presence I feat. KID FRESINO/『大豆田とわ子と三人の元夫』主題歌


去年放送された、松たか子主演ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』。その主題歌『Presence』をトラックメイカー/MPCプレイヤーのSTUTSが担当しました。ドラマのエンディングでは毎回違うラッパーが参加し、そのユニークさが大きな話題に。

キッドフレシノは第1話の主題歌『Presence I feat. KID FRESINO』でラップパートのリリックとディレクションを手掛け、映像には自身も出演しています。彼の独特なルックスが印象強くSNS上でも「あのラッパーは誰?」と話題沸騰しました。メインボーカルの松たか子との掛け合いが見どころのMVには、松田龍平らドラマ共演者の俳優が『3exes』としてコーラスで参加しており見応え十分です。

Rondo


キッドフレシノ曰く「コロナが収束した世界線」をテーマに撮影したというMVが話題の『Rondo』。楽曲を通して解放感が伝わるテンポが魅力です。キッドフレシノのMVではおなじみの山田智和が映像監督を務めた本作。「MVが出ることにはコロナが収束していたらいいなという期待を込めた」というだけに、キッドフレシノ所縁の友人たちが次々に出演し無言のエールのような笑顔を残しています。

俳優の仲野太賀も出演しており、彼は『cats&dogs feat.カネコアヤノ』のCDジャケットの撮影も担当しています。このMVを観るとキッドフレシノの友人たちに会いに行く解放感が伝わり、温かみを感じます。

No Sun


4thアルバム『20,Stop it.』のリードトラックとして配信された『No Sun』。岩手県の田老鉱山で撮影されたMVでは、モデルとしても注目されるダンサーのアオイヤマダ(山田葵)振り付けによるダンスを披露しています。東洋的なニュアンスを持たせるダンスを踊るキッドフレシノはまるでチベット僧のように見えます。
またバンド編成にも注目したい本作は、ベースにペトロールズの三浦淳悟SuchmosのHSUを迎えツインベースをフィーチャー。洗練され壮大な曲展開を魅せてくれます。

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まとめ

今後も新たなフィールドで活躍の場を広げることが期待されるキッドフレシノ。研ぎ澄まされた感性から生まれる音と言葉の圧倒的なセンスで、期待をはるかに上まわるかたちでリスナーの私たちを驚かせてくれるでしょう。

今回の記事を参考に、キッドフレシノのディスコグラフィーを辿り、その豊かな才能に触れてもらえると嬉しいです。

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