シンガーソングライターの米津玄師(よねづ けんし)。
2013年にユニバーサルシグマからメジャーソロデビューを果たして以降、数々のヒット曲を飛ばして国内外問わず支持されているアーティストです。
その中でも2018年に発表した「Lemon」は彼の代表曲の1つでもあり、YouTubeに公開された動画は6億回再生を記録(2021年現在)。その勢いは衰えることなく、今も多くの人に愛されている曲です。
そんな「Lemon」ですが、実は人の死を歌っていることはご存知でしょうか。
タイトルとは全くかけ離れた言葉。人の死が「Lemon」とどのような繋がりがあるのか、今回の記事でご紹介したいと想います。
米津玄師さんについてもっと知りたい、理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
米津玄師(よねづ けんし)とは
米津玄師(よねづ けんし)は、2013年にメジャーデビューを果たしたソロシンガーです。
デビュー前はニコニコ動画を中心とした活動を行い、「ハチ」名義でVOCALOIDを使用したオリジナル楽曲を制作。「結ンデ開イテ羅刹ト骸」「マトリョシカ」「パンダヒーロー」といったボカロ曲の中でも知名度の高い作品を数多く生み出し話題となりました。
2012年から「米津玄師」として活動を始め、メジャーデビュー前にリリースしたアルバム『diorama』は、初登場ながらオリコン週間ランキングで6位を獲得。当時から実力のあるアーティストとして注目されていました。
デビュー後もその実力は衰えることなく、「アイネクライネ」「LOSER」「orion」「ピースサイン」「Lemon」など、今もなお話題性の高い楽曲を生み出し続けています。
米津玄師「Lemon」とは
今回ご紹介する「Lemon(レモン)」は、2018年3月14日にリリースされた米津玄師さん8枚目のシングルです。
同楽曲はTBS系列ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として使用され、YouTube上で公開されたミュージックビデオはリリース半年で1億回再生を突破。その翌年の2019年には国内MV初の3億回再生を叩き出し、2021年には7億回再生が目前に迫る程。
歴史的快挙を遂げた同楽曲は、2018年・2019年を代表する曲だけでなく、米津玄師さんを語る上では外せない1曲となりました。
その話題性から2018年に開催された『第69回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、故郷徳島県内からの中継で「Lemon」を歌唱しています。
「Lemon」に込められた意味
米津玄師さんの手掛けた楽曲の中でも群を抜く程の人気曲「Lemon」。
ドラマ『アンナチュラル』では、劇中で多くの人の死が描かれています。主題歌となった「Lemon」も、その作品のテーマに沿って制作されました。
ミュージックビデオを手掛けた山田智和さんは、過去に水曜日のカンパネラ、サカナクションを手掛けたことでも知られています。『アンナチュラル』と「Lemon」のどちらにも当てはまる演出を施し、MVは死者を弔う教会を舞台としました。
この制作方針によって作品の世界観に深みが増したのは間違いないでしょう。YouTubeに公開されたMVは6億回再生を記録しており、それがなによりの証拠です。
しかし、「Lemon」に込められているのは、ドラマの世界観を表現しているだけではありません。そこには米津玄師さん自身に関係の深い想いが込められており、タイトルや歌詞からその意味をなぞると、また違った視点が見えてきます。
米津さんの中で死という概念が崩れ去る
ドラマ側から「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」というオーダーによって制作が始まった「Lemon」。全国ツアーの真っ只中で制作に取り掛かった米津玄師さんですが、その制作の最中に祖父を亡くしてしまいます。
熱心なファンであればご存知かと思いますが、米津玄師さんは様々なメディアで死に抱く感情について発言してきました。
しかし、身近な死を経験したことによって、その概念が大きく崩れ去ったと語る米津玄師さん。これまで死を見据えていたつもりでも、それが正しいかどうか分からなくなってしまった。その悩みが「Lemon」の制作に大きく影響し、これまで以上に時間がかかったそうです。
レモンの苦さや酸っぱさが表すもの
タイトルの「Lemon」や歌詞の中にある「レモン」。
人の死を根底に置く楽曲ですが、やや不釣り合いではないのかと感じた人もいるのではないでしょうか。
ですが、このレモンは比喩の1つとして使用されていることが、歌詞を読み進めていくことで分かると思います。
フレーズの中に「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」とあります。実際にレモンを口にしたことがある人は、レモンの酸っぱさや苦さに口をすぼめた経験はありませんか。
想像しただけで唾液が出てくるような、記憶に焼き付いた味。これは人の死も同じことです。
身近な人や親しい人が亡くなった時、その時に感じたものをすぐに忘れることはできないと思います。時には思い出し、再び痛哭することもあるでしょう。
食べた時の衝撃。人の死を間近で感じた時の衝撃。そしてレモンはそれほど珍しくもなく、日常の中ではありふれた食べ物です。
死は誰もが経験するもの。ある意味日常の1つでもあり、それをレモンで表現したのでしょう。
「切り分けた果実の片方の様に」とは
繰り返しのフレーズが多い「Lemon」ですが、最後の歌詞にだけ「切り分けた果実の片方の様に」という一文が添えられています。
レコーディングの前日に思いついた部分であると語る米津玄師さん。「果実の片方」とは、楽曲名や歌詞の中にある「レモン」のことを指します。
ではなぜ片方だけなのか。これには様々な意見がありますが、もしかすると「生と死」を表現しているのではないかと思います。
「生と死」とは、つまり「生命」あるもの。生命あるものは、生を抱きながら死へと向かっていきます。これは2つでセットとして考えることができます。もし生命が不老不死であれば、それは「生」だけでしょう。
では、「死」を迎えるとどうなるのか。それは「生」との別れ以外に他ありません。この時、初めて「生と死」を分けることができます。
「切り分けた果実の片方の様に」とは、死を迎え、生を切り離した「あなた」のことを指しているのだと思います。
続く「今でもあなたはわたしの光」には、いなくなった相手のことを今でも想う「わたし」の強い想いが描かれているのでしょう。
ちなみにスペイン語のことわざの中で「あなたは私の半分のオレンジだ」というものがあります。
この言葉には「赤い糸」や「運命の相手」という意味合いがあり、今回取り上げた歌詞のフレーズに通じるものがあるかもしれません。
まとめ
「Lemon」にはまだまだ気になる要素が沢山あります。
歌詞だけでは読み取れない部分もあり、曲のリズムやMVでの演出など、様々なものが絡み合ってこの曲が成り立っています。
今回は全体を見た上での解説となりましたが、1つのフレーズだけに注目しても、また違った意味を読み取れるかもしれません。
なぜここでそのフレーズが出てくるのか、これには別の意味があるのではないか。
記載している内容は筆者独断と偏見によるもので、人によってはまた違った意見が生まれるでしょう。
そこに間違いはなく、その楽曲を聴いて自分なりの捉え方をするのも音楽の醍醐味の1つだと思います。
米津玄師さんの曲にはこれ以外にもおすすめの曲が多数あり、そのどれもが面白い視点から制作されています。
ぜひ今回の記事をきっかけに他の曲も読み解いてみてください。もしかすると、新たな発見があるかもしれません。
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